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第6章:おとずれる変化、揺れる心(8)

「じゃあ、また明日ねー」

「千春くん、克己くん、またね!」

「おう」

「二人も気をつけて!」

 十字路で紅葉と奈津里と別れた千春と克己は、自宅に向かって道を歩く。日が長いといえど、夏の太陽も山の向こうに沈みゆこうとしている。

 克己とも別の道をゆく、という曲がり角にさしかかった時。

「千春」

 幼なじみが不意にこちらを向き、真剣な表情で語りかけてきた。

「周防には不本意みたいな態度を取っちまったけど、オレはいやじゃないからな」

 一瞬、なんのことかよくわからなくて、目をみはってしまう。だが、すぐに思い当たった。克己は臨機応変に動いて魔法少女たちを守れ、と言われたことだ。

「正直、嬉しいんだ」

 千春をまっすぐに見下ろして、克己は屈託ない笑みを見せる。

「お前がオレの知らないところで危険な目に遭うより、オレの体を張ってでも、お前を守れることが」

 一拍置いて、彼は言った。

「オレ、お前の幼なじみで本当に良かったよ」

 とくん、と。また胸が高鳴る。この少年にときめきをおぼえるのは、一体人生何度目だろう。

「ぼ、僕だって」

 今なら、自分の正直な気持ちを伝えられるかもしれない。きょときょとと視線をさまよわせて、何度か呼吸をして、千春はぐっと両の拳を握り締めると、声を張り上げた。

「お前と一緒に戦えて嬉しい! 隣に立てて嬉しいんだ!」

(ちーがーうー!!)

 思わず頭を抱えてしゃがみ込みたくなったが、必死にそれを抑える。言いたかったのはそこではない。これまでの好意を直接的にぶつけたかったのだ。

 だけど克己は、普段は勘が良いくせに、こういうところはにぶいのだろうか。ぽかんと口を開けて固まったかと思うと、ぷっと吹き出して。

「ははっ、オレもだよ」

 そう言いながら、千春の頭をがしがし撫でてきた。

「ずっと守らないといけないと思ってたお前に、最初にソル・スプリングに変身した時に、守られたからな。これからも頼りにしてるぞ、相棒」

 相棒。

 その単語に、つきんと胸に針が刺さった気持ちになった。

 自分はどこまでも、克己の親友で、相棒で。それ以上の関係にはなれない。やっぱりいつかは、彼の隣にほかの女子が立って、千春が今いる位置を奪ってゆくのだ。そう思うと、ちくちく、ちくちく。心が痛む。

「どうした、千春?」

 いきなり叫んだかと思えば急に黙り込んだ幼なじみを案じたのだろう。克己が顔をのぞき込んでくる。

「なっ、なんでもない! また!」

 千春は両腕を振りながら全力で顔をそらし、そのまま克己の顔を見ないで駆け出した。

 自分がどれだけひどい表情をしているか。それ以上に、克己がどんな顔で自分を見ているか。知りたくはなかった。

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