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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第七章 俺が学園理事長?

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14.野生動物学部?

 ヤジマ学園野生動物学部(仮)プランにGOサインを出すと、すぐにラナエ嬢から要請が来た。

 是非、一度こちらに足を運んで欲しいということだったけど、毎晩夕食会で会っているのに変だよね?

「場所はセルリユ興業舎が確保している郊外の地区ですね。

 サーカス団の拠点になる予定で、ヤジマ商会が買収してセルリユ興業舎に貸与している地所です。

 つまり、マコトさんの土地ですよ」

 俺のか。

 そんなの知らんけど。

 まあ、来いというのなら行くのに吝かではない。

 俺は早速、ハスィーにジェイルくんやヒューリアさん、それにハマオルさん・リズィレさんたち護衛を連れて出かけた。

 今回は貴族街ではないので、護衛といっても馬車がせいぜい2台、要員もほんの十名ほどだ。

 マジ面倒くさい(泣)。

「マコトさんは子爵なんですから、仕方がありませんよ。

 そもそも普通の貴族は自分で現場に足を運んだりはしませんからね。

 そんな事は全部配下にやらせて、自分は屋敷に閉じこもっているのが当たり前です」

 そうなのか。

 確かに今まで会ったことがある世襲貴族の人って、ラノベと違ってあまり外出してなかったような。

 俺の認証式とか、ヤジマ学園の入学式とかには結構来ていたみたいだけど、そのおかげで護衛が凄いことになっていたからな。

 世襲貴族一人につき、最低でもその十倍は護衛がいるわけで。

 そんなに狙われているのか貴族って。

「そうではなくて、万が一を警戒しているのでしょう。

 もし当主が突然亡くなりでもしたら、爵位の継承や財産分与などで大事(おおごと)になります。

 世襲貴族家の当主という存在(もの)は、それだけ重みがあるのですわ」

 ヒューリアさんが解説してくれた。

 なるほどね。

 男爵以上の世襲貴族は、近衛騎士みたいに本人が亡くなったらそれでおしまいというわけではないのだ。

 爵位が残る。

 これはおいそれとは取り消せないので、どうにかしなければならない。

 遺言があればそれに沿って、なければ継承順位に従って爵位が受け渡されると。

「でも俺ってまだ正式に結婚してないし、子供もいないから子爵位を継承する人がいないよね。

 例えばだけど、今突然俺が死んだらどうなるの?

 ハスィーが引き継ぐわけ?」

 俺の問いに、ハスィーが顔を顰めて言った。

「冗談でも、マコトさんが亡くなるとか不吉なことはおっしゃらないで下さい。

 それに、マコトさんの爵位はわたくしには引き継げません。

 正式に結婚していたとしても、です」

 ハスィーに続けてジェイルくんが言った。

「遺言があっても難しいでしょうね。

 ハスィー様にマコトさんの子供がいれば別ですが」

「じゃあ、どうなるの?」

 ヒューリアさんが応えてくれた。

「そうですわね。

 ヤジマ子爵家は法衣貴族ですから、領地などのややこしい問題はないわけです。

 その代わり、財産は凄いですが。

 おそらく爵位は王家の預かりになり、財産はハスィーに大半が分与されて、後は王政府が没収すると思います」

 それは酷い。

 ソラージュの王政府が税収不足で財政赤字になったら、俺を暗殺するかもしれないのか。

「マコトさんが亡くなるとか、そういう話は止めましょう」

 ハスィーが断言したので、そこで話は終わった。

 残りの全員が気圧されて何も言えなくなったんだよね。

 マジで怖い。

 傾国姫って、どうしてここまで迫力があるんだろう。

 シルさんが相変わらずハスィーにだけ「様」をつけて呼んでいる理由もこれだな。

 逆らえないというか、怖いんだよね。

 俺の嫁が。

「見えてきましたよ」

 ジェイルくんが重苦しい気配から逃れるように声を上げた。

 窓の外はもう郊外で、何もない土地が広がっている。

 地平線上に建物がいくつか見えたが、進行方向と90度違う場所なので、あれではないだろう。

「『ニャルーの(シャトー)』と建設中の『大地の恵み大教堂』ですわね」

 ヒューリアさんが教えてくれた。

 こんなに近かったのか。

 そういえば、この辺りの土地はヤジマ商会が一括して買ったんだったっけ。

 いや俺じゃないけど。

 言われるままに決済書類にサインしていたら、馬鹿げた広さの土地持ちになっていたのだ。

 ヤジマ商会つまり俺が。

「ヤジマ学園はあの向こう側です。

 ここら辺り一帯はすべてヤジマ商会関係の用地ですから、もう安全ですよ」

 ジェイルくんの言い方だと、その他の場所が危険みたいじゃないか!

 そんなのは嫌だぞ。

「あそこではありませんか」

 ヒューリアさんが指さす方向を見ると、いくつか建物が見えた。

 低層の長屋のようだったが、だんだん近づくにつれてそうではないことが判ってきた。

 アレスト興業舎の最初の拠点だったあの建物と同じで、巨大すぎるために縮尺が狂って見えていたようだ。

 でかい。

 結構高さがあるのに、横に長すぎるから長屋のように見えていたらしい。

「あれは廃棄された備蓄倉庫だったそうです。

 飢饉に備えて、王政府が食料などを保管していた施設だったとか。

 のちにもっと堅固な倉庫を建設したので不要になり、ギルドが塩漬けにしていたものをヤジマ商会が土地ごと買収したと思います」

 ジェイルくんがあやふやな口調で言ったけど、本人もよく知らないらしい。

 多分、ジェイルくん本人というよりはラナエ嬢かシルさんの指示でやったんだろうな。

 あの人たちは、最初から野生動物対策で動いていたみたいだし。

 その頃からヤジマ商会の金をそっちにつぎ込んでいたのか。

 人の借金を無断で。

 まあいいけど。

「それにしても、これほど広いとは知りませんでした。

 郊外とはいえ、王都に近いのによくこれだけのまとまった土地を確保できたものです」

 ハスィーもギルド出身なだけに、不自然さを感じたようだ。

 ある意味実業家だからな。

 俺なんかより事業には詳しいだろう。

「逆に広大過ぎて、誰も手をつけられなかったと聞いています。

 活用しようとしても、予算がありません。

 ギルドも持て余していたようで。

 王政府としても、やたらな会舎や貴族に渡すことは躊躇していたでしょうしね。

 ヤジマ商会が『迷い人』であるマコトさんの会舎だからこそ、すんなり手続きが済んだとユマが言っていましたわ」

 ヒューリアさんが説明してくれた。

 色々と面倒な事があったらしいけど、俺はそんなの知らない。

 でも最終的にはみんな俺のせいになっているらしい。

 いいよ、もう。

 好きにしてよ。

「マコトさんは私が守りますから」

 エヴァン○リオンの○イちゃんみたいなこと言わないでよハスィー!

 不吉だから!

 ハスィーは一人しかいないんだからね!

 そんなことを言い合っているうちに、馬車は粗末な門をくぐって敷地に入ったらしかった。

 らしいというのは、やっぱり何もなかったからだ。

 柵が延々と続いているばかりで、確かにここなら何が来てもすぐに見つかるだろうな。

「ラナエ舎長の話では、ここがヤジマ学園野生動物学部(仮)の演習場になる予定だそうです。

 共同行動学科の講座は、実習が大半を占めるということで。

 むしろヤジマ学園の分校とした方がいいかもしれませんね」

 ジェイルくんが言うけど、日本いや地球の大学なら、敷地が複数あるのが普通だしね。

 野生動物学部キャンパスということでいいんじゃないの?

「そうなのですか。

 やはり『大学』ともなるとスケールが違いますね」

 ジェイルくんが感心したように言ったけど、別に大したことじゃないでしょう。

「専門によって、敷地や設置場所の条件も違ってくるんだよ。

 俺の出た大学も、例えば海洋学部は海の側にあったし、農学部には山林や酪農に必要な農場が併設されていたしね。

 工学部や理学部は街の普通の建物だったけど」

 俺が調子に乗って言うと、ジェイルくんの目が光った。

「ほう。

 そこの所をもっと詳しく」

 いつの間にかメモ帳を開いている。

 またやってしまった。

 ハスィーとヒューリアさんが冷めた目で見ているのが気になったけど、こうなったら仕方がない。

「医学部は付属の大学病院を持っていて、若手の医師はそこで一定期間勤務してから各地の病院に散っていったはずだよ。

 獣医学部はもちろん農場や牧場を持っていて。

 薬学部には研究所があったっけ」

 止まらない。

 ジェイルくんが目にも留まらぬスピードでメモを書きまくっている。

「うちの大学にはなかったけど、他の大学には芸術学部とか音楽学部というものもあってね。

 それぞれ専門の技能を極めるというか」

 ヤバくね?

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