第5章:お前もアミクスにならないか?(2)
そして、放課後。
「おう! お前さんが噂の『機関』所属のフリーマンか! 千春から話は聞いてるぜ!」
千春たちがパソコン室へ行くと、なぜか室淵のほかに、千春の父・洋輔と、タマがいた。
「あんたのこともよく知ってるぞ、澤森洋輔ー。ニンゲンが皇帝の友愛者に手を出したって、そりゃもう当時のフリーマン界隈は大騒ぎだったんだからなー」
「はっはっは! 俺様超有名人じゃねえか!」
「この脳天気さが、洋輔の長所であり短所じゃな」
担任と保護者たちの初対面は、なごやかに……とまではいかないが、そこまでぴりぴりした空気でもない。千春たちの入室に気づいた室淵が差しまねくままに、パソコン室の最前列に三人の少年少女が座り、その後ろの席に洋輔とタマがつく。
室淵は教壇に立つと、ひとつ咳払いした後、
「政府の対フリーマン組織『リベルタ機関』から、魔法少女関係者に話がある」
まるで『かに座のカルキノス』の時のような、しっかりした口調で話し始めた。
「『ソル・スプリング』の澤森と、『ルナ・オータム』の周防のおかげで、今のところ、佐名和町には大きな被害が出ていない」
室淵の指摘通り、千春と紅葉はこの一ヶ月、リーデルに忠実なフリーマンが現れるたび、魔法少女に変身して、ほぼ難無く撃退してきた。
フリーマンのしわざで、建物の壁が壊れかけたり、人が襲われたりもしたが、人々の記憶はタマが忘却魔法でごまかし、破壊のあとは『事故』で片付けられた。おそらく『機関』が、情報操作をしているのだろう。
「だが、これからどんな強いフリーマンが現れるか、正直俺にもわからん。なので、カレンの直接の関係者である澤森の父親とタマ、二人と密に連絡を取れるようにして」
室淵は洋輔とタマを見やり、それから、奈津里に視線を移す。
「そして、戦力増強だ。『機関』が保管していた『シュテルン』を會場に与えて、魔法少女を増やす」
千春は驚いて奈津里のほうを向く。紅葉は薄々気づいていたのか、反応が薄い。
当の奈津里は、そう言われるのがわかっていたかのように、「はい」と神妙にうなずいた。




