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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第三部 第二章 俺が文化使節?

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4.護衛交代?

 最後に、親しい人たちと一人一人握手したりハグしたりしてランチじゃなくて送別会は終わった。

 考えてみれば、いつソラージュに戻ってこれるか判らないんだしな。

 日本と違ってメールや電話があるわけじゃないし。

 海外に行くというのはそれこそ今生の別れであっても不思議じゃない事なのだ。

「そうでもありませんよ。

 私などは子供の頃から何度も外国に行っていますし」

 ヒューリアさんが言ってくれたけど、それって結構レアケースだよね。

 こっちの人は、自分が生まれた土地から一歩も踏み出さずに終わるのが普通なのだ。

 何せ江戸時代だから。

 でもヒューリアさんやユマさんは帝国に行ったことがあるし、シルさんは世界(違)を旅して回ったんだっけ。

 俺は希有な人たちと知り合ったわけだ。

「別に外国だからといって、何が変わるわけでもないから心配するな」

 シルさんが言ってくれた。

「そうですか」

「多少風習や人種構成が違うのと、後は気温だな。

 私は北方では寒くて困った」

 シルさんは帝国の出だからね。

 緯度が上がれば寒くなるのは当たり前か。

「差はそのくらいですか」

「言葉が通じるのが大きいな。

 意思疎通が普通に出来れば、多少の違いは気にならなくなるものだ」

 そうだね。

 フクロオオカミや犬猫、海豚とすら話している内に気にならなくなってきたからな。

 魔素翻訳って偉大だ。

 ていうか、魔素がない地球が何とかまとまっているのが不思議なくらいだぞ。

 人間が偉大なのか。

 そんなことを考えながらホテルを出ると、ギルド警備隊と騎士団が整列していた。

「親善大使ヤジマ子爵閣下に敬礼!」

 張りのある声が響いて、全隊がざっと礼をとる。

 先頭は、ええと騎士団の何とかいう偉そうな騎士長ではないか。

 どうもあれからユマさんと縁を深めたみたいだな。

 まずい。

 何か言わないと。

「マコトさん、トーラス騎士長です」

 ユマさんが囁いてくれた。

 助かった。

「ありがとうございます。

 トーラス騎士長。

 お役目を果たしてきます」

 慌てていたから適当だけど、どうせ魔素翻訳だから内容は伝わるだろう。

 トーラス騎士長は頷くと護衛隊と共に去って行った。

 さて。

 これで俺は丸裸か。

 異世界物の小説(ラノベ)だと、すぐに暗殺者(アサシン)が襲ってくる場面だな。

 と思う間もなく、護衛隊が去って行った門から続々と入ってくる人たちがいた。

 馬車もある。

 凄い数だ。

 そして、のっそりとフクロオオカミたちが!

 ホテルの従業員や宿泊客らしい人たちから悲鳴が上がる。

 俺はぼんやりとラナエ嬢とユマさんを見た。

 ここまでやる?

「セルリユ興業舎サーカス班の班員たちですわ。

 狼騎士(ウルフライダー)隊の隊員を兼ねます」

 さいですか。

「サーカス班がどうして」

「地方巡業のテストです。

 セルリユ興業舎は将来的に地方都市や他国にも進出しますので、その調査を兼ねた派遣ですわね」

 よく言うよ。

 とてもテストとは思えない数だ。

 しかも野生動物はフクロオオカミだけではなかった。

 あのでかい銀色の鳥や、ユニコーンたちの姿も見える。

 ノアの箱船かよ!

 ひときわ巨大なフクロオオカミが俺の前に止まり、騎士(ライダー)が飛び降りた。

 騎士(ライダー)がヘルメットを脱ぐと、短いくすんだ金髪が現れた。

 シイルとツォルか。

「マコトの兄貴!

 お待ちっス!」

「マコ……ヤジマ子爵閣下。

 セルリユ興業舎、狼騎士(ウルフライダー)隊、参上しました!」

 あいかわらずだなあ。

 ツォルはお気楽に、シイルは緊張して。

 いいコンビかもしれない。

「シイルとツォルが来てくれるのか」

「はい!

 護衛を担当させて頂きます」

 確かに、フクロオオカミの群れに突っ込んでくる暗殺者がいるとは思えないね。

「実は、サーカスと兼任なんですけど」

 シイルが遠慮がちに言う。

 そうなの?

「セルリユ興業舎のサーカス分団が同行します。

 我々はフクロオオカミチームとして参加するわけです」

 いつの間にか隣に立っていた黒目黒髪の美少女が割り込んできた。

 ええと、スイノさんだっけ。

 狼騎士(ウルフライダー)隊の分隊長さん?

「サーカス団の巡業と、北方諸国での反応調査を行います。

 啓蒙活動を兼ねます。

 後は、北方地方の野生動物との接触ですね。

 それについては別働隊が動いているはずですので、狼騎士(ウルフライダー)隊はむしろデモンストレーション担当というところです」

 銀髪が眩しい(シルバー)エルフのアロネさんが補足してくれた。

 この人は副隊長さんだっけ。

「もちろん、マ……ヤジマ子爵閣下の護衛が第一優先です。

 実際には示威行動ですが」

 シイル、マコトでいいんだよ。

「それは心強い。

 よろしく」

「はい!」

 三人の美少女が揃って敬礼してくれた。

 最近流行のミリタリー美少女もの?

 でも、小柄な美少女たちが揃って騎士(ライダー)服に身を包んでいる様って、マジで何かのアニメみたいなんだよ。

 猫耳とかないのが不思議なくらいだ。

 ツォルを初めとする巨大なフクロオオカミたちも一斉に話しかけてきて、吠え声が五月蠅いの何のって。

「気をつけ!」

 突然、鋭い声が響いた。

 フクロオオカミたちどころか、シイルたちまでピンと背筋を伸ばす。

 喧噪が一瞬にして収まり、続いて同様の命令が響いた。

「休め!」

 フクロオオカミたちが腰を落とした。

 人間は休めの姿勢になる。

 見ると、騎士服のイケメンが向かってくる所だった。

「ロッドさん!」

「失礼しました。

 ヤジマ子爵閣下」

 ロッドさんは、あの偉そうな騎士長の人に劣らないくらい堂々とした態度でみんなを見渡して命令した。

狼騎士(ウルフライダー)隊は別命あるまで待機!」

「「「了解しました!」」」

 凄い。

 シイルたちが敬礼して、フクロオオカミと共に去って行く。

 ロッドさん、いつの間にそこまで。

「私は王都中央騎士団所属のまま、今回のセルリユ興業舎北方派遣団の狼騎士(ウルフライダー)隊を含む護衛隊の指揮を任されておりますので」

 なるほど。

 すると、ロッドさんも随行してくれるわけですか?

「はい。

 王政府および司法省としても、北方諸国における野生動物関係の情報は欲しいわけです。

 その調査ができる人材といえば私である、とユマ司法管理官閣下が」

 そういうことですか。

 ここにもユマさんの魔の手が伸びているわけね。

 まあ、ユマさんとしては自分の「手の者」と言っていいロッドさんを俺に同行させることにメリットがあるわけだし。

「セルリユ興業舎でのテストはいいんですか?」

 俺が聞くと、ロッドさんは他の人に気づかれないように一瞬ニヤッと笑った。

「部下に押しつけてきました。

 大丈夫でしょう、多分。

 それより北方諸国の野生動物ですよ!

 どんな連中がいるのかなあ」

 完全に趣味に走っているな。

 まあいい。

「それはいいが、ちゃんと同行の連中をまとめろよ。

 今回はフクロオオカミだけじゃないんだからな」

 フォムさんが割り込んできた。

 ああ、そうか。

 フォムさんはこの重列(コンボイ)の団長だからね。

 ちょっと聞いてみる。

「セルリユ興業舎に派遣されていた他の野生動物も来ているようですが?」

「種族会議で根回ししたところ、同行させろという要求が来ました。

 北方諸国にいる連中の仲間に接触するときに役に立つはずだということで」

 そうなのか。

 でも、あの物見遊山というか美味い飯目当ての野生動物たちでしょ?

「連中はセルリユ興業舎やヤジマ学園での楽な暮らしから引き剥がされて文句たらたらですよ。

 ちゃんと躾けろよ?

 野生動物担当」

 フォムさんがニヤニヤ笑いながらロッドさんを見る。

 ロッドさんは嫌な顔になった。

 前途多難?

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