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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第三部 第三章 俺が巡業団長?

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2.活動計画?

 それにしてもロロニア嬢の口調が変化しているような気がするけど、これは多分俺の方の問題だろう。

 何か、某アニメの対有機体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースの口調そっくりに聞こえてくるんだよね。

 魔素翻訳って、相手が言ったり考えたりしたことをそのまま伝えてくるんじゃなくて、いったん受信してから俺の脳に理解出来るような形にして伝わってくるわけだ。

 従って、その内容はともかく口調や話し方すら、俺の脳がそう思った形で表現されることになる。

 つまり俺の脳はロロニア嬢を長門○希だと認識してしまったらしい。

 いったんそう思い込んだら、ちょっとやそっとじゃ変わらないだろうな。

 ハスィーの口調がいつも丁寧過ぎるのも、俺の最初の印象がずっと続いているからだろう。

 ていうか、その印象がどんどん強化されていった結果だとは思うけど。

 もっとも実際にもハスィーの言葉が丁寧である可能性は高い。

 貴族の中の貴族令嬢、傾国姫だからなあ。

 ラナエ嬢も似たような印象がある。

 ユマさんは……なんか、最初から砕けていたような。

 まあいい。

 ハスィーとロロニア嬢の不毛な議論を終わらせると、俺たちは具体的な計画の検討に入った。

 親善大使の職務は、前にも言ったけど特に決まっていない。

 極端に言えば離宮に行ってルミト陛下にご挨拶した時点で、エラ王国における最低限の義務は果たし終わったとも言える。

 ソラージュを代表してエラ王国の最高権力者に「親善」を表したわけだからね。

 もちろんそれで帰ってしまったら親善大使なんか必要ないわけで、俺というか親善使節団の仕事はこれからだ。

「北方方面への親善大使ということだから、エラ王国だけじゃないのでは」

「それはそうですが、とりあえずエラ王国で一定の成果を上げてからですね。

 他の国もそれは判っています。

 さすがに年単位で待たせたら怒るでしょうが、数ヶ月なら特に問題はありません」

 セルミナさんが言ってくれたので、まずはエラ王国の要所を押さえることが決まった。

 でも、逆に言えば数ヶ月以内に何らかの成果を上げて、次の国に行かないとならないということだな。

 この「成果」というのが難しい。

 ソフト的なことだから、目に見えるような証拠が出てくるとは限らないのだ。

 そもそも俺は「文化使節」らしいので、そんなもんをどうやって「親善」すればいいのか見当もつかないぞ。

「難しく考えることはありません。

 マコトさんが何かを行って、それが話題になれば良いのです。

 噂でもいい。

 そもそも今回の親善使節団の目的自体、はっきりしていないのですから」

 そうかよ。

 そんないい加減な話で、こんな大規模なキャラバンで出張ってきてしまったのか。

 俺が考え込んでいると、カールさんが言い放った。

「マコト殿が悩むことはないぞ。

 こういうことは、むしろ民間業者の方が詳しいというか得意だ。

 セルリユ興業舎の北方開発部隊がついてきているのだから、任せてしまえば良いではないか。

 エラ王国にしても、商売や投資は大歓迎のはずじゃからの」

「それは良い考え。

 セルリユ興業舎が何か始めたり、デモンストレーションを行う所に行って挨拶すればいい。

 それだけで、相手は歓迎してくれるはず」

 ロロニア嬢、やっぱ凄いわ。

 親善使節団が圧倒されているぞ。

「……それでは、聞いてみましょう」

 ヒューリアさんが言って護衛の人に何か伝える。

 しばらくして、フォムさんがやって来た。

 臨時大使館(こっち)に来ていたのか。

「お早うございます。

 何かご用ですか?」

 言えないけど、朝からマッチョに元気よく挨拶されると、ちょっと暑苦しいね。

 言えないけど。

「お早うございます。

 実は……」

 ヒューリアさんが代表して説明すると、フォムさんはすぐに頷いた。

「それはそれは。

 そういうことでしたら、こちらから親善大使閣下にお願いしたいと考えていた所です」

「もう既にお話が?」

「はい。

 というよりは、事前にいくつかの事業を各所に打診しておりまして、公演というか店開きを行う予定の場所が何カ所かあります。

 セルリユ興業舎のみで行う予定でしたが、ヤジマ大使閣下にご挨拶して頂けるのなら、成功間違いなしです」

 あいかわらず調子はいいなあ。

 でもユマさんやラナエ嬢によれば、このフォムさんは見かけによらず深慮遠謀の徒らしいからね。

 ここまで言い切るからには、成算があるのだろう。

 なんか面倒くさいし、もう任せちゃっていいか。

 俺は頷いて言った。

「何でもやりますので、内容を教えて下さい。

 ヒューリアさん、お任せします」

「はい」

「それについて王政府や貴族の方との折衝が必要でしたら、セルミナさんとトニさんに相談して下さい。

 カールさんにも出来ればご助言頂ければ」

「「了解しました」」

「判った」

「ハスィーは俺と待機だね。

 その間に、ルリシア殿下にもっとエラ王国のことをお聞きしたいので」

「喜んで!」

 よし。

 これでとりあえず俺はぼーっとしていればいいはずだ。

 何かあったらハスィーやヒューリアさんが教えてくれるだろうし。

「それでは、よろしくお願いします」

「「「判りました。

 親善大使閣下」」」

 一同、一斉に立ち上がって礼をすると、それぞれ勝手に動き出した。

 みんな調子いいなあ。

 でも、この使節団の団長は俺なんだし、俺が締めないと話が進まないんだよね。

 俺の本質はペーペーのサラリーマンなんだけど、北聖システムで会議とかに出ていたので判る。

 出席者の中の一番偉い人って、大抵何もしないし何も言わないんだけど、最後に何か言って締めるんだよね。

 それで、その人が責任をとったことになる。

 他の人が何を言っても、それは単に議論しているだけだから、決定事項じゃないのだ。

 そういうのを最後に全部「やれ」という人がいて初めて、会議は成立する。

 まあ、その一番偉い人が本当に責任をとることって余りないんだけど(笑)。

 でも今は俺が親善大使でこの場の責任者だから、決めてGOサインを出すのは俺の役目だ。

 で、それが終わったら後はぼやっとしていてもいいわけで。

「マコトさん。

 ……と呼んでよろしいですか?」

 ルリシア殿下が真面目な顔で聞いてきた。

「かまいませんが……何か?」

「そんなに親しげにお呼びしていいのかと。

 マコトさんは本物(しん)の貴族でいらっしゃいますから」

 変な事を言うね。

「私はこの間までは近衛騎士で、その前は平民でしたが?」

 ホンモノかどうかというのなら、多分偽物に近い気がする。

「いえ、そうではなく。

 私のような、たまたま王家に生まれたとか親が貴族だった、というような者に比べて、真実の貴族としての精神(ココロ)をお持ちです。

 そんな方に、私のようななんちゃって王女が親しげに呼びかけて良いのかどうか」

 「なんちゃって王女」って!

 いや、間違いなく別の単語なんだろうけど、ルリシア殿下は自分のことをそういう風に思っていらっしゃるのか。

 俺は、改めてルリシア王女殿下をまっすぐに見た。

 美少女じゃん!

 今頃気づいたけど、ルリシア殿下って純粋なエルフなんだよね。

 輝く金髪に紫色の瞳。

 アニメとか異世界物(ラノベ)で「エルフ」として出てきそうな容姿だ。

 耳は普通だけど。

 今まで特に意識してなかったのは、大抵ハスィーが近くにいてその輝きに呑まれていたからだろうな。

 同系統の美貌だけど、やっぱちょっと桁が違うから。

 ハスィーがいない場所でなら、ルリシア殿下もピカイチの美少女を張れると思うんだけどね。

 俺はちょっと礼をして言った。

「殿下は十分に王族としての自覚と誇りをお持ちと思いますよ。

 何より、王女殿下でありながら威張ることもつけ上がることもなく、真摯にご自分の義務を果たそうと努力しておられる。

 エラ王室の矜持(きょうじ)、見せて頂きました」

 いや、こういうのって北聖システムで営業していた中小零細企業の社長(オヤジ)たち相手には必須なんだよね。

 ここまでは言わなかったけど。

 でも、これはマジでそう思っているから。

 何ていうか、ルリシア殿下って今まで出会ってきた貴族令嬢の皆さんに比べて、健気(けなげ)というか一生懸命というか。

 このタイプ、初めてかも。

「マコトさん!

 ありがとうございます!

 私、頑張ります!」

 それはありがたいんですが。

 ハスィーやヒューリアさん、なんで睨むの?

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