表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第七章 俺が学園理事長?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

336/1008

23.インターミッション~ラヤ~

 週に一度はヤジマ商会の敷地内にある仮教堂に集合します。

 ソラージュ王都に在住する僧正(スウォーク)は他にもいますが、我ら3(にん)が勝ち取った権利です。

 本当を言えば(ラヤ)のみがこの特権を甘受したかった所なのですが、さすがにごり押しは無理でした。

 本物の「迷い人」というめったにない観察対象なのですから。

 増して(ラヤ)は帝国を追われてソラージュに落ち延びてきた身。

 最初からソラージュに根を張っていた(スウォーク)らを無視することは出来ません。

 もっとも最初に目をつけた者としてヤジママコトの第一観察者としての立場はしっかり確保できましたが。

「大教堂建設の進捗具合はどうか」

 レンが聞いてきます。

 この(レン)(スウォーク)らの中でも最年長の一人です。

 ソラージュの教団本拠でも重きを成す(スウォーク)であるので、逆に大教堂建設といった現場の案件には直接関われません。

 重きを成すのも善し悪し。

「順調です。

 ヤジマ商会の伝手で建設資材や労働者などもスムーズに確保出来ているのが大きいかと」

 カリ僧正が、大教堂建設事業の担当者です。

 マコトを口説いて建設用地の確保に成功した功績は、どの(スウォーク)も軽視できませんでした。

 落成の暁には堂主の立場につくことでしょう。

 マコトが「楽園の花」に来たときにたまたま滞在していたという幸運のせいとはいえ、これはソラージュ王都の(スウォーク)らに大いなる嫉妬を巻き起こしました。

 人望は急落です。

 まあ大した問題ではありませんが。

「それは重畳。

 建設資金が不足するようならいつでも申しつけて欲しい」

「わかりました」

 一応、(スウォーク)らの間でも取引めいたことはあります。

 マコトにはあえて説明しませんでしたが、スウォークは人間が言う聖人などではありません。

 むしろ自分の欲望を満たすためには浅ましく動く、世俗の塊といってもいい生き物です。

 従って人間が使うお金のことについても十分以上に理解しています。

 教団は清廉潔白の城のように思われておりますが実は裏で色々と商売をやっていて、その資金力は相当なものです。

 お金を儲けたり、それを使ってあれやこれやしたいという欲は人間と同様にあります。

 ただし人間と違って(スウォーク)には個人で富を蓄積したり子孫にそれを残したりという欲望はないのですが。

 (スウォーク)らが卵生であることが大きいように思います。

 昔、反乱を起こした「迷い人」が説いたという共産主義とやらの思想に近いでしょうか。

 これは人間にとっては無理とは言わないまでも不自然な思想で、おそらくうまくいかないでしょう。

 肉親への情というものがある以上、絶対的な平等はあり得ませんから。

 (スウォーク)なら自然なのですが。

「ラヤ。

 最近、ヤジママコトに会ったか?

 どうされている?」

 レンの質問に(ラヤ)は事実を述べました。

「会っておりません。

 我も少し動いておりましたもので」

「そうか。

 ヤジママコトの第一観察者である(ラヤ)は常に一緒に居ても良いのだが」

 (レン)はスウォークの中でも世俗に染まっていない方ですのでそんなことを言われますが、人間は四六時中行動を共にしたからといって理解できるものではありません。

 それに、(ラヤ)にはマコトのためにやるべきことがあります。

 後方支援、という概念はスウォークにはあまり馴染みませんが、ユマと知り合って(ラヤ)も大いに啓蒙されました。

(ラヤ)はヤジママコトのために動いております。

 いずれはっきりするでしょう」

「そうか。

 ソラージュのギルドや司法省に接触しているのがそれと思うが、あまり目立っては良くない。

 ほどほどにしておくことだ」

 さすがレン。

 知っていましたか。

(ラヤ)は人間と野生動物の協定に立ち会いましたもので、何かと相談されるのですよ。

 ヤジママコトの行動を邪魔するようなものではございませんので、ご安心を」

 レンは何も言いませんでしたが、内心は苛立っていることでしょう。

 もちろん表面的には鏡面のようなさざ波一つ無い、澄み切ったお心に見せておりますが。

 ご存じないと思いますが、(スウォーク)らは複数の並列思考が可能でございます。

 というよりは手前と奥、といった概念で説明できる心境を維持することができるため、内心で何を考えていようが外部からはめったに察知されません。

 強力な(スウォーク)なら相手の奥まで読み取れることもあるわけですが、少なくとも僧正の位階を得たスウォーク同士なら、お互いに心を隠すことが出来ます。

 生まれながらの陰謀家と言えましょう。

 それにしても、あの人間(ヒト)つまりララネル家の令嬢(ユマ)は大したものです。

 ほぼスウォークと同様の複数並列思考が可能とは。

 あれほどの人間はめったにいないでしょう。

 見えすぎるということは、人間にとっては辛いものです。

 マコトに会わなかったら、将来どうなっていたのか見当もつきません。

 いずれ何か破滅的な方向に向かった可能性もあります。

 幸いにして今はマコトという興味の対象に夢中で、その危険性はほぼ無くなったと見ています。

 そのユマから示唆された、マコトに迫る危険。

 これは見過ごせません。

 (ラヤ)の欲望にかけて阻止してみせます。

 (ラヤ)は、マコト担当のスウォークなのですから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ