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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第三部 第一章 俺が親善大使?

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14.マザコン?

おかげさまで連載1周年を迎えることができました。

感想やブックマークを頂いた皆様、本当にありがとうございます。

書き続けるための燃料ですので、今後もよろしくお願い致します。

 逃げられるはずもなかった。

 もちろん判っていたさ。

 人生は、そんなに甘くない。

 俺たちの馬車は周りの荷馬車に混じって倉庫に行き、荷物を降ろした。

 そのままハマオルさんに連れられて事務棟を抜け、ヤジマ商会の使用人の所にお届けされる。

 「ヤジマ軽食堂(レストラン)」の無料(ただ)券は貰えなかった。

 くそっ。

 ちょっと期待してたのに。

 とりあえずシャワーを浴びた後に髪の毛を弄られる。

 男はその程度でいいそうだ。

 ハスィーは凄い目に遭っているらしいけど、それは花嫁の宿命だからしょうがない。

 汗が引いたところでタキシード的な服に着替える。

 靴まで揃った奴だ。

 着心地がいい上に、俺にぴったりなので特注だろう。

 まあ、こっちの服は基本的にオーダーメイドなんだけどね。

 それでも生地や縫製がいつもと違うのが判った。

 金かかっていそうだなあ。

 しょうがないか。

 結婚式だし。

 もっとも子爵位の認証式でもここまではやらなかった気がするけどね。

 楽屋みたいな場所に案内されて、そこで待つように言われる。

 華やかな結婚式の裏側なんか、こんなもんだよな。

「マコトさん。

 調子はいかがですか?」

 ユマさんがひょっこり現れた。

 おお、薄青い清楚なドレスを着ていらっしゃる。

 瞳の色と合っていて実に魅力的だ。

 ユマさんって、そういう姿が似合うね。

 やっぱ美人だなあ。

「マコトさんも素敵ですよ。

 よくお似合いです。

 ちなみに、この礼服(タキシード)は私たちからの贈り物ですので」

「そうなのですか。

 ありがとうございます」

「何の。

 (あるじ)にお粗末な服を着せるわけには参りませんから」

 また変なことを言っているな。

 「(あるじ)」って何なの?

 ハマオルさんも俺の事をそう呼ぶんだけど、あの人の場合は護衛対象で雇い主だからまだ判る。

 でもユマさんは俺と関係がないのでは。

 いやむしろ俺の「親」だし。

「いずれお判りになられますよ」

 ユマさんはうふふ、と意味ありげに笑って去った。

 不気味だ。

 いや、ユマさんは綺麗で怪しい所はないんだけど。

 でも「略術の戦将」だからなあ。

「マコトさん!

 良かった。

 そろそろですので、ご用意お願いします!」

 ジェイルくんが顔を出して、俺を確認してすぐに消えた。

 忙しそうだな。

 ヤジマ商会の大番頭で近衛騎士なんだから、そんなに自分で動かなくてもいいのに。

 昔、俺の馬車の御者とか雑用なんかをやってくれていた何とかいう若い連中も駆け回っている。

 従者も総動員か。

「おお、マコト殿。

 ここにいたか」

 ララネル公爵殿下が現れた。

 そういえば、俺の「親」役で付き添ってくれるんだったっけ。

 子爵に叙爵してくれたのはルディン陛下だけど、まさか王陛下に付き添いを頼めるはずがないからね。

 いや、ルディン陛下はやる気だったらしいけど、さすがに側近などが総掛かりで止めたそうだ。

 やり過ぎだということは、俺にすら判る。

 それに非公式だけど俺は「迷い人」なので、王陛下が公的に構い過ぎると「迷い人に干渉するべからず」という国是に違反することになってしまうらしい。

 実は世襲貴族に叙爵したこと自体もグレーゾーンなので、もうこれ以上は騒ぎを起こすなと叱られたそうだ。

 王陛下を叱れる人っていたんだ(笑)。

 フルーさんが教えてくれたけど、俺の子爵昇爵の時に貴族院で極秘に会合が開かれて、その件について討議されたという。

 結果から言えば、まあいいでしょうということになったと聞いた。

 何の理由も無く昇爵させたのなら問題だけど、俺はすでに普通の平民でも貴族にしなければ不自然なほどの実績があるからということで。

 「迷い人」とは関係なく、妥当であるという結論だったらしい。

 実績って、別に俺は何もしてないんだけど。

 決裁書類にサインして人と話しているだけで。

「マコト殿。

 世間とはそういうものじゃ」

 よく判らない理屈で丸め込まれたんだよね。

 まあいいさ。

 どうせ俺にはどうにもならないのだ。

 マリオネットに徹するしかない。

 というわけで、俺の結婚式における「親」役は王陛下ではなくなったんだけど、では誰にするのかというと、理屈で言えばユマさんなんだよね。

 俺を近衛騎士に叙任したのはユマ・ララネル公爵名代だから。

 でもさすがに未婚の公爵令嬢が子爵の「親」というのは無理があるということで、ユマさんの父親であるララネル公爵殿下が担ぎ出されたという。

 これなら八方何とか収まるということで、みんなほっとしていた。

「ララネル公爵殿下。

 お早うございます」

「そんなに早くはないがな。

 これから長いから、機会が有り次第トイレに行っておくことだ」

 公爵なのに下世話ですね。

「いや、私の結婚式の時は大変でな。

 招待客は二百人程度だったのだが、それでも死ぬかと思った。

 空腹は我慢できるが、あっちは駄目だ」

 そんなに。

「マコト殿の場合は私の時の比じゃないだろう。

 なるべく水分は取らん方が良い。

 もっとも脱水症で倒れられても困るから、ほどほどにな」

 俺にどうしろと?

「マコトさん、大丈夫です。

 僕たちがフォローしますから」

 ララネル公爵家のレオネさんが言ってくれた。

 良かった覚えていた。

 エマさんもいる。

 それに、背の高い美人。

「妻のエメリタだ」

「エメリタでございます。

 ユマがお世話になっております」

「あ、ヤジママコトです。

 よろしければマコトと呼んで下さい。

 こちらこそ、ユマさんにはお世話になりっぱなしで。

 お嬢様は私の恩人です」

 慌てて頭を下げる。

 ユマさんの母上か。

 ララネル家の領地を統治していると聞いていたけど、わざわざ王都に来られたのか。

 確かに美人だな。

 ララネル公爵殿下が自慢するのも頷ける。

「よい機会ですので。

 ユマが選んだ殿方を見ておきたかったこともありますし」

 それはそれは。

 赤面の至りです。

 で、その「選んだ」って近衛騎士のことですよね?

「近衛騎士にあるまじき不作法で申し訳ありません」

「とんでもございません。

 さすがは我が娘、と感服しているところでございます。

 それにしても、実に惜しい。

 お相手が『傾国姫』でさえなければ……。

 ねえ、あなた?」

「うむ。

 だが、マコト殿はユマの『近衛騎士』だからな。

 これから機会はいくらでもあろうというものだ」

「そういえばそうですわね。

 でかした、我が娘」

 意味不明ながら物騒な話が飛び交っているようだ。

 聞きたくない。

 そのとき声が響いた。

「道をお開け下さい!

 陛下……ではなくてトレナ伯爵閣下がお通りです!」

 伯爵が来るというだけで、公爵一家が慌てて移動する。

 ああ判ってますけど、面倒くさいことは後にして欲しかったです。

「おう、マコト。

 来てやったぞ」

 それですか。

 ラミット勲章を投げて寄越しただけのことはありますね。

「ありがとうございます。

 トレナ伯爵」

 呼び捨てにしてやる。

「披露宴とやらが面白そうでな。

 つい話してしまったところ、みんなどうしても来たいと」

 さいですか。

 俺は陛下の後ろに並んでいる人たちに向かって背筋を伸ばしてから、きっちりと頭を下げた。

「ヤジマ子爵であります。

 よろしければ、マコトとお呼び下さい」

「マコト殿。

 初めてお目にかかります。

 レネです」

「私はリシカです。

 ご機嫌よろしゅう」

 美少女アニメのヒロインみたいな声だ。

 頭を上げると、王女様たちがいた。

 いや、伯爵令嬢たちか。

 ミラス殿下によく似た美少女たちだ。

 ラノベだな。

 そして、その後ろで艶然と微笑む妙齢の物凄い美女。

「マコト殿、と呼ばせて頂きます。

 いつも夫がご迷惑をかけていると思いますが、お許し下さい。

 私はクレパトです」

 小柄、華奢で優美な姿態。

 浅黒い肌に漆黒の髪。

 燦めく瞳は緑だ。

 王妃様は、ドワーフだった。

 ミラス殿下、それでか!

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