第八十話 傀儡のスナイパー
悟「これで全員揃ったな」
船着き場では船の用意をしている船長がいた。
「うわ、本当に来たよ」
月島「船長さん運転お願いします!」
「はあ、まあ出してやるわい。ほれ、さっさと乗れ乗れ」
俺たちはそのまま船に乗って出港する。しばらく海の上で揺れていると明野小島が見えてきた。
月島「船長はどうするの?」
「お前さんらが戻ってくるまで船で待っておるわい、寝ながらな」
明野小島へと上陸する。すると足跡が確認できた。人工的に作られた狭い道があり、足跡はそこへ続いていた。
悟「伊角、この足跡男性のか、女性のか判ったりするか?」
伊角「試してみよう」
[伊角
生物学(80)→成功(64)]
伊角「断定とまではいかにいけど、女性もの靴で間違いないね。おそらく春田さんだろう。」
悟「やっぱ来てるよな。」
俺たちは警戒しながらも森の中を進んでいく。森の中を進み5分ほど経つと、突然銃声が響く。
俺たちは近くの木の端に体を伏せて身を隠す
そして俺のスマホに電話がかかる。相手は春田飛嘉野だった。
春田?「ようやく来たか、待ち侘びたぞ」
その声は春田本人のものだったが、口調や雰囲気から全くの別人のようであった。
悟「その口ぶりからして如月弦那だな?そしてさっきのは威嚇射撃でもしたのかな?」
如月「さぁ、近づいてくるがいい。返り討ちにしてやろう」
そう言うと如月は電話を切る
悟「もう一回掛けちゃえ」
他一同「へ?」
伊角「いやいや、そんなお人好しな訳…」
如月「…おい、何のつもりだ?今から戦おうと言うときに」
他一同「ホントに掛け直しちゃったよ」
悟「あんた、まだやるべきことがあるんじゃないのか?」
如月「やるべきこと?」
悟「姫崎信代と仲が良かったそうだな?」
如月「ほう、信代殿か。その名も久しく聞いたな…彼女は達者であったか?」
悟「信代と話す事があるんじゃねえの?」
如月「うむ、確かに貴様の言う通りだな」
悟「なら今すぐにでも…」
如月「では貴様らを始末してから会いにいくとしよう。あの街を我が物とするまで、この信念が変わる事はないぞ」
悟「そうかよ、だったら信代さんの頼まれた通り、お前のことを止めてやるよ。」
如月「そうか。ではもう電話切るぞ?もうかけても出ないからな?」
電話が切れる。
悟「へっ、やっぱりいい奴じゃねえかよ。こっからは正義の悪者ロールプレイを頑張りますかね……あの馬鹿野郎を少しでも本気にさせてやらねえとな。」
狭間「みんな!」
晩野「あそこを見てみると良い」
[晩野
目星(70)→成功(25)
狭間
目星(70)→成功(39)]
スマホのカメラで確認すると、俺たちのいる場所から300mほど離れた所に少し大きめの小屋があった。そしてそこから100m離れた所の高台の上に人影があり、そこから先ほどの銃声がしたのだろう。
伊角「この距離からの射撃が可能か、ライフルにしては相当の物を所持してるみたいだね。」
狭間「おいおい、日本は銃の所持はダメだろ!」
晩野「確か春田さんは全日本ライフル射撃競技選手権大会で優勝、全国柔道選手権大会では4位私が言うのもあれだが超人だ。」
悟「そうか、猟銃での射撃か。なら技能値判定を半分にすれば射程距離を二倍にできるCOCの特性上、近づけば近づくほど不利か…まあ、お前らなら余裕だよな?」
伊角「当たり前だよ。一応は私は神話生物:イスの偉大なる種族だよ?よほどのことが無い限り、負けることは無いよ」
月島「私だってムーンビーストの端くれです。近接戦は任してくださいね!」
晩野「その二人が巫血漿でやられたとしても」
狭間「僕たちがいるからね」
悟「頼もしい限りだ。よし、行くぞお前たち!!」
「「おー!!!」」
春田「来たか…」
春田の目前200m前に三人と一匹が現れる。
伊角「みんな作戦通りにね」
月島「はい!」
晩野「了解」
狭間「わかってる」
春田「一人いない…?」
私たちが春田を止める方法は二つ。一つ目は彼女を戦闘不能状態まで追い込むこと、二つ目は彼女自身にかけられた【幽鏡術‐服従】を解除し、洗脳を解くこと。
前者は文字通り彼女自体を気絶させ戦闘不能にさせる。しかし、近接戦となると春田が私たちを上回る可能性が出てくる。悟のもしものことを考慮に入れた結果、私たちは彼女の洗脳を解くことを作戦とした。
まず、月島ちゃんがムーンビーストに変身し、ヘイトを集める。ムーンビーストの体質上、火器でのダメージは最小限に抑えられることになる。だから月島ちゃんが真っ先に春田の元に向かい、近接戦闘へと持ち込ませる。
そして彼女との位置関係だが離れている距離からして200m、ラウンド数に換算して5ラウンドあれば彼女に接近できる。そして彼女を操っている要でもある藁人形が設置されている範囲は彼女の半径50m以内。つまり、私たちは5か6ラウンド目で彼女の洗脳を解除できるはず。
第1ラウンド
[春田
ライフル(45)→失敗(80)]
春田が放った銃撃は案の定月島の方へと向かったが、距離によるブレか月島の体の横を通過し当たることは無かった。銃撃が終わると月島を先頭として伊角達は前進していく。
第2ラウンド
[春田
ライフル(45)→成功(45)]
春田が月島の体を捉え、そこに向けて銃弾が突き進む。
[月島
回避(66+10)→成功(38)]
しかし、夜闇が月島の体を薄暗く包み込んでいる影響か、当たると思われていた弾丸の軌道は月島の体に当たらなかった。
第3ラウンド
[春田
ライフル(90)→成功(40)]
正規の射程距離内に入ったことで春田の下がっていたライフルの技能値は元へと戻り、本来の射撃性能を取り戻した春田による攻撃が三度月島へと向かう
[月島
回避(66+10)→致命的失敗(99)]
月島「うっ!?」
ここに来て唯一の不安要素であったダイス運が荒ぶるが
[月島
ダメージ 4d6+1→21
HP21→16]
受けたダメージは軽傷。ムーンビーストとしての能力が活き、月島はワンパンを免れる。
晩野「月島!」
月島「私なら、平気です!晩野さんは幽鏡術の方を!」
晩野「了解した。」
そしてこのタイミングで
伊角、狭間、晩野「【幽鏡術 -解欄-】!」
[伊角
MP17→16
晩野
MP15→14
狭間
MP14→13]
伊角達が解欄を使うと春田へと伸びる青い糸が見える様になり、魔力の集中している場所は赤く光って見えた。
晩野「見えた!」
狭間「次で終わらせる!」
そして来る第4ラウンド
[春田
ライフル(90)→成功(40)
月島
回避(66+10)→成功(38)]
月島は春田の銃撃を難なく躱し
月島「みなさん、今です!」
月島の合図と共に伊角達は一斉に藁人形を破壊する。そうすると春田はその場に倒れこむ。人間へと姿を戻した月島が指輪を外すと目がカアッ!と開き、意識が覚醒する。
月島「大丈夫ですか?記憶はありますか?」
春田「み、皆さん…はい、断片的にですが…微かに覚えています。ごめんなさい、私のせいで…私でよければ治療のお手伝いをって負傷者居なかったんですね。」
伊角「月島ちゃんのおかげでね、それより春田さん。目覚めたばっかりで悪いけど、これ使って手伝ってくれるかな?」
そう言い伊角は巫血漿を見せる
春田「……なるほど、分かりました。私も協力させてもらいます」
狭間「意外と飲み込みが早いね」
春田「あの男に操られている間に【幽鏡術】や【巫血漿】の存在を聞いていましたから」
そう受け答えをした後に春田が疑問を投げかける
春田「あれ?悟さんは?」
伊角「既に、如月弦那のところにいるさ。」
春田「大丈夫なのでしょうか、彼だけを行かせて…」
伊角「大丈夫さ。私が渡したアレを使えば」




