153:ハプニング
アノールドが幼女二人に説教され真っ白になっている間、クロウチは相変わらず腰に顔を擦り付けていた。まるで自分のニオイを日色につけ、マーキングするかのように。
こういう時、普段なら折を見てクロウチと同じ《三獣士》の一人であるプティスが来てクロウチを問答無用で引き連れていくのだが、いつまで待っても来ない。保護者め、一体何してやがるのか。
どうしたことかと思い悩んでいると、こちらの思いを察したのか、クロウチがピコピコと耳を動かしながら見上げてくる。
「ニャフフ~、プティスを待ってるのかニャ?」
「……さあな」
「ダメニャよ? 幾ら待ってもアイツは来ニャいニャ」
してやったりみたいな顔をしている相手に対し、いちいち反応を返せば喜ぶだけなのでポーカーフェイスを続けながら耳を傾ける。
「ニャフフ~、だってニャ…………プティスが寝ている間に着ぐるみに落書きしてやったからニャ!」
「…………は?」
「今頃プティスは落書きを落とすのに必死ニャはずニャ。悪いと思ったけどニャ、そう何度もヒイロとの時間を奪わせはしニャいのニャァァァ!」
どうやら馬鹿そうに見えてなかなかに考えたようだ。まあ、手段は子供じみていて情けなくなってはくるが。
「あ、そうニャ!」
「ん?」
「ヒイロ、僕のことはシロップで呼ぶニャ」
「…………は?」
「クロウチは、軍に入ってレオウード様に頂いた名前ニャ。僕の元々の名前はシロップっていうのニャ」
聞くところによれば、このシロップ、軍に入ったもののあまりに可愛らしい外見から、敵からも甘く見られ、味方からも強かろうがなかなか敬われないということに悩み、獣王に相談したところ、ならば《化装術》を使って姿を変えたらどうだと言われたという。
無論レオウードは彼女の《化装術》の特性を知っていたからこその提案だった。彼女の《闇の化装術》は自らの影を実体化させ身に纏うことができる。
そしてあの黒豹が擬人化したような姿が生まれたのだ。
また身に纏えば防御力や攻撃力も上げることができる。だが無論《化装術》の力なので、彼女が気絶したり、何らかの形で力を失えば元の白毛猫の獣人に戻るというわけだ。
ちなみに彼女の言った通り、黒豹時の名前はレオウードにもらい、それからずっとクロウチと名乗っている。
昔の彼女を知っている者は本名も当然知っているが、実際に呼ぶ者は少ないという。
クロウチもまた、その名を大切に扱い誇りをもってずっと名乗り続けている。
古参の者以外、知らない者にはクロウチは本名を教えていない。
クロウチという名が定着し過ぎていて、今更本名で呼ばれるのが何だか恥ずかしいらしい。だが特に気に入った人だけにのみ本名を教えて呼んでもらっているとのこと。
そんな彼女が教えてくれるということは、それ相応に気に入られたという証拠でもある。何故そこまで気に入られたのかは分からないが、一応対応はしなければならない。
「分かった、だから離れろニャン娘」
「う~シロップって言ってるニャァァァ~!」
頬を盛大に膨らませて頭をゴツンゴツンと背中に当ててくる。地味に痛い。
「もう、いつまでヒイロ様に抱きついているのですかクロウチさん!」
説教が終わったのかとやって来たミミルを見る。そして目の先で燃え尽きたように廃人と化しているアノールドが映った。
(アレが一応国を背負って戦ったんだから世の中分からないもんだな)
決闘ではその成長ぶりを発揮して奮闘した彼だったが、今はその勇ましさの欠片も見当たらない。
「クロウチさん!」
「嫌ニャ!」
「クロウチさん!」
「嫌ニャニャニャニャニャニャニャニャ~!」
何度も頭をグリグリとするので、さすがに痛みが蓄積してくる。仕方無く強制的に離れさせようと魔法の準備をしようとするが……。
「……見つけた」
ゾクッとするような冷えた声がその場に響き渡った。
すると身体が何故か震える……いや、震えているのは日色ではなかった。原因は腰に抱きついている白猫だ。
そしてその先には、愛らしい着ぐるみを着こんだプティスがいた。
だがその愛らしさも、何故か今は仁王像のような威圧感を感じる。ところどころほつれたような形になっているので、きっと落書きを落とすためにゴシゴシした結果だろう。
体中から黒いオーラを迸らせている気がするのは目の錯覚だろうか……。
「……クロ?」
またも脳に直接伝えるような底冷えするような声。明らかに憤怒の意思が込められていることは聞いただけですぐに理解できた。
(相当怒ってるな……まあ、いつも着てる服? に落書きされたら誰だって怒るがな)
背中でガタガタと震えるクロウチ、もといシロップ。彼女も背後にいるプティスの存在には気づいているはずだ。だが顔をこちらの腰に埋めてただ震えている。
まるで怖いものを見たくない、これは気のせいなのだと言い聞かせて布団を頭から被って寝ようとしている幼子の図だ。
しかし彼女の恐怖を煽る存在は着々と、確実に一歩ずつ近づいて来ている。
すると足音を聞いて堪らなくなったのか、シロップは腰から即座に離れ、その場から逃げ出そうとした。しかし――。
「ニャ、ニャァッ!?」
「……どこ……行くの?」
一瞬にして回り込まれ、行く手を遮られた。
(ほう、速いな)
日色の感じた通り、今の動きはかなりの速度だった。恐怖で我を忘れたシロップが振り切れるとは思えないほどの速さだ。
「た、助けてニャ! ヒイロ……ッ!?」
シロップは瞬時に踵を返してこちらに向かって来ようとしたらしいが、ガシッと尻尾を掴まれたようだ。
そしてプティスはというと……。
「……お仕置き」
ぎゅぅぅぅぅ~っと掴んだ手に力を込めていた。
「うんニャァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」
どうやら尻尾が弱点なのか、バタリと地面に倒れたシロップは涙目でこちらを見上げてくる。
言いたいことは分かる、助けてほしいのだろうが、こちらとしては待っていたプティスが来てくれたので、無論応援するのはプティスの方なのだ。
「う~ニャァァァァ~ヒイロォォォォォ~」
そのまま尻尾を引っ張られ引き摺られていく哀れな子羊、いや子猫だった。これからどんなお仕置きが待っているかは知らないが、一応心の中で合掌しておいた。
一部始終を呆気にとられながらミュアとミミルも見ていた。そしてシロップが去ると大きく安堵の溜め息を溢した。そのまま二人して顔をこちらに向けると、
「珍しいですねヒイロさん、庭園に何か御用ですか?」
ミュアが丁寧な口調で聞いてくる。
「ああ、お前たちと、そっちの灰になってるオッサンに言うことがあってな」
「何でしょうか?」
「この後、オレは【魔国】へ行く」
「「ええっ!?」」
ミュア、ミミル、二人同時に声を上げる。
「おいおいマジか?」
ようやく復活したらしいアノールドも聞いてくる。
「ああ、結構いたしな。それにまだ向こうの図書館を制覇してもいないし」
日色にとって本は生活上欠かせないものであることはミュアたちも知っている。だから何も言えないのか寂しそうに顔を伏せているだけだ。
「そうかい、もう帰るのかい。こりゃ寂しくなるねぇ」
その中でアノールドの姉であるライブだけはある程度サッパリした言葉だ。
「ほ、本当に……もう行かれてしまわれるのですかヒイロ様?」
悲しげに目を細めその小さな口を震わせるミミル。隣にいるミュアも同じ気持ちのようだ。こういう顔を見ていたら、昔児童養護施設にいた時のことを思い出す。
里親にもらわれていく子供たちが、必ずこういう顔をしていた。特に日色が世話をした子供はその態度が顕著だった。中には一緒に行こうと泣き出す者もいた。
しかしその時、日色には決まっていつもこう言うことにしている。
トン……トン……。
二人の額を人差し指で軽く突くと、
「また会おうな」
二人はほぼ同時に手を額にやると、恥ずかしそうに頬を染める。
「……ず、ずるいでしゅ」
「……そ、そうですよ」
言葉とは裏腹に、彼女たちの頬は優しく緩んでいた。そんな二人を見ているライブは微笑ましく見つめ、そしてアノールドは悔しそうに歯噛みしていた。親バカは何があっても健在のようだ。
「さてオッサン」
「な、何だよちきしょう!」
「……何泣いてるんだ?」
「う、うるせえやい! 早く要件を言いやがれってんだホントまったくよぉ!」
何故か涙を流して睨みつけてくるアノールドだが、そんな彼を見てライブは「この子は……」と肩を落としていた。
「次に会う時まで死なないようにしろよ」
「不吉なことを言うなよなっ!」
「まあ、変態キャラは長生きするって相場は決まってるからオッサンなら大丈夫か」
「何の相場だ何のっ! 何か前にもそれ言われた気がするぞ!」
日色はチラリとミュアたちの方を見ると、テンとカミュが同じように別れの挨拶をしている様子が映る。
ゆっくりとアノールドに近づくと、耳打ちするような小声で話す。
「チビと青リボンを守れよ」
「……は?」
突然何を言っているんだといった感じで顔ごと向けてくる。
「どうしたんだお前?」
「……一応獣王にも言っておいたが、先代魔王は特異なものをその手中に収めようとしてるのは聞いてるな?」
「あ、ああ」
「オッサンも知ってるだろ? チビの種族」
「……っ!?」
日色の言葉を受け顔が強張る。
「お、お前まさか奴がミュアを狙ってくるとでも言うのかよ?」
「さあな、あくまでも可能性の話だ」
「…………ミミル様は何でだ?」
「アイツには特別な能力がある」
「特別?」
「ああ、だから先代魔王が知れば狙われる恐れがある」
「……だから守れってか?」
「そうだ」
しばらく二人は目だけを合わせて黙っていた。そして軽く溜め息交じりにアノールドは言う。
「だったらお前がここに居て守ってやればいいじゃねえか」
アノールドの言い分にも一理ある。
「言っただろ、オレにもやりたいことがあるって」
「……どうせ本だろ?」
「分かってるなら言うな」
無論本だけでなく、本格的に《太赤纏》の訓練もしたいのだ。
「…………はぁ、まあレオウード様も知ってるんだろ?」
「ああ」
「なら大丈夫だ。あの子たちを守るのはこの国そのものだ。そしてミュアは俺の娘だ!」
誰にも奪わせないという強い信念を込めた瞳をぶつけてくる。
「ならそれでいい。一応保険もかけているしな」
「ん? 保険が何だって?」
「何でもない。オッサンは相変わらず暑苦しいなと思っただけだ」
「何だとこのガキャァッ!」
その無駄に強面の顔をグイッと近づけてくるが、そそくさとその場から一歩後ずさる。
「とにかく、そういうことだから気を付けるんだな」
「……任せろ。というかお前がそんなに二人を気にするとはな……はっ! ま、まさかお前ミュアにほ、ほ、惚れ、惚れ、惚れ……」
「安心しろ。それはない」
「な、何だよぉ~」
心底安心したようにホッと胸を撫で下ろしている。
「だったら何でだ? お前が他人にこうまで気を使うなんてよぉ」
「……さあな」
日色は今も楽しく談笑しているミュアとミミルに視線をやる。そしてゆっくりと空を見上げる。今は夜ではないので星は見当たらない。
「……ただの気まぐれだ」
「気まぐれねぇ……」
「あのクソ生意気そうなテンプレ魔王の思い通りになるのも不愉快だしな」
「ま、そういうことにしといてやるよ」
そのまま日色が踵を返してテンとカミュの方へ向かおうとした時、
「あ、師匠には会って行かねえのか?」
「ああ、事前に挨拶はしておいた。この一週間、世話になったからな」
ララシークには《太赤纏》を扱うために必要な身体力コントロールについて教授してもらっていた。必要なことは教えてもらったので、あとは特訓あるのみなのだ。
「そっか、んじゃな。お前も死ぬなよ」
「ぬかせ。オレは死なん」
それだけ言うと『転移』の文字を空中に書き、テンとカミュを呼びつけた。少し長く滞在したが、かなり得るものがあった日を過ごせたので満足だった。
近いうちにまたライブの手料理をご馳走になるために来ようと思い、三人は【魔国・ハーオス】へ帰って行った。
【魔国・ハーオス】へと戻った日色一行は、とりあえず獣人の姿をさせていたカミュの姿を元の『アスラ族』の姿に戻した。
カミュは結構獣人の姿を気に入っていたのか、少し残念そうだったが、そのままの姿にしておくと説明がいちいち面倒なので元に戻した。
一応獣王レオウードや、日色の仲間であるミュアたちにはカミュが決闘の時に日色を助けに来た『魔人族』だということは話してある。
今度向こうへ行く時は、『魔人族』の姿のままでも良いということだったので、もう獣人にならなくてもいいと言ったら、なおさら残念そうに渋々了承していた。
転移した場所は魔王城の手前である。その近くにある店で売っている《フワフワ焼き》を気に入ったカミュが、また買いたいと言っていたからだ。以前食べてどうやら相当気に入ったらしい。
日色は魔王イヴェアムに帰国の報告をしなければならないと思い、とりあえず金だけ渡して自分の分の《フワフワ焼き》を買うようにカミュに頼んだ。
テンも、もう一度食べたいのかカミュの肩に跳び乗り一緒に店へと向かって行った。
(さて、それじゃオレは魔王に会いに行くか)
しかしいちいち城の中をイヴェアムを探し回るのは面倒だと思った。
『転移』と『魔王』
両手で同時に文字を書いて発動する。これなら一瞬にしてイヴェアムの元へと行ける。
――ピシュン!
瞬時にして日色の姿はその場から消失した。
転移したのはいいが、思わず怪訝な表情を浮かべる日色。
(何だここは……熱いし……それに湯気?)
明らかに外とは違う気温であり、蒸れるような熱さが周囲を支配している。そして霧のように湯気が視界を覆っている。
眼鏡も曇ってしまったので、仕方無く眼鏡を外し、ここがどこか確認するために周囲を見回す。
するとペチペチと床を歩いている音が耳に届く。
その音が背後からすることに気づき、そちらに身体ごと向けると……。
「……え?」
声を出したのは日色ではない。そして日色は全てを理解した。というよりもっと早くに気づけなかった自分を叱咤する。
何故なら今目の前には――――――――――――一糸纏わぬ姿のイヴェアムがいたからだ。
思わず日色は絶句し体を硬直させる。ここがどこなのか把握はできていたが、思考能力が突然失われたかのように呆然自失状態だった。
それはイヴェアムも同様だったようで、まるで幻でも見ているような感じで目を見開いていた。
「ヒイロ……え、ど、どうして……?」
呆けたように口を動かしてはいるが、それよりも言うべきことがあった。
「……と、とりあえず前を隠せ」
日色もさすがにバツが悪そうな顔をしながら目を逸らす。そして日色の言葉にハッとなった彼女は、今自分がどんな格好をしているのか思い出し、
「え? …………き、きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そうだ。ここは魔王専用の大浴場だったのである。
当然のごとくイヴェアムの悲鳴を聞いたメイドたちは何事かと思い飛び込んできた。このままだとマズイと思い、素早く『転移』の文字を書いて発動する。
「おお!? い、いきなり現れるなヒイロ!」
転移したのは城で与えられている客室だった。そこにはリリィンたちがいて、突然現れた日色に対しリリィンがギョッとなる。
「おお~師匠ぉ! 酷いですぞぉ! 何でボクを連れて行って下さらなかったのですかぁ~!」
「ぶ~ミカヅキもじゅうじんかいにいきたかったよぉ~」
バカ弟子であるニッキとペット娘のミカヅキが頬を膨らませていた。
「ノフォフォフォフォ! お帰りなさいませヒイロ様」
「お、お元気で何よりですぅ!」
変態執事のシウバとドジメイドのシャモエも変わらず元気みたいだ。
「お久しぶりですヒイロさん……おや? 御気分が優れませんか?」
日色の顔色を見て不思議に思ったのか訪ねて来たのは、最近仲間になった鍛冶師クゼルだ。
「む? そう言えば少し顔が赤い……か? 何だ風邪でもひいたのか?」
リリィンがいまだに喋らない日色が、彼女たちから目を逸らし普段の無表情とは明らかに違う様子に体調でも崩したのかと勘違いしているようだ。
(……ふぅ、いや、さすがにビビったな)
内心で日色は焦っていた。できるだけ顔には出ないように努めようとはしているが、さすがに予想していなかった事態に直面してしまい戸惑っていた。
ハッキリ言って、同年代の女性の裸というものを初めて見た。
湯気のせいと、眼鏡を外していたせいで、それほど明確には見えなかったが、それでもイヴェアムのその整ったスタイルを見て思わず息を飲んだのも確かだ。
ただ今体験したことをこの場で口にするわけにもいかず、今はとにかく心を落ち着かせようと必死だった。
「おい、ホントに大丈夫かヒイロ?」
反応を返さない日色に、その場にいる誰もが不可解そうに首を傾けている。
「……問題無い」
「いや、しかし……【パシオン】で何かあったのか?」
「ノフォフォフォフォ! さすがはお嬢様! そんなにヒイロ様のご心配をされるとは……嫉妬を覚えるほどの愛情でございますね?」
「あ、あああああ愛情などではないわ愚か者っ!」
シウバの横槍に一瞬にして顔全体を真っ赤に染め上げるリリィン。
「ぶ、部下の体調を慮るのも、う、上に立つ者の役目だろうが!」
「ノフォフォフォフォ! お焦りになられるお嬢様も……格別でございます。ノフォ!」
「貴様はもう黙れぇぇぇぇっ!」
「がふんっ!?」
リリィンは拳をシウバの腹に突き立てると、そのまま彼は前のめりに静かに沈黙した。だが彼のお蔭で話を逸らすことができた。
(まさかコレを狙って……? いや、まさかな)
日色の言いたくないという意思を感じ取ったシウバが、空気を読んで話を変えたとも思えるが、普段通り過ぎるシウバの振る舞いに、どうも判断しかねた。一応僥倖だったと思い嘆息した。
だが安心したのも束の間、ダダダダダダダとこちらへ向って来る物凄い足音が聞こえる。何だか物凄く嫌な予感がする。
そして――。
「こら小僧ぉぉぉぉぉぉっ! 陛下の湯浴みを覗いたというのは真かぁっ!」
扉を壊さんばかりに開け放ち部屋へと入って来たのは、チョロ髭がチャームポイントのマリオネだった。
(……はぁ、厄日だな今日は)
せっかく隠し通せると思っていたのに、こうも大々的に発言されるとはもうどうにもならなかった。
(いや、いっそのことここにいる連中に『忘却』の文字でも使って……)
チラリとまず近くにいるニッキを見る。
(いや、コイツは馬鹿だから言いくるめられる。よだれ鳥についても問題無いな)
ニッキとミカヅキはよく分かっていない様子なので、幾らでも誤魔化せる。わざわざ魔法を使うまでもないと判断する。
(ドジメイド……)
シャモエと目が合った瞬間、彼女は「ふぇぇぇぇ~!」と言いながら「大胆ですぅ!」と顔を真っ赤にしているが、彼女もまた勘違いされても実害は無さそうだ。
(ジイサンについては、魔法が効かないかもしれないし……)
彼は高位の精霊なので《魔法無効化》を備えている可能性がある。それにより魔法の効果を受け付けないかもしれない。
それに仮にシウバに知られていてもどうせ羨ましがるような変態なので放置しても大して問題は無い。問題あるとしたら……。
「……ヒイロ……風呂を覗いたというのは…………どういうことだ?」
そう、問題あるとしたら赤毛のロリッ娘だった。




