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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第四章 俺がプロデューサー?

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11.人集め?

 俺の言葉に、アイムさんは唖然とした顔を向けてきた。

「これでいいんですか?」

「うん。

 もちろん編曲はするけど著作権は君にあるから、十分な収入になると思う」

「チョサ…クケ?」

「あ、いや曲の権利というか」

 判らないらしい。

 そうだよね。

 ああいうのは、録音や再生が大々的に始まらないと、あまり意味を持たない。

 コピーするにしても、それなりの費用がかかる場合はかえって赤字になったりするからね。

 そもそも日本ですら、明治時代くらいまでは本の著作権自体がよく判ってなくて、外国の小説を翻訳したものを訳者が自分の作として発表していたと聞いている。

 うーん。

 こっちで著作権ビジネスは無理か。

 でも、これだけの才能を逃すのは惜しい。

 あまり無理させないで、ゆっくりと伸ばすべきだよな。

 大事に育てて行こう。

 でもアイムさんは、まだ半信半疑のようだった。

「自分で書いていて言うのも何ですが、これって本当に無意味な歌ですよ。

 何の役にも立たないし。

 私は考えることが苦手で、いつも思いついたことを並べてそれらしく作ってしまうんです。

 だから吟遊詩人としては最低だと師匠に」

「でも需要はあると思うんだよ。

 まあ、任せておいて。

 ところで、アイムは歌詞だけじゃなくて曲も作れる?」

「あ、はい。

 出来ます。

 というより、歌詞を考えるときにはむしろメロディが先にでてくるので」

 ほう。

 益々もって得がたい才能ではないか。

「楽譜は書ける?」

「何とか出来ますけれど……正式な訓練を受けていないので、遅いし下手です」

「よし。

 じゃあ、楽譜を書くのが得意な人を用意するから、続けて曲を作るのと並行してその人にメロディを教えてあげて欲しい。

 そうすれば、君が作った歌を誰でも歌えるようになるから」

「そうですね……」

 まだよく判ってないみたいだけど、いいのだ。

 釈然としない顔をしているアイムさんに「君は正式にヤジマ芸能で雇用するから」と約束して送り出す。

 後で、ジェイルくんに楽譜書き担当者の手配を頼まないとね。

 ほっと一息ついていると、興奮したサマトくんとレムリさんが事務室に駆け込んできた。

「マコトさん!

 判りました」

「やっぱりマコトさんが鍵でしたわ」

 何それ?

「何曲か演ってみましたけど、すべて完璧です!」

「ご心配おかけしましたけれど、もう大丈夫です」

 で、何だったの?

「それがですね」

 サマトくんはレムリさんと顔を合わせて笑った。

「マコトさんが見ているぞ、と自分に言い聞かせながら演ってみたんです。

 最初は駄目だったんですが、レムリと息を合わせてやってみたら」

「出来ましたの」

 ほう。

 「レムリ」と呼び捨てか。

 しかしまだ判らん。

「俺が見てなくても、いるつもりになって演ったってこと?」

「そうです。

 しかも、俺たちが同時にそう考えてないとうまくいかないみたいで」

「でも、一度やり方を覚えてしまったら簡単でした。

 自己暗示というのでしょうか、顔を見合わせて『マコトさんが見ている』と思うだけで、驚くほど息が合った演奏ができるのですわ」

 何それ「マリア様が見ている」の俺版?

 レムリさんも興奮しているのか、顔が赤い。

 いや、これって俺をダシにして、二人の仲が急接近したってことじゃないのか?

 まあいい。

 うまくいったのなら、方法はどうだっていいのだ。

 俺には関係ないし。

 しかし、何で俺?

「さあ。

 強いて上げれば、マコトさんが俺たちのプロデューサーさんだから、じゃないでしょうか」

 それかよ!

 アイマ○じゃないんだから、勘弁して欲しい。

「とにかく、解決して良かった。

 レパートリーはとりあえず今あるのでいいから、後はそれを磨いて完璧にしておいてくれ。

 デビューまでに」

「「デビュー」」

 サマトくんとレムリさんは、同時に息を止めた。

「出来るんでしょうか、俺たちに」

「こんな芸能、誰もやったことがないと思いますけれど」

「だからインパクトがあるんだよ。

 まあ、そういうことだから」

 めんどくさくなってきたので、俺は適当なことを言って二人を追い出した。

 我ながら堪え性がないなあ。

 別れ際に、二人をユニットとしてヤジマ芸能で本採用することと、もう学校で教師をやらなくてもいいから本業を磨くように言いつけておく。

 よし。

 これで、とりあえず最初のアーティストは何とか確保できた。

 なるべく早く活動を再開させないと「芸能活動をしていない」ということで、ギルドの営業許可を取り消されるかもしれないと言われているからね。

 王都の芸能組合が裏で動いているらしいし。

 金にならなくても、とりあえず芸能活動をしているという証拠が欲しかったのだ。

 ジェイルくんと相談して、とりあえずそこら辺で演らせてみるか。

 そういえばユニット名とかも決めないとね。

 あと、コンサートやライブやるとしたら裏方もいるじゃないか!

 誰か、丸投げ出来る人を雇うか。

 そう思っていると、控えめなノックの音がした。

「マコトさん?

 今よろしいですか?」

 ロイナさんか。

「いいよ」

「失礼します」

 二人が入ってきた。

 ロイナさんとイレイスちゃんか。

 そういえば、この二人も今日が締め切りだったっけ。

 ゆっくりでいいと言っておいたんだけどね。

 人集めなんか、そう簡単にはできないはずだし。

「集めましたので、見て頂けませんか」

 イレイスちゃんも頷いている。

 もうかよ!

 テキトーに選んだんじゃないだろうな?

「判った」

劇場(こや)に集合していますので」

 本当なのか。

 二人について劇場(こや)に行く途中でジェイルくんにも声をかけて、ついてきて貰う。

 ハマオルさんと、たまたまヤジマ芸能に来ていたソラルちゃんも合流して、大名行列になった。

 劇場(こや)の空いている場所に、様々な格好をした人が集まっていた。

 お世辞にも整列とは言えない。

 何となく並んでいるというレベルで、前にアレスト市で見た騎士団と比べるべくもない。

 ああいうのは訓練しないと駄目なんだろうな。

 俺たちが向かい合って立つと、まずロイナさんが右側に集まっている人たちを示して言った。

「あたしのグループです。

 全部で12人います。

 半分くらいは、私の昔の知り合いです。

 演技より、動ける人を選びました」

 ロイナさんの知り合いというと、旅芸人関係か。

 俺はざっとその人たちを眺めた。

 全員女性。

 歳はよく判らん。

 全員、化粧しているんだよね。

 色っぽいというか、誘惑モード?

 何のつもりなんだか。

「ロイナ、これは何だ?」

 思わず声が出た。

「何とは?」

「みんな着飾っているし、ベタベタに化粧しているじゃないか。

 動ける人を選んだんじゃないのか?」

 厳しい!

 我ながら、何様だよ!

 でも妥協は出来ない。

 俺の借金返済がかかっているのだ。

 ロイナさんは口唇を噛んだ。

「申し訳ありません」

「全員、化粧を落として動ける格好して来い!

 駆け足!」

 熱血かよ!

 自分で突っ込んでいる間に、ロイナさんのグループはわっとばかりに走り出した。

 我先に劇場(こや)から出て行く。

 ロイナさんも俺に一礼すると後に続いた。

 ハマオルさんが苦笑しながらゆっくり後を追ってくれた。

 フォローは任せる。

 俺は厳しい顔のまま、イレイスちゃんを見た。

 しまった。

 怯えきっている。

 集まっている連中も同様だった。

 こっちも、見事に女の子だけだな。

 娘にもなってないような少女ばかりだ。

 つまり、イレイスちゃんと同年代かそれ以下。

 かろうじてロリ回避といったところか。

 素晴らしい。

「イレイス、君のグループは?」

「あ、あの、わたしもヤジマ芸能では探せなくて、街で探してみたんです……」

 ほう?

 それは大したものだ。

 何の伝手もなくて人を集めるというのは、口で言うほど簡単なことじゃないからなあ。

 例えば俺なんか、絶対無理。

 参考までに方法を聞いておきたい。

「その……困っていたらトムロさんとテムさんが相談に乗ってくれて、だったらアレスト興行舎でヤジママコト近衛騎士様がやった方法がいいんじゃないか、と」

 トムロとテム。

 あ、あの小僧たちか!

 名前覚えなきゃと思っているんだけど、まだ駄目だ。

 しかし、あいつらが何を?

 ていうか、俺?

「ヤジママコト近衛騎士様は、街の広場などで絵本を読むことで、子供たちの興味を引いて集めたそうです。

 だから、あたしも広場に行って軽業を」

 あれか!

 いや、あれって全然そういうんじゃないから!

 俺が転職までの暇つぶしに絵本読んでいただけで。

「そしたらこの子たちが集まってくれたので、誘ったらやりたいって」

 そうですか。

 それは良かった。

 って、いいのか?

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