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第2章:生まれた時から決まっていた運命なんてない(6)

 リーデルの復活。それは日本の危機を意味するだろう。

「リーデルの皇帝としての影響力は、とてつもなく強い。いまや、日本にいるほとんどのフリーマンは、リーデルに従っておると言っても過言ではないじゃろう」

 タマは一拍置き、「だから」と千春を見上げる。

「千春、お前の目覚めを待っておったのじゃ。『ソル・スプリング』になれる可能性を持つ、カレン様の血を引くお前を」

「ま、待ってよ」

 たしかに、『シュテルン』を手にした途端、昔から知っていたかのようにごく自然にソル・スプリングに変身できた。それが、フリーマンの血がなせる技なのだろうか。それにしたって、と戸惑いながら千春は質問を投げかけた。

「だからって、なんで女の子に変身したわけ!? 僕一応男だよ!」

「それもフリーマンの血だろうなあ!」

 それまで話をタマに任せてずるるるとコーヒーをすすっていた洋輔が、陽気な声をあげながらマグカップをテーブルに置く。

「お前、女子の格好したがってたろ? 部屋の本棚の奥にドレスの本大量にしまってるし! フリーマンって何にでも姿を変えられるから、そのへんの願望も叶えられたんじゃねえか?」

「なにいつの間に人の部屋の本棚あさってるの!?」

 千春は思わず大声を出して、椅子から勢いよく立ち上がってしまう。テーブルの上に置いたマグが揺れ、カフェオレがこぼれそうになったが、なんとかとどまった。

 道理でたまに本棚の本の位置が、自分が収めた記憶とは違っていると思った。父に趣味がばればれだった恥ずかしさで、千春は「くうう……」とうめきながら、今度はテーブルに突っ伏してしまう。

「まあまあ、そう落ち込むな! 父ちゃんはお前が息子と娘どっちでも一向にかまわんぞ! お前が俺様とカレンの子供であることに変わりはないんだからな!」

「なんか良いこと言っても人の本棚あさったのは事実だからね!?」

 恥ずかしい。ものすごく恥ずかしい。少女漫画はごまかさずに本棚の手前に並べていたが、女子向けの服飾雑誌やムックには、「これがいい」「これを着たい」と思うページにふせんを立てていたのだ。それもけっこうな量。あれが家族とはいえ他人にばれたかと思うと、今すぐこのダイニングから逃げ出したくなる。

 でも、逃げるわけにはいかない。

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