表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第八章 俺が経営コンサルタント?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

357/1008

21.戦闘?

「ユマ様の危惧が当たりましたな」

 ハマオルさんの言葉に、ジェイルくんが返した。

「ある程度は想定済みだ。

 仕掛けに嵌まってくれたと考えるべきだろう」

 やっぱ何かやってるよこの人たち!

 ヤジマ商会の屋敷自体を罠にしたんじゃないのか?

 間違いない。

 だって、そもそもいくらテロでもヤジマ商会が本拠の屋敷に攻め込まれるとは考えにくいもんな。

 何せ警備会社を配下に持っているのだ。

 しかも騎士団と協力関係にある。

 これ、地球で言えば軍事基地に攻め込むみたいなもんじゃないか?

 それを抜きにしても、ユマ閣下もハマオルさんも、そんなに甘い人ではないんだよ。

 だから、間違いなくわざとだ。

 ヤジマ商会の屋敷にまで侵入させて、言い訳が出来ない証拠を作るつもりだろうな。

 でもそれって諸刃の刃だぞ?

 ひとつ間違ったら、本気で命の危険がある。

 だってこっちの本拠地に攻め込んでくるからには、相手もそれなりの戦力を揃えているだろうから。

 まあ、ラノベみたいにチート能力とか魔法とかがないだけマシだな。

 地球みたいな高性能爆薬や狙撃用ライフルもないし、毒ガスもないだろう。

 屋敷の中では飛び道具が使えないから、剣での争いになる。

 ハマオルさんがその状況で負けるはずがないしね。

 遠くで何かが激しく倒れるような音がした。

 誰かが戦っていることは間違いない。

 でも、現時点では小物同士の小競り合いという気がする。

 ハマオルさんがここにいるからね。

 ヤジマ学園が襲われたのが陽動だとしたら、今階下で起こっている戦いも陽動かもしれない。

 ていうか、多分そうだ。

 突然ドアが開いて、人が踏み込んできた。

 ビビったけど、すぐに力が抜ける。

 ナレムさんだった。

 帝国騎士(ライヒスリッター)らしく、上下とも黒のぴったりした服を着ている。

 腰には短剣。

 ラノベだ。

 騎士は騎士でも暗黒騎士か、あるいは暗殺者(アサシン)みたいだった。

 カールさんの執事だから結構なお歳かと思っていたけど、この姿になると全然年齢を感じさせない。

 鋼みたいな筋肉が動く音が聞こえてきそうだ。

 続いてドアからひょいと顔を出したのはカールさんだった。

 まあ、カールさんいるところにナレムさん有りだからな。

「マコト殿。

 無事か?」

 怖い挨拶しないで下さい!

 この厨二的な状況にビビッてるんですから!

「状況はいかがでしょうか」

 ハマオルさんが丁寧に聞くと、ナレムさんはカールさんに黙礼してから言った。

「屋根から侵入してくる者がおります。

 そちらは引き受けましょう」

「よろしくお願いします」

 ハマオルさんがほっとしたような声を出した。

「下はどうでしょうか」

「少し妙な感触です。

 本命には違いなかろうが、どうもちぐはぐで」

 何を言っているのか判らないけど、危ないことだけは判った。

「ふむ」

 ハマオルさんが呟いた。

(あるじ)殿。

 お手数ですが、ご移動願います」

「あ、はい」

 もうこうなったら何でもやりますよ。

 一緒に廊下に出る。

 カールさんとナレムさんの他に数人が待機していた。

 全員、簡単な鎧のようなものをつけている。

 手には剣。

 マジ、ラノベじゃないか!

 ハマオルさんとジェイルくんが俺の書斎から出てきてドアを閉める。

 その途端、部屋の中から凄い音が響いた。

 窓か!

 ガラスをぶち破って飛び込んで来た奴らがいたらしい。

 危ねえ!

 ナレムさんが、俺の書斎のドアの前に仁王立ちした。

 部屋の中からは物音ひとつしない。

 不気味だ。

 どうなっているんだろう。

 あまり荒らさないで欲しいな。

 俺の書斎は気に入っているのだ。

 廊下の端の方で、ズダダダン! というような音がした。

 階段だ。

 誰かが駆け上がってくる。

「ヤジママコト!

 どこだ!」

 名指しで呼ばれてしまった。

 階段から現れたのは、覆面をした人たちだった。

 戦隊ものかよ!

 それも悪の組織の下っ端風だ。

 現実とは思えない風景に、俺は思わず笑ってしまった。

 ホントにああいう格好する人がいるんだ。

 いや、テロリストなら当然かもしれないけど、そういうのが現実にいて、しかも俺を狙ってくるというのは何か恥ずかしい。

 俺、ラノベの主人公じゃないのに!

 角を曲がって別の人たちが駆け込んできた。

 侵入者たちに対して壁を作る。

 ヤジマ警備の制服を着ている。

 助かったぜ。

 いやいやいや!

 俺の書斎はどうなっている?

 振り向くと、あいかわらずナレムさんがドアに向かって仁王立ちしていた。

 凄い気迫だ。

 それだけで、室内の敵を食い止めているらしい。

「下がりなさい。

 ここまでで十分でしょう」

 綺麗な声が響いた。

 ユマ閣下?

 いつの間にか俺の後ろにいたユマ司法管理官閣下は、俺ににっこりと笑いかけてから歩を進めた。

 お付きの人がいない!

 それどころか補佐官のノールさんの姿も見えない。

 どうなっているんだ?

「ユマ……。

 なぜここにいる?」

 覆面男の一人が呻くように言った。

「ヤジマ学園に釘付けじゃなかったのか?」

「あれは陽動でしょう。

 本命がこちらなのは判っていましたから」

 ユマ閣下が進んでいく。

 ヤジマ警備の人たちが左右に分かれると、不思議なことに覆面男たちもじりじりと下がっていくのが見えた。

 さすが司法管理官。

 ソラージュの司法の担い手だもんな。

 攻撃でもしたら、ソラージュ王政府自体を敵に回すことになる。

 例えば警察とかの政府機関って、身内を傷つけられると過剰に反応するからね。

 犯人を徹底的に叩き潰すまでは止まらない。

 仲間意識というよりは、権威が傷つけられたことに対する報復なんだよな。

 司法組織は世界が違っても同じだから、ユマ閣下は見えない鎧を纏っているようなものだ。

 これで詰みか。

「引きなさい」

 ユマ閣下が落ち着いた声で言った途端だった。

 覆面男の一人が何か訳のわからないことを叫びながら突進してきた。

 いきなりで、ヤジマ警備の人たちが反応できないうちに、そいつは警備員の壁を突破する。

「ヤジママコトォォォ!」

 剣を振りかざして迫ってくる男。

 なんか聞き覚えがあるような声だと思った途端に、それどころじゃないことに気がついた。

 俺の前にユマ閣下がいるじゃないか!

 ヤバい!

 ユマ閣下がそいつに撥ね飛ばされるように倒れた瞬間、俺は頭に血が上った。

 叫んだ気がする。

「ユマァァァ!」

 実は、このときのことはよく覚えてないんだよね。

 貧血みたいに目の前が一瞬真っ暗になったと思ったら、俺はユマ閣下を片手に抱いて突っ立っていた。

 全身が激しく痛んでいて、つまり急激に動いたことによる反動が来たらしい。

 棒立ちの状態で、足下には覆面男が倒れていた。

 剣は床に落ちている。

 俺、何したんだ?

 まあ、大体判っている。

 久しぶりに「俺」が出てきたんだろうな。

 警備隊の隊長さんと決闘した時のあいつだ。

 はた迷惑な。

 好き勝手やりやがって、責任取るのは俺だぞ!

(あるじ)殿!」

「マコトさん!

 大丈夫ですか」

 ハマオルさんとジェイルくんが駆け寄ってきて、俺を支えてくれた。

 助かる。

 突然、ユマ閣下が俺に抱きついてきた。

 危ねえ!

 ハマオルさんが支えてくれなかったら、押し倒される所だぞ。

「ユマ、大丈夫か?」

「……はい!」

 いけない。

 ユマ閣下を呼び捨てにしてしまった。

 俺も頭に血が上っているのか。

 叫び声がして、階段から素早く撤収していく覆面男たちと、それを追撃するヤジマ警備の人たちが見えた。

 覆面男の何人かは取り押さえられたようだ。

 俺の足下に倒れていた奴も、手早く拘束されていた。

 覆面が外れている。

 この人、どっかで見たことがあると思ったら、王太子府で会ったミラス殿下の近習じゃないか!

 俺は男の名前は覚えられないんだけど、顔は割合覚えているのだ。

 そのせいで、逆に面倒になるんだけどね。

 でも王太子の近習だったら貴族の嫡子だったんじゃないの?

 何で俺を襲ってくるんだろう。

 ユマ閣下が振り向いて言った。

「レベリオ。

 何をしたか、判っていますか?」

 そう、そんな名前だったような。

 そのレベリオさんは、怯えたように俺を見た後、顔を伏せた。

 何なんだよ。

 俺、そんなに酷いことしたの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ