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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第三部 第五章 俺が調停役(コーディネーター)?

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21.契約?

 俺が探されているって?

 セルミナさんが続けた。

「そこでお聞きしたいのですが、野生動物は正確にはどう言っていたのでしょうか。

 ヤジマ大使をただ知っているだけなのか、あるいはヤジマ大使に会うにはどこに行けば良いか聞いてきたとか?」

 なるほどね。

 後者の場合は、何か俺に明確な用があるわけだ。

 これまでの話では、そこら辺がよく判らなかったからな。

 ユラン公子が内務省の何とかいう人を見ると、その男が立ち上がった。

「正確にどのような言葉を使ったのかは不明ですが、報告に寄れば大まかに『マコトの兄貴に会って話したいことがあるから居場所を知っていたら教えてくれ』というものだったようです。

 もちろん出会ってすぐに逃げ出した者も多いので、すべてがそうなのかどうかは不明ですが」

「……すると後者じゃな。

 個人的にヤジマ大使に会いたいというようなファン心理ではなさそうだ」

「そうですね。

 ただ、ヤジマ大使閣下に会ってどうするのか、という所までは不明ですが。

 実は、ある程度語り合った者の報告によれば、内容についてはマコトの兄貴に話す、と言うだけだったそうです」

 俺にだけ話すって?

 何なの?

「ならば簡単じゃな。

 その野生動物とヤジマ大使を会わせれば良い。

 それだけで、野生動物側が何を要望しているのか判るじゃろうて」

 カールさんが断定した。

 まあそうなんだろうね。

 でもどうやって会うの?

 その野生動物がどこにいるのか判らないのに。

「調査で判明した事があります」

 内務省の人が言った。

「複数の、それもかなり離れた場所で野生動物たちが同じような行動をとっている、ということです。

 言い方は様々ですが、内容は同じです」

「つまり、野生動物は単体でそのような行動をとっているわけではないと?」

「そう推察できます。

 彼らはメッセンジャーなのではないか、というのが我々の分析です」

「そうだな。

 まずヤジマ大使自身を知っている、あるいは居場所を知っている者を探す。

 それが達成出来たら第二段階に移行するというわけだ。

 会ってどうするという質問に答えないのも、本人たちも知らないからではないか」

 ユラン公子が切れる所を見せた。

 その調子で片付けて下さい。

 よろしくお願いします。

 俺、そんなのにはカカワリアイになりたくないもので。

「組織的にヤジマ大使を探している?」

「そうなるな」

「ならば結論は出ておる。

 こちらから人を派遣して、その野生動物に接触させれば良い。

 出会ったらヤジマ大使の居場所を教えてやれば、自動的に次の段階に移行するじゃろうて」

「それでいいか?」

 ユラン公子の質問に、内務省の男が頷いた。

「それでは騎士団に命じて」

「お待ち下さい」

 無礼にもユラン公子の締めを遮った奴がいる。

 誰だ?

 俺?

「ヤジマ大使、何か?」

 また「俺」かよ!

 いい加減にしろよ!

 責任取るのは俺なんだぞ!

 そんな俺の内心の叫びを無視して、「俺」は立ち上がった。

「騎士団を使うより、もっといい方法があります」

 ちらっと見ると、端の方にいるロッドさんが頷いた。

 ロッドさんからは言い出しにくいだろうしね。

 「俺」、空気読んだな。

 俺にも配慮して欲しかったけど、まあいいか。

「特定の野生動物を探すのは大変です。

 お話を聞いた限りでは、接触は山林や人里離れた場所に限られているようです。

 騎士団は、そういった場所における行動には向いていないのではありませんか」

「それはそうだが」

 ユラン公子は言いかけて言葉を切った。

 気づいたか。

「なるほど。

 続けて」

「親善使節団の随行員には野生動物がいます。

 フクロオオカミたちは斥候の訓練も受けておりますし、その技量は難民救助が可能なほどです。

 山林や森での行動に適した者もおります。

 その接触相手の捜索と接触自体を彼らにお任せ願えませんか」

「ふむ」

 ユラン公子はちょっと空中を見てから内務省の男に視線を向けた。

「よろしいのではないでしょうか。

 確かに、そちらの方が時間的に節約になります」

「了解した。

 ヤジマ大使の提案を受け入れよう」

 決断が早い。

 ユラン公子の切れ者ぶりが強調されたな。

 だがヒューリアさんがそれをぶちこわしにした。

「ではセルリユ興業舎との契約をお願い致します」

「……契約ですか?」

 不意を突かれたのか、ララエ公国側は全員が停止(フリーズ)する。

「はい。

 野生動物たちはセルリユ興業舎の舎員として働いております。

 これはソラージュ親善大使の行動とはまったく関係がない業務であって、当然ですが経費が発生いたします。

 そこの所をご了解頂ければ」

 ひでえ。

 何か、俺が商売っけを出したみたいになってしまった。

 ヒューリアさん、あんた親善大使の随行員でしょうが!

 いや、その前にヤジマ商会の舎員なのか。

 というよりはもはや、セルリユ興業舎の営業職員という気もする。

 給料分の働きはしているらしい。

 ヒューリアさんの給料がいくらか知らないけど。

「しかしそれは……」

「良かろう」

 言いかけた内務省の男の言葉をユラン公子が遮った。

「騎士団を動かすにしても経費がかかるのは同じだ。

 すぐに契約交渉に入れ。

 予算は通しておく」

「かしこまりました」

 内務省の人はすぐに引き下がった。

 つまりアレね。

 自分では予算の執行権限がないから、ユラン公子に回したわけか。

 どこまでが演技なのかよく判らん。

 ていうか、ひょっとしたらヒューリアさんとのやり取り自体、出来レースなんじゃないのか?

 ユラン公子殿下はともかく、誰が噛んでいるのかは不明だけど。

「さすがマコトさん。

 でも黙っていて下さいね」

 ヒューリアさんが囁いて離れて行った。

 怖っ。

 間違いない。

 最初から全部決まっていたな。

 もう請負契約から費用交渉まで全部終わっているとみた。

 本物の商売って奴を見てしまった。

 ジェイルくんとかも、こういう闇芝居をいつもやっているんだろうな。

 とても俺なんかがついていける世界じゃない。

 ヤジマ商会の経営から降りて良かった。

 もともと経営なんかしてないけど。

 ハスィーが寄ってきたので、一緒に部屋に帰る。

 セルリユ興業舎やララエ公国の騎士団は既に動き出しているらしく、空気が慌ただしい。

「これからどうするんだっけ」

 思わず独り言を呟くと、ハマオルさんが答えてくれた。

「この宿を中心として防衛体制を構築しました。

 次の動きがあるまでは、ここに滞在することになります。

 (あるじ)殿」

 もう決定しているらしい。

 別にいいけど。

「判りました」

 それではゆっくりしようか。

 考えてみれば、エリンサからずっと強行軍だったからね。

 ここらでしばらく休むのもいいかも。

 部屋に戻ってハスィーが入れてくれたお茶を飲みながらまったりしていると、アレナさんが来た。

「ララエ公国側との交渉がまとまりました。

 これよりセルリユ興業舎の野生動物部隊は公国内務省との契約履行にかかります。

 その間、一時的に親善使節団の警備戦力が落ちますので拠点防衛に徹したいとのロッドさんの伝言です」

 ロッドさんが指揮をとっているのか。

 随行部隊の役目は俺の警護だからな。

 戦力を契約履行に回している間、俺はうろちょろ動かずにじっとしていろと。

「判りました、とお伝え下さい」

「では」

 アレナさんも今はハスィーの秘書じゃなくてヤジマ商会の舎員になり切っているらしい。

 セルリユ興業舎にとっては親会舎だから、逆に言えばアレナさんやヒューリアさんも協力する必要があるわけか。

 まあ、会長と副会長は最前線に立たなくていいよね。

「俺たちはここでのんびりしていよう」

「はい。

 考えてみれば、お休みってありませんでしたものね。

 なかなか良い宿のようですし、ここで英気を養うのも良いでしょう」

 奥様(ハスィー)も賛成のようだ。

 温泉とかないかな。

 軽小説(ラノベ)だと、絶対に覗きができそうな露天風呂とかあるはずなんだが。

「そういった設備はないようですな。

 (あるじ)殿」

 さいですか。

 別にいいけどね。

 そもそも覗きなんかしなくても、俺は嫁の裸をいつでも見放題なのだ。

 残念なことに、あまりにも美しすぎてまともに見たら意識を持って行かれそうになるんだけど。

 だから、一度に見ないで少しずつ目を慣らしながら見ることにしている。

 それでも眼福もいいところで。

「見ます?」

 まだ昼前だよ!

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