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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第一章 俺が後ろ盾?

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8.紹介?

 陛下がテーブルの上に置いてあった鈴を手にとって鳴らした。

 間髪を入れずに目立たないドアが開いて侍従らしい人が顔を出す。

「ここに」

「呼んで参れ」

「お心のままに」

 誰を呼ぶんだろう。

 そんなことを悩んでいる暇はなかった。

 ほとんどすぐに観音開きのドアがノックされる。

「何か」

「お呼びの方々が参りました」

「入れ」

 ちなみに話したのはオウルさんだ。

 既に皇帝陛下の代理としての職務を遂行しているらしい。

 重厚なドアが開いて数人の人が入って来た。

 ほとんどが男だ。

 年配者が多いけど若く見える人もいる。

 その人たちはソファーの前で陛下に向かって整列すると片膝を突いた。

「楽にせよ」

「は」

 一斉に立ち上がって気をつけの姿勢を取る。

 あまり楽そうには見えないけど?

 するとオウルさんが立ち上がった。

 一番左側にいる人を示す。

「マコトさん。

 紹介します。

 帝国宰相のトナル・カラビサ」

「トナルでございます。

 ヤジマ皇子殿下には初めてお目にかかります」

「あ、どうも。

 ヤジママコトです」

 失敗(しま)った!

 間抜けにも程がある返事をしてしまった。

「こちらが帝国官房長のサロム・ミシルト」

「サロムでございます。

 ヤジマ皇子殿下。

 お目にかかれて光栄でございます」

「……どうも。

 ヤジママコトです」

 アカン。

 こんな重鎮(えらそうなひとたち)にいきなり挨拶されてパニクッているらしい。

 言葉が出てこない。

 ヤバいぞ俺!

 横目で見ると、一見無表情な皇帝(アリヤト)陛下の口元がひくついていた。

 俺は道化か!

 そんな調子で紹介が続き、俺は躓きながらも何とか返礼した。

「帝国軍情報局長のレイリ・ナルシナでございます。

 ヤジマ皇子殿下」

「ヤジママコトです。

 よろしく」

 最後の人は覚えた。

 若い美女だったからね。

 タイトスカートみたいな服だったから男の娘ということはあるまい。

 しかし情報局長か。

 ユマさんを恐れていたという人か?

「休め」

 オウルさんが言ったけど、みんなは動かなかった。

 もう休めの姿勢になっている気がするんだけど。

 すると陛下が言った。

「立っていられては落ち着かぬ。

 着座を許す」

 そうか。

 俺たち3人は皇帝と皇族だからな。

 貴族や高級官僚と言えども無断では座れないわけね。

 いいのかよ俺。

 もうサラリーマンと名乗れないかもしれない。

「失礼致します」

 ええと、何とかいう宰相の人が代表して言って、全員がソファーに座った。

 どこからともなく現れた給仕の人がお茶を配膳して回る。

 この使用人スキルは凄いよね。

 給仕が出て行ってしまうとオウルさんがゆったりソファーに寄りかかりながら言った。

「で、どうだ?

 ここは無礼講(プライベート)故、自由に発言を許す」

 するとレイリさんが真っ先に言った。

「この機会をお与え下さり、誠にありがとうございます。

 ヤジマ皇子殿下には一刻も早くお目通りを頂きたく画策していた所、渡りに船でございました」

 何ともあけすけな。

 いい度胸だな。

 情報局長だから?

 こんな美女が?

 いやもちろん職務上の事だろうけど。

 ちなみにレイリさんは純粋な南方種(ドワーフ)じゃないようだった。

 北方種(エルフ)との混血かもしれない。

 見る角度によっては輝いているようにも見える銅色の豊かな髪と日本人に近いような肌。

 顔付きもいわゆる白人系と違って日本の女優やアイドル歌手に近いような美貌だ。

 もっとも身体(ボディ)はラテン系というか、メリハリが利いているのが服の上からでも判る。

 いやそんなのはどうでもいいけど。

「それは良いが、感想は?」

「驚嘆の一語に尽きます」

 レイリさん、何ですかその言い方は。

「他は?」

「いやはや、そういうことでございましたか」

「確かに。

 オウル様のおっしゃった意味が判りました」

「これで帝国も安泰でございます」

 皆さん何をおっしゃっておられるのか。

 俺ってそんなにアレですか?

「とんでもございません。

 ヤジマ皇子殿下を前にしてただただ恐縮するばかりでございます」

 何といったか宰相の人が頭を下げたけど、余計判らなくなった。

 何がどうなっているんですか?

「戸惑うのも無理はない。

 許せ。

 これが一番手っ取り早いとオウルが申すのでな」

 皇帝陛下にそこまで言われたらしょうがないですが。

「マコトさん。

 この者たちは帝国政府の実質的な重鎮です。

 これから協力して帝国を統治していく者どもに、マコトさんを知って貰いたかったのでございます。

 事前にご了承を得なかったことをお詫び致します」

 オウルさん。

 許可なんかはどうでもいいんですが。

 俺と会わせてどうしようと?

「つまりだ。

 オウルは不安だったということだ」

 陛下が含み笑いをしながら言った。

「オウルの後ろ盾はマコト殿だからな。

 帝国皇族が皇太子の後援者(パトロン)など前代未聞だ。

 帝国政府の者どもからも疑問の声が上がっておる。

 そこでとりあえず重鎮(トップ)の者を懐柔しようと企てた」

「マコトさんに一度でも会えば、その偉大さを理解できます。

 出来ないような奴は帝国(我が)政府には必要ございません」

 怖っ!

 俺と会って納得しなかったら粛清されると?

「その心配はございません。

 『初代陛下の再来』様を前にして疑問を抱く者などおりますまい」

 何とかいう宰相閣下が断定した。

 もう宰相さんでいいよね。

 他の人たちなんか役職どころか名前も忘れたし。

 レイリさんは別にして(泣)。

「この機会に何か聞いておくことがあれば遠慮なく申し出よ。

 ヤジマ皇子も忙しい身なのでな。

 次の機会がいつになるか判らんぞ」

 皇帝(アリヤト)陛下が言い放つと、帝国政府の重鎮の方々はお互いに顔を見合わせた。

 お前が言えよ。

 いやちょっと。

 ここはやはり偉い人が。

 そんな無言の綱引きが行われたらしく、最後に宰相の人が言った。

「僭越ながら申し上げます。

 現在ヤジマ商会が推し進めている帝国領の交易ネットワーク化でございますが、今後はどうなさるおつもりでございますか?」

 良かった。

 答えられる質問だった。

「今のところはオウル皇太子殿の『リスト』に従って順番に物資の流通を促進出来ればと考えています。

 野生動物を組織化するためには、どうしても広域ネットワークが必要になりますので」

 わざとズレた答え方をしたけど、しょうがない。

 最終的にどうなるかなんか判らないもんね。

 でも現時点で危なくなりかけている領地を何とかしないといけないわけだし、そのためには経済的に巻き込むのが一番手っ取り早いんだよ。

 ていうかユマさんの説明によるとそうらしい。

 別に俺が何かしたいわけじゃないし。

 そういう内心を込めて答えたところ、重鎮の方々の間にほっとしたような空気が流れた。

 何?

 俺が帝国を乗っ取るとか心配していたとか?

 嫌だよ。

 何でそんな面倒くさいことをしなきゃならないのだ。

 帝国の統治は皇帝陛下と帝国政府にお任せします。

「……もうひとつよろしいでしょうか?」

 レイリさんが言った。

 いいっスよ。

 美女の質問なら何でも歓迎です。

「ヤジマ商会、いえセルリユ興業舎の事業は大変興味深いものがあります。

 ナーダム興業舎はセルリユ興業舎の事業を踏襲する形になるのでしょうか」

 帝国軍の情報局長がその質問をしますか。

 それはそうだろうな。

 今のところ、帝国軍は為す術もなく侵略される一方だもんね。

 是が非でも取り込みたいところだろう。

「それは今後の検討待ちというところですね。

 もっともエラやララエなどの北方諸国でも同じような展開を行っていますので、概ねそちらに習うと考えて良いかと」

 当たり障りのない所を言っておく。

 ていうか俺、よく判らないんだよ。

 そもそもセルリユ興業舎自体が今何やっているのかあまり知らないし。

 ジェイルくんやラナエ嬢が勝手に動かしているもんね。

 全体的にはユマさんが統括しているはずだけど、敢えて聞いていない。

 聞いても判らないし(泣)。

「さようでございますか」

 レイリさんはなぜか今の答えで納得したようだった。

 そして言い出した。

「帝国軍情報局としましては、ヤジマ商会の事業に全面的に協力してゆきたいと望んでおります。

 是非ともご許可頂きたく、お願い申し上げます」

 何それ?

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