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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第八章 俺が盟主?

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22.国際救助隊?

 数日後に「すべての国と組織の(ミルトバ)連合」、いやもう面倒なので「国連」総会が開催された。

 これは定例会といったものではなく、資格を持つ誰かが開催を事務局に依頼して承認される事で開かれるそうだ。

 「総会」の場合は全国連大使の出席が要請されるけど、その他に例えば数カ国だけが関わるような場合は分科会や委員会という形で開催される。

 この辺りは俺が教えた、というよりはユマさんに引き出されたんだけどね。

 俺も国連に詳しいというわけじゃないけど、テレビを見ていれば安全保障理事会とか何とか委員会とか、そういう情報は入ってくる。

 だから俺が覚えている範囲で組織を構成して、後は状況に応じてカスタマイズすることにしたそうだ。

 尚、常任理事国といったものは置かないことになった。

 地球の国連と違ってすべての国と組織の(ミルトバ)連合は参加国/団体が平等な組織になる。

 間違っても先進国や列強主導の利益配分団体にはしない。

 だから複数国家にまたがる問題があっても強制介入とかはする権利がない。

 そういうのはあくまで参加国同士で決着を付けて貰う予定だ。

 まあ、国力で発言力に差が出てくるのはしょうがないけど。

 それを緩和したり仲介したりするための議論の場という位置付けにしたんだよ。

 もちろん組織なんだから(トップ)は必要で、どうするのかと思っていたら何とフルーさんが選出された。

 国連事務局(ユマさん)から推薦があって、満場一致で承認されたそうだ。

 フルーさんは前々アレスト伯爵で(ハスィー)の祖父だ。

 ソラージュの貴族院議員をやっていたんだけどもう引退している。

 というよりはむしろヤジマ商会の前の会長代理で今は顧問だ。

 俺が北方諸国の親善大使としてソラージュを離れている間だけ、形だけでいいからと会長代理をお願いしたんだよね。

 実際の経営は大番頭であるジェイルくんがやるという条件だった。

 なるほど。

 フルーさんは北方種(エルフ)だから北方諸国にはウケがいいはずだ。

 ソラージュの元伯爵だけどもう引退していて政治的な利害関係はない。

 そしてヤジマ商会の会長代理を務めた経験がある上にヤジマ財団理事長()の義理の祖父だからな。

 これ以上信頼できる人はいないかも。

「事務総長という肩書きですが、実際にはむしろ『議長』でございます。

 委員会の結論を承認するお役目になります」

 なるほど。

 才気やカリスマより経験と公正な判断が買われたか。

 実際、フルーさんの評判は極めて良い。

 ソラージュ貴族院の議員を長年に渡って務めながらスキャンダルなどは一切なかったし、ヤジマ商会の顧問や会長代理をしている間も公正無比という評価だった。

 これだけの経歴を持ちながら政治色がまったくないのも良い。

 そして何よりヤジマ大公()の義理の祖父であり、傾国姫(ハスィー)の実の祖父という所が大人気だとか。

「傑出した存在の肉親はそれなりの評価を受けます。

 ハスィーの祖父という所も大きいですね。

 あれほどの存在を育てた、という評価に繋がりますから」

 ユマさんが教えてくれたけど、つまりあれか。

 ジョージ・ワシントンの父親は素晴らしい男であったに違いない、というような。

 偉人を指導したことになるからね。

 まあ、(ハスィー)が誰かに指導されたというのは考えにくいけど、世間はそんなことは判らないからな。

「ですが、本当の理由は別にございます」

「そうなの?」

「我が(あるじ)の義理の祖父である事ではなく、我が(あるじ)がソラージュに不在の間、ヤジマ商会の会長代理を務められたことです。

 つまりそれほど我が(あるじ)から信頼されている、という証拠でございます故」

 なるほど。

 世間的にはそういう風に見える訳か。

 俺としてはジェイルくんが大番頭として舵を取ってくれている以上、正直言えば誰でも良かっただけなんだが。

 フルーさんは変な野心もないし実直な性格だと(ハスィー)が保証したからお願いしただけで。

 それはまあ、確かに信頼しているということだね。

「判りました。

 他には?」

「『国際救助隊(サンダーバード)』を『すべての国と組織の(ミルトバ)連合」』の認可団体として認める議案が承認されました」

 さいですか。

 一直線だな。

 そもそも「すべての国と組織の(ミルトバ)連合」を作ったのは私的団体である「国際救助隊(サンダーバード)」を言わば超法規的団体として諸国に認めさせるためだし。

 本当は順番が逆なんだよ。

 でもこの方法しかなかった。

 国際救助隊(サンダーバード)はその性格上、国境を越えて自由に活動する必要があるけど、そんなことが出来る組織なんか本来ならあり得ない。

 国家の主権に関わる問題だし、言ってみれば私的団体に過ぎない組織に超法規的な権利を認める事になってしまう。

 勝手にやったら内政干渉とか侵略だと取られる可能性すらあった。

 ヤジマ商会は多国籍企業で国を跨いで活動しているように見えるけど、実際には所在国のギルドに登録してその規則や条例に従って動いている。

 何かやる場合はいちいちその国の許可を取らないといけないんだよ。

 国際救助隊(サンダーバード)はそんなことやっている暇も余裕もないからね。

 俺が見たのはテレビでやっていたCGドラマの方だったけど、もともとは人形劇だったらしい。

 いかなる国家にも属さない独立した救助隊が危機に陥った人や乗り物なんかを助ける話だ。

 その国際救助隊(サンダーバード)は世界中の国から「いつでもうちの国内で活動してもいいよ」というお墨付きだか何だかを貰っていることになっているけど、現実にはまずあり得ない話だよね。

 いや、別に地球の娯楽番組である国際救助隊(サンダーバード)を再現しようと思ったわけじゃないんだけど。

 俺が考えたのは国連平和維持活動(PKO)と国際NPOを合わせたような活動で、ヤジマ財団ならそれが出来ると思ったからだ。

 地球のどっかの国で地震とか津波とかで莫大な被害が出ると、日本も救助隊を送ったりするのをテレビで見ていたから。

 日本だけじゃないけど、それを各国政府を超越した独立組織で出来ないかと思ったんだよ。

 ていうか出来るから。

 ヤジマ財団の部隊でもかなりのことが可能だけど、例えば帝国軍の工兵隊なんかに協力して貰えれば救助活動は大いに捗る。

 幸いにして帝国皇太子(オウルさん)を初めとした各国の支配層(トップ)は俺に協力的だし、国際救助隊(サンダーバード)が中核を担えば相当の事が出来るのではないかと。

「素晴らしい理想でございます。

 しかも我が(あるじ)はそれを実現してしまえるだけの力をお持ちです。

 まさしく救世主(メサイア)!」

 ユマさんが変になっているけど無視。

「判りました。

 つまり万事順調ということだね」

「はい。

 今後は各国政府の協力を仰ぎつつ、魔王(自然災害)対策を行ってゆく予定でございます」

 瞬時に元にもどったユマさん。

 漫画じゃなくてもあるんだなこういうの。

「やることは多数ございます。

 我が(あるじ)が警告して下さった津波、つまり海の魔王顕現(海底地震)の対策も急務です。

 実はヤジマ海上警備所属の鯨の方々からその前徴があるとの報告が上がってきております」

 何と。

 やっぱこっちの世界でもあるのか。

 ていうか地震を予知出来るの?

「野生動物の方々は独自の情報源をお持ちでございます故。

 早急に観測専門部署の立ち上げが求められます」

「やっちゃって下さい。

 金が足りなければ俺の私有財産を使っていいから」

 言ってしまった。

 まあ、破産するような事にならなければどうでもいいか。

 (シーラ)たちの持参金がなくなったら嫁取りの話も立ち消えになるかもしれないし。

 そしたら俺の一家はどっかに引っ込んで安穏と暮らせる。

「そんな事態には私がさせません。

 ご安心下さい」

 ユマさんが笑った。

 綺麗なのに強烈な凄味がある。

 久々に略術の戦将(ユマさん)の真の姿を見た気がする。

 怖っ!

「失礼致しました」

「いやいいんだけど。

 とにかく予算不足で対応が遅れたりするような事は避けてね」

「お心のままに」

 よし。

 これで俺の役目は終わりかな。

 俺の財産なんかどうせあぶく銭みたいなもんだから、国際救助隊(サンダーバード)に全部注ぎ込んでもいいくらいだ。

 ていうか国際救助隊(サンダーバード)ってマジかよ。

 思わず頭の中であのテーマが鳴り響いてしまったじゃないか。

国際救助隊(サンダーバード)

 (いかづち)(トリ)ですか。

 良い命名でございます。

 それではヤジマ財団魔王顕現対策部隊を正式に『国際救助隊(サンダーバード)』と命名させて頂きます」

 パネェ。

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