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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第四章 俺がプロデューサー?

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4.オーディション?

 ジェイルくんが提案するところの「小学校」の開校までにはまだ時間がかかるということで、先にオーディションをすることになった。

 募集対象は芸能関係者ということで、特に分野は定めない。

 デキる人が来たら、全員採用の予定だ。

 合格した人を鍛えて売りだそうという計画である。

 応募資格も特になくて、素人からすでにヤジマ芸能に所属している人、あるいは他で活動しているプロでも可能だ。

 まあ、既にきちんとした芸能活動が出来ている人が応募してくるとも思えないけどね。

 ヤジマ芸能は王都の芸能組合から出禁を食らっているので、常識で考えたらそんなところに所属していいことは何もない。

 つまり、俺が求めている人材はそれ以外ということだ。

「募集はどうやってかける?」

「ギルドの広報部門とハローワークにお願いするのと、後は口コミですね。

 ヤジマ芸能の舎員にも芸能関係者に繋がりがある人が多いので、そこから広めて貰いましょう」

 そんなやり方で人が集まるかどうか怪しいと思ったが、とりあえず第一期だからと思い直した。

 これきりじゃなくて、定期的にやればいいだけだ。

 一期生、二期生の活動が話題になれば、希望者も増えるだろうし。

 とりあえず、最悪でもヤジマ芸能の舎員は全員応募してくることになるから、格好はつく。

 そう思っていたんだけどね。

 オーディションの当日、俺はまたあの光景を見ることになった。

 アレスト興行舎のサーカス開団日と同じだ。

 それほど広くもないヤジマ芸能の門の前は人で溢れていた。

 並びきれずにかなり遠くの道路にまで人がたむろしている。

「まずいね。

 これじゃ、交通妨害だ」

「それはともかく、このままではオーディションなど出来ませんよ。

 整理券を出しましょう」

 それしかないか。

 せっかく来てくれた人には悪いけど、今日は予約ということで帰って貰おう。

 アレスト興行舎の王都出張所舎員を総動員して急遽整理券を作って配り、予約日にまた来てくれるようにお願いして帰って貰った。

 呼んでおいて帰れというんだから、文句を言われても仕方がないと思っていたんだけど、逆に異様に感謝された。

「絶対受けに来ます!」

「無給でもいいので、入れて下さい」

「こんな会舎で働きたいです!」

 あまり感激するので訳を聞いてみたら、こういう募集はめったにない上、応募しても面接すらしてくれずに追い返されることが多いのだそうだ。

 というよりは、そもそもオーディション形式の募集なんかほとんどなくて、大抵はコネで決まってしまうらしい。

 それでも仕事が欲しいので、少しでも可能性があるのなら出かけるのがこっちの芸能人というものだということだった。

 この辺りは地球と変わらない気がするなあ。

 劇団とかでも、募集人員若干名に何百人も押し寄せるというし。

 アイドルオーディションなんか、下手すると確率数千倍だもんな。

 まあコネについてはこっちほどひどくはないだろうけど。

 とにかくそういうわけで、翌日からオーディションを実施した。

 第一次審査員は俺とジェイルくん。

 それにオブザーバーとしてハマオルさんを加えた3人体制なのだが、ハマオルさんはむしろ俺の護衛だし、ジェイルくんは助言役なので、実質的には俺の独断になってしまった。

 まだ、俺が描いている構想がよく判らないというので、採用には口出し出来ないというのだ。

 まあア○ドルマスターなんか口で言っても説明しきれるもんじゃないからね。

 そもそも、こっちにはアイドルという存在自体がまだない。

 いるのは「スター」で、それも大方は貴族や大商人がパトロンについている、地球で言うと昔の西洋のオペラ歌手みたいなのだけらしい。

 大衆レベルでは、美形の吟遊詩人とかイケメンの俳優とかがそれっぽい存在なのだが、だからといって熱狂して追っかけが出るほどではないそうだ。

 芸能活動自体、貴族がパトロンになってやっている高級な楽団や劇団以外は村祭りの余興といったレベルに留まっている。

 にもかかわらず、芸能人口はそれなりにいて、飽和しかかっているらしい。

 入れ食い状態ではないか。

 俺の知識もアニメやゲームのでしかないし、本格的な演芸なんかほとんど見たこともないので、正直突っ走っていいものかどうか悩んだんだけど。

 しょうがないと思い直した。

 ここで止まっても、借金が増えるばっかなんだもん。

 ジェイルくんが「失敗してもいい」と言ってくれるので、もう知らん。

 ということで、もとセレス芸能の劇場(こや)だった建物の舞台にオーディション会場を作り、机を並べて一人あたり5分程度で自己アピールをやってもらったんだが。

 困った。

 スゲー上手い人がゴロゴロいるんだよ!

 宴会芸どころじゃない。

 俺の目から見ると、日本だったらすぐにでもデビューしてもおかしくないレベルだ。

 もちろん素人判断だから色々と瑕疵はあるんだろうけど、俺の目から見てこれは! と思える人もちらほらいた。

「とりあえず、マコトさんが見てイケると思った人は全員合格させましょう」

 ジェイルくんが無責任に言い放った。

 いいのか?

「これは第一次審査ですからね。

 次でもっと絞れるはずです。

 今はとりあえず、整理券を渡した人を片付けるのが先です」

「それもそうだね」

「なあに、いざとなったら全部合格させてしまいましょう。

 人数だけで王都の芸能分野を征服してしまうという方法もありますよ。

 ダンピングして先方を倒産に追い込み、それからヤジマ芸能が業界を支配するとか」

 怖いから止めて!

 マジで、ジェイルくん性格変わってない?

「いやあ、これだけの資金があると何でも出来る気がしまして。

 商人冥利に尽きる状況です」

 それ、何度も言うけど資産じゃなくて俺の借金だから!

 儲けないと、俺が破滅するから!

「判っています。

 今のは冗談ですよ」

 どうかなあ。

 まあいいか。

 そういうわけで、俺とジェイルくんはアレスト興行舎やヤジマ商会の仕事を他の人に押しつけて、ひたすらオーディションを続けた。

 凄かった。

 整理券が数百枚は出ていたもんなあ。

 番号が飛び飛びなので、来なかった人もいたらしいけど、それでも多すぎて最後の方になるともう、何がなにやらよく判らなくなっていたもんね。

 一人5分、準備に5分で1時間に6人くらい片付けるんだけど、色々手違いがあったり5分じゃアピールできないと泣きつかれて伸びたり、朝から夕方まで続けても結局、1日に50人くらいしか審査できなかったわけで。

 さらに、整理券はないけどどうしても受けたいという人が飛び入りしてきたりして、とりあえず全員審査し終えたのは1週間後だった。

 俺とジェイルくんは、その翌日沈没した。

 ハマオルさんは平然としていたけど、俺たちは軍人じゃないし。

 一日たっぷり休んで何とか回復した俺とジェイルくんは、ヤジマ商会の事務室で第一次審査を通過した人たちの書類を見た。

 実はアレスト興行舎の舎員に受験者からプロフィールを聞き出して貰っていたのだ。

 というのは、こっちには履歴書みたいな制度がないし、芸能関係者が読み書きできるとは限らないからで、そういう人は聞き取り調査をするしかない。

 でないと、正体不明未確定人物を採用することになってしまうかもしれない。

「それでもスパイが入り込むのは仕方がないでしょうね」

「うん。

 採用されてから裏切る可能性もあるしね」

「対策はどうしますか?」

「別に。

 スパイは寝返らせればいいし、裏切った人には出て行って貰えばいい。

 こっちには別に秘密があるわけじゃないから、いくらでも嗅ぎ回ってくれてかまわないよ」

 ジェイルくんは感心したようだった。

 でも実際、スパイがいても実害はないと思うんだよね。

「なるほど。

 確かにそうですね」

「ただしテロリストは警戒しないとね。

 ヤジマ芸能の舎員が何か事件を引き起こした、という状況は願い下げにしたい」

「それは、こちらで警戒します」

 ハマオルさんが言った。

「すでに合格者の身辺調査を始めております。

 マコト殿は、気兼ねなく採用活動をお続けになって下さい」

 凄いよハマオルさん!

 いつの間にか、俺の左腕になっているよ。

 ちなみに右腕はジェイルくんね。

 頭かもしれないけど。

「ということで審査ですが」

「うん。

 もうちょっと絞りたいね」

 第一次審査の合格者は百人を超えていた。

 いくらなんでも多すぎるんだけど。

「この人たち、全員正規の舎員じゃなくてもいいから、受け入れられないかな」

「といいますと?」

「セレス芸能がやっていたみたいに、登録だけして貰うとか。

 見習いという形で残って貰いたいんだよ。

 ものになるようなら受け入れるということで」

 ジェイルくんは、いつものように爽やかに微笑んだ。

「いいですよ。

 やりましょう」

 無責任?

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