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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第八章 俺が経営コンサルタント?

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15.学内警備?

 経営学部講師とやらは、一斉に頭を下げるとそのまま出て行ってしまった。

 ホントに挨拶だけだったらしい。

 その方が面倒くさくないから、俺の方も歓迎だけど。

 それにしても気になる。

 講師って、何するの?

「マコトさんの指示で、経営学部は特殊な運営形態になっております」

 モレルさんが説明を始めた。

 いや、俺の指示って?

「『教育ベンチャー』で、教育機関に在籍しながら事業を立ち上げるということでしたので、それ専門の機関となりました。

 よって、講師は学生の指導の他に、個人事業主としても活動します」

 俺、そんなこと言ってないよ!

 また誤解されたか。

 でもまあ、確かにこっちの世界で経済とか経営を教えるって無理があるよね。

 テキストがあるわけじゃないし。

 よく知らないけど地球にあるみたいな「学問としての経営/経済」は存在していないみたいだしなあ。

 てことは、もう実地でやるしかないわけか。

 いや、そもそも経営学部というのは野生動物との共同事業を立ち上げる目的で作ったんだったっけ。

 忘れていたよ。

 自分に関係ないと思うと、記憶(メモリ)に残らないからなあ。

 いやちょっと待て。

 だったら俺が面接した人たちって、何だったの?

 結構歳がいった人が多かったと思うけど。

「ヤジマ学園経営学部の講師や学生たちが立ち上げる事業の、後援者になっていただく方々ですね。

 ヤジマ商会の投資だけでは方向性が固定化されてしまうということで、ジェイル殿やカル・シミト様の提言で採用しました」

 つまり、あの人たちって教授候補じゃなくて、パトロン候補だったわけか。

 俺もいい加減だな。

 まあ、当たり障りのない話をしただけだからね。

 気づかなかったとしてもしょうがない。

 向こうの愛想が良かったのも頷ける。

 つまり、連中はヤジマ商会の投資家のつもりだったわけか。

 いや違うか。

 ヤジマ商会が保証する事業への投資だ。

 それは喜ぶだろうな。

 まあ、いいか。

 もうどうしようもないし。

 その辺はジェイルくんに丸投げしよう。

 赤字が出たら、それはそれでいいみたいだし。

「すると、あの講師の方たちが新しい事業を立ち上げるわけですか?」

 ハスィーが聞いてくれた。

「それと同時に、学生たちが提案する事業の事前審査を任せることになります。

 あまりにも実現性が薄かったり、大赤字必至だったりする場合は、再提出や再調査を命じるわけです。

 原則として複数の講師が審査するので、恣意的な判断を排除できます」

 つまり足切りか。

 モレルさんも詳しいな。

 真面目な人だから猛勉強したのかもしれない。

 考えてみれば王太子がギルドの総括をやっているわけで、近習としては経済や経営に詳しくならないわけにはいかなかったと。

 いやー、いい人選してくれたよミラス殿下。

 まさに経営学部のためにいるような学園長代理ではないか。

「マコト殿。

 私は『名誉学園長代理』ですので。

 ヤジマ学園を背負って立つような器量はないかと」

 モレルさんが巨大な身体を縮めるようにしていた。

 この人も自分を判っていないのかも。

 なんだかそういう人って多いよね。

 でもまあ、経営学部はこれで大丈夫そうだな。

「ということで、マコト殿。

 定期的に審査会を行いますので、よろしくお願いします」

「審査会ですか」

 何なの?

 いや判っている。

 考えないようにしていたんだけどなあ。

「経営学部講師がチェックして、検討の余地ありと判断した事業計画案の審査です。

 ヤジマ商会が投資するに足るかどうかを、会長を首班とする審査委員会で検討して頂きます」

 やっぱり。

 面倒くせえ!

 そんなのジェイルくんに丸投げだ!

「そこら辺は、大番頭に任せてありますから」

 俺が切って捨てるとモレルさんはたじたじとなった。

 責任感が強すぎて、そういう発想が出来ないのかもしれないな。

 もっとイージーに行きましょうよ。

 無理か。

「まあそれは、おいおい考えることにして……他に何かありますか?」

「はい。

 セルリユ興業舎との共同運営について、懸案事項が出ています」

 モレルさんは、巨大な手で器用に書類をめくりながら言った。

 グレンさんとは別の意味で凄い人だ。

 もう、この人が学園長でいいんじゃない?

「目的は主に野生動物が人間に馴染んで頂くことですが、それ以外にも学生たちとの共同作業を行う機会を設けています。

 これは野生動物側の適応訓練にもなるということで」

「そういえば、犬や猫はもう人間と普通に交流しているというお話を聞きましたが」

 ハスィーの問いに、モレルさんは頷いた。

「もともと人間と一緒に生活する機会が多い種族ですから。

 既に会舎が立ち上がっておりますし、学生と一緒に遊んだり、一緒に暮らし始めている者もいるようです。

 実は、そのことで問題が発生し始めておりまして」

 また嫌な、というよりは面倒くさい話になりそうだなあ。

 ジェイルくんを連れてくれば良かったかな。

「どのようなことでしょうか」

 ハスィー、出来ればスルーして欲しかった。

 夕食会で持ち出せば、自動的にジェイルくんが担当してくれるのに。

「風紀紊乱といいますか、喧嘩騒ぎが増えているのです。

 金銭の貸し借りでのトラブルや、言った言わないの争いは日常茶飯事です。

 幸いまだ学内に限られておりますが、エスカレートしたら学外に飛び火しかねないと懸念しております。

 あー。

 そういや犬と猫がよく喧嘩しているという話を聞いたっけ。

 うーん。

 じゃれ合いかと思っていたけど、それに学生が絡むと面倒くさくなりそうだなあ。

 よし。

 ここは警備担当者に丸投げしよう。

「ハマオルさん」

「は。

 了解しました。

 (あるじ)殿」

 打てば響くよね。

「どのような対策を」

 モレルさんの問いかけに、ハマオルさんがちらっと俺を見た。

 頷くと、落ち着いた口調で話し始める。

「ヤジマ警備から人を出して、学園内の警備を行います。

 仲裁する権限を頂きたい」

「それは……」

「理事会で早急に決済します。

 予算等についても、こちらで計上しますので」

 俺が割り込むと、モレルさんは黙った。

 こういうのは、ハマオルさんに任せておけばいいのだ。

 ていうか、ハマオルさんってこんなことも出来たのか。

 そういえば帝国の中央警備隊って、皇族や貴族の安全確保のための計画や対策を行う組織でもあるんだよね。

 従士長は士官で、そういう技能を持っているわけか。

 ハマオルさんって、スゲー人だったんだ。

 今更だけど。

「あまりにも度が過ぎた場合は、停学や退学処分もあり得ると公示しましょう。

 それだけで、騒動はかなり減ると思います」

 本当にそうかどうか知らないけど、まあ駄目だったらまた別の事を考えればいいし。

「了解しました」

 モレルさんは、晴れ晴れとした顔付きになった。

 ていうか、その表情は何?

 キラキラしてない?

「何か?」

「いえ。

 ミラス殿下が、マコト殿を信頼なさっている理由がよくわかりました。

 洞察力、決断力、行動力。

 感服いたしました」

 直立すると、きっちり60度頭を下げる。

 やめて下さい!

 俺はそんなんじゃないですから!

「それがマコトさんなのですよ」

 ハスィーもその目つきは何?

 別に決断したわけでも、行動したわけでもないでしょうが!

 誤解が深まっていくだけだなあ。

 もういいよ。

 好きにして。

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