表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第三部 第五章 俺が調停役(コーディネーター)?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

478/1008

20.問題?

 気分が悪くなった。

 俺のせいだよね?

 いや、俺が直接やったんじゃないけど、間違いなく俺がフクロオオカミたちに余計な事を言ったせいだ。

 それにしても、何でララエで?

「詳しくは後ほど報告させて頂きますが、事象としては今言った通りのことが頻発しています。

 ただし、死傷等の被害は発生しておりません。

 大抵の場合は、人間側が慌てて逃げてしまうので。

 野生動物側も追いかけては来ないそうです」

「逃げなかった場合は?」

「それなりの会話が成立するそうです。

 ただし、ほとんどの場合は野生動物側の会話(コミュニケーション)能力が不足しているらしく、カタコトですので意思の疎通は難しいらしいですね」

 それはそうだろうな。

 ツォルの奴だって、最初に会った時はカタコトだったし。

「話しかけてくるのに、話せないのですか」

「話せないというよりは、人間との会話に慣れていないというべきでしょうね。

 というのは、これらの事象が発生しているのはほぼ例外なく山間部や僻地なのです。

 少し開けた農村や都会などでは、そのような事象は報告されておりません」

 情報格差か?

 田舎の野生動物が焦って先走っているとか。

「というわけで、ヤジマ大使には改めてこの事態におけるアドバイザーをお願いしたいのだ。

 この『マコトの兄貴』という呼び名はヤジマ大使のことなのだろう?」

 ユラン公子は真面目に言っているつもりだろうけど、内容自体がおちゃらけというか皮肉なんだよ!

 でも事実だからなあ。

「そうだと思います」

「やはりそうか。

 つまりララエ公国内の野生動物たちは、出会った人間に対して『ヤジマ大使を知らないか』と尋ねていることになる。

 その原因について、何か心当たりは?」

 ユラン公子、容赦ないな。

 その話を進めていくと、否応なく厨二に至るんだが。

「失礼します」

 こっち側から声が上がった。

「何か?」

「親善使節団随員、ソラージュ王国外務省のセルミナです。

 ソラージュの国益に関係することで、ヤジマ大使閣下は直接お答え出来かねることがございます。

 また、直接関係する者以外に必要以上に広めることは、双方の国益を損ねることになるかと」

 セルミナさん、ナイス!

 国益と来ましたね。

 確かに俺はソラージュの親善大使だから、よその国から一方的に詰問されるいわれはない。

 そもそも外交特権があるはずなのだ。

 まあ協力するのは(やぶさ)かではないけど、騎士団の皆さんがいる所で大々的に発表する必要ってないよね。

「確かに。

 それでは、これ以降は関係者のみで検討することにしよう」

 ユラン公子が淡々と言って着席した。

 隣のララエ公国内務省の何とかいう人とちょっと話す。

 内務省の男が立ち上がって、この会議の終了を宣言した。

 騎士団の団長さんたちが一斉に立ち上がって部屋を出て行く。

 別に不快という雰囲気ではないので、よくあることなんだろうな。

 取引先同士の会議に業者が混じる必要はないということか。

 ユラン公子殿下が俺の所に来て言った。

「さて、手続きは済んだ。

 参ろうか」

 どこにでしょうか。

「申し訳ありません。

 騎士団側にも面子がありますし、知らない所でララエ公国政府とヤジマ大使閣下が密談して話が決まったような印象を持たれると些か困るので。

 親善使節団の皆様には、余計なお手数をかけてしまいました」

 ララエ公国外務省の、ええと何だったかの人が頭を下げた。

 するとセルミナさんとは打ち合わせ済み?

「はい。

 お伝えする暇がなくて、申し訳ありませんでした」

「それはいいのですが」

 やっぱ儀式というか、出来レースだったらしい。

 手続きを重視するってことか。

 これからが本物の会議ということね。

「こちらへ」

 ララエの外務省の人に先導されて部屋を出る。

 みんなでゾロゾロと歩いて重厚そうなドアを抜けると、そこは豪華な部屋だった。

「この宿で一番良い部屋です。

 帝国皇子殿下やエラ王国王女殿下を差し置いて申し訳なかったのですが、我々が押さえさせて頂きました」

「かまわん。

 我々は親善使節団の随員扱いじゃからの。

 宮廷でもなければ、身分をひけらかすつもりはない」

「そうです!

 私はエラ王国の男爵家のものですので」

 まあ、ご本人達が納得しているのならいいけどね。

 それにしても、身分が高い割に庶民的な皇・王族が集まったものだ。

 どちらも正統とは言い難いからかも。

「マ……ヤジマ大使閣下」

 何とアレサ公女殿下がいた。

 関係者なの?

「アレサはヤジマ大使に同行すると聞いている。

 後で説明するのも面倒なので、最初から打ち合わせに加えようと思ってね」

 ユラン公子がしごく真面目に言う。

 アレサ様は真剣な表情で礼をとった。

 うーん。

 同じ公族といっても、立場の差が露骨に出ているな。

 片やララエ公国政府から正式に国家級事態の対処を命じられたエリート、片や大公家からほとんど見捨てられたも同然の騎士団正騎士。

 厳しい世界だ。

 それにしても、いつの間にかアレサ公女殿下が俺たちに同行することになっている。

 まだ騎士団長さんには承諾して貰ってないような気もするけど、この人たちにとっては決まったことなのか。

 まあいいや。

 契約についてはヒューリアさんに丸投げしよう。

 ユラン公子と俺が向かい合って座り、その他の人たちが適当にソファーにばらけるのを待って、外務省の何とかいう人が言った。

「ここでは基本的な対応方針を検討します。

 状況的には差し迫っているわけではございませんが、放置してよいわけでもありませんので。

 それに今はまだ辺境の一部で噂になっている程度ですが、今後どう展開するのか予測がつきません」

「時間がないので手短に問う。

 事態収拾の方法はあるか」

 ユラン公子がいきなり言ってきた。

 直球かよ。

 まあ、ララエ側では手のつけようがないんだろうな。

「ヤジマ大使。

 よろしいか」

 カールさんが言った。

「どうぞ」

「実は、ここに来る前のエラ王国でも似たような事態が起こった。

 ヤジマ大使が現れたという噂を聞きつけた野生動物が、一目会おうと集まってしまっての」

 バラしちゃうんですか。

 それはそうか。

 その情報を明かさなければ解決策を持ち出しようがないもんね。

「ほお」

 ユラン公子が身を乗り出してきた。

 知らなかったらしい。

 ララエ公国内の情報しか入ってこないのかもしれないな。

 ララエ公国内務省の人は特に驚いていないようだ。

 情報機関なら、知っていても不思議はないか。

 つまり、ララエ公国政府内でも色々と温度差があるってことかな。

「とある公爵領で、ヤジマ大使が親善訪問していると聞いて野生動物が集まってきてしまって、現地の人間に接触したのじゃよ。

 少し騒ぎになったが、ヤジマ大使がそれを収めた。

 野生動物たちは、ヤジマ大使に挨拶に来たわけじゃな」

「それ以上の目的はなかったと?」

「よく判らんがそうらしかった。

 現に、挨拶を済ませると野生動物たちは速やかに解散したからの」

 いや、一部の野生動物はその場でセルリユ興業舎に入りたいと言って何か受け付けしてませんでした?

 あの後、どうなったかよく知らないけど。

「興味深い」

 ユラン公子が椅子に座り直した。

「つまり、今回のララエにおける騒動は、ヤジマ大使が出て行けばそれで収束するということか」

「そうとは限りません」

 セルミナさんが割り込んだ。

 言ってから慌てて頭を下げる。

「失礼しました。

 口を挟んで申し訳ございません」

「よい。

 言い忘れていたが、事態解決に役立てると考えたら自由に発言して欲しい。

 さらに、この場では身分に伴うマナーは一時的に停止(ホールド)する。

 後付けで済まないが」

「言うまでもないことじゃな」

 カールさんの保証によって、マナー無視が確定した。

 ユラン公子殿下は言わばこの会議の主催だから一番権利がありそうだけど、厳密に言えば帝国皇子であるカールさんの方が、多分身分は上なんだよね。

 ルリシア殿下は王女、アレサ様は公女だから、似たようなものだけど。

 それにしても身分がインフレしているなあ。

 俺の子爵だって社会的に言えば頂点に近いはずなんだけど、この場では下っ端だもんな。

 トニさんやセルミナさん、アレナさんなんかは平民だし。

 でも全員平然としている。

 肝っ玉は貴族級だ。

「ヤジマ大使が挨拶するだけでは駄目だと?」

「いえ。

 現状の情報では、エラ王国と違って野生動物たちは何か目的があってヤジマ大使を探している、という印象を受けました。

 挨拶したいというような単純な理由ではないのかもしれません」

 またトラブル?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ