第六十話 変身ッ!仮面ライダーミトス!!!
月島獣子はニャル子の来客の避難誘導の協力もあり。ムーンビーストに変身し、グールたちを薙ぎ払いながら統率個体を探していた。
月島「ぜぇぜぇ、これで15体目。どんだけいるんですかこのグールたちは!」
一体、また一体とグールを突き刺しながら道を歩いていると、パークの中に立ち込める煙が徐々に量を増やしている頃合いだと言うにも関わらず、やけに煙が晴れたところに出たその先に一体、様子のおかしいグールを発見する。
月島「おそらく、あれが統率個体……」
月島は統率個体であろうグールにコンタクトを取る。
月島「あなたですか?このンガイの森に火の手を放ったのは?」
槍の矛先を統率個体に向けて、月島は話す。
「………」
月島(いくらグールであれ、素のスペックだけで言ったら私の方が格上。ですけど何なんでしょうか、この異様な緊張感は……)
言葉は無い。ただ無言でその場に佇むそのグールはニヤリと笑い、体全身に力を込め始める。
月島「なっ!?」
月島はその姿を見て驚愕する。本来であればグールとは魔術を覚えた、少し硬く、力の強い人間程度の強さでそれ以上の特徴を持ち合わせないことは知っていた。
だが、目の前にいるそれは違った。
体の全身に炎を纏い、体の表面に赤い模様のような線が幾つにも浮かび上がっていた。
ムーンビーストとしての勘が訴える。
こいつはヤバいと。
月島「ここで食い止めなきゃ!」
月島はそう決心して槍を構える。
統率個体は構えをとったムーンビーストを敵と判断し、炎を飛ばす。
[グール(統率個体)
炎(60)→成功(54)
月島 回避 (66)→成功(22)]
月島はそれを避け、槍で弾きながら距離を詰る。
月島(間合に入った!今なら突けれる!)
月島は槍を再度持ち直してグールに反撃の一撃を入れようと、突きを行う。
だがダイスの女神は彼女の意志を無碍にするように残酷に告げる。
[月島
槍術(80)→致命的失敗(100)
マーシャルアーツ(30)→致命的失敗(99)]
月島が放った渾身の一撃は、容易にグールに捕まれ、反撃を喰らう。
[グール(統率個体)
タッチ(85)→成功(76)
ダメージ 4D6→15
月島HP21→6
吸収 2D10→16
月島MP15→0]
グールはその燃える両手でムーンビーストに触れる。次の瞬間、月島に炎による激痛が走る。
月島(熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い)
全身を焼かれ、魔力を吸い上げられ、月島獣子はその場に崩れるように倒れこんだ。
月島(ごめんなさい…悟さん…)
ただそう心に言い残して。
俺は月島ちゃんが向かったであろう方向へと着くと信じられない光景に絶句する。
炎のように燃え上がり佇む一体のグールのような存在と、そのグールの近くに倒れ込んでいる全身が焼け爛れたムーンビースト。
それは間違えようにもない。
間違えることもできない。
一緒に過ごしてきた、家族。
月島獣子
悟「なんで……」
そうとしか言葉が出てこなかった。燃え上がりつつあるテーマパークの中に嗚咽が走る。
悟「どうして…何で!なんでなんでなんでなんでなんで!!!」
胸が張り裂けそうだ、いや、今なら張り裂けて死んでしまいたい。助けられなかった。
あの時一緒に行動していたら何かが変わっていたかもしれない、ただの自分一人の好奇心で大切な人を失ってしまった。
憎い、憎い、誰を恨めばいい?
バカな自分か?
殺したであろうグールか?
そうだ、そうに違いない。そうにでもしなきゃ、きっと正気を保てなくなる。
だから、今はただアイツを殺す。
俺はグールに向かって走る。ただひたすらに殺意を持って飛びかかり右フックを入れるが、右拳の皮は焼け、ドライヤーで髪を焦がしてしまったときのような臭いが鼻をつく。
さらに、右フックはグールには効いているそぶりも無く、腕を掴まれ投げ飛ばされる。
悟「ぐはっ……」
敵いはしなかった。たかが人間が神話生物に挑むのはCOCで無い限り無謀なことであった。
始めて感じる、本格的な死への恐怖心と、先の無謀な攻撃による火傷と投げ飛ばされ背中を強打した事による痛みが全身を巡る…が。
悟「まだだ…月島ちゃんが受けた痛みは……こんなものじゃないはずだ……」
歯を食いしばりながら次の一手を考える。
今のはダイスの判定があれば避けきれていたかもしれない、次はダイスでの判定バトルに持ち込めれば完封もできるかもしれない。
だけど、どうやって切り替えればいいんだ?
先は意識的にできたが今はどうだろうか?できている感じはしない。
どうする、どうする、どうする?
悟は焦る。それのせいか彼の頭は真っ白になって、上手く思考が働かない。思考しても動けれるほどの気力が無い、希望が無い。
無駄な思考を繰り返していると、悟の隣の空間が裂けた。
悟「あ゛?」
隣を振り向くと、そこには銀の鍵を手に持ち、ドローンのような物を隣に置いた伊角がいた。
伊角は状況を察するなり、ドローンをグールの下へ向かわせ注意を向けさせつつ、悟に話しかける。
伊角「ごめん、遅くなってしまった。許してくれ悟。」
悟「お前!今まで何処で何をやってた!」
悟は怒りのあまり立ち上がり、伊角の胸ぐらを掴もうとする。
無意味な事であった。怒りをぶつける意味も、胸ぐらを掴んで、「こんな状況になったのはお前が早く来なかったから!」だと罪を擦り付け、束の間の責任感からの解放を求めようとすることを。
伊角はそんな状態の悟を頬を手の平で叩く。
伊角「正気に戻れ悟!彼女はまだ死んではいない。ちゃんとよく見ろ、辛うじて息はしてる。今はドローンが注意を引いて隙ができている、救出が出来次第、ここから脱出するんだ!」
その言葉に俺は正気を取り戻す。
そして以前から考えていたことが頭の中を遮る。
前々からずっと思ってたんだよな。
神話生物から逃げるだけのシナリオってあるよな?武器などの持ち込み不可、仮に攻撃しても通用しないか、即死レベルの攻撃でお陀仏。
そんな筋書きハッキリ言ってクソおもんない。
それと同時に思うこともあった。
そんな筋書き通りに非日常を攻略しても、その舞台はどうなる?そう攻略する前と一緒。何も変わっちゃいねぇ。
元凶放置エンドはまた新たな被害者を産み続ける。だったたらそんな筋書きなんざ筋書き破壊するのが真のトゥルーエンドなんじゃないのかって……
発生したSANチェックから、ここは今シナリオ上に有るってのはわかることだった。
だったら月島ちゃんが傷つけられたのは必然的、筋書き通りだったって言うのか?
今、目の前にいる突然変異のようなグールがいるのも?ンガイの森が燃えているのも?
ふざけるな。こんなの許せるはずが無い。
もしも、俺にこんな筋書きをぶっ壊せるほどの力が有れば…力……?
そして、俺は海の底から浮かび上がるように、一つの記憶を思い出す。以前、伊角が口にしたあることを…
悟「伊角…あれ出せるか…?」
伊角「あれって……もしかしてライダーシステムのことかい?まだダメだ!まだ肉体での変身テストを行ってない!今変身できても確率は1%に等しい!無謀すぎる、それこそ君の命まで失うことになる!」
悟「うるせぇ!」
悟は伊角に向かって一喝する。
悟「今俺が出来ること、全部やってやらぁ!確率なんざ関係ねぇ!俺はCOCプレイヤー中川悟!ダイスという確率と共存してきた俺には1%あれば十分だ!!!」
伊角は打ち落とされたドローンを見て、少しの沈黙の後に頷き。
伊角「あーもう!わかった!変身ベルトを腰に当てて、スマホのキャラシメーカーを開いてベルトに斜めスライドして入れて、上から押し込め!わかったならとっとと変身しろ!」
と言って悟に変身ベルトを渡す。
悟「わかった…おい!そこのグール!」
「………」
悟「テメェ!よくも、月島ちゃんを焼いてくれたな!!!お前には犠牲になってもらう。俺を怒らせた分と、月島ちゃんを傷つけた分。それと、お前をぶっ潰して、筋書き破壊して。俺が作る、真のトゥルーエンドのためになァ!!!」
悟は変身ベルトを腰に当てる。そうすると変身ベルトから瞬時にベルトが生成し固定する。
左腕を右肩に突き出し、右腕で変身ベルトにキャラシメーカーを開いたスマホをセットすると同時に左太ももに向かって突き出す。
《AF:キャラシメーカーとの接続を確認。これより変身システムを起動。Form=ヒューマンへの変身を開始します。》
ドライバーがそう告げると、旧支配者のキャロルのような待機音声が流れると共に足下から魔法陣が展開される。
次々とスライムのような球体が体の周囲を漂い覆うと思うと表面の形が徐々にアーマーのようなものを形成して内側から触手のようなものが体の至る所に付着するように伸びてくる。
その後、左腕を上げて、拳法の構えのような姿勢を取るように右半身を後ろにそらし、右手で握り拳を作って、キャラシメーカーを上から叩き押す。
悟「変身ッ!」
と気持ちを込めて声を張る。
そうすると。それらの触手は一瞬にして体に付着し絡まり、アーマーを体へと引き寄せ、結合されて、アーマーは大柄で簡素、コートが付いておりまるで番長のような雰囲気を醸し出す西洋甲冑のような一つの鎧となった。
新たな神話を築く者、仮面ライダーミトスがここに顕界する。
悟「さぁ、反撃開始と行こうか。タイマン張らしてもらうぜ?」




