第5章:お前もアミクスにならないか?(3)
「會場の先祖にはフリーマンがいた。それは間違いない」
室淵が確信をこめて奈津里を見つめる。
「ほほう、先祖返りじゃな。今、奈津里を見ていても、膨大な量の魔力を持っているのがわかるぞ!」
タマも興奮して机の上に身を乗り出し、はっはと舌を出す。
「なるほどね」
紅葉が腕組みして前を向いたままの状態で、得心がいったようにうなずく。
「体が弱かったのは、身に余る魔力を制御する方法を知らなかったから、バランスを崩していたってわけか」
「でも、この一ヶ月、室淵先生に制御の仕方を教えてもらって、自分の魔力がわかるようになったの。もう体調を崩したりしないし、みんなと一緒に戦えるよ!」
奈津里は顔の前でこぶしを作って、はしゃいだ声をあげる。
「わたし、フリーマンの血を引いていて、本当に良かった!」
心底嬉しそうな奈津里の表情を見て、千春も胸が温まる思いがする。それに、ともに戦う仲間が増えるのは、心強いことだ。
しかし。
「……フリーマンの血を引いてて、良かった?」
紅葉がくちびるを歪めて、首でも絞めそうな憎悪に満ちた、低い声を放った。
「あんた、本当にそう思ってるなら、よっぽどおめでたいわよ」
赤みを帯びたするどい視線が、奈津里を突き刺す。紅葉は椅子を蹴るように立ち上がると、大またにパソコン室を横切る。そして、ばん! どん! と、ものすごく大きな音で扉を開閉して出ていった。
「えっ、紅葉ちゃん……?」
一体なにが起きたのかわからない、といった様子で奈津里が戸惑う。千春も、なぜ突然紅葉が機嫌を損ねたのか、わからない。
「ッカー!」
いきなり『かに座のカルキノス』ではない、室淵の調子に戻って、担任はがりがり頭をかく。
「すまん、俺が言ってなかったのが悪かったわー」
そうして語られた話に、千春も奈津里も、がく然と目をみはってしまうのであった。




