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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第三部 第二章 俺が文化使節?

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8.入国?

 初めての外国。

 といっても、別に何が変わるというわけでもないらしかった。

 例えば使用言語はソラージュと共通だ。

 そもそもソラージュ王国はエラ王国から移民した人たちによって発展したわけで、その際言葉を変える必要性がなかったと。

 魔素翻訳があるので、殊更に新しい言語を作る意味もなかったんだろうな。

 当然度量衡その他も一緒だ。

 人種もほぼ同じ。

 北方諸国はエルフが比較的多く、逆に南方系の人種であるドワーフが少ないと聞いていたけど、国境辺りではまだほとんど違いがない。

 その他もろもろもソラージュと同様。

 それが第一印象だった。

 翌朝、朝飯の後すぐ俺たちは国境管理事務所に向かった。

 もちろん夜明け直後に日課のジョギングはやりましたとも。

 警備上の問題から、まずはセルリユ興業舎の警備部隊の一部が先行する。

 狼騎士(ウルフライダー)隊の分隊も含まれるということで、ちょっとモメたらしい。

 エラ王国側も体長3メートル以上ある野生動物が、しかも民間団体の舎員待遇で入国してくるとは思ってなかっただろうしね。

 それでかなり待たされた。

 ようやく俺たちの番になったが、手続きは全部セルミナさんなどがやってくれたらしく、俺たちはノータッチで国境を越えた。

 よく知らないけど、こっちの世界でも大使などの外交特権は存在するようだ。

 地球では親善大使って単なる民間人だったはずなんだけど、こっちの世界ではもうちょっと政府寄りみたいだ。

 俺の「親善大使」職はソラージュ王政府に正式に任命されたからね。

 制限付きだけど、一国の「大使」として扱って貰えている。

 例えば俺の馬車の内部はソラージュ王国の領土として扱われる。

 エラ王国側は、俺の許可なく調べたり入り込んだりは出来ないことになっているのだ。

 ヒューリアさんやカールさん、あるいはセルミナさんとトニさんの馬車も同様だ。

 つまり、この「親善大使」は地球のとは違う役職らしい。

 でも俺の脳はぴったりくる単語を知らないので親善大使と訳しているんだろうな。

 ちなみにセルリユ興業舎は民間団体なので、検疫などを受けたらしかった。

 もっとも予め根回しされていたらしく、簡単に通過していた。

「これからどうするんですか?」

「エラ王国側から説明があるはずです。

 こういった場合の常識としては、何はともあれエラ王国の王宮に直行することになります。

 国王陛下に信任状を渡さない限り、国内での自由な行動は制限されますから」

 セルミナさんが説明してくれたけど、まあそうだろうな。

 日本でも、確か新しい大使は信任状を日本国政府に提出して初めて大使として認められるとか聞いた覚えがある。

 そこら辺は世界が変わっても同じだろう。

 特にエラ王国はソラージュと同じく絶対王制の封建国家だから、王様に挨拶する前に地方領主なんかと正式に会ったりしたら、大変な失礼に当たる。

 王様がその領主より後回しされたことになってしまうのだ。

 まあ非公式になら会ってもかまわないらしいけど、わざわざそんな危ないことをするメリットがどっちにもないからね。

 よし判った。

 ここからエラ王国首都に一直線だな。

「いえ。

 実は、国王陛下は偶然ですがこの近くの避暑地におられます。

 親善大使閣下には、そちらに赴いて頂きます」

 エラ王国の国境管理事務所長と名乗った初老の人が言った。

 さいですか。

 偶然ね。

 まあそういうことにしておきましょう。

 そろそろ初夏だし、不自然ということもないんだけど、この辺りまで北上すると今の季節でもまだ涼しいんだけどな。

 避暑に来る必然性がイマイチないような気もするけど。

 別にいいか。

 その避暑地は馬車で2日くらいだということで、早速向かうことになった。

 俺の護衛として同行してくれたセルリユ興業舎の北方派遣団は、ここで二手に別れる。

 俺の護衛を続ける警備班と派遣騎士団、そして狼騎士(ウルフライダー)隊を含むサーカス班の一部が俺たちに同行する。

 残りはエラ王国の首都に向かうとのことだった。

「現地では、先行部隊が支店を開設しています。

 そこを根拠に商業活動などを行いながら、ヤジマ子爵閣下をお待ちします」

 フォムさんが挨拶に来て言った。

 セルリユ興業舎の代表だから、親善使節団について行く必要はないということらしい。

「ヤジマ大使閣下の護衛および部隊指揮はロッドの奴に任せました。

 見栄えがいいですからね。

 指揮は裏でハマオルがやるでしょうから安心して下さい」

 そういうことだね。

 実際問題として既にエラ王国に入ってしまった以上、もうソラージュの貴族からの攻撃があるとは考えにくいらしい。

 明確な国際問題に発展しかねないからだ。

 俺たちが巻き込まれている「戦争」は、あくまでソラージュ国内の貴族同士の揉め事と規定されている。

 他国を巻き込んだら、問答無用でソラージュ王政府が介入してくることになっている。

 その際、どっちが手を出したかは明白になる。

 攻撃されるのは俺だから。

 よって、まず安全ということだ。

 それでも万一のために、俺の護衛は一部だけど残ってくれているわけだ。

「了解しました。

 それではエリンサで」

 エラ王国の王都はエリンサというのか。

 初めて知ったよ。

 フォムさんはカッコよくギルド警備隊の敬礼をして去って行った。

 マッチョだけど、イケメンでもあるよね。

 あまり浮いた話は聞かないが、それはロッドさんも一緒だ。

 セルリユ興業舎の幹部や中央騎士団の騎士長ともなると、ソラージュ社会の常識ではもはや貴族に近い身分になってしまうからなあ。

 結婚とかにも制限が出てくるし、多分に政治的な思惑が絡む。

 ロッドさんはもともと貴族家の出だから、多分男爵家あたりの令嬢を嫁に貰って順調に出世していくんだろうな。

 本人は嫌がりそうだけど。

 フォムさんは、さらに色々とありそうだ。

 でも結局は恋愛結婚したりして。

「では、我々も参りましょう」

 ぼやっとしているト二さんにつつかれた。

 どうもこの人、俺の扱いが粗いな。

 まあいいけど。

 エラ王国の儀典省とかいう役所の人が案内してくれるというので、その人の馬車を先頭に隊列を組む。

 次に形だけだがソラージュ王国騎士隊が進み、その後を狼騎士(ウルフライダー)隊が俺たちの馬車を囲みながら続く。

 その後はセルリユ興業舎の北方派遣部隊で、多数の馬車がついてくる。

 堂々たる隊列だ。

 いいのか?

 まあ、忘れよう。

 これからのことを相談したいということで、俺の馬車に親善使節団全員に集まって貰った。

 それが出来るくらい広いからな。

 ヒューリアさんとカールさんに加えてトニさんとセルミナさんも乗り込んでくれた。

 ハスィーの従者役であるアレナさんも控えてくれている。

 というわけで、俺の馬車に続いている使節団の馬車は空荷だ。

 その後ろには、荷物を満載した馬車が延々と連なっていた。

「あれは?」

「さあ?

 何か商売でもするのではないでしょうか」

 ヒューリアさんも知らないようだった。

 アレナさんも、もうヤジマ商会に移籍してしまったのでご存じないと。

 カールさんはニヤニヤしていて、何か知っている臭いけど、教えてくれそうにない。

「ハスィーは知ってる?」

「ラナエのことですから、何か仕掛けてきそうですね。

 この件についてはマコトさんも傍観者なのですから、気にしないで良いと思います」

 ハスィーがそう言うのならいいか。

 俺の役目って、色々考えたけど何も思い浮かばないんだよな。

 ルディン陛下からは「自由にやれ」とか言われているけど、何をすればいいのか判らん。

 親善大使なんだから「よろしく」だけでは済みそうにもないが、だからといって何か約束したり話し合ったりする権限はない。

 ヤジマ商会の会長としてなら出来なくもないけど、それは親善大使とは無関係だし。

「あまり難しく考えなくても良いかと。

 聞くところによれば、この親善訪問自体が北方諸国からの要請で行われたそうですし、相手方から何か言ってきてから考えればいいのでは」

 ヒューリアさんが、建設的なような後ろ向きなような提案をしてくれた。

 それでいいのか。

 とりあえず外務と行政のプロがついていてくれるから、アドバイスに従っていればいいだろうな。

 いざとなったら俺の嫁を前面に押し出せば、相手が外国の国王陛下であっても制圧してくれるかもしれん。

 最悪の場合でもフクロオオカミを持ち出せば何とかなるだろう。

 あ、そのために狼騎士(ウルフライダー)隊が付いてきてくれているのか。

「今頃気づいたか?

 これは、セルリユ興業舎サーカス事業部のデモンストレーションを兼ねた興業と聞いておるぞ」

 カールさんが呆れたように言った。

 そうか。

 そうだよな。

 ラナエ嬢の考えそうなことだ。

 親善大使(オレ)の随行員ということでエラ王国に大規模な商談部隊を派遣し、ついでに国王陛下の目の前でフクロオオカミサーカスの実演も行うということだな。

 パネェ。

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