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第7章:王子様を助けにいくのはお姫様の役目(11)

 どれほど一人で打ちひしがれていただろうか。

「千春ゥ!!」

 タマの野太い声とともに、複数人の足音が近づいてくる。

「千春くん!」

「あんた、大丈夫なの!?」

 まずこちらの肩に取りついたのは、奈津里と紅葉だった。

「職員室にいても、すげー魔力を感じたぞ。あれは……フリーマンか?」

「しかもリーデル側のかよ?」

 室淵と洋輔があごに手を当ててぼやき、困り顔を見合わせる。

 すると、役者がそろうのを待っていたかのように、突然空が黒い雲におおわれ、太陽を隠し、雷が鳴り始めた。

 ピシャン! ゴロゴロゴロ……と轟く空の下、羽根を持ったり、虫や獣の姿をした『自在なるもの(フリーマン)』たちが、佐名和の各地へ散ってゆくのがわかる。

「リーデルのやつ!」紅葉がフェンスに取りついて歯がみした。「もうなりふりかまわないってわけ!?」

『リーデル様の佐名和壊滅計画は、最終段階に入りました』

 ニエベ・ウィンターと名乗る魔法少女が告げたことを思い出す。リーデルは、フリーマンの存在を隠すことなく、佐名和への総攻撃を開始したのだ。

「克己を助けにいかなくちゃ」

「えっ、克己くんが!?」

 千春はいつの間にかかいていた冷や汗をぬぐいながら立ち上がる。声をあげた奈津里だけでなく、ほかの人たちも千春を振り向く。この流れからの千春の台詞で、克己がどうなったかは、皆に伝わったようだ。

 だけど、彼がどこへ連れ去られたのかわからない。それに、魔法少女として、リーデルにも対処しなくてはいけない。でも、リーデルもどこにいるのかわからない。

 どちらを先にすべきかは、わかっている。だけど、一人の恋する子として、千春の心には迷いの霧が立ちこめている。それが晴れずにいると。

『おーーーーーい!!』

 突然バラバラバラ……と大きなプロペラ音を立てて、ヘリコプターが千春たちの頭上に飛んできた。ドアを開けて身を乗り出し、拡声器で呼びかけるのは、東城美香だ。「げっ」と紅葉がつぶれたカエルのような声を出す。

『前につかまえたフリーマンがやっと吐いたよーーー、リーデルの居場所!』

 光明がさしたかに見えた時、ぱあん! と大きな音を立てて、雷がヘリコプターのプロペラを直撃した。

『あああ~~~!?』

 東城の悲鳴を拡声器に通したまま、ヘリコプターは、中学校の屋上に不時着を余儀なくされる。室淵と洋輔が即座に救助に向かったが、幸いにして怪我人はいなさそうだ。

『どうするのよ~』相変わらず拡声器越しで、東城がぼやく。『ヘリ使えなかったら、このフリーマンの大群を抜けて、リーデルのところへ乗り込めないわよ~』

 すると、洋輔が親指を立てて不敵に笑う。

「ふっふふふ! こんなこともあろうかと、手配しておいたぜ!」

 なにを。皆が突っ込む前に、派手なクラクション音を立てて、数十台のバイクが校庭に乗り込んできた。

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