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ベルフォードとリーファの昔話 ③

 ベルフォードとリーファの昔話③




 冒険者ギルドでパーティー登録を済ませた俺とリーファは早速近くにあるダンジョンへと足を運んでいた。


『深緑の森』


 と呼ばれるそのダンジョンは、出現する魔獣のレベルから初心者向けと言われてはいるが、油断をすると痛い目を見る。とも知られている。


 その名が示すように、まずは草木に覆われていて視界が悪い。

 魔獣からの不意打ちに気を配らなければならない。

 そして剣士が迂闊に剣を振り回すと、木々が邪魔して太刀筋が乱れる。

 また、初級でも火系統の魔法を使おうものなら、辺り一面が火の海になってしまうため、使う魔法を制限されている。


 深緑の森へと向かう途中。俺はリーファに使える魔法を聞くことにした。


「なぁ、リーファ。お前はどんな魔法が使えるんだ?」

「……そうね。全ての魔法が使える。そう言っておこうかしら?」

「…………は?」


 全ての魔法が使える?

 そんな魔法使いは聞いた事がない。

 大体の魔法使いは使える魔法に限りがあり、その中でも得意な魔法や不得意な魔法があると聞く。


「い、いや……いくら俺が田舎者の冒険者とは言っても、流石にそれは無いってわかるぞ」

「あら、失礼ね。貴方のその浅い知識で物を語らないでほしいわ」


 カチン。と来た。

 なるほど、そこまで言うなら信じようじゃないか。

 全ての魔法が使える?上等じゃないか。


「それで、貴方はどんな剣技が使えるの?」


 リーファがそう言って来たので、俺も自分の剣技を話すことにした。


「聞いたことがあるかは知らんが、俺の剣は『守護の太刀 月天流』だよ」

「聞いたことあるわよ。紅蓮流と対をなす剣術よね?」

「そうだよ。あっちは攻撃に重きを置いてるけど、俺の太刀は守りに重きを置いてる」


 そう言った後、俺はリーファに笑いかけてやった。


「お前が安心して詠唱する時間を稼いでやるよ。全ての魔法が使えるって言うなら、その全てをこの剣で護り抜いてやる」

「ふーん?大きく出たわね。と言うか貴方、魔法使いが嫌いなんじゃなかったの?」

「誤解があるな。俺は魔法使いが嫌いなんじゃない。剣士を馬鹿にする魔法使いが嫌いなんだ」

「……あら、そう。なら悪かったわね。売り言葉に買い言葉とは言え、言い過ぎだったと反省するわ」

「そうだな。俺も言い過ぎだったと反省するよ。……じゃあ、仲直りがてら魔獣でも倒すか」


 そう言うと俺は、目の前に現れた一匹の魔獣と向き合った。


『がぁぁぁあああ!!!!』


 目の前に現れたのは『ウルフ』と呼ばれる小型の狼。

 基本は群れで行動するこの魔獣は、群れの大きさや個体の大きさによって脅威度が変わってくる。

 今回は小型の一匹だけが目の前に現れた。

『はぐれ』か『偵察』かどちらにせよ一匹なら脅威度はそこまで高くない。

 肩慣らしにはもってこいだな。


「俺が時間を稼ぐ!!リーファは使える魔法から有効な物を判断して使ってくれ!!」

「了解よ!!」


 簡単な指示を飛ばしたあと、俺はウルフへと斬りかかった。


「守護の太刀 月天流 壱の形 三日月の舞!!」


 しっかりと研いである俺の愛剣が、ウルフの足を斬り付けた。

 流石に硬い骨を断つことは出来なかったが、相手の機動力を奪う先制攻撃としては十分だ。


『ぐるるるううぅぅぅ……』


 こちらを舐めていたのかはわからない。

 だが、ウルフはこちらの様子を伺いながら闘志の消えていない瞳を向けていた。


「手傷を負っても逃げを打たない。これは偵察じゃなくてはぐれの可能性が高いな……」


 偵察に来た個体ならば、こちらの脅威度を確認出来たら逃げるはずだ。

 しかし、それをしないと言うことは、分の悪い戦いでもしなければならない理由がある。

 はぐれの可能性が高い

 ならば……何度でも斬りつけるまで!!


「来い!!相手になってやる!!」

『があああああ!!!!』


 突進してきたウルフを正面から迎え撃つ。

 本来なら受け流してるところだが、俺の後ろにはリーファが居る。

 そんな事をしたら詠唱は途切れてしまうし、最悪の場合彼女が傷を追うことになる。


「負けるかぁぁあ!!!!」


 気合いと根性でウルフを受け止めていると、後ろのリーファから声がかかった。


「ありがとう、ベル!!これで終わらせるわ!!」


 リーファの声と共に、ウルフの足元から鎖が伸びてきた。


 その魔法に巻き込まれないように、俺はウルフから距離をとった。


「拘束魔法よ。殺傷能力を無くした代わりに敵を完璧に捕縛するわ」

「すげぇな……こんな魔法初めて見た」

「ふふん。まぁ詠唱時間が少し長いのが難点ね。その部分は貴方が頑張ってくれたから良かったわ」

「そうか。役に立てたなら幸いだよ」


 俺はそう言ったあと、鎖で拘束されているウルフの首を跳ね飛ばした。


「これでお終いだな」

「ご苦労さま。まぁ初めての戦闘にしては良かったわよ、ベル」

「こっちもありがとうな、リーファ」


 こうして初めての戦闘を終えた俺とリーファは、軽く握手を交わしたあと、深緑の森へと向かって行った。

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