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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第六章 俺が舎長代理?

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8.順調?

 いつの間にか俺がこっちに来てから2ケ月程が過ぎたようだった。

 程というのは、うっかりして日付を数えていなかったからだ。

 こっちの一ケ月は約28日(閏月とかが混じる)なので大体その倍くらいは過ぎただろう、ということだ。

 多分、ジェイルくんかソラルちゃんに聞けば俺がこっちに来た正確な日付を教えてくれるとは思うけど面倒だしどうでもいいので聞いていない。

 日本では春になったばかりだったけど、俺がこっちに来た時は秋だった。

 今はもう冬にさしかかっている。

 季節が半年くらいずれているが多分南半球ということはないだろう。

 なぜかというと星座が日本とほぼ同じだからだ。

 俺の知っている星座は二つ三つしかないけど北斗七星と北極星は判るし、それらはまさしく日本で見るのと似たような場所にあったからな。

 空の星が多すぎてよく判らなかったが、まず間違っていないはずだ。

 アレスト興業舎の周りは家がないので星が凄いんだよ。

 ということは、ここは日本なのだろうか。

 気になってアレナさんに頼んでギルドで保管されている大地図を見せて貰ったが、よく判らなかった。

 地図の縮尺が極めていいかげんで、海岸線なんかも全然信用がおけなさそうな地図しかなかったんだよ。

 軽小説(ラノベ)だと異世界に転移した主人公がすぐに世界地図を見せられるけど、実際には難しいと思う。

 地図ってかなり科学が発達しないと正確には描けないものだと聞いたことがあるからね。

 あとは海運業の発達かな。

 海岸線は基本的には歩いたり海上から見て確認するしかないわけで、そのためにはまず歩いていける場所であり、また海から近づける場所でないと正確な地図は作れない。

 自分が住んでいる土地なら何とでもなるだろうが、例えば他国とか誰も住んでいない場所なんかはよほどの覚悟と予算がないと正確には計測できないのだ。

 地球でも大航海時代になってからもオーストラリアとか南極はいいかげんだったらしいからな。

 交易していない土地はまったくの未知だ。

 というわけで俺がギルドで見せて貰った地図はせいぜいがソラージュ王国とその周辺国の大雑把な見取り図のようなものだけだった。

 海岸線なんか、ところどころ直線になっているようないい加減さでとても信用できるようなものではない。

 もっと詳しい地図もあるらしいけど、それは王都の科学院とかそういう施設に保管されているらしい。

 まあ地図ってのは兵器だしね。

 アレスト市みたいな辺境の一都市にはそんな重要な戦略物資がないのは当たり前だ。

 でも判ったことはある。

 まず地球が丸いということは一応知られている。

 こっちでも昔は天動説だったけど地動説を主張した人がいたらしく、特に宗教的な迫害もなく認められたらしい。

 科学的に言えば正しい方が正しいからな。

 だが地球の大きさとかそういう事はいいかげんだった。

 世界一周した人もまだいない。

 というよりそんな余裕がない。

 文明の発達度に比べて人類の数が地球より少ないらしいのだ。

 その分、人類以外の野生動物が幅を効かせている。

 こっちの動物は人間並みの知能を持っているものが結構いるらしいからな。

 学者の説では、ある時期に魔素が導入されたことで人類以外の動物もお互いの意思疎通が出来るようになり、会話することで頭脳が発達したのだろうということらしかった。

 他にも要因があるのかもしれない。

 例えばスウォークとか。

 文明の黎明期には精神的・倫理的な面でずいぶん人類や他の動物を導いたとされている。

 その結果、手を使えなくても知性が発達した種も多かったということだ。

 フクロオオカミの知能は成長すれば人類並になるが、その他にも色々いるらしい。

 ただしそういった動物は概して寿命が短く、また野生動物だから結構死にやすく、本当に人間並みになれるのはごく一部ということだった。

 フクロオオカミの長老なんかマジで頂点に到達した個体なんでろう。

 ちなみに猿などの手を使える動物はどうかと思ったが、不思議なことにあまり知能が発達していないとのことだった。

 いや違うか。

 人類からみて評価できる知性が発達していないというべきらしい。

 手を使えても道具まで行けない場合も多いしな。

 手なんかより集団で行動するにもかかわらず、基本的には個性が重要で単独行動ができる動物が有利だったのだろうか。

 フクロオオカミみたいに。

 ツォルの奴なんか家出するところだったくらいで。

 でも犬や猫なんかいかにも知性化されてそうだな。

 特に猫は人間の方から奴隷志願する奴が出そうだ。

 だが不思議なことに俺はアレスト市に来てから犬猫のたぐいをほとんど見ていないんだよね。

 ペットを飼う習慣がないのかもしれない。

 あるいはアレスト市が辺境で危険だからかも。

 王都なんかは猫で溢れていたりして。

 俺は学者じゃないし、あまり仕事に関係もなさそうなのでそういうことを考えるのを止めたけど。

 もし関係してくれるようならアレナさんかソラルちゃんが教えてくれるはずだし。

 そういえばソラルちゃんは俺の秘書という役割、じゃなくて職務を得てからしばらくして正式にアレスト興業舎に就職した。

 つまりマルト商会からの出向ではなくなったわけで、ラナエ嬢と同じ立場になったらしい。

 いいなあ正社員。

 俺なんかギルドの臨時職員のままだもんな。

 もっともソラルちゃんの場合はマルト商会の代表の娘だから、いずれはアレスト興業舎を辞めて戻るのだろう。

 地球でもよくあったよね。

 とある会社の跡取り息子なんかが別の会社で修行してから戻って要職に就くとか。

 それにしてもマルトさんもよく娘を手放す気になったものだ。

 マルトさんらしいとも言えるが。

 ちなみにジェイルくんはマルト商会に籍を置いていてアレスト興業舎では出向扱いのままだ。

 それでいて今や事務部門のトップであるラナエ嬢の秘書というか片腕にまでなっているんだから、どれだけ有能なんだよ。

 お飾り舎長代理の俺とは大違いだ。

 軽小説(ラノベ)では俺みたいな立場の主人公がいないわけじゃないけど、それっておちゃらけキャラとかコメディなんだよな。

 そんなのは嫌だ。

 ハーレムが出来ても本番は一切なくて、たまに事故で美少女の入浴を覗いたりして暴力をふるわれる役なんてやりたくない。

 俺はそもそも主人公じゃないからそんなことになる心配はしてないけどね。

 そういえばアレスト興業舎では今3つのタスク・フォースが動いていて、それぞれの班にも追加で人が入った。

 サーカス班はシルさんがリーダーで『栄冠の空』から新しく参加した人たちがメイン、キディちゃんがサポートという『栄冠の空』閥だったんだけど、そこにマルト商会やその他の関連団体から何人か加わったらしい。

 らしいというのは俺はよく知らないからだ。

 多分『栄冠の空』だけでは実際の業務はともかく、会舎としての業務がうまくいかないからだろうな。

 何せみんな現役の冒険者で自分たちの金の管理は出来ても金勘定には疎い。

 シルさんは渉外をやっていたから多少は詳しいだろうけど、リーダー業務が忙しくてそれどころじゃないし。

 あとはシイルの仲間の子供達しかいないので、商人や他の専門家に内向きを任せる予定なんだろう。

 金は大事だよ。

 特にサーカス部門は将来的には独立採算ができるようになることが期待されているわけで、今から収入と支出についてしっかりやっておくべきだというのは、俺にだって判る。

 でもサーカス班が『栄冠の空』メインであることには変わりはないけどね。

 警備班はギルドの警備隊からの出向者であるフォムさんとスラウさんがメインで地道に訓練を続けているらしい。

 このところギルドの警備隊の制服を着た人をよく見かけるので、おそらく警備隊本体と合同で仕事を進めているのだろう。

 警備班は単独では業務ができないので、それは仕方がない。

 将来的には警備隊の一部門か、ギルドの関連団体として独立させるんだろうな。

 そして郵便班。

 騎士団から出向しているロッドさんが乗ってしまって大変らしい。

 自分も騎士団を辞めてアレスト興業舎に就職すると言い出して、ラナエ嬢に宥められてとりあえず思いとどまっているが予断を許さない状況とか。

 騎士団からも何人か新しく参加したようで、噂によるとロッドさんが盛んに勧誘しているそうだ。

 そもそも騎士団の仕事が単調すぎて飽き飽きしている人が多いらしく、将来の拡張は難しくない、とラナエ嬢が言っていた。

 だが騎士の給料は高いので、あまりたくさん雇うと採算が取れるかどうか難しいとのことだ。

 まあ頑張って下さい。

 俺には関係ないからね。

 というわけで今のところアレスト興業舎は順調だ。

 俺が燻っているのを除けば。

 俺、何したらいいんだろう?

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