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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第三章 俺は冒険者チームのインターン?

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12.クエスト完了?

 のしのしと去っていくツォルさん【フクロオオカミ】を見送った後、俺とホトウさんは残りのパーティメンバーと合流して、そのまま帰途についた。

 いやあ、大したものだ。

 この困難なクエストを、数分で片付けちゃったよ。

 まあ、ホトウさんがフクロオオカミさんたちと親しいというのが大きかったな。ツォルさんとも友達付き合いしているようだし、長老とも知り合いらしいし。

 適材適所だね。

 会社も同じなんだよなあ。

 凄い頑固な顧客とか、何かで凝り固まった零細企業の社長なんかも、「合う」人が営業に行くとスラスラ契約がまとまったりする。

 相性もあるんだろうけど、やっぱり普段からの付き合いって大事だよ。別に一緒にゴルフしているからじゃなくて、信用・信頼して貰うのが重要だ。

 俺なんか会社ではぺーぺーで、そういう先輩たちを見て魔法のようだと思っていたもんな。

 俺がいくら熱意を込めて訪問しても会ってもくれない顧客が、先輩が電話しただけでOK出すんだもん。

 ああなりたいと思ったもんだけど、ホトウさんもそういう意味で尊敬できる人だ。

 ゴルゴ並の眼力とか、味方だと判っていても怖い迫力以上に、ホトウさんが言えば相手が納得するだけの信用を築いてきたんだろうな。

 それにしても、昼飯食ってすぐに仕事が終わってしまったので、日が高い内に帰れそうでみんな機嫌がいい。

 帰り道は下り坂だが、俺たちはゆっくりと進んでいた。

 俺はこの時とばかりに、パーティメンバーで唯一お話しをしていないセスさんに接近を試みた。

 お堅いというか、人見知りがあるみたいなんだよね。

 並んで歩いていても、俺と目を合わそうとしないし。まあ、真横にいるんだから無理ないけど。

 しばらく無言で歩いていたが、らちが明かないので思い切って話しかけてみる。

「今日は、うまくいきましたね」

 セスさんは、こっちをちらっと見たがすぐに無言で視線を戻した。

 いかん。

 なんか、合コンで気のない相手にアタックしているみたいじゃないか。

 いや俺は合コン行ったことないけど。

 ふと視線を感じて振り返ると、マイキーさんがニヤニヤしながら親指を立てていた。

 なんだよそれ。

 ていうか、こっちでもそういう仕草があるのか。異世界共通なのかも。

 気を取り直して再開する。

「いつもこんな感じなんですか?」

「……いつもは、もっと大変」

 おおっ!

 返事してくれたぞ。

「そうですよね。でもホトウさんって、凄いリーダーですね」

「……それは正しい。『栄冠の空』の中でも、優秀な方」

 やっぱりそうか。

 まあ、俺みたいな訳がわからない奴を押しつけられるんだから、優秀な上に上からの信用もあるのは間違いないだろう。

 続きを待ってみたが、セスさんは黙ってしまった。

 俺とはあまり話したくないのかな。

 だけど、思い出してみるとセスさんってほとんど口をきいてない気がするんだよな。

 性格的に無口なのかもしれない。

「でも、マコトも凄い」

 突然、セスさんが早口で言い出した。

「はい?」

「距離が近かったから、話しているのが聞こえた。ホトウさんとあのフクロオオカミの議論が平行線だった時に、マコトがちょっと言っただけで解決してしまった」

 えー?。

 それはホトウさんの力でしょう。

 大体、俺は未だに何がどうなって解決したのか、よく判ってない。

 そもそも、ホトウさんはあの時、むしろ問題を先送りしただけなんじゃないのか。

 持ち帰って検討します、というのは営業の常套手段だぜ。

 上と相談します、というのも同じだ。

 ホトウさんは、それやっただけとも言える。

 ツォルさんは「とりあえず」徘徊を止めるといっただけで、納得できる解決策を提示しない限り、そのうちに再開するだろうし。

 それを言おうとしたが、セスさんはふいと顔を背けると、離れていってしまった。

 会話拒否か。

 仕方がないな。まあ、少しは話せたからいいとするか。

 全員と親しくなる必要もないわけだし。大体、俺は初日なんだぞ。美少女転校生じゃあるまいし、いきなり集団の中に入っていって人気者になれるわけがない。

 そもそもコミュ障がかっている俺だし。

 それでも、会社で揉まれて結構付き合いやすくなったんだけどなあ。

 あ、言い忘れていたけど、セスさんってかなり美人なんだよね。マイキーさんが明るいタイプだとすると、セスさんは物静かな美女というイメージ。

 ラノベだと定番だが、まさかこっちの冒険者パーティも同じだとは思ってなかったな。

 あのくらい美人なら、冒険者なんかやらなくてもと思うんだけど、やっぱり何か理由があるんだろう。

 それにしても、ホトウさんってラノベだと明らかに主人公だよね。

 本人は優秀な冒険者でリーダータイプでもあり、パーティはガタイのいい男と美女2人。完全ハーレムではないのが、一昔前のラノベ風の味を出している。

 そしてしゃべる馬。

 さらに、異世界から来た得体の知れない素人。こいつは絶対主人公じゃないな。立場的には、多分異世界の知識で主人公を助ける参謀役というところか。

 実際には役に立たないけど。

 俺はその後、ホトウさんに冒険者のことを色々教えて貰ったり、ケイルさんに『栄冠の空』でやっている様々な仕事について聞いたり、マイキーさんと話し込んだりしながら時間を潰した。

 いや、歩いているだけだから、暇なんだよ。

 ラノベと違って途中で魔物が出るとかもなかったし。

 思うんだけど、こっちの冒険者の仕事って、そのほとんどは移動なんじゃないかな。効率的な移動手段がないから、何かやるためにはてくてく歩いていくしかないんだよ。

 馬とか馬車で移動すればいいと思うだろうけど、実際にはそういう手段は金がかかる。それに、ボルノさん【馬】が引いている馬車も必要だし、大所帯になってしまうだろう。

 まあ、仕事なんてそんなものだけどね。

 俺がやっていた仕事でも、そういうのはあったな。

 顧客が使っているシステムで障害が起きて、オンラインでは対処できなかったら、俺が障害解析用のノーパソや資料を抱えて電車を乗り継いでいくしかない。

 2時間くらいかかって顧客の会社に着いて(結構郊外にあるんだよ)、システムの電源入れたらちょっとバグっているだけだったりして。 あの時は5分で直ったなあ。

 で、また2時間かけて会社に帰ると。

 それでも、俺が行かなければ直らないんだからしょうがない。

 それで金貰っているんだから、何も文句を言うことはないわけだ。

 昔の戦争も同じようなものだと聞いたことがあるな。戦場に着くまで延々と移動して、お互いに監視しあいながらずっと待機して、戦いが始まったら大抵1日で終わる。

 本当に「仕事」するのは、全体のごく一部だ。

 まあ、近代戦は機械化されているから、そうでもなくなっているらしいけど。

 あと航空戦力が加わると、まったく違ってきたりして。

 もちろん、こっちでは地球の話はしなかったよ。異世界人です、というのはインパクトがありすぎて、どう反応されるか判らないからね。

 当たり障りのない話に終始していたけど、おしゃべりに夢中になっているうちに、いつの間にか街に入っていた。

 そのまま『栄冠の空』の本部に戻り、俺たちが裏の練習場で待機していると、報告に行ったホトウさんがすぐに戻ってきた。

「みんなご苦労様。今日は解散していいよ。明日は休みね」

 おお、いい会社(違)だな。

「あ、マコトはちょっと来て。今日の報告書を書く前に、聞いておきたい事があるから」

 俺だけ残業か。

 まあいいけど。

 まだ日は高いしね。

 マイキーさんがボルノさん【馬】を連れてどこかに引き上げ、ケイルさんとセスさんがバラバラな方向に去っていくのを尻目に、俺はホトウさんに連れられて事務所に向かった。

 受付には誰もいなかった。

 この時間帯なら仕方がないか。

 ネコミミのキディちゃんを見たかったんだけど残念。

 ホトウさんは、奥のドアを開けて真っ直ぐに進み、一番奥にあるドアをノックする。

「ホトウです。マコトを連れてきました」

「入れ」

 何?

 報告書の打ち合わせじゃなかったの?

 偉い人に直接報告?

 俺、何かやった?

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