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74:バンブーヒルでの出会い

 日色はリリィン、シウバ、シャモエ、そしてミカヅキとともにある場所へ向かっていた。

 先日、立ち寄った集落にある噂が広がっていると聞いた日色たち。


 その噂とは、モンスターが人を育てているという噂だった。


 モンスターの特徴として、基本的に知性が低く、同種族同士でしか交配はせず、人には懐きにくいということ。

 無論例外はある。

 人とともに生活しているモンスターも存在するし、中には人語を理解するものだっている。


 だがどんなモンスターでも人を育てるほどの知識などは持ち合わせてはいないとされている。

 モンスターは自分たちと違った存在をまず警戒する。

 まして言葉を発する人を傍に置いて、あまつさえ子供のように育てることなどありえないとリリィンも言う。


 しかし日色は、そういう例外な事象には好奇心が疼く。

 本や人からでは決して得られない知識もある。こういうファンタジーな世界では得てしてそれが顕著だったりする。

 自らの目で見て肌で感じなければ真実は分からないし、日色もまた噂だけを聞いて信じることはない。


 しかしながら、もしそのような奇妙なことが現実にあるとしたらこの目で確認したいと日色は思っていた。

 モンスターが人を育てる。それは動物が人間を育てているのと一緒だ。

 本当かどうかは分からないが、もし真実ならどんなモンスターがどんな人を育て上げているのか興味をそそられた。

 ちょうど最近読んだ本の内容で、言葉を話さない獣と人との間に生まれた子供の話があったのでそれもきっかけにはなっていたかもしれない。


「ここが例のモンスターが住む【バンブーヒル】か……」


 日色は目の前に一面に広がっている竹の山を見て呟く。


「そのようでございますね」


 シウバが頷くと、リリィンはめんどくさそうに溜め息を漏らす。


「ホントに行くのか? モンスターが人を育てるというのは確かにおかしな話だが、どうせ眉唾と思うが?」

「そうは言うがな、実際は確かめてみなければ分からんだろ?」

「……それはそうだがな」

「それに急ぐ旅でもないんだ。あそこの【バンブーヒル】にも一度行ってみたかったしちょうどいい」

「ほう、それは初耳だな、何故行きたいのだ?」

「あそこには美味い筍が生えているとジイサンに聞いたからだ」


 リリィンはジト目で日色を睨み、呆れたように首を振る。


「相変わらず食欲の塊だな。まあ、貴様らしいが」

「ノフォフォフォフォ! その筍は是非わたくしとシャモエ殿が調理させて頂きますぞ!」

「は、はははい! せ、精一杯頑張らせて頂きますですぅ!」


 ミカヅキも「クイクイ!」と自分も食べたいぞという意思を示してきた。


「じゃあ、とにかくあそこに行ってみるか」


 日色一行は、【バンブーヒル】に向かって歩き出した。







 見る限り大小長短様々な竹がそこかしこに生えてあった。

 長いものではその先が見えないほど空に伸びているし、大きいものはその太さが日色の体幹と同じ大きさのものまであった。

 これほどの太さを持つ竹は見たことが無い。

 切ったら中から人が出てきても不思議ではないかもしれない。そういう物語も過去に読んだことがあったのを思い出す。


 しばらくそんな摩訶不思議な竹を見ながら歩を進めていると、空から翼をはためかす音が聞こえてきた。


「何だ?」


 空を見上げてみると、そこには翼をはためかす一体のモンスターがいた。

 鳥のようなモンスターかとも思ったが、手足がスラッと長く、まるで人に翼が生えているような存在である。

 肌は赤黒く、大きな口から覗く黒い牙はとても不気味で印象的だった。

 ゴブリンのような戦闘本能丸出しの表情を見て、友好関係を結べるような相手ではないことを悟る。

 

 しかも気になるのは、モンスターの胸から飛び出るように収まっている赤い物体だ。


(核? だが確かアレは……)


 先日のことだ。あの赤い核のようなものを日色はこの目で拝んでいる。

 そう、カミュの父親であるリグンドだ。魔物化してしまった彼と類似していた。

 

 リリィンたちも日色と同様のことを考察したのか、モンスターを見て怪訝な表情をしている。


 しかし件のモンスターは、何も知らずに日色の近くへと降りてくると、突然けたたましいほどの叫び声を上げた。


(ちっ、うるさい奴め)


 日色はあまりの金切り声に顔を歪ませる。

 リリィンもまた不愉快げに眉を寄せており、


「シウバ、このモンスターは何だ? 初めて見るぞ」


 彼女が日色も聞きたかったことをシウバに問う。

 しかしシウバは分からないのか頭を横に振る。


「いいえ、わたくしも長年生きてきましたが初めて見るモンスターでございます」

「ふぇぇぇぇぇっ! こ、こここ怖いですぅ!」


 シャモエだけでなく、いつの間にかミカヅキも日色の背中に回ってビクビクしていた。


「ですがお嬢様、どこか見覚えがある存在でもあるのですが」

「奇遇だな。ワタシもコイツと似た奴をちょっと前に見た」


 やはり二人とも砂漠のモンスターのことを考えついたらしい。


 するとモンスターがビクッと身体を震わせると、怖れも警戒もせずにジリッと間を詰めて来ようとする。


「来るか……?」


 日色は当然警戒を高めて刀を抜こうと柄に手をかける。

 しかし突然モンスターは何を思ったか、ガブリとその長い牙で太い竹に噛みついたのだ。


「なっ!?」


 一体何をしているのだと、皆がジッと見守っていると、モンスターが噛んでいる部分から徐々に竹の色が真っ黒に変色していく。


(何だ……何をしてる?)


 モンスターの行動に意味を見出せず固まっていると、突如としてそのモンスターは弾かれたように吹き飛んで転がった。

 吹き飛んだモンスターよりも、そのモンスターを吹き飛ばせた存在に日色たちは意識が向いた。

 そこには小型の熊のようなモンスターと、そのモンスターの背に乗った一人の子供がいたのである。






 突然出現した熊のようなモンスターと、その上に乗っている子供。

 その子供がモンスターを踏み台にして跳び上がると、吹き飛ばしていまだに地面に転がっているモンスターに向かって蹴りを食らわせた。

 モンスターは呻き声を上げると、またさらに吹き飛んでいく。


(子供……? まさかコイツが?)


 日色の目に映っているのは十歳くらいの子供だろうか。薄い紫色のボサボサ頭をしている。手入れなどまるでしていないような髪型だ。特徴としてピョコンとアホ毛が一束出ている。見た目からは男か女かは分からないが、可愛らしい顔立ちをしていた。

 この子こそがモンスターに育てられている子供だとしたら、もしかしたら裸なのかとも思ったが、毛皮のようなもので身体を覆っていた。その様相はまるでどこか辺境の狩猟民族を思わせるものだった。


(アマゾンとかでツタを持ちながら移動していそうな奴を思い出したぞ。だが……)


 何故だろうか、その子供を見ると、ふと懐かしい感覚を覚える。


(施設の奴らの中に似たような奴がいたからかな……?)


 日色は咄嗟にそんな判断を下した。

 そして次に熊のようなモンスターだが、大きさはその子供の三倍ほどだろうか。大人の熊だとしたら、少し小さめの熊だ。


「アレはバンブーベアだな」


 リリィンが熊のようなモンスターを見つめながら言う。


「ほう、名前から察するに、この地域だけに棲息するモンスターか?」

「ヒイロの言う通りだ。バンブーベアは数も少なく、大人しいモンスターのはずだが……」


 そのモンスターが子供を引き連れて、突如として現れた翼の生えたモンスターに、敵意を向けている。

 子供が追い打ちをかけようとしたら、モンスターは溜まらずその場から飛び上がって逃げていった。

 子供とバンブーベアは獣のように唸りながら逃げていくモンスターを見つめていた。


「おい赤ロリ、さっきはモンスターに育てられた子供など眉唾だと言ってたな?」

「…………」

「じゃあ、アレは何だ?」


 無論子供を指差して日色が尋ねる。


「フン、まだ確定したわけではあるまい! ここにモンスター以外の存在だって住んでいるかもしれないだろうが」


 確かにリリィンの言う通り、他にも人がいて、その人物が子供を育てているという説も可能性としてある。いや、その可能性の方が高いだろう。

 もしくは人の集落があり、あのモンスターは飼われている可能性だってある。

 とりあえず、真実はあの子供に聞けば分かることだ。

 日色が足音を立てながら子供に近づこうとすると、横から物凄い勢いでバンブーベアが突進してきた。


「っ!?」


 思わずその場から後ろへ飛んで距離を取った。


 バンブーベアからは明らかな敵意が滲み出ている。その隣にやって来た子供もジッとこちらを睨むような感じで見つめてきていた。


「なるほどな。どうやら歓迎はされてないみたいだが、オレはお前に聞きたいことがあるだけだ」


 子供を指差すが、バンブーベアは少しも警戒を緩めないが、子供は少し不思議そうに口を尖らせた。

 しかしこのままでは解答を得られないと思った日色は、腰から刀を抜くと、地面に突き刺す。


「こっちに敵意は無い。ただ話を聞きたいだけだ」


 ジッと子供ではなくバンブーベアの瞳を見つめる。刀を突き刺したのは、言葉にした通り敵意が無いことを示すためだ。

 しばらくそうしていると、突然子供の方がトコトコと近づいてきた。日色の前まで来た子供はモンスターを攻撃していた時とは違う純粋に光る瞳で見上げてきた。

 日色もまたその瞳を見返していると、


「んが!」


 子供がバンブーベアに振り返って声を上げた。

 するとバンブーベアから敵意が薄まっていく。どうやら日色が嘘を言っていないことを分かってくれたようだ。


「話を聞いてくれるんだな。それじゃお前、ここにいる人はお前だけか?」

「……が?」


 聞こえていないのか、それとも意味が分からないのか、日色は念のためにもう一度同じことを尋ねる。

 しかし子供はまたも首をコクンと傾ける。


「言葉が分からないのか? これはホントに……」


 そう呟きながらリリィンの顔を見ると、彼女もまた虚を突かれたような顔をしている。恐らく同じ答えに辿り着いているのだろう。そしてそれは先程のリリィンの言葉を覆すものだ。


「言葉が分からない。もしくは意味自体を飲み込めない。つまりお前は、このモンスターに育てられたってわけか?」

「…………」


 すると突然、子供が日色の手を取り、引っ張ってくる。

 どうやらついて来いということらしい。

 何か謎でもあるのかと思い、日色はそのまま子供に引き連れられ歩いて行った。

 ただずっとバンブーベアだけは殺意にも似た敵意をずっと日色たちに向けていたのは謎ではあったが。







 奥へと進むにつれ、奇妙な光景が広がっていた。

 それは周囲の竹が、先程囲まれていた緑の群れではなく、真っ黒なそれだった。


(黒い竹……?)


 物珍しくて、つい観察するように見つめていると、前方に大きな岩を発見する。その岩には穴が開いていて、よく見るとその中に何か蠢く大きなものを発見した。


「どうやらそこにいるバンブーベアの親のようだな」


 リリィンが言うと、それを示すかのようにバンブーベアがその大きな塊に近づき頬を擦り合わせる。

 そして子供もまた日色から手を離すとバンブーベアと同じことをする。

 周囲には他に気配は無い。もちろんそこに人の存在も皆無だ。

 日色は三つの存在を見つめながら、納得するように口を開く。


「どうやら噂はホントだったようだな」

「ちっ、まさかホントだったとはな」


 リリィンもまた認めざるを得ないのか溜め息混じりだ。


「しかしこの黒い竹は何だ? そういう環境なのか?」

「いいえ、ここの竹はすべからく淡い緑色のはずでございます」


 日色の問いにはシウバが答える。


「ならこれは何だ? 異常事態が起こってることは分かるが」

「ふむ、そうですなぁ。ヒイロ様、先程のモンスターのことを覚えてらっしゃいますか?」

「ああ」

「そのモンスターが竹に噛みついた時、このような闇色に染まりましたよね?」


 彼の言葉で思い出した。確かに先程のモンスターが黒い牙で竹を噛んだ時、その部分から黒が広がっていた。


「そう言えばそうだったな。ならこれも……か?」


 周囲は黒い竹で満たされている。

 あのモンスターの仕業なら、何のためにこんなことをしているのか……。

 下に落ちている笹の葉も見事に真っ黒だ。

 少し小さ目の竹から笹の葉を千切り取り、それをジッと見つめてみるが、色が変わっているだけで普通の笹の葉と何ら変わりがないように思える。

 すると子供が突然顔を強張らせて日色に近づくと笹を持っていた右手を払ってきた。


「なっ!?」


 何故そんなことをしたのか分からず困惑気味に子供を見つめると、落とした笹を子供が指を差す。

 自然とその笹に皆の視線が向く。

 すると驚くことに、日色が持っていた笹がウネウネと動き出し、形を変えていく。次第にどこかで見たような姿に変化した。


「ギィッ!」


 その姿は先程遭遇したモンスターが、縮小したかのような存在だった。

 子供がその小さなモンスターに向かって飛び出すが、動きが速くて逃げられてしまう。さらにあろうことかモンスターは日色に向かってきた。

 子供は「しまった!」的な感じで焦りを浮かべるが、突然そのモンスターの体は真っ二つになった。

 直後、チャキンと日色は刀を鞘に納める。

 そう、モンスターを寸断したのは日色だった。

 モンスターはそのままボロボロと灰化して消えた。


「一体何だったんだ?」


 思わず反撃してしまったが、こうなった現象の意味を掴めずに日色は眉を寄せている。

 しかしそんな日色をキラキラとした目で子供は見つめ、そしてかなりの勢いで詰め寄って来る。


「んがんが! んが!」


 服を掴みながら叫んでいるのだが、何を言いたいのかさっぱり分からない。


「……もしかして貴様の手際に感動しているのではないのか?」

「そのようですな、ヒイロ様の強さを肌で感じて、わ~すご~い状態なのではないでしょうか?」


 リリィンとシウバがそう言うので、日色はそうなのかと聞いてみると、コクコクと嬉しそうに頷く。

 こっちの言葉は理解できるのだろうか……?


「しかしこの竹は一体……?」


 そう呟くリリィンの疑問は尤もであり、日色も気になっていた。

 しかし聞こうにも言葉を話せない子供とモンスターしかいないのではどうしようもない。


(ん? 待てよ。なら……)


 日色は指先に魔力を宿しある文字を書く。


『翻訳』


 この文字ならモンスターと意思疎通が図れるのではと思い使ってみた。

 だが同時に、子供の服を突然引っ張って転ばせた存在があった。

 それは小さなバンブーベアだった。

 一体急に何をと思ったが、『翻訳』のお蔭で頭の中で彼らの会話が聞こえた。


『いつまでそいつらと仲良くしてるんだ! そいつらは人だぞ!』


 バンブーベアは子供に向かってそう言っている。

 すると子供も怒りを表情に出し言い返す。


『ぼくも人だ! 母さんが教えてくれた! 人の中にも良い人はいるって! この人は強くて良い人だ!』

『そんなこと分かるもんか! あのモンスターだって元々は人に造られたんだぞ! あんなことをする人なんてもん信じられるか!』


 その言葉を聞いて日色は目を細める。


(あのモンスターを人が造った?)


 日色は黙って話しの続きに耳を傾ける。


『きっとコイツらも今は大人しくしてるかもしれないけど、すぐに本性を出すさ! だって人は母さんをこんなにした奴らだぞ!』

『じゃ、じゃあぼくも信じられないっていうの!』

『う……そ、それは……お、お前はそいつらとは違う! 人みたいな形だけど、俺と一緒のモンスターだ!』

『で、でもぼくは人だって母さんにも……』

『お前はモンスターだ! だからそいつらもさっさと追い払え! こんなとこにまで連れてきやがって! さっきのモンスターもそいつらのせいじゃないか!』


 さっきのモンスターとは、日色が触った笹のことを言っているのだろう。


『違うよ! きっとこの人たちは何も知らないんだよ!』

『そんなこと何で分かるんだ!』

『だって……だって……』


 子供は日色の顔を、目を見つめる。そして再びバンブーベアに視線を戻す。


『嘘をついてないもんこの人は!』

『くっ……こ、この……ニッキの馬鹿野郎ぉっ!』


 ドスッと子供に体当たりしてバンブーベアはどこかへ走り去って行った。


(ニッキ……それがあのガキの名前か?)


 冷静に日色は子供の名前を知る。


『もう! イッキの分からず屋ぁっ!』


 転びながらもニッキは去って行くバンブーベアの名前を呼んでいた。








 イッキという名のバンブーベアが走り去ってから、ニッキは頬を膨らませたままで不貞腐れていた。

 いくらモンスターに育てられていたとしても、こういうところは普通の子供のようだった。

 日色もニッキに黒い竹のことを聞きたかったが、今話すのは止めた方が良いと判断して黙っていると、


『……もし』


 日色の耳に微かに響く声。

 その声は初めて聞く声であり、他に誰かいるのかと思い見回していると――。


『もし、そこの赤ローブのお方』


 日色はその声が目の前の大きなバンブーベアから聞こえてくるのを感じた。


「もしかしてお前か? 今話しかけたのは」

「ん? 突然何を言っているヒイロ?」


 急にバンブーベアに向かって話しかけた日色のことを不思議そうに見つめるリリィン。


『はい、わたしです。やはりわたしどもの言葉が分かるのですね』

「……どうして分かった?」

『あなたが子供たちの会話を聞いて、反応をお顔に出していたのでもしかしてと思い、声をおかけしました』 


 確かに二人の喧嘩の最中、気になるワードが出て反応をしてしまったのを覚えている。


「話しかけてきたということは何か用でもあるのか?」

『先程の、走り去った子供はイッキと言うのですが、数々の暴言すみませんでした』

「別に気にしてない。それにアイツの言うことも理解はできるからな」

『……お優しいのですね。ありがとうございます』

「礼なんていい」


 二人がそうやって会話をしているのだが、リリィンたちには日色が普通に喋り、バンブーベアが「ガアガア」と鳴いているので、とても不可思議な光景だろう。


「おいヒイロ、貴様もしかしてモンスターと会話できるのか?」

「まあな。今コイツと喋っているから少し黙っていろ」

「む……」


 不機嫌面を浮かべるリリィンだが、日色は無視して続ける。


「なあデカグマ、この黒い竹について聞かせてくれ」

『……何をお聞きしたいのですか?』

「この黒い竹が、空から現れたモンスターに関係していることは間違いないのか?」

『はい』

「じゃあ、あのチビグマが言ってた、あのモンスターは人が造ったっていうのもホントか?」

『……本当です。少し前のことです』


 そうしてバンブーベアは語り出した。






 少し前までは、ここも豊かな緑色を宿した美しい竹林が広がっていた。

 しかしある日、黒衣を身に纏った人物が現れ、何をするでもなくフラフラと【バンブーヒル】を歩き回っていたらしい。


 ただの旅人だと思ったバンブーベアも、下手に接触はせずに子供たちと身を固めていたが、空からハイコンドルというモンスターがやって来た。

 ハイコンドルはこの【バンブーヒル】に生えている竹が好物であり、いつも食べにくるのでバンブーベアたちも別段いつも通りだった。


 だが突然、ハイコンドルのけたたましい鳴き声が轟く。

 何事かとバンブーベアが現場に足を延ばしたら、そこには黒衣の人物とハイコンドルがいた。

 どうやら黒衣はハイコンドルを瀕死状態に追い込んでいたようだ。ハイコンドルの身体は血塗れで真っ赤に染まっていた。


 そしてその黒衣がハイコンドルに赤い石のようなものをハイコンドルの口の中に投げ込んだ。

 するとまた凄まじい鳴き声をあげたハイコンドルは、徐々に形態を変化させていく。

 顔がゴブリンのように醜悪になり、大きな黒い牙も生えていき、体躯も巨大になっていく。

 極めつけは胸に現れた巨大な赤い石であった。それが心臓のように脈打ち、とても不気味である。

 禍々しいオーラを滲み出しながらハイコンドルはその牙で竹に噛みついた。


 直後、竹が噛みつかれた部分からまるで何かに浸食されているように黒くなっていった。

 バンブーベアは、その浸食が自分たちの平和を脅かすものだと直観する。

 故にこのままでは【バンブーヒル】が壊されると感じたバンブーベアは、変わり果てたハイコンドルに体当たりを食らわせた。


 そして黒衣の人物を敵と認識したイッキとニッキが攻撃しようとした……が、黒衣が真っ黒な竹に触れると、驚いたことに竹は形を変え、ここにいるハイコンドルと同じ形態に変化していく。

 そのハイコンドルがイッキを吹き飛ばし、ニッキに噛みつこうとするが、それを見たバンブーベアがニッキを庇って左腕に噛みつかれた。

 するとバンブーベアの左腕が墨のように真っ黒になっていく。

 バンブーベアは痛みに顔を歪めながらも、噛んだハイコンドルを地面に叩きつけ倒すと、ハイコンドルの身体が砂のように散り散りになっていった。


 次にもう一匹のハイコンドルと黒衣を何とかしようとバンブーベアが意識を向けるが、そこにはもう誰もいなかった。

 それから黒衣は現れることは無かったが、ハイコンドルだけは定期的にこの場所へ来て竹を黒く染めては食べるを繰り返していた。


 調べた結果、この黒い竹に触れてしまうと、身体に流れる魔力を奪われモンスター化することが分かった。

 それは笹の葉でも同様だった。ただ落ちている笹にはその効果が無いようで放置しておけば土に還っていくらしい。気をつけなければならないのは地面から生えている竹なのだ。


 しかしモンスターであるバンブーベアが触れても何も起こらない。人であるニッキが触れた時だけ反応を返したのだ。

 だから日色が笹に触れた時、ニッキが必死な形相ではたいたのだ。

 結果は一足遅かったが。もし笹を千切らずそのまま竹の方にも触れていたら、小さなモンスターではなく竹に見合った体躯のモンスターが出来上がっていただろう。


 このような経緯から、自分たちの住処を脅かす〝人〟という存在にイッキはただならぬ憎悪を抱いているという。

 だからこその日色たちに対するあの態度だ。


「なるほどな。黒い竹については理解した。ならもう一つ……」


 日色はチラリといつの間にかバンブーベアにもたれて眠ってしまっているニッキに視線を向けて、


「何故ここに子供がいる? しかも見たところ、そいつは『魔人族』じゃなく『人間族』だろ?」


 そうなのだ。実はこのニッキ、『魔人族』や『獣人族』の特徴を何一つ持っていなかった。

 だから日色はニッキを人間だと推察したのである。


『…………分からないのです』

「分からない? どういうことだ?」

『ちょうど十二年ほど前になるでしょうか。ある日、泣き声が聞こえて探してみれば、大きな竹の根元にこの子が……』

「……誰かが捨てたってわけか」


 日色は若干眉を下げ不愉快そうに言葉を吐く。

 しかしまさかこの小さな子供が十二歳になるとは思えなかった。十二歳にしては小さい。


『分かりません。もちろん赤ん坊だったこの子は何も知りませんでした。わたしはモンスターです。人の子供を育てることなどできないと思い、そのまま放置しようと……もしかしたら親が思い直して迎えにくるかもと思い去ろうと思いました。ですが…………わたしの顔を見て……笑ったのですよ』

「…………」

『心を掴まれる思いでした。目を離せず、気づけばまだ幼かったイッキも彼女の顔を舐めていました』

「……ん? おい、まさかコイツは女か?」

『当然ではないですか。こんなに可愛いのですから』


 どうやら意外にもバンブーベアは親バカだったようだ。


『それからはずっと一緒に暮らしてきました。しかしあのようなことがあり、わたしの命も……』


 そうバンブーベアが言おうとした時、聞き覚えのある鳴き声が聞こえる。


「この声は!?」


 日色は咄嗟に声がした方へ顔を向ける。間違いなく日色たちが出会ったハイコンドルの声だった。

 また現れたようだ。

 そして同じく声を聞いたニッキが、ハッとなって急に起き上がり、


「……イッキ……?」


 不安そうに目を大きく広げたままで呟いたと思ったら、そのまま走り出した。


『待ちなさいニッキ!』


 バンブーベアはそう叫ぶがニッキは止まらず走る。

 そして彼女が進んだ方向からまたも聞き覚えの鳴き声が聞こえる。

 今度はイッキの声だ。


 バンブーベアは顔を強張らせ、その巨躯を起き上がらせると、必死になって立ち上がった。

 左手から左肩にかけて炭化したように真っ黒だ。自由が効かないのか手は地面につけず上げたままだ。

 器用に他の部分を動かしてニッキを追って行った。残された日色たちは立ち尽くしている。


「どうするのだ? 追うのか?」


 リリィンが尋ねる。日色は大きく溜め息を吐くと、頬をかく。


「ヒイロ、何を話していたか聞かせろ」

「お嬢様、それよりも追いかけた方がよろしいのでは?」

「何故だ? ここの問題はここの奴らが解決するのが筋だろ? そうだろヒイロ?」

「まあな、どうやら厄介そうだが、これ以上首を突っ込んでも面倒なことになりそうだしな」

「しかしお嬢様、あの子供は……」

「シウバの言いたいことは分かる。アイツもはみ出し者だと言うのだろう?」

「はい」

「だがアイツはここにいて幸せそうだったぞ? ワタシが手を差し伸べるのは望む者だけだ」

「…………左様でございますか」


 シウバは恭しく頭を下げる。そして再度リリィンが日色にバンブーベアと何を話していたか聞いてくる。

 仕方無くかいつまんで教えた。


「――ほほう、その黒衣の話、少し気になるな」


 どうやらリリィンの興味を刺激したようだ。


「それにあのガキが何故人間なのかも気にはなった。フン、やはり人間はろくでもないな」


 さすがのリリィンも、子を捨てるということに苛立ちを覚えているようだ。

 シャモエも「可哀相ですぅ~」と涙を流していた。

 そこへシウバが真剣な面相で、


「ヒイロ様、確かヒイロ様はここへは筍を探しに来たという理由もありましたよね?」

「ん? ああ」

「そのハイコンドルがもしここにある全ての竹を黒くさせたら……筍も全滅では?」

「…………っ!?」


 脳天に衝撃が突き抜ける。

 日色はその場から風のように動き、バンブーベアの後を追った。


「…………シウバ、わざとヒイロを動かしたな?」

「ノフォフォフォフォ! 何のことでございましょうか?」

「……まあいい。行くぞ」

「畏まりました」


 日色の後を皆は追っていった。








 日色たちがニッキたちが向かって行った場所まで辿り着いた時、そこには驚くべき光景が広がっていた。

 ニッキがグッタリと倒れているイッキに縋りついて泣いており、二人を守ろうとバンブーベアが立っている。

 周囲にいる――――複数のハイコンドルの群れから。


(何故こんなにもモンスターが?)


 日色が聞いたのは、黒い竹に人が触れたらモンスター化するということ。

 ここにいるのは日色たちだけ。無論話を聞いた日色たちは触れていない。

 またニッキも黒い竹を脅威に思っているのだから触ってモンスター化させることはないだろう。


 だったら何故……? 

 そんな思いが交錯する中、日色の目に映ったのは、傍に生えている黒い竹が、誰も何もしていないのにモンスター化している光景だ。


「どうやらあの竹は、放置していてもいずれはモンスター化するようだな」


 何て迷惑な代物であろうか。

 しかしリリィンの見解は正しいだろう。日色もまたそう考察している。

 つまり今あちこちに生えている黒い竹は、いつか醜悪なハイコンドルのような姿に生まれ変わるのだ。


(そうか、人から奪う魔力なら急速にモンスター化を進めるが、恐らく大地からエネルギーを少しずつ吸収することでもモンスター化するのか)


 遅かれ早かれ、このまま放置しておけばここにある竹は全て消失してしまうということだ。そう思った時、日色はここにある筍の命が危ぶまれていることを危惧して、


「そんなことは許可できない!」


 勢い良く鞘から刀を抜いて、近くにいるハイコンドルへと斬撃を放つ。

 一太刀で寸断すると、砂のように粉化して地に落ちていく。


(一体一体は脆いな。とりあえずこの場にある黒い竹とあと、本体っぽいアイツを倒せばいいのか?)


 その中で一際大きな身体をして、胸に赤い石を持ったハイコンドル。それが恐らく本体、というかオリジナルだろうと判断する。

 そう思い柄を握りしめて大地を蹴ろうとした時だった。



「ぁぁぁぁぁあああああっ!」


 イッキの身体に寄り添っているニッキが声を上げて泣き出した。

 日色も自然と視線がニッキと、そしていまだに動かないイッキに向く。

 まさかと思い、バンブーベアに顔を向けると、バンブーベアもこちらの視線に気づき、悲しそうに頭を振る。


 よく見ると、イッキが倒れている地面から血溜まりが広がっていくのが分かった。

 バンブーベアも悲痛な叫び声を上げると、動く右手を激しく振り回しハイコンドルを吹き飛ばしている。


 しかしいかんせんモンスターの数が多く、巨体は格好の的になっていて、体中をハイコンドルたちに噛みつかれている。

 噛みつかれた部位からは血が噴き出ており、バンブーベアも痛々しそうに叫んでいた。

 その叫び声を聞いてもニッキはイッキの身体に顔を埋めて泣きじゃくっているだけだ。


「ジイサン、手を貸せ!」

「畏まりました。お嬢様はシャモエ殿とミカヅキ殿を」


 シウバに助太刀を頼むと、快く頷いた彼は、次いでリリィンにシャモエたちを任せた。

 リリィンも微かに顎を引く。了承という意味だ。

 シウバは手の中から手品のようにナイフやフォークが出現させるとそれをハイコンドルたちに投げつけていく。

 日色はその間を縫ってニッキのもとに向かう。

 そして倒れているイッキの身体にそっと触れるが……。


(……もう死んでるか)


 感覚でイッキの死を感じ取った。

 しかしニッキは「ごめんなさい」、「起きてよ」、「ぼくのせいで」とイッキの死を認められず声を荒げている。

 ぼくのせいでという言葉を聞いて、もしかしたらニッキを庇ってイッキはこうなってしまったのかもしれないと日色は推察する。


(……それはしんどいだろうな)


 先程まで言い合いをして、喧嘩別れになっていた二人。

 もし仲直りもできていなかったとしたら、それはもう辛いだろうと日色は思う。しかし今は状況が状況だ。

 日色は場の状況を把握できず、自分の育ての母親が傷ついていることにも気づかない彼女を冷ややかに見下ろしながら言い放つ。


「いつまで泣いてるつもりだガキ」

『うっぐ……ひぐ……』

「そうやって泣いてれば誰かが許してくれると思ってるのか?」

『ぐす……だ、だってぇ……まだ……謝っても……なのに……イッキはぼくをかばって……』


 どうやら日色の推測は的を射ていたようだ。

 つまりニッキはイッキに謝れず、そのまま死んでしまったということ。大好きな家族と、ほんの少しのすれ違いで喧嘩し、最悪な死に別れをしてしまった。

 ニッキは恐らく、喧嘩などしなかったら、イッキがこの場所に来ることも無かったし、自分を庇って死ぬことも無かったと思っているのだろう。


「……だがそれが現実だろ。お前は家族が救ってくれた命を無駄にするつもりか?」


 日色はそれが許せなかった。

 家族に庇ってもらい、その命を救ってもらった。

 ならその命を何よりも大切にするのが道理だ。

 しかしニッキは周囲の敵に目もくれず、あまつさえいまだ庇ってくれている母親に気づかない。


 このままでは母親ももちろん、ニッキだって殺されるだろう。そんなことになればイッキと母親の、家族としてニッキを救いたいという思いを裏切ることになる。

 日色はバンブーベアの後ろ姿に、かつて自分を庇い守ってくれた自身の母親の姿を重ねていた。思わず日色が動いたのはそれが理由だ。


「救ってもらったのなら、何を犠牲にしても生きろ。それが、そこにいるチビグマに報いる唯一のことだろうが!」


 日色は向かってきたハイコンドルを刀で斬り裂く。横から飛んで来たハイコンドルには、かわして拳で殴って吹き飛ばした。


「お前には、まだやれることがあるだろ? このまま泣き続けてそいつの後を追うのか、それともそいつの敵を討ちたいのか、やりたいのはどっちだ」

『……ぼくの……やりたい……こと……?』


 ニッキは俯かせていた顔を上げて呟いている。


「泣くのはいつでもできるだろ。なら今、その目でもっと周りを見てみろ!」

『ぼくは…………お、お母さん!』


 ようやくその場の状況を飲み込めてきたのか、ニッキはフラフラになりながらも立ち上がる。


『あ、ありがとう……ございます』


 血を吐きながらもバンブーベアが日色に言ってくる。


「何のことだ?」

『フフフ、一つお願いがございます』

「……何だ?」

『その子たちを連れて少し離れていて下さい』

「…………いいだろう」


 何をするつもりなのか興味が湧いた。

 日色はニッキとイッキに触れると『転移』の文字を使い、少し離れているリリィンのもとへ移動する。

 咄嗟のことでニッキはキョトンとしていたが、日色は無視してシウバに向かって「こっちへ来い!」と叫ぶ。


「どうかされましたでしょうか?」


 即座に移動してきたシウバは不思議そうな表情で聞いてきた。


「アイツが何かするらしくてな」


 日色の視線の先にはバンブーベアがいる。もう満身創痍の彼女を見て、ニッキが叫びながら近づこうとするが、日色はそれを抑える。

 すると周囲にいるハイコンドルたちが全員でその巨体に被りつく。バンブーベアは苦しそうに呻き声を上げるが、その時、確かに日色とニッキは聞いた。


『……強く生きなさいニッキ。………………私の子供になってくれて…………ありがとう』


 刹那、バンブーベアの体内の魔力が極限までに圧縮されるのを感じた日色は、反射的に設置文字の『防御』を使用していた。


 そして――――ドガガガガァァァァアアアアアンッ!


 凄まじい爆発が起こる。

 ただしその爆発はほとんどが上向きのものだった。

 恐らく全方位だと日色たちも巻き込まれると考えたバンブーベアの最期の配慮だろう。

 しかしいくら全方位ではなかったとしても、バンブーベアを中心として半径二十メートルほどは巻き込まれている。

 その圏外にいる日色たちにも苛烈な爆風が襲うが、日色の生み出した魔力壁のお蔭で立ち止まっていられた。


 ニッキは絶望に彩られたような顔のまま固まっている。爆発により生まれた煙が晴れていき、その威力を示すような大きなクレーターが出来上がっていた。

 そこには何も無く、生も死も何もかも失われていた。ただ掘り起こされたような地面が顔を覗かせているだけだった。


『お……母さ……ん……?』


 防御壁を消した日色は、抑えていたニッキを解放する。

 ニッキはよろよろと、信じられない面持ちでクレーターの中心に向かっていく。そこには何もないのにも拘らずだ。


(まさか自爆するとはな……)


 しかしその爆発のお蔭でここら一帯に生えていた黒い竹は根こそぎ消失していた。これも考えての自爆だったのだろう。

 クレーターの中心で悲痛な叫び声を上げているニッキを日色たちは見守っている。今はもう何も言えない。家族を全て失った彼女に、たった一人で残された彼女には、時間が必要だと判断した。


 するとその時、空から真っ黒な物体が落ちてきた。

 思わず警戒を強め、クレーターの中に落ちたその物体を日色は見つめる。

 どうやらオリジナルの死骸のようだ…………そう思った瞬間、


「まだ生きてるぞアレは!?」


 リリィンの声で皆がハッとなる。彼女の言う通り、ほとんど骨と皮のような気色悪い姿になりながらも、起き上がりニッキに気づいてその殺意を彼女に向けてきた。

 しかしもう、日色はすでに動き出していた。


 再び『転移』の文字でニッキの前方に出現した日色。

 目の前から迫ってくる変わり果てたハイコンドルを睨みつけながら、今もなお悲しみに暮れる一人の少女に向けて言う。


「……アイツが、お前の家族を奪った奴だ」

『…………』

「……復讐をしたところで、どうにかなるわけじゃないが。…………お前がアイツを討て」


 ニッキは不安そうに日色の顔を見上げている。

 日色は刀を抜き素早くハイコンドルの懐へ入る。


 ――ブシュブシュッ!


 疾風のような動きで、ハイコンドルの両腕を切断する。

 そしてすかさず『止』の文字を放ち、相手の動きを止めた。

 ハイコンドルも何が起きたのか分からず必死に身体を動かそうとしているが全く動けていない。


『す……すごい……』


 ニッキは日色の強さに目を奪われているようだ。

 日色は刀を納めると、ニッキのもとへ戻って行く。

 膝をついていたニッキは、無意識に立ち上がって日色を見つめていた。


「右手を出してみろ」


 ニッキは首を傾げながらも言われたように出してきた。その右手を日色が包むように手を重ねる。すると青白い光がニッキの拳を覆っていく。


「いいか、狙うのはあの赤い玉だ」


 爆発のせいで吹き飛んでいる胸の部分から、ドクドクッと脈動する赤い塊が顔を覗かせている。


「その拳で、思い知らせてやれ。お前の怒りをな」

『…………っ!』


 ニッキはその大きな目を細めて束縛されているモンスターを憎しみ全開で睨みつける。

 そして、「ああァァァァァッ!」と叫びながら距離を詰めていき、


『きえちゃえェェェェェェェェェッ!』


 見事にモンスターの胸を打ち貫いた。

 赤い塊は粉々に破壊され、ハイコンドルは灰化していきその存在をこの世から消していったのである。





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