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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第三部 第四章 俺が将軍(インペラトール)?

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11.護衛騎士隊?

 てっきりサーカス団の余興だと思っていた狼騎士(ウルフライダー)隊は、ガチで本物の騎士隊だったらしい。

 ていうか、本人たちは真面目にそう思っているようだ。

 若くて小柄で綺麗な女の子だけの騎士隊だよ!

 少なくとも軍事用じゃないよね。

 ソラージュの騎士団も、軍隊じゃなくて検察だという話だし。

狼騎士(ウルフライダー)隊は、基本的には災害救助の専門部隊です」

 慌ててロッドさんを探して聞いてみたら、穏当な回答が返ってきた。

「そもそもマコトさんが定めた『野生動物は人間とは戦わない』という大原則がありますからね。

 狼騎士(ウルフライダー)隊も極力争いは避けます。

 最初から攻撃されれば別ですが」

 やっぱ別なのか。

 それはそうだ。

 反撃して来ないと判ったら、人間は図に乗って何をするか判らないからな。

 やはり、限度を超えたらガツンとやってしまうべきだ。

「もっともその大原則が崩れる場合も想定されているのですけれどね。

 例えばマコトさんが攻撃された場合」

「俺が?」

「はい。

 もちろんマコトさんにはハマオルを筆頭に十分強力な護衛がついているわけですが、それでも万一ということがあります。

 また、直接攻撃ではないにしても、色々やり方があるわけで。

 それに対抗するために、狼騎士(ウルフライダー)隊はあえて牙を剥くこともあるということで」

 簡単に言ってくれるけど、それって例えば俺がピンチの時は暗殺者(アサシン)なんかと戦ってくれるということか。

 それは心強いけど、大原則はどうした。

「私は非暴力主義ですが、親しい人が襲われたら助けに入りますし、必要なら反撃もします。

 それと同じですよ」

 さらっと言ったよ!

 ロッドさんも伊達に騎士やってないのか。

 うーん。

 言っている事は判るんだよね。

 俺が「野生動物は人間とは戦わない」と決めたのは、必ずしも野生動物を守りたいと思ったからじゃない。

 人間を守るためでもある。

 科学力・軍事力が発達したら別だろうけど、現時点ではむしろ人類側の方が弱いかもしれないからだ。

 地球で人間が動物たちを圧倒できたのは、やはり知性の問題だろう。

 科学力とか軍事力はむしろ後付けだ。

 そんなものがなくても、人類は十分に凶悪だからね。

 人間が本気になって殺戮を開始したら、野生動物に勝ち目なんかないし。

 地球ではその通りになった。

 でも、こっちの世界では野生動物側にも知性があるんだよ!

 スウォークもいる。

 ガチでやり合ったら人類側が勝利できるかどうか判らないし、どっちにしても相当な損害を受けることになる。

 肉体的にも精神的にも。

 知性ある個体を殺すこと自体が禁忌になっている状態で、種族ごと抹殺とかしてしまったら、その精神的外傷(トラウマ)は物凄いことになると思う。

 俺は大学を出ただけで、心理学科卒とは言っても素人に毛が生えたようなものだけど、一応発達心理学や犯罪心理学も勉強したからね。

 いったんやってしまったら、人間の心なんかすぐに壊れてしまうんだよ。

 しかも集団心理で果てしなくエスカレートしかねない。

 人間の歴史では何度もそういう大殺戮(ジュノサイド)が発生しているからなあ。

 同じ人類相手でも大虐殺をやってしまえる人間が、野生動物相手に遠慮するとも思えないからね。

 だから、大前提として戦わない。

 これしかないと思ったんだけど。

「そんなに気になさることはないでしょう。

 戦わない、という原則を守りつつも何とかする方法は色々あります。

 彼女たちを信頼してやってくれませんか」

「それはもちろん信頼はしているけどね」

 ロッドさんが自信ありげだったので、そこで話が切れてしまった。

 まあいいか。

 俺がピンチにならなきゃいいんだし。

 でも、俺以外のハスィーとかラナエ嬢とかユマさんとか、あるいはシルさんやヒューリアさんなんかがピンチになっても連中は動きそうな気がする。

 今度誰かに相談しよう。

 ていうか、こういう時に一番頼りになるのは当然「略術の戦将」たるユマさんなんだけど、ここにいないしな。

 あの人は戦略的に考えるから、こういう問題には一番向いているのに。

「そういうことなら、私がお役に立てると思います」

 突然言われて、俺は飛び上がった。

 振り返ると金灰色髪(アッシュブロンド)の小柄な美少女が立っていた。

 ロロニア嬢か。

「ルリシア殿下についていなくてもいいの?」

「ルリはミラルカ様やハサロ男爵のお相手をしています。

 一応親戚筋ですので」

 ああ、そうか。

 セシアラ家は公爵家だから、王家とは親戚関係にあるんだよな。

 ルリシア殿下はもちろん王族なので、メチャクチャ遠いけど血は繋がっていると。

「エラでは血縁関係は重要です。

 身分より強いほどです。

 それに、ルリは王女とは言っても傍系ですので」

 公爵家と身分的には大差ないのです、とロロニア嬢は言うけど、ちょっと変なんじゃ。

「でもルリシア殿下ってルミト陛下の実の娘さんなんでしょう?」

「正式な配偶者の子ではありませんから。

 公式には非嫡出児扱いになります」

 そうなのか。

 認知されているんだから、てっきり側室の娘だと思っていたけど。

「当代陛下はそちら方面が非常にマメで、正室や側室以外にも色々います。

 それに正室はもちろん側室になるのも大変ですよ。

 それなりの条件、少なくとも実家のバックアップが必要不可欠です」

 そうなのか。

 どうでもいいけど、ロロニア嬢って物凄く即物的に言うね。

 これでは普通の人は話を続けにくいだろうな。

 でも俺は大丈夫だ。

 率直に言い合うことにかけては専門家と言ってもいい。

 だって思ったことが全部出てしまうという反チート能力者だもんね。

「マコトさんの凄いところは、そうおっしゃるお言葉とお心にまったく乖離が見られないところですね。

 おそらく思考能力に優れるのもそのせいではないかと推察します」

 つまり、余計なことを考えないから早いと。

 それはいいんだけど、話が逸れているぞ。

 ロロニア嬢が役に立つというのは?

「私はエラ王国の貴族として、彼らの思考パターンを熟知しております。

 ある状況でどう出てくるのか、何があるのかを予測できるということです。

 先手をとることで、トラブルを回避できる可能性が高くなるかと」

「うん、それは判る。

 つまり、エラにいる間はロロニアさんが俺のアドバイザーになってくれるということ?」

 判ったつもりになって言ったら、ロロニア嬢は頷いた後に驚くべきことを言い出した。

「それもですが、私をマコトさんのブレーンとして雇って頂きたいのです。

 聞くところによれば、親善使節団の参謀役はヒューリアが務めているそうですが、適役とは言えません。

 ヒューリアは綺麗すぎます」

 ええと、それって美人ということじゃないよね?

「もちろんです。

 彼女は裏技もこなせますが、やはり表舞台がメインです。

 本格的な裏工作に対しては後れを取る可能性が高い。

 私にはそれが出来ます」

 何と。

 売り込みか。

 いや、言う事は判るんだよ。

 確かにヒューリアさんに負担がかかりすぎているし、彼女は本質的には商人だから、本気(マジ)の謀略や殺し合いなんかには向いてないだろう。

 そんなの俺だって駄目だ。

 サラリーマンに裏家業は似合わないからな。

 ロロニア嬢が適任かどうかは別として、俺だけで判断していいものかどうか。

「判った。

 みんなに相談したいけど、少し待って貰っていいか?」

 そう言うと、ロロニア嬢はあからさまにほっとした表情を見せた。

「当然です。

 ソラージュにいる方達にも相談して下さい。

 私はいつまでも待ちます」

 破格の条件だなあ。

 まあ、ヤジマ商会にもそろそろ外国人の舎員を入れる必要はあるかもしれない。

 ハスィーの天敵みたいな(ロロニアさん)なら、資格は十分と言える。

 ていうか、ハスィーは大丈夫か?

 俺の嫁が反対したら、この話はお流れだな。

「そういえば聞いておきたいんだけど。

 仮にヤジマ商会に入って貰うことになったら、ルリシア殿下の侍女はどうするの?」

 ロロニア嬢は全然迷わなかった。

「もちろん辞めます。

 マコトさんについていくためなら、何もかも切り捨てますので」

「そんなの駄目!」

 悲鳴が上がった。

 驚いて振り返ると、ルリシア殿下が半狂乱になっていた。

「ロロが私の侍女を辞めるのなら、私も王女辞める!」

 いや、無理でしょう?

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