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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第八章 俺が経営コンサルタント?

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10.補助金狙い?

 スタッフたちの興奮が収まったところで、俺が考えている事業内容を説明した。

 結局俺の計画(プラン)になってしまったけど、仕方がない。

 ヤジマ商会がやるんだとしたら、最終的には俺の責任になるしな。

 「客は王政府」というポイントについては、みんな納得してくれたようだった。

 そう、これは事業自体がプレゼンテーションみたいなものだ。

 海洋生物とも共存できますよ、ということを王政府に証明する。

 同時に、セルリユの住民にも海豚という生物の存在をアピールする。

 その上で、王政府に援助を要請する。

 フクロオオカミだって、いきなり騎士団や警備隊で使ってくれと言っても相手にして貰えなかっただろうしね。

 サーカスをやることでフクロオオカミが人類の友であり、人間社会でやっていけるということを証明したからこそ、話が進んだわけだ。

 ハスィーやシルさんたちも、多分それを理解していたんじゃないかな。

 始めた時には判らなくても、やっていくうちにこれしかない、と気づいたんだろうと思う。

 最初は俺の戯れ言だったんだけどね。

 ドリトル先生は童話だったんだし。

 でも、実現出来てしまった。

 なら海洋生物でも出来ないはずがないではないか。

「俺が考えているのは、つまり海のサーカス団だ。

 海豚の皆さんには芸を覚えて頂く。

 とりあえず、採算は考えなくてもいいから、事業計画の叩き台を作ってみてくれ。

 海洋サーカス団の場所の検討も頼む」

 俺はそう言って引っ込んだ。

 後はジェイルくんに任せる。

 ジェイルくんは、スタッフを何組かに分けて分業させていた。

 管理職としての技量も一級品だな。

 うーん。

 ホント、地球にいたらこのイケメンはどこまで昇ったか判らないぞ。

「マコトさんの下で学ばせて頂いたからです。

 私自身は大したことありませんよ」

 自分が判ってないのはジェイルくんの方だよね。

 さて、この件については俺の出番は終わった。

 俺の仕事はトリガーとスターターで、計画が立ち上がったら後は丸投げして大丈夫だ。

「他の人なら無責任と言いたいところですが、マコトさんに限ってはそれで上手くいきますからね。

 判りました。

 後は私の方で何とかします」

 ジェイルくんが言ってくれたので、俺はよろしく、と投げて「ヤジマ経営相談(コンサルティング)」を後にした。

 コンサルティングだけのはずだったけど、事業化計画まで立てることになるとは。

 コンサルというものは、本来そうなのかもしれないけど。

 いや、俺ってサラリーマンとしてはペーペーだし、北聖システムでもコンサル的なことはまったくやってなかったから、よく知らないんだよね。

 小説なんかで出てくるコンサルタントを真似しただけで。

 いい加減だなあ。

 ボロが出ないうちに撤退した方がいいだろう。

 まあ、あの調子ならジェイルくんも当分新しい依頼を受ける余裕はあるまい。

 その夜の夕食会で、早速海豚事業の件が報告された。

 今日は珍しくミラス王太子殿下が参加している。

 変装することで王太子府を脱出し、ヤジマ邸の夕食会に出席する権利を得たミラス殿下だったが、実際には参加するのは週に一度くらいだ。

 もちろん、それはヤジマ学園の名誉学園長という立場でフレアちゃんといくらでも接触できるようになったことが大きい。

 だが、参加率が低いのはむしろもう一つの理由だろう。

 本日の夕食会は俺、ハスィー、フレアちゃん、ジェイルくん、ヒューリアさんに加えてユマ閣下とラナエ嬢、そして王太子府のミラス殿下とグレンさんだ。

 あいかわらず女子率が高いが、それはミラス殿下のせいとも言える。

 メイドさんたちがイザカヤ形式の夕食をセットして出て行ってしまうと、ミラス殿下が言った。

「もういい?」

「駄目だ。

 使用人がいつ入ってくるか判らないんだぞ」

 グレンさんの冷たい声に、ミラス殿下が俯く。

 可憐だ。

 ストレートの茶髪が清楚な雰囲気を醸し出しているし、大人しめのドレスも似合っている。

 そう、ミラス殿下はヤジマ邸にいる間中、女装しっぱなしなのだ。

 最初は王太子府とヤジマ邸の往復の時だけ女装するはずだったのだが、夕食会では意外に人目があることが判明したんだよね。

 皿の配膳や片付けなんかで、ヤジマ邸の使用人が頻繁にリビングに入ってくる。

 もちろん信用がおける人たちばかりなんだけど、万一ということもある。

 グレンさんとモレルさんにそう主張されては、弱みがあるミラス殿下に抵抗の術はなかった。

 というわけで、ミラス殿下はヤジマ邸においては美少女姿がデフォルトになってしまったのだ。

 俺たちも最初は笑いを抑えるのに必死だったんだけど、いつの間にか慣れて何とも思わなくなった。

 フレアちゃんなどはむしろ感心しているようだ。

 一国の王太子ともなれば、そこまでする必要があるのですね、と俺たちに言っていた。

 変な所でミラス殿下の株が上がったようだが、女装しっぱなしというのはやはりきついらしい。

 恋する美少女の前ならなおさらだ。 

 それでも根性でやってくるミラス殿下には感心するけど、ただフレアちゃんに会いたいというだけではなく、ミラス殿下にとっては「学校」の仲間たちとの交遊の場なんだよね。

 王太子府に閉じこもっていると、ストレスが溜まるんだろうなあ。

「まあ、いいよ。

 なんか最近、この姿にも慣れてきたし。

 もうちょっとで快感に変わりそうだ」

 そんな危ないことをブツブツ言うミラス殿下をスルーしつつ、ジェイルくんがオランダリ男爵からの依頼について簡単に説明する。

 もちろん、メイドさんたちは立ち入り禁止だ。

 だったらミラス殿下の女装を解いてもいい気がするけど、グレンさんの話では女装を仕上げるのに結構時間がかかるそうで、簡単に解いたり作ったりは出来ないらしい。

「今度は海豚ですか」

 ユマ閣下が言った。

「陸と空に加えて、海も制覇ですね」

「そんなものではありません。

 むしろ、今回の件は海豚のご機嫌取りに近いかと」

「なるほど。

 王政府の補助金ですか」

 どうやったら、これだけの会話でそこまで理解できるんだろう。

 ユマ閣下って、本当に人間?

 案の定、その他の人たちは置いて行かれているので、俺がカラクリを説明する。

「いいですよ。

 その海豚事業、王太子府が出資します」

 ミラス殿下がすぐに乗ってきた。

「野生動物関係は、ギルドを通じて僕が担当することになりましたから。

 そういえば、この前の『犬類連合』の方は大丈夫ですか?」

「あ、はい。

 あちらは元々『犬類連合』がやっていた事業を組織化するだけですから。

 ただ、東地区に続いて王都中の『犬類連合』がヤジマ商会に参加を表明しました。

 事業化作業は同じですが、人手が足りません」

 そうなのか。

 報告は聞いていたけど、大変だなあ(人事(ひとごと))。

「大丈夫なのですか」

「ヤジマ学園やギルドで人を募集していますが、なかなか。

 まあ、緊急というわけでもありませんので、いずれは落ち着くとは思いますが」

「判りました。

 僕からもギルドを通じてプッシュしておきます」

 いいのかなあ。

 露骨な贔屓だぞ。

「野生動物事業は王太子府の課題でもあるので、いいんですよ。

 マコトさんのおかげで実績がどんどん積み上がっていくもので、最近はミラスの株が天井知らずに上昇していまして」

 グレンさんが言うのならそうなんだろうな。

 てことは、王政府におけるミラス殿下の発言力が増していると?

「はい。

 教育事業と野生動物事業は王太子府の管轄なのですが、両方とも爆発的な実績が上がっていますからね。

 最近は文化省の方からミラスにすり寄ってきています」

「予算も通しやすくなりました。

 みんなマコトさんのおかげです。

 ありがとうございます」

 茶髪の華奢な美少女が真面目くさって頭を下げてくるが、何か変な気分になりそうだから止めて下さい。

 ハスィーも、そんな疑いの目で見ないで!

「そういえば、猫はどうなりましたの?」

 ラナエ嬢が話を逸らすと、ジェイルくんが答えた。

「報告に寄れば、順調に発展しているようです」

「ようです、とは?」

「最近、私はノータッチなんですよ」

 ジェイルくんが肩を竦めた。

「ニャルーさんとキディが経営計画をまとめていて、独自事業を進めているとのことです。

 資金についても内部留保で回しているみたいで、そのうちにヤジマ商会からの出資金の返済が始まるかもしれません」

 それは凄い。

 あの化け猫、やはりただ者ではなかったか。

「王都中の猫が組織化されたというような話も聞きましたわね」

 ヒューリアさんが口を挟んだ。

「地区ごとの相談役が集まって、連絡会議のようなものが出来たとか。

 もちろん、ニャルーさんが議長というか代表で」

 どこまで行くんだあの猫又。

「そうすると、王太子府としても独自に猫と話し合う必要が出てくるかもしれませんね」

 ミラス殿下が言った。

 うん。

 女装した王太子が猫との会談について真面目に考える姿って、ラノベ?

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