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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第七章 俺が学園理事長?

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20.会舎見学?

 昼までには少し時間があるということで、その前にセルリユ興業舎を見せて貰うことになった。

 ラナエ舎長自らの案内だ。

 東地区犬類連合が、結構重要な事業提携相手になると思っているのかなあ。

 単に自分の会舎を自慢したいだけかもしれないけど。

 大名行列は嫌なのでメンバーは厳選する。

 といってもヤジマ商会側が俺とハスィー、ジェイルくんにヒューリアさん、犬類連合側がドルガさんとセノンさんだ。

 セノンさん配下の護衛? の犬の人たちが不満そうだったが、セノンさんが一喝して黙らせた。

 やっぱヤクザくさいなあ。

 まあ、セルリユ興業舎の敷地内部だし、危険はないと思う。

 ハマオルさんにも遠慮して貰ったしね。

 とはいえ、ハマオルさんの事だから俺に見つからないように護衛してくれているはずだ。

 気にしない気にしない。

 ラナエ嬢は、まず運動場というか練習場に足を運んだ。

 現在はまだフクロオオカミがメインだけど、テスト生として王都に来た他の野生動物たちもぼちぼち訓練に参加しているそうだ。

 さっきの5人? 組もいるのか。

 建物の角を曲がった途端、遠くに居るフクロオオカミが一斉にこっちを向いた。

 かと思ったら、そのうちの一人【頭】がまっしぐらにこっちに向かってくる。

 凄いよ。

 感覚で言うと、2トントラックか何かが突進してくるような印象なんだよ!

 体長3メートル以上、幅はないけど背が高いので、のし掛かってこられそうな恐怖を感じる。

 俺が棒立ちになっていると、そのフクロオオカミは俺を轢く寸前で停止した。

 風がどっと吹き抜けていく。

「マコトの兄貴ィ!

 久しぶりっス!」

「ツォルか!

 お前、なんかでかくなってないか?」

 一瞬、ミクスさんかと思ったぞ。

 もう体長3メートルなんてもんじゃない。

 どうみても一回りは成長しているような。

「まだまだこれからっスよ!

 次に山に登る時は、オレがマコトの兄貴を乗せますから!」

 どうでもいいけど吠え声がでかすぎて耳が痛いぞ。

 それに、お客さんに失礼だろう。

 振り返ると、やはりソフィエさんは尻餅をついていた。

 ドルガさんとセノンさんも身体を前傾させて戦闘態勢だ。

 ハスィーを初めとしたヤジマ商会側は平然としたもので、全員自然体で立っている。

 ラナエ嬢も同じ。

 まあ、慣れているからね。

 それにしてもツォルの奴、身体がでかくなっただけじゃなくて頭の方も成長したのか?

 前は体当たりしてきたもんなあ。

「いえ。

 以前、じゃれついて人間の方に怪我をさせてしまったことがありまして、厳しく躾けたんですよ。

 お久しぶりです。

 マコトさん」

 追いついてきたフクロオオカミが言った。

 やっぱりでかいけど、ツォルほどじゃない。

「ナムスも来ていたんだ」

「はい。

 ツォルと(つが)いになりましたもので」

「それは……おめでとう。

 でも、いいのか」

 ナムスくらい優秀なら、もっといいフクロオオカミをいくらでも選べるんじゃ。

「フクロオオカミはまず、強さですから。

 ツォルは若い世代の中では群を抜いています。

 後は、うまくコントロールしてやればいいだけです」

 さいですか。

 やっぱこっちの世界って、女性の方が強いのかも。

 俺は、やっと立ち上がって尻の埃を払っているソフィエさんやドルガさんたちにツォルたちを紹介した。

 ていうか、その頃には訓練中の残りのフクロオオカミも駆けてきてしまって、巨大な影に囲まれてしまっていたけど。

 ドルガさんはさすがで、堂々と挨拶していた。

 ツォルたちも格の違いがわかるのか、神妙な態度だった。

 でもソフィエさんの顔色がちょっとアレだったので、みんなには早々に訓練に戻って貰った。

 ツォルは引っ張られながら「マコトの兄貴! 次は是非オレの背中に!」とか吼えていたけど、少なくとも当分はフクロオオカミに乗る気はないからね。

 あれは、結構訓練しないと駄目だ。

 俺も定期的に乗馬の練習はしているけど、全然違う。

 狼騎士(ウルフライダー)なんか戯れ言だよ。

 ソフィエさんが野生動物はもういいというので、俺たちはセルリユ興業舎の他の事業を見て回った。

 とはいえ、サーカス団はまだ施設の整備中だし、騎士団や警備隊は野外訓練に出ている。

 そもそも野生動物関係以外はこれといって特殊な事はしてないしね。

 物品の製造や販売部門は既に立ち上がって稼働していたので、そこを重点的に見学する。

 ヤジマ芸能などに納める小物やプロマイドなどを生産しているそうだ。

 どこでやっているのかと思ったけど、こんな所で作っていたのか。

 広い倉庫みたいな建物の中で、大勢の人が黙々と何かを作っている。

「この人たちはみんなアレスト市から来たんですか?」

「ほとんどはこちらで新しく雇った方たちですわ。

 ヤジマ学園の『小学校』の卒業生の方たちや、ハローワークで募集した方を雇用しています。

 アレスト市から来て頂いた方たちは、大抵昇進して監督側に回っております」

 ラナエ嬢が説明してくれたけど、だとするとセルリユ興業舎は王都の労働人口をかなり増やしている事になる。

 いや報告では聞いていたんだけど、実際に見たのは初めてだからね。

 自分の配下の会舎なのになあ。

 まあいいか。

 うまくいっているんなら、俺が口出しすることじゃないよね。

「……これがすべて、ヤジマ子爵閣下のものなのですか?」

 ソフィエさんがぽつりと言った。

「そうでございます。

 ヤジマ商会の配下企業は、もちろんアレスト興業舎やセルリユ興業舎だけではございませんが」

 ラナエ嬢が平然と答える。

 見たところはハイティーンの美少女なんだけどね。

 幹部の中では一番幼く見えるのに。

 この人、マジで敏腕経営者化しているな。

 セルリユ興業舎どころか、いずれはヤジマ商会を背負って立つ逸材だ。

 俺は引退して顧問か相談役になろう。

「マコトさんが率いているからこそ、ここまで発展したのですから。

 余人がとって換われるものではございません」

 駄目か。

 と、その時ベルが鳴り響いた。

 働いている人たちの半数が一斉に立ち上がる。

「お昼休み兼食事時間です。

 人数が多いので、分けております」

 何と。

 時間管理も始まっていたか。

 生産工場だからね。

 工場制手工業という奴だ。

 確かにこんな郊外だと、お昼をよそに食いに行くわけにもいかない。

 食堂の場所にも限りがあるだろうし、時分割して休むのは合理的だ。

「それと、セルリユ興業舎では定休日を設けております」

 ラナエ嬢の説明に、ソフィエさんたちが驚いていた。

 アレスト興業舎からの伝統で、週に一度全舎が止まるのだ。

 日本なら休日が少ないと言ってみんな怒るだろうけど、こっちではそもそも定休日があるという事自体が画期的なんだよね。

 ちなみに、ヤジマ商会ではその制度をまだ導入していない。

 ジェイルくんが許してくれないのだ。

 この忙しい時に休むなんてとんでもない、と言われて。

 どうしてもというのなら導入してもいいけど、会長は休日でも働いて貰うと宣言されて断念した。

 落ち着いたらヤジマ商会も週休1日制を導入しますから、と甘言に乗せられてそのままになっているけど、いつになることやら。

 そういえば、ヤジマ商会の子会社や関連会社はどうなっているんだろう。

「『ニャルーの(シャトー)』は導入済みですね。

 一日24時間営業なので、どうしても定期的な設備点検が必要ですから。

 従業員【猫】たちも歓迎しているそうです」

 ジェイルくんが教えてくれた。

 あの猫又、自分たちだけ休んでいるのか!

「ヤジマ学園は検討中です。

 マコトさんの方針に従って休日を導入しようとしたところ、生徒たちから猛反対されまして。

 ヤジマ学園に通っている方が楽しいので、休みなんか作らないでくれという反応です」

 何と。

 真面目な人を集めすぎたか。

 もっとだらっとした青春も必要だと思うんだけどなあ。

「ヤジマ芸能も同じですね。

 公演が楽しすぎて、減らしたくないとのことです。

 まあ、あそこはローテーションで休めますので」

 困るなあ。

 俺が休めないじゃないか。

 こうなったら、セルリユ興業舎を見本としてグループ企業全体に週休制度を強制導入するしかない!

 野望を燃やす俺に、ラナエ嬢が言った。

「でも、会長に休日はないと思いますわ。

 出資者の方たちもお認めにならないでしょうし」

 鬼め!

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