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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第四章 俺がプロデューサー?

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21.学園構想?

 不安はあったけど、考えていても仕方がない。

 俺はいつものように問題を丸投げして、ヤジマ商会に戻った。

 猫喫茶はキディちゃんにまかせた!

 もう猫喫茶じゃなくなっているような気がするけど。

 執務室に向かい合って座ると、ジェイルくんが書類をめくりながら言った。

「猫喫茶はあれでいいでしょう。

 ところで『小学校』の件ですが」

「何か問題でも?」

 あれはヤジマ芸能でやっているだけなのではないか。

 ていうか、そもそも立ち上げとかしたっけ?

「ヤジマ芸能でテスト運用を行ったわけですが、とりあえずは成果ありと認められました。

 学習速度に個人差があるので確定ではないのですが、一定期間の受講で大半の者が読み書き程度は出来るようになることは実証されています。

 そこで、次の段階として教室の拡張を行います」

 あいかわらず早いな。

 そんなに全力で走り続けて、息切れしないの?

「何、私は計画するだけですよ。

 決めるのはマコトさんですから」

 何それ?

 責任は俺?

 大体、俺が決めるのってもう、何もかも計画済みであとはサインするだけっていう決裁だけだよね?

 俺の意思とか、ほとんど関係ないような気がするんだけど。

「いやあ、最初のサジェッションはマコトさんですから」

 どうも俺ってこの人たちに食い物にされているだけなような。

 まあいいか。

 しょうがない。

「具体的には?」

「ギルドで募集をかけます。

 初歩の読み書きを教える『小学校』が出来た。

 月謝は後回しで良いと」

「それだと、食い逃げが来そうだけど。

 食い詰めた人とかも。」

「今度は教えるだけですから。

 それに、本当に食い詰めた人は来ませんよ。

 生活費は出しませんから。

 しかも、後で金を取ると言っているんです」

 そうか。

「本気で向上しようという人しか来ない、と。

 でも、やる気があっても食うや食わずやの人も来れないよね、それじゃ」

「マコトさん。

 慈善事業じゃないんです。

 本当に食い詰めていてる人は、残念ながら採用できません。

 残酷なようですが、そこで足切りです」

 ジェイルくんは真面目な顔で言った。

 うーん。

 商人なんだな。

 無料でやってやるとか、施しというわけではないと。

 商人は、利益になることしかやらない。

 将来に向けての投資か。

「てことは、『小学校』を卒業した人を雇うんだ」

「はい。

 もちろん優秀な者からですが。

 ただし、駄目な人でもアレスト興行舎でやったように、何かしら使い道はあるものです。

 少なくとも初歩の読み書きが出来るのなら、どうとでも使えます」

 シイルの昔の仲間の、あの何てったっけかの悪ガキたちのことだな。

 連中、ホトウズブートキャンプで鍛えられた後は、アレストサーカス団の警備員や下働きとして結構役に立っていたからね。

 なるほど。

「やっぱり王都に作るっていう施設の要員?」

「その予定です。

 ラナエ舎長代理から要請されているんですが、王都にサーカスが開団したらかなりの人数の雇用が必要になります。

 始まってから募集をかけるより、今のうちに養成しておこうということです。

 既に技術や技能がある者より安く上がりますから」

 凄いなあ。

 でもこれって、資金があるから出来ることだよね。

 そもそもこっちの世界で学校が発達しなかったのは、学校を作って維持する資金を用意できなかったからだ。

 ハスィーさんたちが行った「学校」だって、王太子と側近を教育するという目的で無理矢理設立資金を集めたから出来たようなものだし。

 しかもそのせいで、アレスト家みたいに財産を消耗してしまう家が出ているくらいなのだ。

 それをあえてやると。

 つまり、将来的な自舎の舎員候補を自前で育てようということか。

 もちろん全員を雇用するわけじゃないだろうけど。

 日本でも、特にIT業界にはそういうコンセプトの学校がいくつかあったっけ。

 IT企業が情報処理関係の専門学校を持っていて、優秀な卒業生を優先的に雇うのだ。

 もちろん卒業生全員を雇用は出来ないから、それ以外の人は別の会社に就職する。

 北聖システムにも何人かそういう専門学校出身の先輩がいたけど、正直みんなあまり優秀というかんじはしなかったな。

 それはそうだ。

 優秀だったら親会社が雇っているはずだし。

「なるほど了解した。

 でも、雇えなかった人ってどうなるの?」

「実は、いくつか構想があります」

 ジェイルくん、本当に凄いよ。

 もう君がヤジマ商会を率いた方がいいよ!

「とんでもない!

 ヤジマ商会の(あるじ)はマコトさんですよ。

 それに、私なんか状況を整理して計画を立てるだけで、経営の方向は決められません」

 いや、それが出来れば立派な経営者だと思うけど。

 しかしジェイルくんはそんな俺に構わずに話を進める。

「ラナエ舎長代理から、アレスト興行舎の拡大版を王都で設立するという話が来ています。

 つまり、サーカスだけではなくて騎士団や警備隊との協力が出来る体制を作る必要があるということですね。

 まず、その要員の確保」

「フクロオオカミを連れてくるの?」

「シル事業本部長の話では、まだ流動的だということです。

 もっとも、いずれにしても野生動物との協調による事業の立ち上げは必須です。

 野生動物関係の事業展開はシル事業本部長に任せるとして、そのサポート要員として大量の人間が必要になります。

 ヤジマ商会は、その要員を用意します」

 なるほどなあ。

 「小学校」を卒業した人には、いろいろな進路があるわけか。

「それとは別に、新事業の担当者やヤジマ商会の中堅幹部候補の育成も必要です」

「『小学校』を出たくらいで、大丈夫なの?」

「シイルたちの例もありますから。

 機会に恵まれなかっただけで、チャンスがあればどんどん登っていける人たちもいることはご存じでしょう。

 いやすみません。

 これはマコトさんの方が詳しいですよね」

 だーかーらー、シイルたちの件は偶然だって!

 俺はそんな構想、まったくなかったから。

「『小学校』の他に、『中学校』や『大学校』を作るという話は前にしましたよね?」

「そうだね」

「ハマオルやサリムと話したのですが、帝国の中央警備隊や官僚組織を退官した人たちに協力して頂けるようです。

 高度な技能や知識、実務経験などを伝授して貰えれば、数年で幹部候補やそれなりの専門家が育つかもしれません」

 呆れた。

 もう言葉もないよ。

 クルト交易、ジェイルくんが会頭になったらソラージュの業界を制覇してしまうんじゃないの?

「ああ、それはもういいです」

 ジェイルくんが黒く笑った。

「ヤジマ商会での立場を頂けましたから。

 現時点でも既に、動かせる資金量で言えばクルト交易を越えています。

 もちろん商売はそれだけではありませんが、ヤジマ商会はこれからですから」

 将来的にはクルト交易を買収してもいいですね、と爽やかに語るジェイルくん。

 怖っ!

 ラナエ嬢に乗り移られたな?

 とても俺の手には負えない。

 もう黙って従うしかないな。

「ということで話を戻しますが、とりあえず『小学校』の生徒を収容するための『教室』が必要になります。

 新しく作るには時間と金がかかりますから、既存の物件をいくつか買収しようと考えています」

 いいんじゃないの(投げやり)。

「管理をなるべく簡単にするために、一カ所にまとめたいのでムストさんに場所を探して貰ったのですが……いい土地が見つかりました」

 ジェイルくんはそう言って、王都の地図らしい紙を広げた。

 こっちの地図は、日本と違って極めて大雑把なもので、大体の位置関係しか判らない。

 ギルドでは土地の管理などを行っているので、それなりに正確なものがあるらしいけど。

 ちなみに固定資産税などはまだ導入されていないらしく、どんなに広い土地を持っていても無税だ。

 ただし、ここでいう「土地」は土地そのものではなく、土地の使用権とも言うべきものだ。

 土地は国と貴族以外は所有できないことになっているんだよね。

 封建制度だから。

 結構高いし、その売買には税金(ギルドの手数料)がかかるらしいけど。

 野生動物の勢力範囲は土地使用が禁止されているし、当然売買も駄目らしい。

 税金を取れない土地が広すぎるのだ。

 だったら税金をかけても無駄だということだね。

 ジェイルくんが指さしたのは、かなり郊外の方だった。

 近くに太い線で囲んだ土地がある。

「ここは?」

「サーカス団予定地です」

 もう場所まで決まっているのか。

「この辺りは空き地や倉庫区画ということで、土地(使用権)が安いですし、空いた建物が既にありますから」

「いいんじゃないの?」

「判りました。

 では、『仮称ヤジマ学園』の設立準備にかかります」

 またヤジマかよ!

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