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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第八章 俺が経営コンサルタント?

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18.前途洋々?

 話せば話すほど突っ込んでくるモレルさんに辟易して、残りは夕食会で話すからと言ったら、今夜にでも伺いますと言われてしまった。

 なんでそこまで食いつくんだろう。

 まあいいか。

 疲れたので視察はそこで打ち切りにして、俺たちは引き上げた。

 一応主要な部分は見られたし、視察はこれでいいだろう。

 義理は果たした。

 後は経営学部の審査会とかをジェイルくんに押しつければいいだけだ。

「駄目ですよ。

 マコトさんがご自分で検討して頂かないと」

 スパッと断られてしまった。

 でもジェイルくんも審査会には出てくれるそうなので、妥協するか。

 適当に判断しよう。

「普通の人なら怒るところですが、マコトさんの場合はそうやって気軽に決めたことが正解ですからね。

 悩ましい所です」

「そうなの?」

「はい。

 マコトさんは今まで一度も、いいですか一度も失敗していません。

 恐ろしいことですよこれは」

 知らん。

 実は失敗しているんだけど、ジェイルくんたちが何とかしてしまっているだけじゃないの?

「それが、まったく思い当たらないんです。

 私などが何もしなくても、上手くいってしまうでしょう。

 時々虚しくなります。

 私は本当にマコトさんのお役に立てているのかと」

「いや、それはないって!

 ジェイルくんが消えたら、俺なんかその日のうちにお手上げだから!

 絶対消えないでね!」

「はあ。

 判りました」

 覇気が失せているけど、大丈夫かなあ。

 どうも、ヤジマ商会を赤字にしようと頑張っていた頃に比べて疲れているようなので心配なんだよね。

 でも休めとか言うと「私はもうお役御免ですか」とか言い出すのでうかつに注意もできないんだよ。

 ジェイルくんって、実はハスィーと同じくらい扱いが難しいのでは。

 その夜の夕食会には宣言通りモレルさんが来たので、俺は改めてみんなに「学園祭」について説明した。

 なるべく淡々と話したつもりなんだけど、みんなは異様に食いついてきた。

「お祭りですか!

 いいですね!」

 テンション高いねミラス殿下。

 でも女装しているからな。

 美少女がはしゃいでいるようにしか見えないけど。

「園内に屋台とか出すんですよね?

 フレアさん、一緒に回りましょう!」

「あ、はい。

 喜んで」

 社交辞令くさいけど、とりあえずデートの約束ゲットだぜ!

 美少女同士の可愛い約束だ(外見上)。

 でも今から準備するとしたら、早くても半年後くらいだろう。

「そうですわね。

 やはりヤジマ学園の創立一周年記念ということでやるのが良いかと」

「だったら準備期間が十分ありますね。

 学生さんたちにも公示しましょう」

「参加者は学生だけですか?」

 ヒューリアさんが聞いてくるので、俺は日本の状況を伝えた。

「出し物や屋台を開けるのは学生だけですね。

 教職員も希望すれば出店したり企画実演したりできます。

 研究室単位で発表したり講演したりすることもありますし、何かの試合や公演も可能です。

 開催時には広く門戸を開いて一般の方たちにも園内を開放するので、見学するだけなら学園の関係者でなくても大丈夫ですよ。

 まあ、人気がありすぎて入園を制限する所もありますけれどね」

 ラノベで読んだけど、某女子校はOBや生徒の家族、それも限られた枚数しか入場券を出さなかったっけ。

 でもあれは超お嬢様学校だったはずだし。

「セキュリティ面から言えば、完全解放は難しいでしょうね。

 その辺りはおいおい検討しましょう」

 ユマ閣下が思案しつつ言う。

 そうか、そういう問題もあるか。

「マコトさんご本人を狙わなくても、ヤジマ学園で騒ぎが起こればマイナス点になりますから。

 ここは、学園祭の前にまとめて叩き潰しておく方が良いかも」

 物騒な話は止めて下さい。

 飯の最中なので。

「申し訳ありません。

 それではジェイルさん、後ほど」

「了解しました」

 聞かなかったことにしよう。

 学園祭の話が終わると、今日の視察について聞かれた。

「いかがでしたか?」

「なかなか順調のようでした。

 でも、専門課程はまだあまり立ち上がっていないようですね」

「教授を引き受けて頂いた方々もお忙しいようですし、そもそもまだ学生が揃っておりませんので」

「基礎コースを修了した方は、かなりおられるのでは」

「それが、すぐに学園外で実務にかかろうとする方が多いのと、専門コースが始まってから慎重に選ぼうという方がほとんどですね。

 無理もありません。

 第一期や第二期の生徒募集に応じて入学された方たちは、新しいことをやりたい上に入学試験を突破できる優秀な人材ばかりですから。

 『ヤジマ経営相談(コンサルティング)』に採用された方のように、まずは現場に飛び込んでみたいと考えている人が多いのです」

 モレルさんが説明した。

 マジで、この人学園長代理になり切っているな。

 王太子の近習辞めてこっちに来てくれないものだろうか。

「駄目ですよ。

 モレルは僕の片腕なんですから」

 ミラス殿下が慌てているぞ。

 冗談ですってば。

「私は殿下の臣ですので」

 判りましたから、警戒しないで下さい。

「そういえば、そろそろ第四期の募集ではありませんの?」

 ヒューリアさんが聞いた。

「現在準備中です」

 驚いたことに、答えたのはフレアちゃんだった。

 この娘もヤジマ学園のスタッフになり切っているな。

 最初は補助教師を考えていたんだけど、意外といっては何だが統率力に優れ、人に好かれるタイプだったんだよね。

 自然に人の上に立てるし、嫌われない。

 王妃にぴったりではないか。

 そういえば、シルさんの部下の人たちにも慕われていたっけ。

 単なる世間知らずの皇女殿下かと思っていたら、掘り出し物だったと。

 今は、名誉学園長の下で総務的な仕事を担当してくれているらしい。

 仕事については有能、という話は聞かないけど、とにかく人気者なのでトラブルが発生しないし、何かあったら周りの人が片付けてしまうのだ。

 この人もヤジマ学園に欲しい人材だな。

 ミラス殿下は満面の笑みを浮かべていた。

 名誉学園長権限で、フレアちゃんを自分の補佐役に任命したのだ。

 周囲から固めていくその策士ぶりは凄いけど、やり過ぎないようにして下さいね。

 俺がシルさんに怒られかねないので。

「あまりにも希望者が多いので、第四期からは募集人員を拡大する方針で、基礎コースの担当講師を増員中です。

 こちらも、実は希望者が多くて人選が難航しているのですが」

 フレアちゃんが悩まなくていいのに。

 案の定、ミラス殿下が食いついてきた。

「王太子府から何人かサポートを回しますから、フレアさんは無理をしないでいいですよ」

「でも、これは私の仕事ですので。

 自分の責任は果たしたいのです」

 フレアちゃん。

 君は小悪魔だったんだね。

 ミラス殿下、もうメロメロだよ?

「ヤジマ商会で考えてみましょう」

 気配りの男ジェイルくんが、とりあえず終わらせた。

 何だか、最近ジェイルくんが夕食会でも存在感を増しつつあるなあ。

 出来る男は違うね。

 夕食会の後、ユマ閣下とジェイルくんが別室で話し込んでいたけど、気にしない。

 俺は言われた通りにしていればいいのだ。

 案山子だからな。

 俺はともかく、ハスィーやその他の人たちの安全がかかっているとしたら、俺が勝手に動くのはまずい。

 司法管理官と大番頭にお任せだ。

 そう思っていたんだけど、特に問題が起こることもなく時間が過ぎた。

 ヤジマ学園教養学部の第四期募集が始まり、入学試験にはもの凄い数の志願者が押しかけたそうだ。

 基礎コースを修了した人が社交界にデビューしたり家業を継いだりして、その評判が広まったらしいのだ。

 中にはヤジマ商会に関係なく起業したりギルドに入ったりした人もいて、ヤジマ学園の卒業生は出来る、という認識が確定しつつある。

 まあ、もともと出来る人を入学させたんだからなあ。

 日本だって、名門校はそうだろう。

 でも世間の見方としては「ヤジマ学園教養学部を修了すれば前途洋々」ということになっているらしい。

 いいのか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 推敲 >俺は言われた通りにしていればいいのだ。  案山子だからな。 ↓ 案山子(こけおどしの意から転じて「みかけばかりもっともらしくて役に立たない人」)自己認識としては卑下あるいは僻み …
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