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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第五章 俺が真の迷い人?

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19.元・ギルド総評議長?

 ホスさんは「迷い人」についてもっと知りたいのなら訪ねてみるといいと言って、こっちの世界の名刺にあたる板を渡してくれた。

 ホスさんのものじゃなくて、その名刺の持ち主から託されたものだそうだ。

 いつでもいいので、待っているという。

 これも、やっぱり何か紐が付いているんだろうなあ。

 でもそこまで言われたら行くしかないか。

 その前にやることがある。

 こんな秘密、俺だけが抱えていられるもんじゃないからね。

 ちなみに秘密を漏らしてもいいでしょうか、と尋ねたところ、ホスさんは構わないとおっしゃった。

 自分は王政府の統制下にあるので「迷い人」に関する話はうかつには出来ないが、「迷い人」である俺には何の制約もないそうである。

 「迷い人」という存在には、ソラージュに限らずこの世界における一種の超自由権が認められているらしい。

 昔漫画で読んだけど、確かキャプテン・ハー○ックも似たような権利を持っていたな。

 地球にとって重要な存在であるので、何をしてもいいというか、地球政府による行動の制限を受けない権利だったっけ。

 ホスさんも言っていたけど、俺が気にくわないというのなら個人で攻撃したり排斥するのもまた自由らしいんだけどね。

 公的な機関や国としては「迷い人」の行動は一切制限しない、ということらしい。

 よくわからんけど。

 まあいい。

 というわけで、俺は早速幹部? を集めて洗いざらいぶちまけた。

 その会議に呼んだのはハスィー、ジェイルくん、シルさん、ラナエ嬢、ユマ閣下、ヒューリアさん、そしてハマオルさんにも来て貰った。

 ハマオルさんはもう、俺の身内みたいなもんだしね。

 それに、俺の警護をするのにこういった情報があるとないとでは動き方が違ってくるだろうし。

 場所は、人払いした俺の書斎。

 ハマオルさんは恐縮して壁際に立っていたけど、残りの人たちはソファーに座って俺の話を聞いてくれた。

 俺が話し終わると、まずラナエ嬢が言った。

「そういうことでしたの。

 で、それが何か?」

 意外な反応。

「何って」

「『迷い人』の秘密が判ったからと言って、マコトさんの存在が少しでも変わるわけではございませんでしょう」

「むしろ安心しましたわ」

 ヒューリアさんが続ける。

「つまりそれは、私たちが抱いていたマコトさんの印象が、そのまま真実だということですから」

「そうだな。

 私にはマコトが何に悩んでいるのかさっぱり判らん。

 マコトはマコトだろう?」

 シルさんが腕を組んで言う。

「そもそもマコトは『迷い人』なんだから、何でも自由にやれることが判って良かったじゃないか。

 ソラージュの王政府も黙認というか、手を出してこないことが判明したし」

「これからは思う存分、やれますね」

 ジェイルくん、これ以上何をやると?

(あるじ)殿のお心のままに」

 ハマオルさん、そればっかですね。

 ユマ閣下は微笑むばかりだ。

 ハスィーが俺の手を握ってきた。

 そうなのか?

 結構衝撃の事実だと思うんだけど。

「マコト、我々はマコトが『迷い人』だからここにこうしているわけではないんだ。

 そうしたいからここにいるだけだ。

 むしろ、マコトにとっては迷惑かもしれないがな。

 もし嫌なら言って欲しい」

 シルさんがそう言うので、俺は慌てて答えた。

「迷惑だなんて、そんな。

 みんなには感謝しているんです。

 俺だけじゃ何も出来ないどころか、まず間違いなく進退窮まっているはずだし」

「でもマコトさんがやりたくないとか、嫌だと思うことがあったらすぐにおっしゃって頂きたいですわね」

 ラナエ嬢、殊勝じゃない?

「すぐに何か別の方法に切り替えますから」

 結局やるのか。

「マコトさんがやりたいと思うことは何でもやって下さい。やりたくないことはやらなくてもいいです。

 わたくしはどんな時でもマコトさんの背中を守ります」

 ハスィー、泣いちゃうから止めよう。

「ほら、嫁さんもこう言っているんだから、もう気にするのは止めろ。

 マコトはどっしりと落ち着いていればいいんだ」

 シルさん、そう言いつつ自分は好き勝手やるつもりですね。

「マコトさんに刃向かう者は、すべて私が速やかに排除しますから」

 ユマ閣下、怖いから止めて!

「そういうことでいいな。

 私はそろそろアレスト市に帰る。

 砂豹(デザートパンサー)銀鷲(シルバーイーグル)の代表がアレスト興業舎に参加したいといって、現地で待っているらしいからな」

 また増えるんですね。

 野生動物が。

 いや鳥類もか。

「私はしばらく、王都で状況の把握に務めます。

 夕食会には出来るだけ参加しますので、何かあれば報告します」

 ユマ閣下、着々と戦略地図を整えつつあるみたいだな。

「わたくしもしばらくは、セルリユ興業舎の立ち上げにかかりきりになりそうです。

 マコトさん、王都のギルドに申請することが多々ありますのでお願いしますね。

 夕食会には出ますので」

 ラナエ嬢の仕事って凄いよね。

 でも俺を利用する気満々だな。

 俺ってそういう立場か(泣)。

「ところで、ハスィーはどうしますの?」

 ラナエ嬢の質問にはジェイルくんが答えてくれた。

「ハスィー様には、ヤジマ商会の会舎化と同時に副会長兼渉外担当役員をお願いしたく考えております。

 それに伴って、アレスト興業舎から異動させて頂きたい方がいるのですが」

「ほう。

 誰だ?」

 今はシルさんがアレスト興業舎の舎長だったっけ。

「アレナ・エイルス事務部長です」

「アレナか。

 ああ、ハスィー様の腹心でしたな。

 承知しました」

 アレナさんと言えば、(シルバー)エルフの美女だったっけ。

 そうか。

 あの人が来てくれるのか。

 アレナさんは、アレスト市のギルドでも教団担当とかやっていたはずだから、こっちでも任せてしまえばいいか。

 正直、僧正様が3人もいたら俺だけじゃ対応しきれんからなあ。

「アレスト興業舎王都支店長のマレさんも、いずれは頂きたいですね」

 ジェイルくん。

 君こそやりたい放題だね。

 マレさんもハスィーの片腕だったから、この際ヤジマ商会に両腕を揃えておいた方がいいのは判るけど。

「承知した。

 王都支店はセルリユ興業舎に吸収されるから、そのタイミングで異動させよう」

 シルさんとラナエ嬢が頷きあった。

 やっぱり事業運営会議になってしまったなあ。

 『迷い人』のことなんか、この人たちにはどうでもいいのかも。

 ほっとしたような、寂しいような。

 みんなが解散しようと腰を浮かせたところで、俺は思い出してホスさんから受け取った名刺? を取り出した。

「ホス・ヨランドさんから預かったんだけど、『迷い人』について知りたいなら、この人を訪ねてみればいいと言われたんです。

 どんな人なのか、判りますか?」

 俺の隣にいたハスィーが受け取って名刺を読む。

「カル・シミト様ですか。

 判りませんね」

 ラナエ嬢も首を横に振る。

 ヒューリアさんやジェイルくんもしかり。

「どれどれ。

 見せてみろ」

 次に名刺? を受け取ったシルさんは考え込んだ。

「何か判ります?」

「うーん。

 覚えがあるような、ないような。

 帝国にいたころ、どこかでこの名前を見たか聞いたかしたことがあるような気がするんだが……。

 すまん。

 思い出せん」

「いえ」

 ハマオルさんも黙って首を振る。

 それはそうか。

 ユマ閣下は名刺? を受け取ると少しの間宙を見つめて言った。

「このお名前は……何代か前のソラージュのギルド総評議長だと思います。

 かなり大きな業績を上げて、ギルド中興の祖と呼ばれていたと」

 さすがユマ閣下。

 貴族名鑑を丸暗記するくらいだからな。

 天才っているんだよね。

「そんな方が『迷い人』について何かご存じなのでしょうか」

「ギルドは情報の宝庫だからな。

 総評議長ともなれば、あらゆるデータを見放題だ。

 まあ、会ってみればわかるんじゃないか。

 問題はないだろう?」

「ええ。

 もう引退なさってかなりたっているはずですし、現在ではすべての公職から退かれていると思いますから」

 ホスさんの紹介だしね。

 王政府も認めているはずだから、危険はないだろう。

「それじゃ、ジェイルくん訪問の手配をお願いできる?」

「承知しました」

 いきなり尋ねることは出来ないからね。

 俺って近衛騎士だし。

 面倒だなあ。

「まあ、気軽に行ってこい」

 そういうもんですかね?

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