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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第五章 俺が真の迷い人?

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4.生足?

 曲が終わると、女の子たちがスルスルと舞台の袖に引っ込んだ。

 と同時に、反対側の袖から別の女の子たちが舞台に走り出てくる。

 さらに歓声が上がった。

 今度はシリーンさんのグループで、一曲ごとに交代制にしているらしい。

 歌って踊ってが重労働なので、ローテーションで回しているのだろう。

 考えているなあ。

「マコトさんの指示に従っているだけですよ。

 そのために複数グループにしたのでしょう?」

 いや、俺はそんなことまでは考えてないって。

 舞台では、一変してバラード調の曲が流れていた。

 中央にシリーンさんが立ち、その周囲を数人の美少女たちが静かに舞っている。

 やがてシリーンさんが歌い出した。

 やるな。

 俺もノールさんも、少し身を乗り出したくらい綺麗な歌声だった。

 回りの女の子たちも歌い出す。

 合唱のように音程で分けているようで、バラードが盛り上がる。

「これは、素晴らしいですな」

 ノールさん、こういうのが好みなのか。

 歌が続いている間も、舞台では女の子たちが緩やかに舞い続けていた。

 歌劇じゃないし、合唱でもない。

 何なんだろうね、これ。

 まあ、ウケているみたいだからいいか。

 ちなみに女の子たちの衣装は、やはり前半分がないスカートだ。

 でもロイナさんたちが派手な色だったのに対して、シリーンさんたちは白を基調とした大人しめの色で揃えている。

 ロイナさんのグループが「動」なら、シリーンさんたちは「静」か。

 個性を出せと言ったのが効いているらしい。

 シリーンさんはエルフの血が入った美女なんだけど、ハスィーさんほどの華麗さはなくて、むしろ清楚可憐的な美貌なんだよね。

 ロイナさんもどっちかというと可愛い系なんだけど、あの人は化粧で妖艶に化けるからな。

 シリーンさんは、同じ化粧するにしても可憐系でやったらどうか、とアドバイスしたことがある。

 ただそれだけで、シリーンさんは自分と同系統の美少女たちを引き抜いて自分のチームを立ち上げた。

 後は、ヤジマ芸能の他の登録者やどこからか連れてきた女の子たちを加えて、チーム・シリーンを作り上げてしまったんだよね。

 それについては、俺の方からロイナさんに言っておいたので敵対関係にはならなかったんだけど、やっぱりライバル的な敵愾心はあるらしい。

 まあ、方向性が全然違うからそれぞれの支持層が重なることはないだろうけど。

「今のところ、五分五分ですね」

 ソラルちゃんが言った。

「チーム・ロイナのファンは熱狂的な追っかけが多いのですが、グッズの売り上げはチーム・シリーンが勝っています。

 ただ問題なのは、この2チームが突出しすぎていて、他のチームやグループがイマイチなことで」

 いつの間にグッズなんかを!

 最近ヤジマ芸能の売り上げと利益率が妙に急上昇しているのは、そのせいか!

「だからマコトさんの指示ですよ。

 アレスト興業舎でも、何かの公演ではそれに合わせた小物などを売ればいいと教えて下さったじゃありませんか」

 そんなこと言ったっけ?

 ああ、フクロオオカミの置物とかのことか。

「あの時のことを思い出して、アレスト興業舎の制作部門から仕入れた小物にロイナさんたちがサインしたものを売り出したんです。

 上々の売れ行きです。

 現在、アレスト興業舎で新しい小物を開発しているところです」

 凄い。

 アイドル業界のことなんか知らないはずなのに、この商魂は何だよ?

 まあ、あのマルトさんの娘だからな。

 商売人としての素質は十分か。

 俺は、ふとアニメで観たシーンを思い出して言った。

「小物なら、例えば暗闇で光る手の平サイズの棒とか、派手な色の小旗なんかもいいんじゃないか?

 公演の前に入り口で売るんだ。

 これから目当てのアーティストを応援するためのグッズにもなるし、記念品にもなる。

 それぞれ公演日とかを入れれば、何度でも売れると思うよ」

 ソラルちゃんの目が光った、ような気がする。

 無言で懐からノートを取り出すと、一心に書き込み始めるソラルちゃん。

 商人、いや経営者の鏡だね。

「さすがですな。

 マコト殿」

 ノールさんが言って、ハマオルさんが頷いた。

 いや、だから今のはインチキというかカンニングで。

 舞台では歌が終わったようで、波が引くように女の子たちが舞台袖に引き上げていくところだった。

 続いて反対側の袖から走り出てきたのは、少し年下と思われる少女たちだ。

「イレイスの一座ですね。

 先の二つのチームほどではありませんが、一部に熱狂的な人気があります」

 ソラルちゃんが言う理由が判った。

 突然、観客席の一部が盛り上がったんだよね。

 声を限りに叫んでいるお客さんたちがバラバラといるらしい。

 無理もない。

 イレイスちゃん、ひょっとして判ってやってる?

 少女たちは、みんなイレイスちゃんと同じか、少し年下に見えた。

 衣装はシンプルで、むしろ作業着のようにも見えるほどだ。

 だが下半身は凄かった。

 全員、ショートパンツみたいなものを履いているだけなのだ。

 太ももから足首までが剥き出し。

 露骨な生足である。

 これはちょっと、問題かもしれない。

 俺はそっとノールさんを伺ったが、平然としていたのでほっとした。

「ほう。

 なかなかの動きですな」

 良かった。

 ロリとかそういう方面でのお咎めはなさそうた。

 ノールさんは司法補佐官をやっていて、そういう法的な違反には詳しいから、もしイレイスちゃんたちの格好が何かの法律に触れているんならここで言ってくれるはずだしね。

 つまり、イレイスちゃんたちの衣装も法的な難癖がつけられるようなものではないと。

 風紀紊乱の方は判らないけど。

 地球ならあのくらいは当たり前だけど、こっちではどうだろうか。

 ひょっとしたら、大きなお友達の劣情を刺激してしまうかもしれない。

 性犯罪については、こっちではどうなっているのかは不明だけど、人間だからそういう性向の人が皆無ということはあり得ない。

 イエス○リータ、ノー○ッチとは限らないのだ。

 もっとも、そういう方面ではロイナさんたちの方が危険という気もするな。

 気をつけるように言っておくか。

 舞台では、イレイスちゃんたちが歌いながら踊っていた。

 というよりはもう、あれはアクロバットだな。

 キレのいい動きとラッシュ系の歌で、縦横無尽に舞台を飛び回る演技に歓声が止まらない。

 なんだ、人気あるじゃないか。

 3チームとも支持層の棲み分けが出来ているみたいだな。

「面白いことに、すべてのチームが好きという人はほとんどいないんですが、あの3チームの中の2つを好むという人が半分くらいいます。

 それも組み合わせがバラバラで、どういう基準なのか判りませんが」

 ソラルちゃんが言った。

 それは、俺もよく判らん。

 でもまあ、人気があるんだからいいんじゃないの?

「そうですね。

 後はファンを増やしていくだけです」

 まあ頑張ってね。

 プロデューサーとしての俺は、もういらないだろうし。

「そんなことはありません。

 毎日のように聞かれますよ。

 マコトさんが次に来るのはいつかって。

 相談したいことが山のようにあるとか言ってました。

 それに、サマト&レムリがあれほどまでになったのは、意味がわからないんですがマコトさんに観て貰ったからだという噂があって」

 何だそりゃ。

 うーん。

 なんかもう、あとは自分たちで考えてやっていけばいいと思うんだよね。

 俺が知っているのは架空の芸能界の話で、しかもアニメとかからのいい加減な知識だけだし。

 今までは何とか通用したけど、地球とこっちでは芸能の常識も違うし、今後は自然な発展に任せるべきではないかと。

「そんなこと言わずに、お願いします。

 せめて、デビューするアーティストのチェックだけでもして下さい。

 ここでマコトさんに見放されたら、ヤジマ芸能は空中分解してしまうかもしれません」

 ソラルちゃん。

 口説き文句、というよりは殺し文句凄い。

 成長したね?

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