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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第三部 第二章 俺が文化使節?

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16.好きにして?

 新参の親善大使の分際で王室の私的(プライベート)な場に招かれるばかりか、王族の方々と直に接して頂ける。

 これって物凄い待遇なんじゃないのか。

 少なくとも日本では有り得ないよね。

 絶対王制の封建国家だから王様の我が儘が通ってしまうこともあるのだろうけど、とにかく最大限の好意であることには間違いない。

 俺が普通の大使だったらラッキーなんてもんじゃないんだけど。

 俺って、別にそういうんじゃないから。

 勧められるままにルミト陛下の向かい側のソファーに座る。

 すぐに召使いの人が俺たちのお茶をセットしてくれた。

 見たところ、成人は俺たち以外はルミト陛下だけのようだ。

 当然だけど、使用人はいないものとして扱われる。

 お祖父様と孫たちの歓談ということか。

「こちらがソラージュ王国のヤジマ大使とその奥方、それにカル・シミト帝国皇子殿下だ。

 お前たち、ご挨拶しなさい」

 ルミト陛下の指示で、王室のお子様方が一列に並んで可愛く挨拶してくれた。

 女の子が3人、男の子が2人。

 一番大きくて十歳くらいか。

 大半がルミト陛下の血を受け継いだと思われる。見事な金髪のエルフだ。

 美少年と美少女。

 しかもロリ。

 定番だな。

 黒髪や茶髪も混じっているので、ルミト陛下の子孫が全員エルフというわけではないようだ。

 エルフはエルフ同士で結婚したがるらしいけど、王族ともなればそんなことは言っていられないんだろう。

 それに、よく考えたらエルフって幼少期の成長が早くて、ハスィーも十二歳で二十歳くらいに見えたらしいからね。

 この子供たちも、外見通りとは限らないということか。

 とりあえず返礼する。

「ソラージュ王国親善大使、ヤジマ子爵です」

「ハスィー・ヤジマです」

 余計な事は言わない。

「帝国皇子カル・シミトという。

 お祖父様とは長年の友人での。

 よろしく」

 カールさんは堂に入ったものだった。

 こういう状況を何度も経験しているのだろう。

 帝国皇子の身分って便利だよね。

 大抵の人より身分が高いから、事実上何でもできるしどこにでも行ける。

 皇族名簿に載っているだけなので、帝国の柵に囚われるわけでもないから自由に動けるし。

 ソラージュの子爵だと、制限がありすぎて自分ではほとんど動けなくなるからなあ。

 まあ、動く気もないけど。

 一通りの挨拶が済むと、王子様や王女様が我がちに質問してきた。

 幸い、子供の頭ではあの劇でロッドさんがやっていた近衛騎士様と俺が結びつかないらしいので助かった。

 その分、ハスィーに興味が集中している。

 だけど、やっぱりなあ。

 年かさの王子様や王女様は、ひとたびハスィーと対面すると口調があやふやになって俯いてしまう。

 中には床に座り込んでしまった子もいて、召使いの人が慌ててソファーに連れて行った。

 傾国姫は健在だ。

 同じエルフなのに、何が違うんだろう。

 その様子を苦笑しながら眺めているルミト陛下も、俺から見たら超絶な美貌なんだけどね。

 もちろん男だから人を悩殺するようなものではないんだけど、例えば日本にいたらたちまちCMのオファーが殺到するくらいのレベルだ。

 でもハスィーとは何かが決定的に違うんだよな。

 俺の嫁は特別だ。

 俺とカールさんは無視されたのをいいことに、ソファーで寛いでいた。

 ルミト陛下と軽く話したが、大切なことは言わない。

 やがて子供たちが疲れて口数が少なくなった所を見計らって、ルミト陛下が命じた。

「このくらいでいいだろう。

 そろそろ稽古の時間だぞ」

「はい。

 お祖父様」

 子供たちは素直に去って行った。

 稽古事か。

 王族も大変だな。

「色々約束してしまいました」

 ハスィーが言った。

「後で、野生動物たちとお話ししたいそうです」

「いいんじゃない?

 無理なことは出来ないけどね」

 駄目ならエラ王国の誰かが止めるだろう。

「この辺は追々と話そう」

 ルミト陛下が言って合図すると、召使いの人たちが全員出て行ってしまった。

 護衛もいないのか。

「国家間同士の信頼感とでも言おうか。

 もっともこの部屋の周囲は上下と四方、手練れで固めてあるがね」

 それはそれは。

「そこまで来ておるのか」

 カールさんの声に、ルミト陛下が何でもないように言った。

「バランスの問題だよ。

 王室と貴族、先に手を出した方が袋叩きに合う。

 お互いに監視させているようなものだ」

「ふん。

 エラのそういう所は面倒くさくてならんな。

 わしはソラージュに降りて助かった」

「まったくだ。

 羨ましい」

 どうもこのお二人、色々通じ合っているみたいだね。

 少年漫画とかでよくあるように、偶然ダンジョンとかで会って背中合わせで戦ったりしたのだろうか。

「そんなご大層なものではないよ。

 そんなことより話だ。

 とりあえず第一段階はうまくやってくれた。

 感謝する」

 ルミト陛下がちょっと頭を下げたので、俺は慌てて手を振った。

「私というよりはセルリユ興業舎のものたちです。

 私は何もしておりません」

「配下の手柄はすなわち首長(トップ)の功績だよ。

 マコト殿が何もかもやるわけにはいくまい。

 よくやったと思うのなら、地位や名誉で報いてやれば良い」

 ルミト陛下はさすがに王様だな。

 いや為政者というべきか。

 俺はまだそこまで達観できないもので。

「それはマコト殿の問題だ。

 エラとしては、熱が冷めないうちに次の手を打っておきたい」

「と言われますと」

「どんどんやってくれ。

 許可は出す。

 資金も、王室の予備費を回せるぞ」

 何の話なのでしょうか。

 すみませんが、さっぱりなんですが。

「ルディンから言われているだろう。

 好きにやれと。

 だから好きにやって良しということだ」

 いえ、ですから何をどう好きにやって良いということなのか。

 でも聞けない。

 相手は一国の支配者なんだよ!

「ルミト。

 そう早まるな。

 マコト殿が置いて行かれているぞ」

 カールさんが割り込んでくれた。

 助かった。

「陛下がおっしゃっておられるのは、セルリユ興業舎の事業展開のお話ですね?

 でしたら失礼ですが、マコトさんに強要しても筋違いです」

 ハスィー、君も大胆ですね。

 王様に「あんた間違っている」と直言できる人って、そうはいないよ。

 しかも、よその国の王様だよ!

「マコト殿はセルリユ興業舎のオーナーなのではないか」

 ルミト陛下がまた、全然そういうことを気にしないのね。

 若い頃に身分を隠して放浪していたという話だし、安酒場とかで冒険者として俺お前で語っていたのかもしれない。

 そういうのって本当にあるんだなあ。

「マコトさんはヤジマ商会の会長でオーナーですが、セルリユ興業舎を初めとする子会舎群にはそれぞれ舎長がいるのです。

 それらの会舎の事業展開は、それぞれの舎長に任されております。

 つまり、マコトさんはセルリユ興業舎の活動について詳細は存じあげておりません」

 ハスィーは誤魔化してくれたけど、実はほとんどというより全然知らない。

 だって俺の仕事って、金を集めて下に流すだけだからね。

 その金をどう使おうが舎長たちの勝手だし、俺には口出しできない。

 で、上納金を受け取っているだけだ。

 まあ一応報告書は提出して貰っているけど、概要くらいしか読んでないからなあ。

 しかもその報告書の内容は現時点での活動についてであって、将来計画などは曖昧にしか書いてない。

 それはそうだよね。

 それらの会舎の舎長たちだってよく判ってない事が多いんだから。

「そうなのか。

 私はまた、マコト殿がすべてをコントロールしているのかと」

「ルミト陛下も、王政府の活動については詳細をご存じありませんでしょう?

 マコトさんも同様です」

 ハスィー、そのタメ口はやめた方がいいような気がするけど。

 ルミト陛下が気にしてないんならいいか。

「なるほど。

 了解した。

 つまり、セルリユ興業舎の事業計画についてはマコト殿が策定しているわけでも、活動を指揮しているわけではないのだな?」

「策定や指揮はせんよ。

 許可を与えるだけじゃ」

 カールさんがそっけなく言って、それで解説は修了したらしかった。

 俺は置いてかれたけど。

「よろしい。

 エラ王国国王ルミト・エラが命じる。

 セルリユ興業舎他のヤジマ商会配下の企業に対して、エラ王国内におけるすべての活動を許可する。

 これで良いな?」

 いえ。

 だから私は何をすれば良いのでしょうか?

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