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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第一章 俺は顧問で非常勤?

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23.元同僚?

 護衛というのを甘く見ていた。

 つまり、少なくとも外出する時は必ずそばにいなければならないのだ。

 どこで何があるか判らないんだから。

 いや、ホテルの中は?

「このホテルは、防犯チェックがしっかりしていますので、マコト殿の外出の時のみ同行します」

「私がホテルにいる時はどうしているんですか」

「外で待機していますが?」

 いやいやいやいや!

 せめてホテル内にいましょうよ!

「しかし、こういった宿泊施設には、護衛が待機できるような部屋がなく」

「今私が泊まっている部屋でいいですよ!

 護衛なんですから!」

 ハマオルさんは、俺の顔を見てにっこりと笑った。

(あるじ)殿の仰せのままに」

 何その言い方。

 どうもハマオルさんって、そういうのが好きなんじゃない?

 シルさんへの忠臣ぶりも、趣味的な臭いがプンプンするぞ。

 まあ、帝国の中央護衛隊っていう組織自体がそうなのかもしれないけど。

 プロの護衛だからね。

 SPみたいなものか。

 出張所にいったん帰るというジェイルくんと別れて、俺はハマオルさんを伴って部屋に戻った。

 まず、ハマオルさんを入り口のそばにある小さい部屋に案内する。

「すみませんが、ここを使って貰えますか」

 小さすぎて失礼かと思ったけど、ハマオルさんは素直に頷いて持っていた自分の荷物を部屋に入れた。

「シルレラ様と同じですな。

 目下の者にも気配りを忘れず、それでいて貴顕としての節度も保つ。

 お仕えする(あるじ)として、これ以上の方はおられません」

 そういうのいいから。

 俺としては、別にハマオルさんに気を遣ったというわけではないからね。

 ただ嫌でしょう、ホテルの外で待たせるなんて。

「ハマオルさんは私の護衛なんですから、何でも自由に使って下さい。

 俺の許可がなくても、必要だと思ったら動いていいです。

 責任は私がとりますので」

 何でこういう言い方になっちゃうんだろうなあ。

 ていうか、そもそもハマオルさんにどう聞こえているのか判らないけど。

 でも魔素翻訳でそれらしい意味になっていることを信じたい。

 ハマオルさんは、また微笑んで一礼しただけだった。

 何で俺なんかに!

 褒め殺しとか、玉虫色とかってこれなんじゃないの?

 何かで読んだけど、平安時代の日本では、滅ぼしたいと思った相手(貴族)の位階をやたらに上げるという暗殺(違)方法があったそうだ。

 つまり、人を相応しい格(位階)より上げすぎると、身体や心に無理がかかって破滅すると信じられていたらしい。

 平清盛あたりがやたらに出世したのはそのせいではないか、とか書いてあった気がする。

 それで平家は滅亡したからね。

 俺も誰かに恨まれて、それを仕掛けられているのではなかろうか。

 まさかね。

 でも、間違いなく美少女の呪いにはかかっている気がする。

 よりにもよって異世界で生き残ろうと足掻いている最中に、これまでの人生では考えられない美女や美少女が次々に現れるって。

 ラノベ的な状況って、ホントにあるなだなあ。

 だけど、無理。

 ラノベの主人公みたいに、ハーレムを目指すとか有り得ない。

 そんな余裕がマジないから。

 生活かかってるんだよ!

 いや、それどころか下手すると命も危ない。

 サバイバルの最中に色恋沙汰なんか出来るわけないだろう?

 俺がレディスコミックをイマイチ理解できないのは、例えば大企業の部長職とかにいる若いイケメンが、仕事の最中に女を追いかけて何日も無断欠勤したり、それでいて会社での立場が悪くなるようなことがまったくない、という状況なんだよね。

 ああいうのを描いている漫画家って、多分会社で仕事したことないんだろうな。

 絶対無理だから。

 いや、社長の御曹司なら有り得るかも、と言われるかもしれないけど、俺の知っているそういう人は、全員が一般社員より真面目でハードに働いていたから!

 正直、そういう立場の人って、恋愛沙汰に巻き込まれている暇なんかないからね。

 結婚なんか仕事のためだと割り切っているし。

 恋愛を優先するタイプなら、そもそも会社では重要な立場につけない。

 つまり(仕事面では)有能ではない。

 そんなぼんぼんの恋愛沙汰って、会社では無視されるだけだよ。

 レディスコミックで女を追いかける若い部長がいたら、そいつは何かの理由で会社にとって無意味な部署に囲い込まれているロクデナシということだ。

 そんな主人公に惚れられて色恋沙汰になる女の方も、間違いなくロクでもない部類だろう。

 もし、いい女だったらそもそもそういう奴とは恋愛しないから。

 ていうか、有能な人なら仕事が忙しくて色恋に構っている暇はない。

 アレスト興業舎の幹部女性舎員や、司法官閣下を見ていればわかるだろう?

 ということで、俺はレディコミには共感できないのであった。

 というようなことを考えていたら、ドアがノックされた。

「はい?」

「お客様でございます。

 バレル男爵のご令嬢がお目通りを願っておられますが、お会いになられますか?」

 誰?

 思わずハマオルさんを振り返ったけど、首を横に振られた。

 それはそうか。

 帝国の軍人が、ソラージュの貴族を知っているわけがない。

 ジェイルくんがいれば何か知っているかもしれないけど、あいにく不在だ。

 まあいいか。

 このホテルは、そういうセキュリティがしっかりしているという話だから、まさか偽物の男爵令嬢ということもあるまい。

 万が一、暗殺とかのたぐいだったとしたって、今の俺にはハマオルさんがいる。

 何も恐れることはない!

「ハマオルさん、少し控えていただけますか」

 ハマオルさんは頷いて、奥に下がった。

 リビングと寝室の境のドアの影に身を潜める。

 おそらく、あの程度の距離なら一瞬で詰められるんだろうな。

 シルさんどころか、ホトウさんより強いらしいんだし。

「通して下さい」

 壁の向こうで少し動きがあってから、すうっとドアが開いた。

 ホテルの従業員が抑えているドアを抜けて、しずしずとリビングルームに入ってきたのは、やはりロングスカート姿のご令嬢だった。

 フレアちゃんみたいなアッチ方面の職業の人に間違えられかねないような素人くさい変装と違って、こちらは本物だ。

 美少女。

 というよりは、美人。

 ラナエ嬢やユマ閣下と同世代か。

 威厳とか偉そうな様子は、令嬢モードに入ったラナエ嬢に匹敵するな。

 存在感が凄い。

 でも何か違和感があるんだけどなあ。

 あと2人ほど、お付きの男女が入ってきて、ドアが閉まった。

「ヤジママコト近衛騎士?」

 何で知っている?

 そもそも、俺がここにいることは、誰に聞いた?

 ていうか、貴族の令嬢の割に自分で名乗るのか?

 そういえば、帝国のリア姫様もそうだったっけ。

 こっちの貴族令嬢って、あまりお付きを使わないのかもしれない。

「はい。

 そちらは?」

「失礼いたしました。

 初めてお目にかかります。

 バレル男爵家のヒューリアと申します」

 ヒューリア嬢か。

 やや浅黒い肌、すっきりした目鼻立ち、瞳の色は茶色、髪は黒。

 ダボッとしたスカートとドレスに隠れているが、スタイルは良さそうだ。

 うん、美女だよね。

 で、何の用?

 尋ねかけた瞬間、突然動きがあった。

 お付きの人が、いきなり猛烈なスピードで向かってきたのだ。

 瞬いたら目の前にいた、というレベルの速度で。

 振り上げられた得物が俺の頭を割る、その寸前に食い止められる。

 こっちもいきなり、ハマオルさんが俺の前にいた。

 ハマオルさんの小刀と、ヒューリア嬢のお付きの人の得物が俺の目の前でがっちりと組み合っている。

 俺、棒立ち。

 両方とも、速過ぎるでしょう!

 何、このラノベ的な展開は?

「腕は鈍っちゃいないな」

「お互い様だ」

 ハマオルさんとヒューリア嬢のお付きの人がふざけたように言い合って、ぱっと離れた。

 知り合い?

 ハマオルさんが、俺の方を向いて深く頭を下げた。

「失礼いたしました。

 こいつは、帝国中央護衛隊の元同僚です。

 冗談が好きな男ですが、怪しいものではありませんので、ご安心下さい」

 安心できるか!

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