表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/77

第8章:いつか、許せる日が来たら(4)

 サナワ・グリーンフルビルは十階建てである。

 ちょうどバリアフリーが世間に広まり始めた時期に建てられたため、廊下は平坦で、段差があるところにはスロープが併設されている。

 エレベーターも車いすの人が乗れるように、一台あたりの幅と奥行きを広く取っているという。

 だが、ソル・スプリングたちがエレベーターの中を実際に見ることはかなわなかった。どの階にいるのか示すランプは消えていて、ボタンを押しても反応しない。

「こンの!」「ま、待って落ち着いて、ルナ・オータム!」

 今にもボタンを叩き壊しそうなルナ・オータムを、シエロ・サマーがあわてて制止する。

「仕方ないよ」ソル・スプリングはため息をつきながら、廊下の奥に視線を向ける。「素直にのぼろう」

 つられて残りの二人も見やる先には、階段があった。

 ルナ・オータムがなにかを言いたそうに顔をしかめるが、腹をくくったのだろう。先陣を切って走り出した。

 足の悪い人でものぼりやすいように、一段一段が低めの階段を、三人の魔法少女は一段飛ばしで駆けのぼる。

『足腰をきたえておかねば、歳を取った時に苦労する!』

 そう豪語した祖母と一緒に、夏休みは毎朝、近くのお寺の百段を走ってのぼったものだ。千春の体力では三十段でへばって、『根性が足りん!』と怒られていたが。

 ともかく、敵は建物前と玄関先に集まっていたのか、ソル・スプリングたちの行く手をはばむものは出なかった。

「これなら、十階まで一気に行けそうだね」

 ソル・スプリングが、走りながらもほっと息をついた時。

「――止まって!」

 シエロ・サマーが叫びながら『シュテルン』をかざす。水のあぶくが放たれ、壁を作ったかと思うと、正面から飛んできた、無数の氷のつぶてを受け止めた。

 言われて足を止めていなければ、まともにくらって凍りついていただろう。ソル・スプリングはぞっと身をふるわせ、そして、これだけの魔法を使える相手を思い出して、金色の瞳で前方をにらみつける。

「ここから先へは行かせません」

 上階へ続く踊り場に、非常灯の灯りを背中から受けて立つのは、克己を連れ去った魔法少女だった。たしか名前は。

「ニエベ・ウィンター……!」

「えっ!?」

「魔法少女が敵なの!?」

 ソル・スプリングがつぶやくと、ルナ・オータムとシエロ・サマーが驚いてこちらを向いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ