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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第七章 俺の副業は近衛騎士?

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3.騎士団?

 ロッドさんが去った後、通りがかったラナエ嬢に聞いたところ、騎士団は俺が考えていたのとはかなり違った組織であることが判った。

 アレスト市に常駐しているのはもちろんアレスト騎士団だが、これは単体の組織ではなく、ソラージュ王国が保持する中央騎士団の組織の一部らしい。

 つまり、アレスト騎士団長はアレスト伯爵にではなく、王都の中央騎士団長に忠誠を誓っているわけだ。

 その中央騎士団長は、王都にいる司法長官配下となる。

 例によって魔素翻訳だから本当にそうなのかどうかよく判らないが、どうやらこっちの世界、というよりはソラージュ王国でも日本と同じく三権分立が成立しているらしい。

 王制国家にあるまじき進歩した体制だが、もちろん選挙で選ばれた政府ではないので、完全に権力が分立しているとは言い難いだろう。

 だが、曲がりなりにも腐敗や専横を防ぐ体制が成立しているというのは、驚くべきことだと思う。

 誰か、建国の時によほど出来た人がいたのかもしれないな。

 それはともかく、実は騎士団とは魔素翻訳で司法省という訳語になった官庁配下の実働部隊のことで、日本でいうと検察がそれに相当する。

 つまり、騎士とは検察官と思っていい。

 もっとも、騎士団は魔王の被害の対処なども任務にしていて、検察そのものとは言い難いのだが、まあ異世界だから。

 国家規模の災害対処の実働組織が、騎士団以外にはないからかもしれない。

 ちなみに警察は何かというと、これはギルド配下の警備隊だということだった。

 なるほどね。

 警備隊がギルドごとの地方組織であるのに対して、騎士団が全国組織だというのも頷ける。

 ロッドさんも、実は騎士になったのは王都の騎士団で、こっちには転勤してきているのだそうだ。

「騎士団の団員には二種類あって、当地で採用されてその土地からほぼ動かない者と、頻繁に転勤する者がいます。

 ナムルキア・ロッドは後者で、こちらに異動してまだ数年と聞いています。

 いずれ王都に戻り、中央の職務に就くはずです」

 つまり、ロッドさんは国家公務員上級職採用のエリート検察官なわけだ。

 おそらく将来を嘱望されているんだろう。

 そんな人が、異動した先の現地で騎士団を辞めて、ギルド配下の民間組織に再就職すると言い出したら、それは慌てるよなあ。

 フクロオオカミにハマらせて、悪いことをしたかな。

「ところで、司法官閣下が私に会いたいということのようですが、どういった方なのでしょうか」

「司法官は、ソラージュ王都の司法省から派遣された、アレスト市の司法の責任者です。

 騎士団の指揮権を持っていますし、裁判の時は判事長を務めます」

「すると、司法官って裁判官ということですか! 同時に検察長官?」

「SaiibUan……KeenSat……ええ、そうですわね。犯罪が行われた場合には捜査して逮捕する職務と、裁判を開いて有罪者の罪を決定する権限があります。

 騎士団の団員が昇進して司法官補佐になり、王陛下に信任されて司法官になります。

 アレスト市の権力者の一人と言えますね」

 権力者の残りの2人は、ギルドの支部長と代官だそうだ。

 ラナエ嬢がいてくれて助かった。

 生き字引だからね。

 王都の「学校」って凄いものである。いや、すごいのはラナエ嬢か。

 まとめると、アレスト市における三権分立の立法・司法・行政はそれぞれギルド評議会(支部長)、司法官、アレスト伯爵の代官ということになる。

 ちなみに、代官は王政府が任命した者で、アレスト伯爵の代行だが、所属は王政府にあるそうだ。

 その辺り、日本と違って色々混ざってしまっているみたいで、完全に権力が分散しているとは言い難いと思うんだけどね。

 例えば、司法官は裁判官であると同時に検察である騎士団を指揮下に置いているわけで、つまり検察と裁判長が同根だ。

 弁護士がいるのかどうかも疑わしい。

 まあ、どっかのラノベに出てくるような専制君主や横暴な地方領主が好き勝手やっているのに比べたらよっぽどマシだろうけど。

 でも、こっちではなるべく罪を犯さないようにした方が良さそうだな。

 司法官に逆らったら、問答無用で投獄されたりして。

 ということで、俺はアレスト市の三大権力者の一人から呼び出しを受けてしまったわけだが、ロッドさんが迅速に動いたせいか、すぐに会見の日時が決まった。

 翌日の午後で、会見場所はアレスト市の司法官事務所でということだった。

 随分急いでいるみたいだけど、何かあったのか?

 俺はハスィー様に相談して、随行員としてシルさんとラナエ嬢をつけて貰うことにした。

 それに現場担当者としてロッドさんが加わる。

 ロッドさんから見ると、司法官はアレスト騎士団長の上司ということで、組織上は雲の上の人ということになるらしい。

 まあ、そこまで昇進するとなると、日本の国家公務員と同じで相当かかるだろうからな。

 もっともラナエ嬢によれば、アレスト市のような辺境の小さな領地に赴任する司法官は、司法官としてはかなり格下らしいけど。

 それでも、ソラージュ王国の政府の高官には違いない。

 大丈夫かなあ、俺。

 翌日、アレスト興業舎の食堂で飯を食ってから、俺はシルさん、ラナエ嬢、ロッドさんと連れだってアレスト市の庁舎街へ向かった。

 いや、さすがに俺だって一日に何度も顔をつきあわせていれば、男の名前でも覚えるよ。

 歩きながら、ロッドさんから本日の会見について色々聞いてみた。

 とは言っても、ロッドさんも騎士団の下っ端なので、今のアレスト市の司法官には会ったこともなく、よく判らないということだった。

 異動してきた時も着任の申告をしたのは騎士団長で、司法官との接触はなかったとか。

 騎士団の同僚の話によれば、定年間近の穏やかな人だったらしいが、その後司法官も交代したらしく、今の司法官の正体は不明だ。

 国家公務員の上の方は、日本も同じだけど転勤が多いからな。

 ところでロッドさんは、話してみると国家公務員上級職採用のエリートとは思えないほど気さくな人だった。

 外見は神経質そうな優男なんだけどね。

 感激屋でもあるらしい。

 フクロオオカミにハマッたのも、騎士団の仕事に飽き足らないものを感じていたからだそうだ。

 騎士団員の主な任務は、犯罪を起こしたり、やりかけた人の対応と、あとは魔王等の自然災害の対処である。

 このうち後者は、何も起こらなければ定期的に領地を巡回したり、万一の場合の通報システムをチェックしたりするくらいしか仕事がない。

 犯罪の取り締まりについても、実際の現場対処は警備隊がやるので、すべて終わってから出て行って状況を調査し、資料を揃えて司法官に提出するくらいだという。

 つまり、前者は日本の検察の仕事と大体同じだが、日本と違って警察に捜査能力がない、というよりは刑事機能がないので、検察が全部やることになる。

 もっとも、担当する犯罪といっても暴力沙汰やカッパライ程度がせいぜいで、例えば貴族や大商人が絡むような大事件だったり根が深かったりする犯罪は、司法省直下のエリート部隊が担当するそうだ。

 これは日本の特捜検事に相当するんだろうな。

 その人達は、騎士団の正騎士から任命されるそうで、勤務実績とか家柄とか性格とか素行とかを勘案して選ばれるのだろう、ということだった。

「司法官およびその随員は、騎士団から離れて司法省の所属になります。

 各地の中心的な都市には司法官事務所が設置されていて、司法官は中央からそこに派遣される形になります。

 従って、司法官はその領地の領主やギルドなどから独立していますから、他の勢力などから影響を受けずに裁判を行えるわけです」

 ちなみに癒着や専横を防ぐために、定期的に司法省から調査が入る他、司法官は数年ごとに異動になります、とロッドさんは付け加えた。

 そこら辺は、日本というか地球と同じだな。

 ソラージュの司法制度を最初に作った人が凄かったんだろう。

 頭がいい人は、どこにでもいるんだなあ。

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