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第8章:いつか、許せる日が来たら(3)

 あまりのまぶしさに思わず手で目をおおってしまった魔法少女たちの視界がふたたび開けた時、そこにいるのは、可愛らしいポメラニアンではなかった。

 顔はたしかにポメラニアンなのだが、首から下が、もふもふの毛におおわれながらもたくましい筋肉を隠せない、『自在なるもの(フリーマン)』に変わっていたのだ。

「我こそはフリーマン、『猟犬のターヴィエント・マテルアリフェルヅ』! 我が『主人マイスター』の子らのため、『騎士リッター』としての力を解放する!」

 そしてタマは、呆然とする魔法少女たちの前で、「ふううううんッ!」と拳に力を込めると、

粉砕ふんさいッ!!」

 ビルの玄関に正拳一発。宣言どおり、自動ドアのガラスは粉みじんになった。

「むっ。派手なお迎えが来たようじゃの」

 色々とツッコミを入れたいところではあるが、タマの言葉にソル・スプリングたちも、屋内に視線を馳せる。わらわらと、フリーマンたちが集ってくるところであった。

「ここで時間を食うわけにはいくまい! 千春、いや、ソル・スプリングよ! お前たちは先に進めい!」

「でも」

 ずっと一緒に暮らしてきた家族を置いてゆくのは、気が引ける。しかし、腐っても騎士。タマは譲らない。

「お前たちがリーデルのもとへたどりつくのが遅れれば遅れるほど、室淵や、佐名和愚連隊の若者たちが、危険にさらされる時間は長引くのじゃ! 振り返らずゆけい!」

 正論に、返す言葉はない。行動で示すのみ。

「タマ! 絶対無事でいてね! 今度、高級缶詰を買ってくるから!」

「ほっほう! それは楽しみにせねばならぬやつじゃな!」

 ソル・スプリングが叫ぶと、タマは本当に楽しみそうに笑う。

 これを、約束で終わらせはしない。

 魔法少女たち三人は、フリーマンの群れへ突っ込んでゆくタマの脇を駆け抜け、ビルの中へと入ってゆくのであった。

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