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第6章:おとずれる変化、揺れる心(7)

 数分後、めいめいの頼んだものが、テーブルに運ばれてきた。

 奈津里と紅葉は水色が鮮やかな、夏にぴったりのソーダパフェ。克己は抹茶白玉あんみつ。

「うわー。あんた、中三なのに食べ物の趣味がじじくさいわね」

 呆れて肩をすくめる紅葉に苦笑を向ける千春の前には、チョコレートパフェ。乗っているソフトクリームもアイスクリームもチョコレート味で、ココアクッキーがささり、さらにチョコソースがたっぷりかかっている。

 これは千春のお気に入りで、克己以外の男子生徒と一緒にファミレスに入った時には、からかわれるので頼めない、特別な味だ。そのことも克己はわかっていてくれるのが、なによりありがたい。

「いただきます」

 を皆で言い、それぞれがそれぞれの甘味に舌鼓を打つ。

 これを食べるのは実に久しぶりだ。チョコレートの甘さを千春がかみしめていると。

「あ、紅葉ちゃん。クリームついてる」

 奈津里がくちびるの端を指で差し示して、紅葉に伝える。

「えっ」

 紅葉は首をかしげて口に手をやるが、鏡合わせが苦手なのだろうか。クリームがついているのと逆側を必死にぬぐおうとする。

 すると。

「ちょっとごめんね。こっち」

 奈津里がテーブルの上に身を乗り出し、手をのばしたかと思うと、紅葉の口元についたクリームを指ですくって、ためらいなく自分の口に持ってゆき。

 ぺろり、と。

 なめとってしまった。

 これには千春と克己も面くらい、紅葉は完全に硬直している。なんならそのほおも紅潮している。

「えっ」

 不思議そうにしているのは、奈津里一人だ。

「どうしたの、千春くんも克己くんも。紅葉ちゃんはなんだか赤いし。暑くて熱が出たの?」

「……違う」

 紅葉はテーブルに突っ伏し、うめくように声をしぼり出す。

「あんたの無自覚、怖いわー……」

 奈津里が紅葉に好意を寄せているのは、千春たちから見ても明らかである。

 でもそれが、友人としての好感なのか、はたまた、千春から克己へのように、それ以上の想いがあるのか。行動からはまだはっきりとわからないのは、たしかに「怖い」という感想しか出ないだろう。

 千春は笑い出しそうなくちびるを想いっきりゆがめて克己のほうを見る。幼なじみも、微妙な笑みを返し、肩をすくめてみせた。

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