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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第七章 俺が学園理事長?

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13.新学部設立?

 俺の書斎にジェイルくんが訪ねてきた。

 いや、同じ屋敷に住んでいるんだから訪ねるというのは変だけど、最近はお互いに忙しくて、一対一で話すことがあまりないんだよね。

 だがトップの決断を求める必要がある時は、ジェイルくんはこうやって時間をとってやってくる。

 つまり既に各案件については検討が終わっていて、後は俺がGOサインを出すかどうか、という段階の話なわけだ。

 そんなのはいいからジェイルくんの判断でやっちゃってよと言ったら怒られた。

 ヤジマ商会は俺の会舎だから、決定は俺がやらなきゃ駄目だと。

 ごもっとも。

 今日の案件はヤジマ学園についてだった。

 「ヤジマ学園教養学部」の基礎教育課程は特に問題なく運営されているらしい。

 生徒たちも進度は色々だけど順調に必修単位を取得して、3ケ月かからずに修了単位を全部取得する人も現れているそうだ。

 開園からもうそんなにたつのか。

 既に初夏で、俺も半袖に薄いズボンという格好で毎日を過ごしている。

 最近、月日が過ぎるのが早いなあ。

「そろそろヤジマ学園の第二期生募集を行おうと思います」

 ジェイルくんに言われて、そうなのと返事をする。

 別に俺に断らなくてもいいのに。

「それが、第一期生の評判が良すぎて入学希望者が殺到しているんですよ。

 修了証がステータスになっているらしく」

 ああ、基礎教養課程を終わった人に発行する証明書ね。

 これは専門課程入学の許可証でもある。

 ただし専門課程に進むには主任教授の試験にパスしないといけないんだけど。

 ホスさんたちヤジマ学園の教授たちは、弟子じゃなかった学生を受け入れるための準備を着々と進めているはずだ。

 既に稼働している専門学科もいくつかあるだろうし。

 それとは別に何かあるの?

「つまり、ヤジマ学園教養学部基礎課程の修了証を持っていれば、ソラージュ王国における貴族や商人としてのマナーや教養を保証されたと見なされているらしいんです。

 特に女性の場合は最強の嫁入り/婿取りツールになるということで」

 そうか。

 今までソラージュにはそういうものがなかったからな。

 貴族の子弟は家庭教師についてマナーや知識を学ぶんだけど、基準がないので本当に習得できたかどうか判らない。

 せいぜい、この家庭教師は良いとか優れている、というあやふやな評判に頼るしかなかったのだ。

 だがヤジマ学園は複数の教師が認定しないと単位を出さないことになっているので、これがひとつの標準になったわけか。

 思いがけない効果があったもんだ。

 そんなの全然考えてなかったんだけどなあ。

「マコトさんの謙遜はいつものことでスルーするとして、そういうわけで入学志願者が押しかけています。

 定員が少ないので増やして欲しい、という声も多くて」

「基礎課程の教師が対応できるのなら、増やしてもいいと思う。

 あとはヤジマ学園の施設の収容能力かな。

 むやみに教師は増やしたくないけど、そこら辺は最適値を考えてみて」

「了解しました。

 教師の補充、施設の拡充、そして入学者の増加を検討します。

 それから教養学部の入学を随時行って欲しい、という声もありますが」

「それは止めておこうよ。

 『学校』で得られる効果に『同期』という概念があって、一緒に学んだという事自体が仲間内の繋がりを作ったり強化したりするから」

 ジェイルくんが感心したように言った。

「なるほど。

 確かにハスィー様やミラス殿下を拝見させて頂いていると、身分に関係なくお互いに呼び捨てにされていますね。

 ああいった親しさを醸成する効果もあるわけですか」

「ハスィーたちのはちょっと特殊だから、あれほどにはならないと思うけどね」

 あの人たちが行った「学校」は3年間クラス替えがなかったらしいからな。

 それでも親しくなった人は限られていたようだし。

 いくら長く一緒にいても、合わない人とはそれほど親密にはならないだろう。

 増して、ヤジマ学園の基礎教養課程はとりあえず3ケ月だ。

 それでも生涯の親友や将来の恋人と出会う確率は高まると思うんだよね。

「そういえば、3ケ月で修了単位を取得できなかった人はどうなるの?」

「そのまま在籍して残りの単位を取るまで頑張るということです。

 追加分の授業料が必要になりますが。

 どうしても単位を取得できないような人はそもそも入学できませんので、時間の問題ですね」

 そうか。

 入学の時に足切りしていたっけ。

 つまり、ヤジマ学園に入学出来たということ自体がある種のステータスなわけだ。

「実は第一期募集で落ちた方たちが、予備校に通って特訓しています。

 よって第二期の入試は激烈な競争になりそうだと評判です」

 予備校(笑)。

 そんなの出来たんだ。

「マコトさんの指示ですよ?

 ヤジマ学園とは別の会舎になっていますが、出資はヤジマ商会です。

 学費を高めに設定しているにも関わらず、ここにも受講希望者が殺到しています。

 既に大幅な黒字です」

 阿漕な!

 いや、確かに俺がそんなことを言ったような覚えがある。

 マッチポンプもいいところだなあ。

 俺、マジやばいんじゃないの?

 ソラージュ王国に受験戦争を持ち込んでしまったのでは。

 まあいいか。

 俺には関係がない話ですから。

 それにしても、そんなに金を稼いでいいの?

 ジェイルくん、黒字を恐れていたのでは。

「考えを改めました。

 もうこうなったら、ヤジマ商会がソラージュの経済を牛耳るくらいのつもりでやります」

 それはちょっと。

「遠大すぎる目標なんじゃ」

「シルレラ舎長やラナエ舎長の事業計画を聞かされて、そのくらいでちょうどいいと思ったんですよ。

 それぞれ金を湯水どころではない規模で使う気満々ですし、その原資をヤジマ商会に期待しておられるようで。

 どうも、お二人ともマコトさんのことを無限にお金を吐き出す宝箱みたいに考えているみたいですね」

 何てことを!

 その金って、俺の借金だぞ!

「ですから、出資ではなくヤジマ商会が稼げばマコトさんが借金をせずに済むわけです。

 これからは稼ぎまくりますよ」

 頼もしいというか何というか。

 まあ、俺の借金が減るのなら大歓迎だけど。

 でも怖いから詳細は聞かないことにしよう。

 俺が忘れようとしていると、ジェイルくんが別の書類を取り出した。

「ヤジマ学園教養学部はそれでいいとして、実は別の専門学部の設立申請が来ています」

「別のということは、つまり教養学部ではないということ?」

「はい。

 申請元はアレスト興業舎およびセルリユ興業舎です。

 つまりシルレラ様とラナエさんですね」

 面白いな。

 シルさんは「様」なのに、ラナエ嬢は「さん」になっているのか。

 ジェイルくんも近衛騎士なので、微妙に身分による扱いが変わってきているらしい。

 ジェイルくんは平然と続ける。

「申請内容は別々ですが、共同申請の形になっていまして、合わせてひとつの学部を設立して頂きたいと」

 ?

 よく判らないな。

「ヤジマ学園に新しい学部を作って欲しいんだけど、それぞれがほしがっているのは別々の学科ということ?」

「はい。

 仮称ですが学部名は『野生動物学部』、学科はそれぞれ『共同生活学科』および『共同作業学科』となります」

 あれか。

 シルさんが言っていた、野生動物を事業に組み込むというか、人間との共生を図ろうという話だな。

 最初はフクロオオカミだけだったんだけど、今は色々な野生動物が参加したがっているという話だったっけ。

 王都(こっち)でもヤジマ商会で猫喫茶とかを立ち上げたからな。

 それがアレスト市だけじゃなくて、王都(こっち)でも進行していると。

 なるほど。

「つまり、アレスト興業舎でやっていたサーカス課とか郵便課なんかの訓練をヤジマ学園でやらせようということか」

「そうなりますね。

 もともとあれは一種の研究というか、フクロオオカミたちと人間がお互いのスキルや生活状況を摺り合わせて、共同作業の最適解を探ろうというものでしたから。

 言われてみればヤジマ学園はそれにうってつけです。

 野生動物も研修生という形で受け入れられますし、人間側も一緒に学んだり訓練したりできるようになるわけで」

「考えてみたら、ヤジマ学園の医療課程ってあったよね。

 あれも組み込めばいいのか」

 なんだ。

 下地は出来ているじゃないか。

「そういえばそうですね。

 野生動物対象の医療課程は人集めが難航していて、まだ発足していませんが」

「だったら、全部一緒にしてしまえばいい。

 野生動物関係なら、もっとあるぞ。

 『ニャルーの(シャトー)』とかからも講師を迎えて、経済学科とかも作るか」

 ジェイルくんは、いつの間にか手にしていたメモ帳に凄い速さで何か書いていた。

 俺、またやった?

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