180:浮遊城シャイターン
「ヒイロォォォォォォォォッ!」
突如【魔国・ハーオス】の練兵場に現れたアノールド・オーシャン。そしてそこにいた日色に憤怒の表情で突っ込んでいき、その目一杯握りしめた拳を日色の顔面に向けて突き出してきた。
――――――――――――スカッ!
「避けんなゴラァッ!」
見事に日色は彼の拳を回避する。しかしすでに彼は何かに変身するのではと思うくらい顔を真っ赤にして鼻息を荒くしている。まさに興奮状態である。
「オッサン、貴重な《転移石》まで使って来たのか?」
「おうよ! てめえの顔面を、この俺の熱き男魂を乗せた拳で貫くためによォ!」
「……親バカ魂だろ?」
「ふんぬぅぅぅっ!」
またも殴りかかってくるアノールドに軽く溜め息を吐くと、以前ミミルにも使用した『触れず』の文字を使ってアノールドの攻撃から身を守る。
「おら! くそ! てりゃ! 卑怯だぞヒイロてめえ! 一発ぐれえ殴られろォ!」
スカスカスカスカとアノールドの拳は日色をすり抜けるだけだった。
「いや、殴られるのは一応覚悟はしてたんだが……」
「だったら魔法を解きやがれぇ!」
「何か暑苦しいオッサンを見てたら殴られる気が失せた」
「何だとこんのガキャァァァァッ!」
実際アノールドが落ち込んでいたり、殺したくなるほどの激昂をしていたとしたら一発ぐらい殴られようとも思ったが、何となく彼を見て、普段通りの怒りのボルテージだったため、これなら立ち直らせる必要も無いなと思い殴られなかった。
恐らくミュアから、自分が攫われたのは日色の計画だということを知り、若干安堵してしまっているからだろう。恐らくこの怒りの大半は、ミュアが攫われたということより、自分に計画を黙っていたことに対する怒りなのだ。
「はあはあはあはあ……」
「気が済んだかオッサン?」
「す、す、済むかボケェ……」
「それに、まだ怪我も完治はしてないんだろ?」
包帯がアノールドの脇腹に巻かれている。恐らく薬などで大分回復しただろうが、完全には治癒してはいないようだ。
「う、うるせえ……痛みなんかどうでもいい……」
「まあ、落ち着け。チビから聞いてここまで来たんだろ?」
「や、やっぱりてめえが一枚噛んでやがったんだな?」
「ああ」
「ちっきしょう! 何で俺じゃダメなんだよ? 何でミュアなんだ? 危ねえじゃねえか!」
なるほど、アノールドの怒りはミュアの安全が損なわれていることに対するものが大半だったようだ。確かに目に入れても痛くないほど可愛がっている愛娘であるミュアを危険に晒す計画を立てた日色に対して怒りを感じるのは当然だろう。
「それでも選んだのはアイツ自身だ」
「…………」
「オレは強制はしなかった。確かに敵地のど真ん中に行くんだ。危険度は高い。だがアイツはこの戦争に勝って平和を手にできるならと、喜んで力を貸してくれた」
「だから何でその役目が俺じゃねえんだって言ってんだよっ!」
「オッサンも選択にはあった。だが適任じゃない」
「ああ?」
「オッサンは良くも悪くも感情が激しい。今回の作戦は忍耐が問われる。常に冷静でいてもらう必要だってあるんだ。だがオッサンは、向こうの挑発にまんまと乗っかってしまう可能性が高い」
「うぐ……」
「例えばだ、向こうの連中にチビのことをバカにされたり、あまりに待遇が良くなければ苛立ちが増すだろ? そこまでは良い。だがもしその苛立ちが爆発してしまい暴走されでもしたら、せっかくの作戦が台無しになるのが怖い。だからオッサンを頼らなかった」
「…………」
「それにだ。向こうには青リボンも捕まってる。アイツを安心させられるのは、やっぱりチビしかいないだろ?」
「ヒイロ……お前……」
ミュアだけではなく、向こうにはミミルもいるのだ。ミミルの不安を取り除くためにも、やはりミュアが適任だと日色は考えたのだ。アヴォロスのミミルの扱いから察して、恐らくミュアなら同じ扱いを受けるだろうとも予測した。
しかし他の者なら離れ離れになる可能性の方が高い。そしてアノールドでない一番の理由は……
「そもそもあのテンプレ魔王が、オッサンを欲しがるわけもないしな」
「ぐ……」
その通りだった。ミュアが攫われたのもミュアが『銀竜』という特別な存在だったからに他ならない。しかしアノールドは普通の獣人。攫う理由が無いのだ。
「ヒイロ……お前、こうなることを最初から予測してたのか?」
「まあ、こうならなければ良いとは思ってたけどな。保険はかけておいたが、危険なのは変わらんしな。だからオッサンにはチビだけでなく青リボンも守れって言ったんだぞ?」
「う……」
「それなのに前線へ行きやがって。しかもチビと一緒に」
「ぬぐ……」
「獣王もオッサンも、オレの言ったことを重要視しなさ過ぎだ。こうなった原因は一つにオッサンたちの怠慢もあることを覚えておけよ」
「…………くそぉ……言い返せねえ」
ガックリと項垂れるアノールド。確かに日色はアヴォロスが二人を狙ってくる可能性をアノールドに示唆していた。そして二人を守れとも言った。
日色ももしミミルが捕虜にならなければ、この作戦はとらなかった。
「ま、オレも確かに黙っていたのはオッサンに対して何も思わなかったわけじゃない。だが演技ができるオッサンでもないし、仕方無くリアル感を出すために黙っていた。悪かったな、後悔も反省もしてないが」
「お前な、それがホントに謝罪してる立場かよ……」
頬を引き攣らせるアノールドは、諦めたようにはあ~っと肺から空気を一掃する。
「あ~あ、何かたまにお前の手の平の上で動いてるみてえで釈然としねえ」
「安心しろオッサン。たまにじゃない、いつもだ」
「…………やっぱ一発殴っていいか?」
「とりあえずこれからのことなんだが」
「聞けよな人の話をっ!」
「何だ? 聞きたくないのか?」
「う……ああもう! 聞きてえよ! 何だよちきしょう! さっさと教えろよ!」
ようやく話ができると思い日色は肩を竦めて、今後のことを話した。アノールドはフンフンと聞いているが、徐々に顔が険しくなっていく。
「おい? その《ボンドリング》って会話ができんのか?」
「ん? ああ。だがオッサンには無理だぞ?」
「何でだよっ!?」
ミュアと少しでも話したいのだろう。しかしそれができない理由がある。
「この《ボンドリング》はな、最初に身に付けた者にしか使えない」
「そ、そうなのか……」
「まあ、何度も言うが安心するんだな。このリングに異変が無い以上、奴らは無事だ」
「……? どういうこった?」
「このリングにはチビと青リボンの髪の毛も編まれてある。もし奴らが大怪我をして瀕死になったとすると、編まれている毛が発光する」
「……も、もし死ねばどうなるんだ?」
「髪の毛が燃え尽きる」
「じゃ、じゃあ今はその発光すら無いんだな?」
「ああ、会話もできる。だから今のところは問題は無い」
「そっかぁ~」
気が抜けたようにアノールドは地面に腰を下ろす。そして垂れていた頭を日色の方に向けて、
「でもよぉ、作戦実行は基本的には向こうの状況次第なんだろ?」
「ああ、どれだけ時間がかかるかは分からん。だが……」
「だが?」
「もう間もなくのような気がする」
「……それって勘か?」
「まあな。オッサンは今オレがした話を、帰って獣王に伝えてくれ」
「え? いいのか?」
「ああ、もう十分敵の気は引けたろうからな。それに青リボンを取り返すために進軍もしてるらしいから、その進軍を維持しつつ、作戦を実行する。ただし伝えるのは獣王だけだ。他の奴らに言えば、気持ちが表情に現れてしまう可能性があるからな」
「そ、それじゃレオウード様にも教えない方が良いんじゃねえのか?」
確かにアノールドの言う通り、敵に違和感を感じさせないためにも、真実を知っている者は増やさない方が妥当ではある。
「いや、作戦が始まったら一斉に動いてもらう。上手くいけば、敵は人間界への侵入を止めるどころではなくなると思うからな。その隙に一気に人間界を攻略してもらい、いつでも【ヴィクトリアス】へ侵入できるように陣取ってもらう。だから迅速に行動するためにも、誰か一人、というかトップが知ってた方が都合が良い」
「なるほど~よく考えてんな。おし、分かった! とりあえず俺たちは、二人を取り返すフリをし続ければいいんだな、全力で」
「ああ、もう敵にも捕縛されたこと自体に意味があるということは気づかれないだろう。あとは向こうのタイミング次第だ」
日色は【ヴィクトリアス】がある方向へと視線を向ける。そして『転送』の文字を書いて、アノールドに向けて飛ばす。
「ヒイロ、この戦争勝つぞ!」
「当然だ。オッサンも死ぬようなバカなことするなよ? 葬式は出さんぞ?」
「けっ! うるせえよホントまったくよ! っつうかお前も絶対死ぬなよ!」
「そのつもりはない」
魔法を発動させてアノールドを【獣王国・パシオン】へと送った。日色は再び【ヴィクトリアス】がある方向に顔を向ける。
「一泡吹かせてやるぞテンプレ魔王」
※
「褒美を上げるよ、勇者くん?」
【ヴィクトリアス】王城、《玉座の間》ではアヴォロスと対面していた大志が、見事ミュアを拉致できた報酬としてアヴォロスから言葉が発せられていた。
「ほ、本当にこれで俺と千佳を元の世界に戻してくれるんだな!」
「もちろんだよ! 君は約束を守った。ならこちらだって約束を守るのは当然だろ?」
「あ……はは……そ、そうだ、そうだよな! やった! これでこんな世界から出て行ける!」
大志は両拳を震わせ満面な笑みを浮かべ喜びを表していた。
「そんなにこの世界は嫌かい?」
「あ、当たり前だろ! 正直こんな世界おかしいよ! 戦争ばっかりして、人も傷ついて、死んで……普通じゃない!」
「ククク、それを君が言うのかい? 君のその手も、すでに汚れてるというのに」
「う、うるさい! 俺だってやりたくてあんなことやったわけじゃない! あ、あれは《魔石》のせいだっ!」
完全に言い訳だった。彼にとって自分を正当化できる理由がほしいのだろう。人を殺した現実から目を背け、早く平和で豊かな日本へと帰りたいのだ。
その姿は犯罪を犯して、止むに止まれない事情だったから仕方無いと言い訳をする情けないものだった。
「そ、そうだよ……俺は朱里たちにも言ったんだ。それなのに……」
ブツブツと危ない人のように呟き出した大志。だがそんな大志の両肩を抱くように温もりを与えた存在が居た。
「……千佳」
鈴宮千佳だった。大志には変わらない笑顔を向けて、彼を安心させている。そんな二人を滑稽そうに見下ろしているアヴォロスの図。まるで対極であるその構図そのものがすでに滑稽だった。
「さて、勇者くん。君たちを元の世界に戻してあげたいけど、すぐにはできない。君も知ってる通り、世界を越えるような魔法にはリスクと時間が必要だ。かつての召喚魔法士が、その失敗で幾つも命を落としたことは知ってるでしょ?」
「そ、それは……」
「だから無論送還魔法にもそれなりの準備がいる。そして君にも手伝ってほしいんだ」
「手伝う? な、何を?」
そこでようやく怪訝な表情を見せる大志。しかしアヴォロスはフッと鼻で息を吐くと、
「なあに、別に難しいことじゃないさ。今この城の周囲には魔法を弾く結界を張ってあるのは知ってるよね?」
「あ、ああ。外からの転移や攻撃魔法を防ぐためだろ? それは事前に聞いた」
「そう、特に君の知り合いであるヒイロ・オカムラの魔法は場所を選ばない転移も可能にするからね。いきなりここへ転移してくることだって普通ならできるし、せっかく捕らえた者までも即座に奪い返すような魔法だってできる極めて異端な魔法」
「くっ……丘村……」
その大志の表情には明らかに嫉妬心が有り有りと浮かんでいた。勇者である自分ができないことを、日色があっさりと可能にするという事実が許せないのだろう。
「だからこそ、結界を張ってる。ここに直接出入りできるのは、許可されているものだけだ。それ以外は結界が弾いてしまう」
「そ、それが送還魔法と何の関係があるんだよ?」
大志が聞きたいのは送還魔法についてと、自分がするべきことだけだった。
「さっきも言ったけど、送還魔法には大きなリスクを伴う。その一つに膨大な魔力と《反転法陣》という魔法陣を描かなくてはならないということ」
「……?」
「どうやら《反転法陣》は初めて聞いたようだね。君が召喚されたこの城の一角、《儀式の塔》……覚えてるかい?」
「えっと……」
大志は思い出そうとし目を上空へと泳がせる。
「召喚された時、君たちの足元には魔法陣が描かれていなかったかい?」
「……あ、あった。あったぞ、確かに!」
「その魔法陣が《反転法陣》と呼ばれる魔法陣さ」
「ん? じゃ、じゃあもう描かれてあるよな? それを使えばいいんじゃないのか?」
「君はバカかい?」
「な、何っ!」
歯を剥き出しにしてアヴォロスに怒りの表情をぶつける大志だが、アヴォロスが呆れたように肩を竦めて続ける。
「いいかい? あれはあくまでも召喚用、君誰かを召喚したいのかい?」
「う……」
「送還用に描き換えなきゃならない。けど送還用は特別でね、帰る者の血液で魔法陣を描かなきゃならないんだよ」
「血液……?」
「そう、だからこそ君の助力が必要なんだ。ここまで何か質問はあるかい?」
「…………つまり帰るための魔法陣は、俺と千佳の二人の血液が必要ってことか?」
「うん。あ、安心していいよ? 致死量に達するほどの量はいらないから。けどそれだけのリスクは背負ってもらうよ。何故なら生半可な力じゃ、送還魔法は今張っている結界の力と反発して失敗してしまう可能性が高いんだ」
「そ、それじゃ、送還魔法を使っている時だけ結界を解けばいいだろ!」
「はぁ、あのね勇者くん、今は戦争をやってるんだよ? 送還魔法の儀式中、結界を解かなければならないのに、もしその時に攻撃を受けたらどうするんだい?」
結界は送還魔法と並行して使用することは危険。互いの力が反発してしまい、下手をすればどっちも消失してしまうのだという。だからこそ、送還魔法を行っている最中は防御を捨てることになるのだ。その危険性は大志にも理解できた。
「たかが二人だけのためにそんな危険を冒せるわけがないでしょ?」
「うぐ……」
「だからこそ、結界を上回るような魔力量を送還魔法に注ぎ込む必要があるんだ。そうすれば結界を解かずに魔法を無理矢理行使することができる。もちろんこれも失敗の可能性がないわけじゃない。でも余が譲歩できるのはここまでだ。まあ、戦争が終わるまで気長に待つと言うなら話はまた別だけど?」
しばらく疑わしそうにアヴォロスを睨みつけていた大志だが、ふと背中にいる千佳の手の温もりを感じて決意したように目を細めた。
「……分かった。戦争が終わるまで待つなんてゴメンだ。できるだけ早く帰りたいんだ」
「いいよ」
「けど必ず約束は守れよ」
「アハハ、疑うなぁ~、大丈夫だよ。必ず君とチカは元の世界に戻してあげるよ」
「ならさっそく準備にかかってもらいたい」
「よし、それなら地下に行こうか」
アヴォロスが玉座から立ち上がるが、彼の言葉に引っ掛かるものを感じて大志が眉をひそめた。
「地下? 行くのは《儀式の塔》じゃないのか?」
「そのための準備をしに行くんだよ。血液だって採取しないといけないでしょ?」
「そ、そうか……千佳」
大志は千佳の手に自分の手を合わせる。
「もうすぐ帰れるからな」
「うん、一緒に帰ろうね」
そんな二人を一瞥してアヴォロスはイシュカの名を呼ぶ。すると地面から水溜まりが広がり、そこから黒衣を身に纏ったイシュカが出現した。
「地下へ」
「畏まりました」
アヴォロスの命にイシュカが答えると、イシュカが水溜まりを広げていき、その場にいたアヴォロス、05号、イシュカ、大志、千佳の五人はその水溜まりに沈んでいった。
大志にとって忌々しい場所である王城の地下。少し前、ここで千佳は包帯を体中に巻かれて幽閉されていたのだ。もう二度とこのような場所へと来たくない大志だろうが、元の世界に戻るためには我慢するしかないのだ。
「いつ来ても気味の悪い場所だ」
大志が不愉快そうに顔をしかめる。彼の気持ちも理解できる。まるでそこは外界とは別の場所のように感じられるからだ。
大きな魔法陣を囲うように数えるのも億劫になるほどの棺桶が安置されている。壁には大きなクリスタルが埋め込まれてあり、とにかく異質さを感じさせる場所だった。
その魔法陣の中心には、何故か巨大な物体が置かれたあった。大志も初めて見るようだ。しかもよく見ると、それは人間だった。
アヴォロスたちが現れた気配を感じたのか、その人物がムクッと起き上がりアヴォロスたちを視界に入れる。巨大な人間。白衣を着て、豚のようなデカい鼻。そしてモノクルを右目にしている。
その人物が寝惚け眼でパチパチと瞼を動かしている。何か喋るのだろうかと思った矢先、またパタリと倒れてイビキをかき始めた。
「……え?」
思わず大志が寝るの? 的な感じで吃驚するが、その大男に近づく、これまた白衣を着ている細身の男。その男が、大男の耳元に口を持っていき、
「さあ、チョコレート祭りが始まりますよ?」
そう呟いた瞬間、大男の目は極限までに開かれ、バッと巨体を起こして太い首を回し始めた。
「どこっ! どこっ! どこでその愉快な祭りは始めるのねっ! 絶対逃しはしないのねっ!」
明らかに興奮した大男がありもしない祭りを探し始める。
「おはようございます所長。お目覚めはいかがですか?」
「あ、ペビン! 祭りはどこなのねっ!」
「嫌ですね所長。それ、嘘ですよ?」
「……へ?」
「あまりにも所長が仕事をサボるので、少し悪戯心が芽生えました」
「ぬ……ぬ……」
突然大男が涙を流して地面を転がり始めた。
「ぬおぉぉぉっ! ペビンなんて死ねばいいのねェェェェェッ!」
「いえいえ、僕はまだ生きます」
「いつか絶対にカリカリ飴にして頭からボリボリ食ってやるのねっ!」
「ん~それは美味しそうですね」
大志はまるでコントのような現況を見て完全に呆気に取られていた。
目の前でコントとしか思えないやり取りをしていた二人について、アヴォロスから紹介を受けた。
「彼らは《マタル・デウス》に所属する研究者たちだよ。大きい方はナグナラ、そして……」
「僕はペビンと申します。以後お見知りおきを」
ペビンと名乗った糸目の青年が軽く会釈をした。
「彼らには転移石の開発、結界の構築式など、その他もろもろの技術力を提供してもらっているんだよ」
「つまり、仲間なんだよな?」
「その通り。まあ、彼らは君たちみたいな《ステータス》は持ち合わせていないけどね」
「……弱いってわけか?」
「まあ、君でもあっさり勝てるんじゃないかな?」
アヴォロスがバカにするように言うと、大志がムッと不機嫌そうに眉を寄せる。アヴォロスは楽しそうに笑みを浮かべると、ナグナラに視線を向ける。
「やあナグナラ、例の儀式の準備は整っているかい?」
「当然なのね! ワタシにできないことはないのね!」
「それは良かった。君たちにも紹介するけど、ここにいるのが例の勇者だよ」
「ほほ~う」
ナグナラは穴が開くほど大志を観察する。大志は圧迫感のある視線に思わず身体を引いてしまう。
「なるほどなのね~、これは良い検体になるのね~」
「け、検体?」
「おほん! 所長、アヴォロスさんがこちらへやって来たということは、アレを行うということです。さっそく準備を行いましょう」
大志が聞き捨てならない言葉を聞いてギョッとなるが、ペビンが早口で捲し立て、ナグナラは「仕方無いのね~」と頭をボリボリかきながら壁に埋め込まれているクリスタルの方へ行ってしまった。
「な、何をするつもりなんだアイツは?」
不安気に大志がアヴォロスに尋ねる。
「安心しなよ」
アヴォロスはそれだけ言うと、ナグナラの方をジッと見つめている。大志もそれ以上は説明しないというアヴォロスの態度にギリッと歯を噛みながら同じようにナグナラを見つめる。
するとナグナラが壁の方に手を触れて、パチチッと放電現象が起きたと思ったら、暗かった辺りがまるで電気を点けたように明るくなる。
それは良く見れば壁全体が光り輝いているのだ。いや、壁ではない。よく見ると今まで気づかなかったが、壁の中にクリスタルが大きな水槽のように埋め込まれていた。よく水族館で見るような長い水槽が室内をグルッと一周するように嵌めこまれてあった。
そして明るくなったお蔭で、そのクリスタルの中に何があるのかハッキリと確認できた。大志はその様子を見て言葉を失っていた。
「な、何だよコレ……っ!?」
大志は身体を震わせて、目の前の現実を信じたくないのか、それを一掃するかのように全力で叫んだ。
「な、何で千佳がいるんだよっ!」
強張った表情で、周囲をキョロキョロと見回す。クリスタルの中には、彼が言うように、身体に包帯を巻いてプカプカと浮かんでいる千佳がいた。
しかも――――――――――――複数だ。
何が何だか理解が及ばないようで、大志は混乱に痛む頭を抱えて、傍にいるはずの千佳を見つめる。そこにも確かに千佳がいた。彼女は微笑を浮かべて大志を見つめている。
「ち、千佳……」
「どうしたの大志?」
「いや、だってお前……コレ……」
何故彼女が周りの異常さに笑っていられるのか大志には分からないのだろう。大志は説明を求めるようにアヴォロスに力無い表情で見つめる。
「クク、どうしたんだい?」
「お、お前……千佳に何をしたんだ?」
「……アレを見なよ」
「え?」
アヴォロスが指を差したのは室内の突き当り、一番大きなクリスタルが埋め込まれている壁。その下側の壁が突如崩れ始めると、中から触手なようなもので身体を拘束された…………千佳が出現する。
その千佳がうっすらと目を開けて、微かに唇を震わせる。
「た……いし……」
その呟きが大志に届いたかどうかは分からない。だが大志は直感でその千佳こそが、自分の求めている千佳自身だと理解したようで、ハッとなって傍にいる千佳に顔を向けた刹那――――――ザクッ!
「……え?」
大志の腹に突き刺さった衝撃。熱と痛みの鋭さに彼は思わず顔をしかめる。
「がはっ!?」
口から鮮血を吐き出し膝を折る。ポタポタと地面に赤が落ちていく。その原因を確認すると、千佳がいつの間にか手にしていた剣から滴り落ちていた。
――――――千佳に刺された。
その事実は大志に腹部の痛みより苛烈な衝撃を与えた。苦悶の表情を浮かべながら、必死にアヴォロスに視線を送る。
「お前……な、何で……約束……違う……」
アヴォロスは冷ややかに大志を見下ろしている。そして呆れたように溜め息交じりに言う。
「本当に君はバカで愚かだね」
「なん……だと……」
「この状況を見てまだ分からないかい?」
「……千佳に……な……にをした?」
「クク、簡単さ」
アヴォロスは剣を持つ千佳に近づき、彼女の肩にそっと手を触れる。
「彼女はチカ・スズミヤのレプリカさ」
「レ……レプリカ……?」
「そう、記憶も力も受け継ぐ勇者のレプリカ。まあ、力に関してはオリジナルより劣るけど、それでも使い道があるから作ったんだよ」
「約束……破るのか?」
激痛に顔を歪めながらも大志はアヴォロスが約束を破ったことに憤り睨みつけている。
「アハハ、別に約束は破っていないさ」
「な……に?」
「安心しなよ。君とチカは元の世界に戻してあげる。ただ…………五体満足かどうかは保証できない。……そういうことさ」
「きさ……まぁ……っ!」
「本当に君はつまらない存在だね。もう少し、君の前任者は利口だったよ? まあ五十歩百歩な感じもするけど、君は歴代の勇者と比べて輪をかけたように単純で愚かだ」
「……ぐ」
「余は元魔王だよ? 戦争をしかけ、ある意味世界を壊そうとしてる。そんな相手をこうなるまで信じるとは、張り合いが無さ過ぎだよ。いつ気づくか、いつ牙を剥くか、少し楽しみだったんだけど、余興にもなりはしなかったね。こちらの思惑からはみ出る素振りすらなかった君は…………まるでピエロさ」
「くっそぉ……」
悔しそうに真っ赤になった歯をガチッと噛み合わせて怒りに震えている大志。アヴォロスが近くにある棺桶に腰を落とす。
「急所は一応外してあるからまだ死にはしないよ。君が死ぬかもしれない間に、少し教えてあげようか。これから何をしようとしているのかを」
アヴォロスは周囲のクリスタルに浮かんでいる千佳のレプリカたちに視線を泳がせる。
「コレらはね、動力源にさせてもらうんだよ」
「動力……源?」
「そう、さてレプリカ1号、彼を魔法陣へ」
剣を持った千佳が剣を地面に突き刺し、蹲っている大志を持ち上げナグナラが寝ていた場所へと連れていった。大志が魔法陣の中心に置かれると、
「さあ、始めてよ」
アヴォロスの声にナグナラが「分かったのね~」と気軽に返事すると、またも壁に手を触れた。すると突如魔法陣が光り輝く。
「ぐぅっ! うわぁぁぁぁぁぁっ!?」
大志が苦痛を与えられているかのような叫び声を上げる。
「辛いかい? 今、君の生命力を魔力に変換して吸収しているからね。結構しんどいよね」
「ぐあぁぁぁぁぁぁっ! や、やめてくれぇぇぇぇぇぇっ!」
刺された腹からはさらに血液が流れ出てきている。顔色も悪くなっていき、彼の命が萎んでいくように感じられる。
そして彼の叫び声を聞いて、触手に絡められているオリジナルであろう千佳が、
「大志……やめて……」
目から涙を流しながら苦しむ大志を見つめている。しかしその声が届くことはない。
大志が叫び声を上げると同時に、周囲のクリスタルも眩く輝きを放つ。すると突然、ゴゴゴゴゴゴゴゴと地震が起きているかのように揺れ始めた。
「うん、いけそうだね」
アヴォロスは満足気に頷くと、大志がいる魔法陣の輝きが若干収まる。大志はグッタリした様子で時々身体を痙攣させている。虫の息といった感じだ。そんな彼に近づいたアヴォロスは言う。
「できれば君にも見せてあげたかったんだけどね。君の生命力を何に使ったのかをさ」
アヴォロスは聞いているか聞いていないか分からない大志を一瞥すると踵を返してイシュカに「戻るよ」と声をかける。するとイシュカが生み出した水溜まりにアヴォロスは身体を沈めていく。
「あとは頼んだよ、ナグナラ、ペビン」
「良い検体が手に入ったので嬉しいのね~」
「ええ、いろいろ試せますね」
二人は楽しそうに言葉を吐く。
「ククク、お手柔らかにね」
そのままアヴォロスはその場から去っていった。
そしてアヴォロスは《玉座の間》へと転移し、テラスへと出ていく。そして眼下を優越感に浸りながら見下ろす。
その視界に映るのは街並み。しかしいつも見ていた街並みとはサイズが違っていた。それはまるで街全体が縮んだかのよう……。
いや、街が縮んだのではなかった。縮んで見えている理由は、上空から街を見下ろしていたからだ。
そう、今アヴォロスは上空に居る。【ヴィクトリアス】の王城とともにだ。そしてそれまでの王城の形状が徐々に崩され、破片が街へと降り注いでいく。
余分な部分が切り離されているようで、不思議なことに王城の色も灰色だったそれから漆黒へと変色していく。そしてその王城を包んでいる球体。それがアヴォロスの言っていた結界だろう。
まるでシャボン玉の中に入りプカプカと浮いているようだ。ドンドンと上空へと上がっていき、一所でピタリと上昇が止まった。そしてアヴォロスが全世界に知らしめるように言葉を放つ。
「これから名を改め、浮遊城【シャイターン】と呼ぼう! さあ、まずは挨拶と行こうか!」
アヴォロスの碧眼が怪しく光った。
※
【ヴィクトリアス】の王城が空に浮かんだ事実は、すぐに情報として《奇跡連合軍》にも伝わっていた。
そしてもちろん日色の耳にもその情報は入ってきていた。
(ようやく動いた!)
だが他の者が呆気にとられている中、日色だけはこの状況を待っていたのだ。アヴォロスの次の一手。それを待っていた。
その時、ミュアの声が頭の中に響く。その内容とはやはり王城が飛んだことだった。日色はミュアとミミルに今度アヴォロスの近くに二人が行く時、その時が計画を実行する時だと教えた。
恐らくこれから二人の扱いについて、アヴォロスが本格的に動き出すと予想してのことだった。
ミュアにもしそうならなかった場合のことも聞かれたが、その時でも別段問題は無かった。その時は計画を若干変更するだけで事足りる。ただ日色には是非ともアヴォロスの前に二人がいる時に実行したいというだけだった。
ミュアとミミルも日色の言うことに納得して、その時が来たら連絡をすると約束して念話を切った。するとその時、戦争宣言が行われた当初のように月にアヴォロスの映像が映し出された。
皆はまた奇襲をしてくると考えて警戒を高める。
『やあ、久しぶりだね諸君』
相変わらずの鼻につくほどさわやかな笑顔だった。見た目は無邪気な子供にしか見えない。
『さて、情報は届いてると思うけど、余の新しい城の誕生を祝って派手な挨拶をしたいと思ってね』
派手な挨拶。その言葉で日色は、彼がまたとんでもないことをしでかすのだと判断した。なら何をしようとしているのか。
(恐らくあの飛ぶ城を使うんだろうが……)
だが答えが出ない。
『今、余の眼下に何が見えると思う?』
城の中にアヴォロスがいるのであれば、その下には街、つまり【ヴィクトリアス】という国が広がっているはずだ。
『さあ、浮遊城【シャイターン】のお披露目といこうか』
月の映像が途絶え、不吉な予感が日色だけでなく皆の胸に過ぎる。
※
アヴォロスが世界中に通告した後、浮遊城【シャイターン】に動きが出た。城の下方、そこから遠目に見ると、まるで蜘蛛の足のような何本もの細長い物体が出現し、下に伸びていき一所で止まる。
するとその足の先に青白い光が集束し始めた。
「クク、まずは二十%ほどといこうか」
アヴォロスの呟きにより、集束率が更に高まっていく。蜘蛛の足の先にドンドン濃密なエネルギーが蓄えられていき、光の塊を形成していく。そしてまるで完了したと言わんばかりに今度は赤黒い膜がその塊を覆って球体に整えた。
「さあ、放てっ! ――――――《シャイターン砲》っ!」
アヴォロスの言葉をきっかけとして、赤黒い球体が弾かれたように大地へと突っ込んでいく。直下には城があった大地。周囲には街が広がっている。
その大地に落下する赤。その大きさは半径十メートルほどの球体。それが真っ直ぐに突き刺さった。
瞬間――――――ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォオオオオオンッッッ!
落下した場所を中心にして、大地が盛り上がり、まるでその場所で大噴火が起こったかのように周囲に破壊が広がった。
それは【魔国・ハーオス】でアヴォロスが行った破壊とは似て非なるもの。地面ごと周囲を破壊していくその様子は、地獄を体現した目を覆いたくなるほどの崩壊だった。
粉々に砕かれ消失していく建物。赤く焼けていく大地。そこにいた生命など欠片も残さないほどの破壊力は大陸全土を震わせるものだった。
「アハハハハハハハハハ! 凄い! 凄いじゃないか《シャイターン砲》は! これでもまだ二十%だなんて! いける! この力があれば奴らを沈めることができるっ! アハハハハハハハハ!」
アヴォロスは気が狂ったかのように笑う。《シャイターン砲》の威力を目にして愉悦に浸っている。
土煙が大地を覆い、そこへ一陣の風が吹き煙を攫っていく。
そして露わになる。
そこにあったはずの国。【ヴィクトリアス】のなれの果て。
今はもう、ただの焼け野原が広がっているだけだった。この瞬間、長く栄華を極めていた人間国である【ヴィクトリアス】が消失した。
他ならぬ、現ヴィクトリアス王の手によって……。
※
【ヴィクトリアス】の消失。それは驚くことに月に映し出されていた。まるで見せつけるように《シャイターン砲》の恐怖を、全ての生物に知らしめた。
それを見ていた日色もさすがに言葉を失って瞬きを忘れてしまっていた。
(あの野郎……何てとんでもないものを作りやがったんだ)
アヴォロスの声も月から聞こえていた。
(あれで二十%だと?)
そう、彼はそう叫んで狂喜していた。ならMAX状態で放つとどうなるのか……。
皆も日色同様に考えているのか、絶望に顔色を染め上げている。無理もない。一瞬にして一つの国が消失したのだ。アヴォロスが行った崩壊も凄まじいものがあったが、まだ残骸なども残ってはいた。
だが今回の《シャイターン砲》は、文字通り全てを消したのだ。残ったのは焼け爛れた大地だけ。そこに最初から何も無かったかのように、綺麗サッパリ破壊された大地だけが広がっていた。
「ジュドム様ぁぁぁぁぁぁぁっ!」
突然魔王城から幼い少女の悲痛な叫び声が聞こえた。月に向かって言葉を放つその少女の名前はファラ。【ヴィクトリアス】第二王女である。
アヴォロスの破壊で魔王城も損害を被ったが、ファラは城の中にいても無事だった。崩壊を免れた場所にいたからだ。
そんな彼女は今、月に映し出されている光景を青ざめた顔をしながら愕然としている。それもそのはずだ。彼女にとっては故郷であり、大切な国民たちが住むかけがえのない場所なのだから。
しかも今、その国だった場所には、ファラを助けてくれた恩人であるジュドム・ランカースがいたはずなのだ。それは日色も知っている。
洗脳を受けた国民を日色が治して、その国民たちをジュドムが安全な場所へと避難させようとしていただろう。恐らく全ての民が国外へ出られたとは思えない。
そして国民すべてを大切に扱うジュドムなら、自分だけ誰かを見捨てて国外へ逃げることもないだろう。あの《シャイターン砲》に身を晒してしまった可能性が非常に高い。
ファラは涙を流しながら最悪の結果を考えてしまったのか、フラフラと身体を揺らしている。そんな彼女の両肩を支えたのが魔王イヴェアムだ。
「ファラ……」
「う、うぅ……みんなが……ジュドム様が……うわぁぁぁぁぁんっ!」
イヴェアムの胸に顔を埋めて泣き叫ぶファラ。イヴェアムも気持ちが分かるのか、悲しげに顔をしかめると、優しくファラを抱きかかえる。
「ごめんね、何もできなかった……」
「ああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
その痛々しいまでに泣く様子を、他の者も見ていた。特にテッケイルの表情は暗い。彼もまたジュドムに命を救われたのだから。
(あの規模の破壊なら、恐らく国民も……)
日色は国民も軒並み消されただろうと考えた。もし国外へ逃亡できている者がいるのであれば無事だろうが、そこから先は頼りになるジュドムだっていないだろう。
人間界にはアヴォロスが放ったゾンビ兵や、モンスターだっているはず。戦う力が低い国民では生存も難しい。
『やあ、どうだった、我が《シャイターン砲》は?』
その時、今一番誰も聞きたくないであろう不愉快な声音が上空から響いた。一つの国を消したのに、楽しそうに笑みを浮かべるアヴォロスに、全員が殺気を込めて睨みつけている。
人間をよく思わない『魔人族』兵士たちも、さすがにアヴォロスの非道っぷりには度が過ぎたものを感じているようだ。
『ククク、今君たちの怒りが手に取るように伝わってくるよ。そう、もっと怒れ、もっと憎めばいい。そしてその全てを余が糧としよう!』
彼の物言いに我慢できずに兵士の中には罵詈雑言をぶつける者たちが出てきた。しかしこちらの言葉は向こうには届いていない。
『一つ良いことを、いや、君たちにとって悪いことかな? 教えてあげるよ。この浮遊城【シャイターン】は自由に空を動ける。もちろん、大陸を越えることだってできる。意味……分かるよね?』
兵士たちが喉に詰まったように言葉を止める。彼の言った言葉の意味を理解したからだろう。
自由に動けるということは、この【ハーオス】にも来ることができるということだ。そして暗に【ヴィクトリアス】と同じことをするという意味が込められてある。
『楽しみに待っているといいよ。準備を整えて君たちの魂を迎えにいってあげるからさ』
口角を三日月型に歪め、そしてそのまま映像は途切れた。
イヴェアムはアヴォロスの宣言を聞き、気落ちしている兵士たちに声をかけている。もし【シャイターン】がこの場所まで来たら危険なんていうものではない。
何とかそれまでに【シャイターン】を何とかしなければならない急務ができたのだ。皆が慌ただしく動く中、日色だけがいまだに月をジッと眺めていた。
(……テンプレ魔王、そのにやけついた顔を凍りつかせてやる)
日色は再度ミュアたちを連絡を取って少し話した後、リリィンを探した。そしてシウバたちと一緒にいた彼女を捕まえてこう言った。
「手はず通りいくぞ」
いよいよ日色が動く。




