表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第三部 第六章 俺が主(あるじ)殿?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

499/1008

17.スカウト?

 野生動物に食事を提供する?

 俺は、そういうことはセルリユ興業舎のソラルちゃんに話してくれと言って逃げた。

 そんなこと勝手に決められないから。

 大体、材料を用意するにしても金がかかるし、料理にしても誰でもいいというわけではない。

 適当に作って良いというのなら俺でも出来るけど、下手なものを出したり食中毒でも起こされたらヤジマ食堂(レストラン)の看板に傷がつく。

 だから、正式な仕事として依頼して頂きたいということだ。

「当然であるな。

 了解した」

 ハムレニさんは思ったより簡単に納得してから、なぜかユラン公子殿下を見た。

 ユラン公子殿下は苦笑して言った。

「これは後ほど言おうと思っていたのだが……実は、今回の約定でララエ公国と野生動物会議が定期的な会合を持つことに決まった」

「そうですね」

「場所その他については未定だが、野生動物会議から是非とも実施して欲しいと言われた条件が出ている。

 それが、今回と同じセルリユ興業舎による接待だ」

 何と。

 つまり、今ハムレニ殿が言ったのはそれか。

 確かに「飯を食わせろ」というにはそれなりの理由がいるよね。

 場所や時間に参加人数とか、色々決めなきゃならない。

 だが連絡会議だったらそんなものは最初から判明している。

 事前に教えて貰えれば、こっちだって十分な準備が出来るだろう。

 いや待て。

 これ、凄い商売なんじゃないの?

「それは、ララエ公国からの正式なご依頼と考えてよろしいのでしょうか」

「無論だ。

 大公会議の承認が必要だが、まず間違いなく許可が降りる。

 予算についても心配はいらない。

 魔王対策費の中から出せるはずだ」

 ユラン公子殿下もお詳しいですね。

 まあ、こういう所に代表として出てくるくらいだから、お飾りの公子というわけではないのだろう。

 つまり、この話は本物だ。

「判りました。

 詳細は担当の者と詰めて頂くとして、本件に関してはヤジマ商会会長として承認させて頂きます」

 セルリユ興業舎の仕事だけど、おそらくそれだけでは済まない。

 ヤジマ食堂(レストラン)やその他の関連事業も関係してくるだろうし。

 だったら親会舎であるヤジマ商会が受けてしまった方がいい。

 ユラン公子殿下は満足そうに頷いた。

「では」

 それだけ言って去って行く。

 ハムレニ殿も「よしなに」とか言いながら去った。

 両方とも組織のトップだから、細かい事には関わらないんだろう。

 それは俺も同じで、振り向いて駆けつけてきたソラルちゃんに丸投げする。

「そういうわけで、後はよろしく」

「……よく判りませんが、判りました。

 シルレラ舎長、ご協力お願いします」

 ソラルちゃんも一部を投げた。

 仕事ってそうやって回っていくんだよね。

 シルさんも苦笑して言った。

「判った。

 マコト、お前も人使いが荒……いや、上手くなったな」

 そしてシルさんはソラルちゃんと何か話しながら去って行った。

 やっぱシルさんって、仕事を抱え込むタイプだな。

 現場が好きなんだろう。

 俺は別に好きじゃないけど。

 サラリーマンはサラリーマンでも、俺ってホワイトカラーだからね。

 出来るだけ、自分の手は汚したくないのだ。

 なんちゃって。

「マコトさんは、手は汚さないかもしれません。

 でも時として全身を業火に曝してでも何かを成し遂げる方です」

 ハスィー、いつも思うんだけど、そういう発想ってどこから出てくるの?

 業火だなんてとんでもない。

 俺はそんなんじゃないから。

「マコトさん。

 いつもながらお見事でした。

 ご自分の労力は最小限に留めて、最大限の成果を挙げる。

 しかもそれによって誰からも恨みを買うこともなく、全員を満足させるとは。

 商売の神髄を見せて頂きました。

 やはりあなたは、私が仰ぎ見るに相応しい方です」

 ロロニア嬢、褒めているつもりだろうけど言葉の節々に色々混ざっているからね。

「ロロニアの言う通りですわ。

 今回の件、おそらくララエのみに留まりません。

 波及的に大陸全土に広まるでしょう。

 急いでユマやジェイルさんにお知らせしなければ」

 ヒューリアさんはもっと実際的だったけど、内容は似たようなものだな。

 ルリシア殿下は「素敵です!」としか言わないし、カールさんもニヤニヤしているだけだ。

 その他のメンバーは、むしろこれからの事に気を取られているようだった。

 トニさんが聞いてきた。

「それでは、これから公都サレステに向かうということでよろしいでしょうか」

「あ、はい。

 ユラン公子殿下にはご挨拶しましたが、親善大使としてはやはり大公会議(トップ)にご挨拶するべきかと」

 トニさんが頷いた。

 セルミナさんも満足そうに微笑んでいる。

 つまり正解ね。

 この二人の役目って、俺が親善大使として何か失敗するのを事前に防ぐことが第一だからな。

 いや、それは俺にだって判るよ。

 もう半年くらい、親善大使やってるんだよ?

 上手くやれているのかどうかは別にしても、駄目なやり方は理解している。

 とにかく手続きだ。

 一応国を代表する立場なんだから、型から外れた事はやっちゃ駄目だ。

 まあ今回の件は型どおりとはいかなかったけど。

「準備はこちらでやりますので、マコトさんはお休み下さい」

 ヒューリアさんが言うので、俺はありがたく休むことにした。

 ハスィーを連れて宿に引き上げる。

 同じく用なしらしいルリシア殿下もついてきたけど、ロロニア嬢はヒューリアさんに引っ張られていった。

 ヒューリアさんはヤジマ商会の課長待遇だし、ロロニア嬢は見習いだからね。

 命令されたら逆らえない。

 部長待遇のアレナさんは最初からいない。

 何でもソラルちゃんに懇願されて、セルリユ興業舎の仕事に忙殺されているらしい。

 そういえばずっと姿が見えないと思ったら、そういうことか。

「わたくしが命じました。

 わたくしの秘書よりセルリユ興業舎の仕事が重要ですから、そちらを優先するのは当然のことです」

 ハスィーが無造作に言い放つ。

 まあ、ハスィーの秘書って今は別にいらないからな。

 俺の秘書であるはずのヒューリアさんも、もはや完全に現場投入だ。

 それでも足りなくて、ロロニア嬢やらシイル辺りまで巻き込んでいるらしい。

 大変だなあ(人事(ひとごと))。

 部屋に落ち着くと、俺はふと思いついて聞いてみた。

「そういえばルリシア殿下はよろしいのでしょうか?

 我々はこのままサレステに向かいますが」

 ヤジマ商会の見習い舎員として契約はしているけど、それ以前にエラ王国の王女様なのだ。

 エラ王政府から何か言われてないの?

「ロロニアが言っていましたが、この件については完全に自由裁量で良いと言う事です。

 ただしエラ王国王女の身分は非公式とするようにと。

 従って、私はカルート男爵公女という身分になります」

 ああ、ミラスさんのムト伯爵みたいなものか。

 王家の者にはそういう特権があるらしい。

 いや、俺だってやろうと思えばヤジマ子爵じゃなくてヤジママコト近衛騎士になれるんだけどね。

 子爵とかがそんなことしても、あまり意味ないから(泣)。

 それにしてもシルさんやカールさんも当たり前に身分を隠して民間企業で働いているけど、そういう人って多いのか?

「それほど多くはないと思いますが。

 そもそも身分というものは、それを持ち出すことで益があるから公にするわけです。

 名乗って害になるような場合は、当然隠します」

 ハスィーが言うには、当たり前だけど高貴な身分の者がそうでないふりをしたとしても、別に犯罪にはならないそうだ。

 逆の場合は国によって違うけど、何か問題が起きた場合は詐欺ということになる。

 もちろん無断で王族を名乗ったりすると国の問題になるから騎士団が出てくるらしい。

 ただ貴族は数が少ないため、わざわざ身分を隠して働く意味がないとのこと。

 貴族身分だけでもやりようによっては金になるからね。

 どっかの商会が箔付けのために顧問として貴族を雇ったりすることは当たり前にあるらしい。

「ただしその場合でも、商会側が欲しているのはその貴族自身や身分ではなくコネや伝手の場合がほとんどです。

 それがないような貴族は、一時的に身分を隠して雇われることもあるかもしれません」

 きついな。

 俺なんか失業したら、子爵とか近衛騎士の身分なんか全然役に立ちそうにないし。

 かといって手に職があるわけでもないから、どこも雇ってくれそうにない。

 冒険者にでもなるしかないかなあ。

 「栄冠の空」にはコネがあるけど、ネタバレしているから無理かも。

「マコトさんが就活ですか?

 物凄いことになると思いますよ」

 ルリシア殿下が言った。

「少なくともエラ王国は宮廷顧問か王陛下付きの相談役くらいの役職は用意すると思います。

 爵位は最低でも伯爵でしょうか」

 ハスィーが微笑む。

「マコトさんをよその国に取られるのをソラージュが黙って見ているとは思えません。

 わたくしならとりあえず侯爵あたりに昇爵させて、領地もつけます。

 あとはどこの部署でもお望み次第ですね。

 王政府の審問官辺りが適当ではないかと。

 もしそれが嫌なら、ご希望の立場を新しく作るくらいのことはすると思いますよ」

 冗談がきついよ、二人とも!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ