表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/77

第4章:ルナ・オータムは嵐を運んでくる(11)

「だーから、俺の役目じゃないって上に言ったんだけどなー。『機関』の役人、融通ゆうずうきかないのよ」

 そう言っている間にカルキノスの姿がぼやけ、ぼさぼさ頭に無精ひげの、室淵の姿に変わる。

「リーデルが復活して、カレンが暮らしてた佐名和を狙ってるらしいから、カレンの息子を見てろって。若作りにできるから、大卒三年目なんて無茶な設定でも、受験生の担任になれたんだぜー?」

 あっ、先生それ、先生なりの精一杯の若作りだったんですか。その言葉を、ソル・スプリングはなんとかかんとかのみ込んだ。

 しかし、フリーマンがこんなに近くにいて、自分を見ていたとは。それに、政府の組織とは一体どういうことか。

 質問を投げかける前に、「まあ、お前ら」と、室淵がふらふら手を振った。

「早く変身解除しとけ。そこらへんに倒れてる連中がそろそろ目を覚ますだろうし、恐らく會場と十河も来る。話は日をあらためて、だ」

 言われて周囲を見渡せば、気を失っていた人々が、うめき声をあげながら、現実に戻りつつある。ソル・スプリングとルナ・オータムは慌てて『シュテルン』をひとふり。それぞれピンクと赤の光がはじけて、千春と紅葉は元の姿を取り戻していた。

「千春ー! 周防ー!」

「二人とも、だいじょうぶー?」

 間一髪、克己と奈津里の声が飛び込んでくる。

 振り向けば、克己が奈津里をおぶって、こちらに向かってくるところだった。

「あっぶなー。行き先言わずに飛び出したのに、ここにたどりつくなんて。勘良すぎない、あんたの幼なじみ?」

 紅葉が感服半分あきれ半分、といった様子で二人を見やる。しかし、千春の目は同じ光景を映していながら、心は違う思いでざわついていた。

 病弱な少女と、それを背負うたくましい少年。あまりにも似合いで絵になる二人。そこに、自分の入り込む隙はまるでないように見える。

(やっぱり、僕なんて)

 ゆるゆると克己たちに手を振り返しながらも、千春の気持ちは、夕暮れより早く、闇に沈んでゆくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ