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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第六章 俺が舎長代理?

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9.夕食問題?

 俺が住んでいるのはギルドの上級職用社宅? なんだけど、当然一人で暮らしているわけだ。

 なぜか、俺が住んでいるメゾネットはがら空きで、俺はいつも一人寂しく寝起きしているのだが、困ったのは掃除洗濯だった。

 メゾネットといっても結構部屋数もあって、主婦が毎日掃除しないとまずいことになるくらいには広い。

 だが、俺はとてもそんな余裕があるはずもなく、困ってアレナさんに相談したら、通いの家政婦さんを紹介してくれた。

 それはそうだ。

 ギルドって、そういうことの専門機関ではないか。

 やってきたのは残念ながら美少女メイドではなく、中年のおばさんだったけど、さすがプロというところでテキパキと働いてくれて、おかげで俺の家は快適だ。

 いやー、人に掃除して貰えるって、こんなに楽だったのか。

 俺は大学から一人暮らししていたから、すっかり忘れていたぜ。

 しかも、日本と違って俺は隠さなければならない本やゲームのたぐいをまったく持っていない。

 品行方正を絵に描いたような暮らしをしているわけで、だから家政婦さんに何を見られても平気だ。

 ということで、快適に暮らしてはいるのだが。

 家政婦さんはプロ、つまり仕事としてハウスキーピングをやっているので、当然俺の家だけを担当しているわけではない。

 聞いてみると、俺の家を含めて一日に3軒を掛け持ちしているそうだ。

 しかも、俺の家にしたって毎日というわけではない。一日おきに来てくれているのだが、まあその程度なら洗濯物も溜まらないしいいんだけど。

 つまり何が言いたいのかというと、掃除洗濯はしてくれても飯の用意はしてくれないのだ。

 そういうサービスもないらしい。

 まあ、朝早くから人に家に行って料理するなど、大変すぎてとても仕事にならないだろうしな。

 日本で普及していた、飯のデリバリーとかもない。

 よって、昼は仕事先で食うにしても、朝夕の飯は俺が自分で何とかしなければならないのだった。

 朝は、仕方がないので前日にパンなどを買ってきて、それを食うことにしている。

 肉体労働者向けの立ち食い飯屋もないことはないんだけど、朝からガッツリという食事はちょっと勘弁して貰いたいしね。

 それはいいんだが、困ったのは夜だ。

 こっちの文明は江戸時代レベル。

 あまり有効な光源がない上に高価なので、暗くなってから何かするには多大な費用が必要となる。

 つまり、ディナーという習慣は、一部の特権階級のものなわけだ。

 夕食は、だからマルト商会にあったような大量生産されたシチューか何かをみんなで食うか、あるいは家庭で主婦的な人が作るということになる。

 そうなのである。

 ギルド上級職用の宿舎に立派な厨房がついているのは、当然ここに入居する人には奥さんがいて、その人が毎日食事を作るという前提があるからなのだ。

 あるいは、家族の他にメイドがいて、一日中サポートしてくれるとか。

 俺みたいに独身のままここに入居する奴は珍しいらしくて、アレナさんに夕食を作ってくれる人はいないかと頼んでみたが、首を傾げられてしまった。

「マコトさんの収入なら、夕食はレストランで食べても大丈夫ですよ。お一人で寂しいというのなら、誰かを誘えばいいし」

 いや、そういう事ではないんだけどなあ。

 しょうがないので、夕食は自分で作ろうかと思ったんだけど、すぐに挫折した。

 なぜなら、こっちにはスーパーマーケットがないからだ。

 日本で独身者が自炊できるのって、適当に加工された食材がすぐに手に入るからだぞ。

 こっちでは、食材というよりは現物を買ってきて、最初から処理しなければならないのだ。

 パンなどは売っているのでいいのだが、また野菜のたぐいは洗って切ればいいとも言えるけど、肉や魚はもう駄目だ。

 また、煮たり焼いたりするのも大変な手間がかかる。

 薪ストーブというか薪コンロというか、つまり火を起こすところから始めなければならないのだ。

 スイッチを捻ると火がつくとかじゃないぞ。

 マッチに似たものはあるが、それですぐに薪に火が着くかと言われると、とんでもない。

 紙は高価だから使えないので、付け火は藁などを使う。

 煙いの何のって。

 お湯を沸かすのにも一苦労で、そんなのやってられないから、すぐに諦めてしまった。

 どこに行っても水が出てくる理由がわかったよ。

 熱いお茶が出るっていうのは、凄い歓迎なんだよね。ハスィー邸のランチは、まさしくご馳走だった。

 というわけで、モーニングコーヒーも夜のお茶も無理だということは納得したけど、問題は夕食だ。

 こうなったらもう、アレスト市の高級レストランを制覇するしかないかと思っていたら、ラナエ嬢が言ってくれた。

「わたくしからハスィーに言って、夕食にお招きいたします。毎日というわけにはいかないと思いますが、ご満足できるお食事を提供できるかと思います」

 ラナエ嬢、神!

 そういえばラナエ嬢はまだ、ハスィー邸で暮らしているんだったっけ。

 ハスィー邸なら専属の料理人もいるだろうし、一人くらい増えても問題ないだろう、とその時は思ったんだけど。

 後で考えたら、俺って美少女たちが暮らしている家に夕食に招かれたってことだよね?

 いや、ランチは行ったことがあるけど、あの時は他に何人もいたり、最初からビジネスランチとして設定されていたりして、家庭にお呼ばれという雰囲気はまったくなかったからな。

 俺の方も、ハスィー様は年上の上司だと思っていて、恋愛感情とか全然なかったし。

 いや、恋愛は今でもないけど。恐れ多すぎて。

 でも、今度は夕食だ。

 ディナーである。

 同席は、17歳の美少女が二人。

 美少女の家で食うんだけど、家庭料理じゃなくてディナー。

 お城とか豪邸というわけでもない。

 ラノベでもこんなシーンはめったにないぞ!

 と、ちょっと興奮してみたけど、実際には何でもないことなんだよな。

 単に、サラリーマンが上司や部下と一緒に飯を食うというだけで。

 あの高級レストランとかだったら噂になるかもしれないけど、ハスィー邸ならプライベートだから問題ない。

 よく考えたら、俺の夕食問題はまったく解決していないんだけど、とりあえずは美味い飯を美少女同席で食えることに感謝することにした。

 ラッキー。

 そういうわけで、翌日俺はアレスト興業舎が引けた後、ラナエ嬢をエスコートしてハスィー邸に向かった。

 結構遠いので、どうせ誰かがラナエ嬢のお伴をする必要があるのだ。

 アレスト市はかなり安全な街だという話だったが、さすがにフリフリドレス姿の貴族令嬢が一人でうろつくのはまずいらしい。

 もっとも、朝早く俺の家に押しかけてきた(これも誤解を招く言い方だな。ラノベ的で)時のラナエ嬢は、一人で飛び出してきたそうだけど。

 ラナエ嬢に聞いたところ、実家や王都からお伴してきたような人はいないということだった。

 つまり、このお嬢様は王都からこの辺境まで、一人で旅してきたわけだ。

 そんな女傑に今更お伴なんか必要ないような気もするけど、これはラナエ嬢のアイデンティティの問題だから、どうしてもエスコートは必要だと力説された。

 特に今は、アレスト興業舎で要職についているため、貴族としてそれなりの権威は持っておく必要があるらしい。

 今日は俺だったが、いつもは適当な人に送り迎えしてもらっているそうで、まあラナエ部長の命令というか要請を断れる奴なんか、アレスト興業舎にはいないからな。

 俺を含めて。

 そういえば、ハスィー様にもお伴がついているのだろうか。

 そんなことを考えながら、てくてくと歩いてハスィー邸に着く。

 ラナエ嬢も結構健脚だった。

 こっちの世界では、偉い人でも必要が無い限り、移動は基本歩きだからなあ。

 質実剛健というべきか、歩けばいい距離の移動に費やすリソースを、楽をするだけのために割く余裕がないとみるべきか。

 それにしても、やっぱり一軒家はいいなあ。

 贅沢言い過ぎ?

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