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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第二部 第一章 俺は顧問で非常勤?

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4.人事異動?

 俺の離任式は、といってもただ解職辞令を貰うだけだが、就任した時と違ってギルドのプロジェクト室でひっそりと行われた。

 ハスィーさんの机の前に立って、書類を貰うだけだった。

 これで、俺はギルドのプロジェクト次席とアレスト興業舎の舎長代理を解任されたことになるらしい。

 去るときはこっそり消えるものだよね。

 プロジェクト室にいる人たちは、そもそも俺と馴染みがないので特に感慨も湧かないらしく、淡々と仕事をしていた。

 例外はアレナさんとマレさんで、このお二人はまだアレスト興業舎に出向を続けるらしい。

 つまり、アレスト興業舎での仲間なわけで、心強い限りである。

 離任式? の後、俺はハスィーさんに連れられてギルド支部長やその他の偉い人たちの執務室を回って挨拶した。

 初めて会う人たちばかりで、というよりは男だったら俺は覚えてないから、ひょっとしたら初めてではなかったかもしれないけど、こちらも淡々と終わった。

 まあ、ギルドにとっては俺は所詮外様というか、流れ者だからな。

 それでも俺はアレスト興業舎を作って大いに発展させたことになっているらしく、評議員の方達には好意的に迎えられた。

 俺を採用したハスィーさんの面目も立ったわけだ。

 でも、何でみんな揃いも揃って俺とハスィーさんを見て含み笑いするんだ?

 ハスィーさんも、頬を赤らめているし。

 よくわからん。

 挨拶回りが終わるとプロジェクト室に戻り、私物を整理する。

 もっとも俺の私物って例のギルド上級職の楯くらいなもので、後はみんなアレスト興業舎にあるからね。

 ちなみに楯は記念にとっておけと言われた。

 改めて見てみると「プロジェクト『あの丘の向こう』次席 ヤジママコト」と書いてある。

 つまり、この職限定の楯だったわけで、記念品としても使えるようになっているらしい。

 これはいいものを貰った。

 これで、俺は冒険者でもあり、ギルド上級職員でもあったという過去を証明できるブツを手に入れたことになる。

 何の意味もないけど。

 お昼は、ハスィーさんと俺に加えてアレナさんとマレさんの4人で『楽園の花』に行ってお別れ会をした。

 みんなアレスト興業舎では会うわけで、区切りみたいなものだな。

 俺が正式にギルド職員でなくなったということを、お祝いというか確認したわけだ。

 まあ、送別会だね。

 料金はハスィーさんが払った。

 こういう時は、ラヤ僧正様は出てこないんだよなあ。

 やっぱスパイされているのかもしれない。

 でも、教団はTPOをわきまえているよね。

 それにしても、改めて考えると俺はギルドをクビになったわけで、感慨深いものがあるな。

 いや、クビになったのって人生で初めてなんだよ。

 北聖システムも、もちろんもうクビになっているだろうけど、解雇通知をもらったわけではないので実感が湧かない。

 だから、今回の馘首は事実上、俺の人生初の退職なわけだ。

 それなのに、なぜ落ち着いているかって?

 もちろん、次の就職先が決まっているからだよ!

 実際には異動ということになるのかもしれないけど、よく判らん。

 お昼の後、みんなでアレスト興業舎に戻ると、今度は俺の解任・就任式だった。

 実を言えば俺だけじゃなくて、アレスト興業舎の人事がかなり動くことになる。

 まず、俺が舎長代理を離れて非常勤の顧問に就任する。

 厳密に言うと、舎長代理も顧問も役員だから、人事異動ではないんだけどね。

 異なる職務の役員として再任されたわけだ。

 違っているのは、これからの俺の給料がギルドではなくアレスト興業舎から出ることだ。

 さすがに、ギルドの特別職として貰っていた金額は出せないということで、給料はかなり減額された。

 別にいいんだけどね。

 ほら、俺はもうララネル公爵家の近衛騎士として、十分過ぎるほど貰っているし。

 副収入があるっていいよね。

 心が豊かになる。

 でもハスィーさんはひどく恐縮されて、アレスト興業舎の業績が上向いたら増額しますから、と何度も言ってくれた。

 まあ、事実上何もしてないんだから、あまり無理しないようにと応えておいたけど。

 現時点ではアレスト興業舎は赤字だし、みんなも大して貰ってないみたいだから、まずはそちらでしょう。

 それはいいとして、俺が舎長代理を退いたことで空いた席には、下馬評通りラナエ嬢が座った。

 ラナエ・ミクファール舎長代理の誕生だ。

 ハスィーさんはギルドの執行委員のまま舎長を続けるけど、これは今まで通り名目上のことなので、これからのアレスト興業舎の指揮はラナエ嬢が執ることになる。

 実質的には、今までもそうだったけど。

 でも、これによってラナエ嬢の実力が目に見える形で証明されたわけで、ミクファール家としてもラナエ嬢を無理矢理どっかに嫁にやることが出来なくなったわけだ。

 いや、実を言えばラナエ嬢が事務部長の時にもミクファール家から使者が来たんだけど、ハスィーさんと俺とでラナエ嬢の業績を述べ立てて追い返したんだよね。

 誰にも借りを作らずに、自力でかなりの規模のギルド関連団体の幹部になり、立派にやっていると証言されて、使者は何も言えずに帰った。

 それ以来音沙汰ないから、もう諦めたんだと思うけど。

「今回、マコトさんが王都に行くことで、ミクファール家から何らかの接触があるかもしれません。

 その時はよしなに」

 そんなこと言われてもなあ。

 ラナエ嬢は凄いですよ、くらいは言うけどね。

 事実だし。

 ラナエ嬢が昇進したことで空いた事務部長職は、てっきりジェイルくんが後を襲うのかと思っていたら、何とアレナさんが就任した。

 言われてみれば、もともとハスィーさんの腹心だし、実力・技能・家柄・美貌・性格と揃っている(シルバー)エルフだから、当然の人事ではある。

 マレさんは、新設された経理部長だ。

 今までは経理課というか事務部門の一部だったんだけど、これからは独立して動くことになるらしい。

 ハスィーさん、アレスト興業舎の事務部門は自分の派閥でがっちり固めているな。

 聞いてみたら、お二人ともアレスト興業舎がギルドから独立する際には、ギルドを辞職してこちらに移籍する予定だということで、着々と準備が進んでいる。

 どうなることやら。

 事業部については特に異動はなくて、というよりは事業部は毎週のように新しい課とか係が出来てはその都度誰かが昇進していて、もうよくわからん。

 トップは不動のシルさんで、部長とは言っても事実上のアレスト興業舎実業部門の長だから、ほとんどラナエ嬢と同じくらいの発言権がある。

 近いうちに事業部は事業本部となり、今までの課が部になるそうで、物凄い勢いで成長していることは間違いない。

 なるほど、シルさんがかかり切りになるわけだ。

 ところでジェイルくんだが、蓋を開けてみたら課長級の王都出張所長という役職だった。

 でも、あいかわらず所属はマルト商会で、アレスト興業舎に出向している状態なんだよね。

 マルトさんが手放さないのは判るけど、それにしても無理矢理な感があるな。

 ちなみにソラルちゃんも出張所配属になるようだ。

 つまり、この二人は俺と一緒に王都に行くことになる。

「よろしくお願いします」

「頑張ります」

 ジェイルくんとソラルちゃんは、式の後俺のところに来て挨拶してくれた。

 今更だなあ。

 それにしてもマルトさん、娘と片腕を王都に行かせてしまって大丈夫なのか。

「マルト商会の王都出張所がありますから連絡はとれますし、私はむしろあちらでの方が役に立つので」

 ジェイルくん、色々暗躍しそうだけど、まあいい。

 俺は俺で、人に構っている暇はなさそうだからな。

「私は、マコトさんの秘書を継続します。

 近衛騎士方面の秘書役としても動きますので、期待していて下さい」

 それはありがたいけど。

 仕事的にそれでいいのか?

「出張所の業務は、当面は顔つなぎ程度ですから。

 マコトさんを売り出すことは、アレスト興業舎の役に立つわけですし」

 ネタばらししやがった。

 そういうことね。

 俺がコマなんだってことを忘れていたよ。

 まあいい。

 俺は、辞令交付式の会場になっていた舎長室を見回した。

 これで、ここともお別れか。

 俺はもう舎長代理じゃないから、このデスクに着くこともない。

 ということは、もう書類にサインする必要もないのか!

 ラッキー。

 でも。

 ますます仕事が無くなって、いやそれ以上に居場所すらなくして、俺は出発までの間どこで何をしていればいいんだ?

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