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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第七章 俺が学園理事長?

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8.叙爵ラッシュ?

 ハスィーの演説は見事だった。

 アレスト市のギルドでも似たようなことはやっていたんだろう。

 注目を集めて聴衆を踊らせる技能はピカイチだ。

 もっともそれは純粋な技能というよりは、容姿やカリスマの部分が大きいとは思うけど。

 傾国姫が何か話し始めたら、もう聞かずにはいられないんだよね。

 マジでハスィーがその気になったら、ソラージュ一国くらいはひっくり返せそうな気がする。

 ハスィーの演説が大盛況のうちに終わり、それで式典は解散となった。

「これからどうする?」

「簡単に事情を説明して、終わったらここに来て頂けるように手配しました。

 みんなが解散して目立たなくなるまで、ここで待機しましょう」

 さすがジェイルくん。

 俺は待っていればいいわけか。

 ため息をついて、近くの椅子に座り込む。

 子爵か。

 とりあえずハスィーには伝えないとね。

「おそらくですが、もう知っておられますよ」

 ジェイルくんが言った。

「どうして判る?」

「ハスィー様は演説で、理事長つまりマコトさんの事を近衛騎士(ロイヤルナイト)ではなく、子爵(ヴァイカウント)と呼ばれました。

 王太子殿下も当然事前にご存じでいらっしゃったでしょうから、先にお聞きしたのかと」

 あいかわらず耳が良くて頭が回る人だなあ。

 しかもイケメン。

 俺もこのくらい出来る男だったら人生変わっていただろうな。

「マコトさんが私程度の人間になってどうするんですか。

 こちらの世界に来られて2年もたたないうちにソラージュの世襲貴族にまでなられた方が、そんなことを言わないで下さい」

 いや、それは誤解とラッキーが重なった結果であってだな。

 そのとき大勢が近づいてくる気配がした。

 ハマオルさんがさりげなく俺をガードする位置に移動する。

 大丈夫だと思うけどね。

 ハスィーやヒューリアさんの声が聞こえたから。

「マコトさん!」

 真っ先に部屋に入って来たのは、やはりハスィーだった。

 そのまま俺の胸に飛び込んでくる。

 この北方種(エルフ)、もう全然人目を気にしなくなっているな。

 まだ婚約しているだけなんだぞ。

 対外的には。

 ハスィーの護衛役のリズィレさんが素早く滑り込んできて、ハマオルさんの隣に立つ。

 さすが。

「おめでとうございます」

 続いて入ってきたヒューリアさんが、ちょっと足を引いて貴顕に対する挨拶をしてくれた。

 フレアちゃんも帝国式らしい礼をとってくれる。

 みんな知っているらしい。

 グレンさんとモレルさんが入ってきて素早く左右に控え、その後から悠然と現れたのはミラス王太子殿下だった。

 名誉学園長も来て下さったのか。

 ミラス殿下の護衛らしい人が数人、部屋に入ってすぐに散開する。

 モレルさんがいれば、必要ない気がするけど。

 最後にユマ閣下が後ろの人たちに何か言って、ノールさんがドアを閉めた。

 大勢がついてきたんだろうな。

 でもここからは王太子殿下のプライベートだから。

 グレンさんが辺りを素早く見回してから緊張を解き、ミラス殿下に合図した。

「大丈夫だ、ミラス」

 その途端、ミラス王太子殿下は銀河英雄伝説のライ○ハルト皇帝を止めてミラスさんに変身した。

「疲れた。

 ずっと注目されっぱなしなんだもん。

 もう二度と式典なんかには出ないぞ」

 その場にいる人たちは護衛も含めて一斉に苦笑した。

 みんな、プライベートモードのミラス殿下のことが判っているらしい。

 フレアちゃんだけはちょっと目を見張っていたが、何も言わなかった。

 ムト子爵モードのミラス殿下を知っているからね。

 ジェイルくんやハマオルさん、リズィレさんには当然話してある。

 ここにいるのはそういう意味ではみんな身内だな。

「名誉学園長なんだから我慢しろ。

 それよりマコトさんに言うことがあるだろう」

 ミラス殿下は、あっそうかという表情で俺を見てちょっと頷いてくれた。

「おめでとう、マコトさん。

 陛下(ちちうえ)に聞かされたのが直前だったもので、お知らせできずに済みませんでした。

 大丈夫でしたか?」

「疲れましたが、大丈夫です。

 ご足労願って、申し訳ありません」

「いえ、僕も用がありますから。

 それにしても、陛下(ちちうえ)はセコい事をすると思いませんか?

 僕とマコトさんが親しくしているのを聞いて、慌てて動いたみたいなんですよ。

 こんな風にいきなり叙爵しなくたって、いくらでも方法があるはずなのに」

 陛下が?

 慌てているって?

「あの、それはどういう」

「このままでは、マコトさんを僕に取り込まれると思ったんじゃないかな。

 子供っぽい所がある人ですけど王様としては凄いから、政治的にまずいと判断したのでしょう。

 ラミット勲章も押しつけられませんでしたか?」

「あ、はい。

 頂きました」

「やっぱり。

 そういう所は子供なんだよなあ。

 僕やユマに張り合っても仕方がないのに」

 ミラス殿下がブツブツ言っても、誰も何も言わなかった。

 だって王陛下の話だよ?

 下手に突っ込んだら不敬罪か何かになりそうだし。

「ミラス、また本筋からずれているぞ」

 グレンさんに言われてミラス殿下は肩を竦めた。

「うん。

 時間もないし、やってしまおうか」

 何をするのでしょう?

 ミラス殿下はユマ閣下に目配せか何かをしたようだった。

 ユマ閣下が頷く。

 それを確認して、グレンさんとモレルさんが動いた。

「皆さん、ちょっと空けて下さい」

 机と椅子を動かして空間を作ると、まずミラス殿下が端の方に立った。

 その後ろにグレンさんとモレルさんが控える。

 ユマ閣下とノールさんがその横に立ち、俺も呼ばれて反対側に立たされた。

 その他の人たちが回りを囲むように配置される。

 何が始まるんだろう?

 でも対象は俺じゃないみたいだな。

 全員が位置についたことを確認してノールさんが進み出た。

 浪々たる声で述べる。

「近衛騎士の叙任は、王族および公爵以上の高位貴族が執行できる権利である。

 略式では、見届け役として正騎士以上の騎士位2名、および立会役として授爵者と直接利害関係のない高位貴族1名が必要となる」

 ええっ?

 聞き覚えがあるぞ。

 これって近衛騎士の叙任式か?

「叙任者」

 ミラス殿下がはっきりとした声で応えた。

「ソラージュ王国王太子、ミラス・ソラージュ」

「確認しました。

 見届騎士を申告します。

 近衛騎士叙任執行役を兼ねます。

 ララネル公爵家近衛騎士ノール・ユベクト」

 やっぱりだ。

 でも見届騎士役がもう一人必要なのでは。

「マコトさん、申告して下さい」

 ユマ閣下が微笑みながら言った。

 俺?

 あ、俺って近衛騎士だったっけ。

「ララネル家近衛騎士、ヤジママコト」

 子爵になったんだけど、いいのか?

 いいらしい。

 まあ、貴族の爵位は複数兼ねることができるはずだからね。

 納得しているとノールさんが言った。

「立ち会い役」

 誰を?

 すると意外にもフレアちゃんが進み出た。

「ホルム帝国皇女、フレア・カリーナ・ミレニア・ホルムです」

 そうか。

 フレアちゃんも帝国皇女なんだよね。

 あらかじめ聞かされていたらしくて、フレアちゃんに戸惑いは見られない。

 まあ、立ち会うだけだからな。

 もう公的にソラージュに留学していることになっているし。

 問題はないか。

 ノールさんが言った。

「ジェイル・クルト。

 ミラス殿下の御前に」

 ジェイルくんか!

 振り返ると、ジェイルくんが驚愕して立ち竦んでいた。

 君も知らなかったわけね。

 判るよ、うん。

 でも、世の中ってそういうものらしい。

 しょうがないよね。

 ジェイルくんが突っ立ったままなので、苦笑したヒューリアさんが背中を押してミラス殿下の前まで連れて行く。

 ヒューリアさんは知っていたのか。

 ハスィーも?

 いつの間にか俺の腕を軽くとっていたハスィーがにっこりと笑った。

 あちゃー。

 「学校」仲間は全員グルか。

 それはそうだろうな。

 ジェイルくんがよろよろと跪いて頭を下げる。

 ミラス殿下が手を伸ばして、手にした短剣でジェイルくんの両肩を叩いた。

「ジェイル・クルト。

 汝をソラージュ王国近衛騎士に任じる」

 良かったね、ジェイルくん。

 貴族仲間にようこそ。

 言っとくけど、すげー面倒くさいよ?

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