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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第八章 俺が経営コンサルタント?

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2.守銭奴?

 サークル活動が盛んになった頃を見計らって、ヤジマ学園に週休1日制を導入した。

 学園全体が休みになるわけではなくて、講座や授業がない日を作ったわけだ。

 今回は、生徒たちに諸手を挙げて受け入れられた。

 サークルの方が楽しいからね。

 つまり、連中は学園の講義がないからといって休むのではなく、いつもと同じように登園して一日中サークル活動に勤しめるようになったわけだ。

 このまま休みを増やして、いずれはヤジマ商会にも導入を。

「会長に定休日はありませんので」

 無情な大番頭めが!

 それでも一時と違ってヤジマ商会も落ち着いてきて、俺もひっきりなしに人と会ったりしなくても良くなったことはありがたい。

 投資家の人たちと無意味に親しげな会話をしたり、一緒に飯食ったりする機会も減った。

 あんなの仕事じゃないよね。

 俺の本質はサラリーマンなので、ああいう単なる手続きにしか思えないようなことを繰り返すだけの毎日は疲れる。

 もっと実務をしないと仕事した気がしないんだよ。

「ほう。

 やっとその気になって頂けましたか。

 実は、以前からマコトさんに対して要望が来ているのですよ」

 ジェイルくんが悪魔の笑みを浮かべて言った。

 失敗(しま)った。

 働きたいなどと言うんじゃなかった。

「なあに、マコトさんにとっては簡単なお仕事です。

 ヤジマ商会がサポートしますし、専任のスタッフもつけますから」

 ヤジマ商会の権力者は、実は会長でもなければ副会長でもない。

 大番頭がすべての権限を握っている。

 どうも以前から計画してあったらしく、ジェイルくんは分厚い書類を持ち出してきた。

「これは?」

「『ヤジマ経営相談(コンサルティング)』の設立申請書です。

 マコトさんにサインして頂ければ、すぐにギルドに提出できます」

 何て手回しのいい。

 俺も、最近ではかなり複雑な文章でも読めるようになっているので、内容はすぐに理解できた。

 コンサルティング会舎を立ち上げるらしい。

 ヤジマ商会の直轄子会舎で、舎長は俺になっている。

 ていうか会舎というよりは個人事務所の体裁で、一応舎員はいるものの、俺以外はすべて契約舎員のようだ。

「よく判らないけど、何をする会舎なの?」

「ヤジマ商会と取引がある会舎の相談を受けます。

 『犬類連合』の件で、ラナエ舎長から依頼がありましたよね?

 あれを商売として出来るのではないか、と考えたわけです。

 実際、そういった依頼は他にもたくさん来ていますし」

 ジェイルくんが言うには短期間で多数の会舎を立ち上げて大きくしたり、ヤジマ芸能を立ち直らせた俺に対して、自分の会舎の業績を回復させて貰いたい、という希望が殺到しているそうだ。

 いや、別に俺がやったわけじゃないんだけど。

「ですが、潰れかかっていたセレス芸能をマコトさんが見事に再生させたことは事実ですし、ヤジマ学園にしても驚異的な大成功をおさめ、さらに発展を続けています。

 そんなマコトさんにアドバイスなりを頂きたいと思うのは、経営者として当然の欲求ですよ」

 そんなもんですか。

 でも、俺そんなこと出来ないって。

 経営の細かい方法なんか判らないし。

 ジェイルくんの方が詳しいんじゃ。

 するとジェイルくんは、黒いような灰色なような表情を浮かべて言った。

「私も考えたんです。

 確かに、マコトさんに従っていれば順調で安泰です。

 しかし、それだけではジェイル・クルトの値打ちなんかゼロでしょう。

 私もマコトさんの従者として、僅かなりともお役に立ちたいと」

「そんなことないって。

 ジェイルくんがいなければヤジマ商会は空中分解するよ」

「ありがたいお言葉ですが、今やっている仕事は別に私でなくても出来る程度の事に過ぎません。

 マコトさんの後ろからついて行くだけでなく、たまには横に並んだり、斜め後方から支援できるようになりたいんです」

 だから、是非お願いしますと言われてもなあ。

 まあいいけど。

「判った。

 その『ヤジマ経営相談(コンサルティング)』とやらをやればいいんでしょ?

 でも、繰り返すけど俺は具体的なことは判らないよ?」

「マコトさんは、依頼を受けて相手方の問題点や改善点などを、思いつくまま話してくださればいいです。

 実質的な業務はスタッフがやります」

 スタッフか。

 で、俺は言いたいことを言っていればいいと。

「そのスタッフって?」

「ヤジマ商会やセルリユ興業舎、あるいはその関連会舎から有望な者を選抜します。

 ヤジマ学園経営学部の立ち上げ要員としても登録して、マコトさんのそばでヤジマ流を学んで貰うと同時に、将来の経営幹部を育てたいと」

 凄い。

 この男は、顧客から金を取って自分の所の経営幹部(スタッフ)を育てようとしているわけか。

 なんてアコギな。

「でも、そんな連中に有効な経営相談が出来るの?」

「まあ、やってみましょう」

 不安だったけど、とても反対できない雰囲気だったので、俺は書類にサインした。

 こういう時のジェイルくんは異常に手際がいい。

 すぐにギルドに登録して、「ヤジマ経営相談(コンサルティング)」が立ち上がった。

 俺が遠距離通勤したくないと言ったため、急遽ヤジマ商会の隣の屋敷が買収され、その一角に事務所が置かれる。

 隣って誰が住んでいたっけ?

「引退した領地貴族です。

 お金に困っておられたようで、二つ返事で売って頂けたとジェイルさんがおっしゃっておりましたわ」

 ヒューリアさんが報告してくれたけど、札束で頬を叩いたんじゃないだろうな?

 知らなかったことにしよう。

 こっちの屋敷も結構大きいので、今後はヤジマ商会の関連事業の事務所が入る予定だそうだ。

 それに伴ってヤジマ商会、というよりは俺の屋敷から業務関係のスタッフが全員移動することになった。

 カールさんやホスさんの執務室も移転する。

 フルー・アレスト貴族院議員のオフィスは、身内ということで残ったけど。

 これまでは職住同居だったのが、仕事場が隣とはいえ別の建物に移るわけで、つまり俺の屋敷はこれでほぼ私用になったわけだ。

 ありがたい。

 それを言うと、ジェイルくんは照れたように笑った。

「マコトさんがご不満そうでしたので。

 新婚のご家庭に仕事場が同居しているのは、やはり問題ですから」

 まだ結婚してないし、フレアちゃんとかヒューリアさんとかジェイルくんとかも一緒に住んでいるんですが。

「私たちもそちらに移ります。

 フレア様は、シルレラ様のご希望もあって同居を続けられますが」

 ヒューリアさんが言うには、やはり未婚の貴族の家に未婚の貴族令嬢が同居しているのはヤバいそうだ。

 ただし、フレアちゃんは公式に俺つまりソラージュ王国のヤジマ子爵預かりになっているので問題ないらしい。

 シルさんが暗躍したな。

 帝国にいるフレアちゃんの親族ははおやが、ソラージュ王政府に対して正式に遊学許可を申請したという。

 フレアちゃんはヤジマ学園のスタッフに名を連ねているからね。

 ミラス殿下が名誉学園長として了承し、ソラージュ王国王太子として裁可したとか。

 で、ヤジマ学園のオーナーである俺の元に、一時的に身を寄せていると。

 俺も未婚の貴族ではあるけれど、既に婚約者と同居していて、まあ大丈夫じゃね? ということになったらしい。

 よくもまあ、そんな誤魔化しを。

「本当のことです。

 王政府の承認も頂きましたし、もはや国家的な取り決めですから」

 ホント、ジェイルくんって有能すぎる黒幕(フィクサー)だよね。

 近衛騎士だし。

 もう無敵なんじゃね?

 そういうわけで新規に設立された「ヤジマ経営相談(コンサルティング)」には、依頼が殺到した。

 そういう会舎って、今までソラージュにはなかったからね。

 つまり、俺の仕事が増えたわけで。

「実務をやりたいとおっしゃっておられたではありませんか。

 これからは、お好きなだけ働いて頂けますよ」

 鬼が!

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