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金色の文字使い ~勇者四人に巻き込まれたユニークチート~  作者: 十本スイ
第四章 運命を決める決定編

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113:獣王の猛攻

 レオウードの変わり様に一番驚いていたのは『獣人族』たちであった。


「ね、ねえレニ兄……」

「……何だ?」


 ククリアの問いに返事をしたのはレニオンである。二人ともレオウードから目を離さず口だけを動かしている。


「あ、あんなパパ、見たことある?」

「……ねえな」

「そうだな、あのようにキレてしまっている父上は、レニオンは見たことが無いだろう」


 二人の間に入って来たのはレッグルスだ。しかし彼は先で受けたダメージが大きく、いまだ座ったままである。つい先程目が覚めたばかりなのだ。


「兄貴は見たことがあるのかよ?」

「ああ、一度だけな。ずいぶん前になるが『人間族』がこぞって獣人界にやって来て、ある一つの村を蹂躙した。その時、怒り狂った父上はあのような姿になって……」

「なって?」

「……『人間族』を皆殺しにした。しかも全員が跡形も無く溶かされてな」


 ゴクリと二人だけではなく、その場にいた者が喉を鳴らす。


「まあ、あの少年の場合は憎しみでああなったわけではないようだが、それでも父上をそこまで追い詰めたということには変わりはない。……明らかに俺たちより若いあの少年がだ」


 レッグルスの言葉を受けレニオンはギリッと歯を鳴らす。


「ちっ、俺様たちが束になっても本気になった親父には傷一つ付けられねえのに……」


 日色があっさりとではないが、レオウードに深手を負わせたこと、そして本気にさせたということが悔しいのだろう。しかもそれを成したのが自分よりも歳下なのだ。


「とんでもないな。それに今のところ父上を押しているのだから驚きだよ」

「……あの野郎……」


 悔しさで身体を震わせているレニオンを見てレッグルスは思わず苦笑してしまう。


「ヒイロ様……すごいです……」


 そんな二人の思いを知らずに末の妹であるミミルは、敵である日色の強さに目を奪われている。


「カッコ良いです……そうですよねクー姉様?」

「え? あ、そ、そうね……」


 キラキラと一切の濁りを持たない純粋な瞳を向けられてククリアも頷くしかできなかった。

 だがミミルは表情を少し暗くさせると、両手を組んだ。


「ですが……」

「ミミル?」

「お二人とも、どうかご無事にお戻りになってほしいです」

「ミミル…………そうね、あなたの言う通りだわ」


 そんな四人と同じ思いはミュアも宿していた。


「おじさん、ヒイロさん強いね」

「ああ、けどレオウード様だってまだまだ本気じゃねえ。こっからはもっと激しくなっていくだろうよ」

「大丈夫かな……ヒイロさん」

「分からねえけど、どうもアイツが負けるとこが想像できねえんだよな。何だかんだ言ってやっぱ規格外だしなあの野郎は」


 心配そうに曇るミュアの顔を見てアノールドは軽く息を吐く。


「まあ、『獣人族』としてはレオウード様を応援しなきゃなんねえんだろうけど、やっぱアイツにも勝ってもらいてえんだよな」

「……うん」

「なら、両方とも応援しようぜ」

「……うん!」



     ※



 『魔人族』陣営も、レオウードの変わり様、そして日色の強さにそれぞれが感嘆の溜め息を漏らしていた。


「さ、さすがはヒイロだ……あの獣王に深手を……」


 イヴェアムは日色の見事ともいえる攻撃で、レオウードに一撃を与えたことに感動さえしていた。

 あのマリオネでさえできなかったことを、二十年も生きていない『人間族』がしたという事実は多くの者に衝撃を与えた。


「当然だ。ヒイロならあれくらいやる」


 まるで自分のことのように自慢するリリィンがイヴェアムの目に映る。


「おお~っ! さすがはボクの師匠ですぞぉ! しかも獣王から受けた一撃もへのかっぱなのですぞぉ!」

「ちがうもん! ニッキのじゃなくてミカヅキのご主人だからだもんっ!」

「何を言うのですかな? 師匠はボクのですぞ!」

「ミカヅキのだもんっ!」

「ええい! 黙れ小童どもがっ!」


 口喧嘩をするニッキとミカヅキを、リリィンの気迫が襲った。叱られた二人は委縮したように小さくなる。


「誰が誰のものだと? いいか? ヒイロは頭の先からつま先まですべてワタシのものだ! 貴様らはその付属品と言ったところだ。分を弁えるのだな!」

「ぶぅ~、おうぼ~だぁ~!」

「そ、そうですぞそうですぞ!」

「ほほう、このワタシと張り合うというのか?」


 紅く光らせる双眸は、見る者を震え上がらせるのか、ミカヅキは「クイ~」と言いながらシャモエの元へ逃げて行く。

 ニッキは逃げることはしなくてもガタガタブルブルと冷や汗を垂らしている。


「……あの中に飛び込まぬのですか?」

「マ、マリオネ!? な、なななな何を言ってるのだ!」


 イヴェアムがジッとリリィンたちを見つめていると、いつの間にか隣にやって来ていたマリオネがからかうように言ってきた。


「ですがあの者たちはどうやら少年を取り合っているのでは? 確か陛下も獣王の前で……」

「わあわあわあわあわあわあっ! な、何を言うのよあなたは!?」


 第五回戦を始める前、イヴェアムが日色が欲しいと言ったレオウードに、「ヒイロは私のものだ」と言っていたのをマリオネは覚えていたのだ。

 あの時の言動と様子から、イヴェアムが少なからず日色に対して好感を抱いていることは十中八九間違いない。だからこうして言葉にしたのだろうが、どうにもイヴェアムはそれを認めようとしない。顔を真っ赤にして慌てている態度で、その気持ちはもう火を見るより明らかなのだが。


「ああもう! その話はしないでっ! ほら! それよりも獣王が動くわよっ!」

「……御意」



     ※



「熱っち! このマグマ野郎が!」


 凄まじい速さで突進を何度も繰り返してくるレオウードを必死になって避けるが、紙一重で避けると、マグマが飛び散って被害を受けるのでそれなりに距離を取る必要がある。

 だが近づいただけで一瞬でドライアイになるのではと思うくらい熱の圧力が強い。それに何とか攻撃を先読みして避けているが、そう何度も避け続けることも至難の業だ。

 周囲の気温もレオウードのせいで徐々に高まっていき、そこにいるだけで汗が流れ出てくる。このままでは脱水症状に陥りそうだ。


「あまり調子に乗るなよ獣王!」


 次に攻撃を避けた瞬間、用意していた『凍結』の文字を放つが、また避けられることを覚悟していたが、どういうわけか明らかに十分過ぎるほどこちらの攻撃に反応していたのにも拘らず、そのまま動かずに文字を受けた。

 発動させるとレオウードの氷の彫刻が瞬時に出来上がった。だがそれで倒したと思うほど日色は浅慮ではない。


 下手に近づかずにジッと警戒しながら見ていると、氷が青から赤に変わり、ドロドロと溶けていった。やはり思った通り、自分には効かないと野生の勘で判断し避けなかったようだ。

 どことなく優越感が含まれた笑みをレオウードが浮かべる。

 まるで何をしても無駄だと言わんばかりだ。


 そしてレオウードが再びこちらに向かって突進してくる。さらに相手のスピードが増しているような気がした。

 このままでは避けることも厳しいと思ったので、《設置文字》である『加速』を使用する。それと同時に《絶刀・ザンゲキ》を抜いてこちらも避けるのではなく向かって行った。


 ――ブシュッ!


 交差する瞬間、相手の拳をかわしてそのまま胴に刃を走らせる。斬ることはできたが、《転化》しているのですぐさま元通りに戻る。ダメージを受けたように見えない。それを証明するかのように、平然とレオウードがこちらに背を向けたまま蹴りを放ってくる。


「ちっ!」


 刀で防御するが踏ん張り切れずそのまま後ろへ弾かれてしまう。身体を回転させて体勢を整えるが、すぐ目の前に真っ赤な拳が迫っていた。


 ――ヒュンッ!

 

 すぐさまその場から回避する。

 チリチリと前髪が焦げたが、『加速』のお蔭でまともに受けるのは防げた。

 今のをまともにくらっていたら危うかった。


 それから何度も衝突しては互いに決定打は与えられない攻防が続く。

 相手の攻撃は確かに一度も受けてはいないが、それでも日色にとってはこの場にいるだけで暑さで体力が異常に削られる。

 それは《転化》をし続けている相手も同じだろうが、このまま同じことを続けても消耗戦になるだけだと思ったのか、


「ヒイロ……」


 しばらくぶりの声がレオウードから発せられた。


「ほう、意識はあったんだな獣王」

「クク……楽しいな」

「……この戦闘狂が」

「そう言うな。こうして戦っていると、お前の思いも伝わってくる。だから分かる。ヒイロ……お前も楽しんでるだろ」

「……さあな」

「ククク……それはそうと、その刀、やはりただの刀では無かったな。これだけワシの体を斬れば、普通ならもうとっくにその形を失っておるしな」


 彼の言う通り普通の刀なら、マグマの熱でその形状に変化をきたしているだろう。

 しかし《絶刀・ザンゲキ》は最初の頃から一切変化が無い。


「良い刀だ。しかしその刀ではワシを倒すことはできん」

「…………」

「同時に、このままこの状態で戦ってもお前を倒すことはできなさそうだ」


 するとスッと《転化》状態からノーマルに戻った。その顔からは若干の疲労が窺える。やはり《転化》は相当に消耗するようだ。


「ヒイロ、これからワシの全力を見せてやる」

「次のステージがあるってことか」

「ああ、これでお前を倒す」


 すると空気がガラリと変わった。熱気が一気に冷やされたように空気が張りつめる。殺気や敵意よりも、これは覇気とも呼ぶべき気圧を感じる。

 ビリビリと大気を震わせるそれは、レオウードの存在を大きく見せつけてくる。

 今攻撃すればいいのかもしれないが、下手に向かえば逆にやられてしまう気がした。


(ならこの時間を利用してコッチも準備を整えさせてもらえばいいか)


 そう思い使用した《設置文字》の枠を埋めるために、身体に文字を設置していく。


(MPにはまだ余裕はある……が、油断はできんな)


 ずいぶん魔力も使用したので、これからの状況次第ではもっと使うことになるので、とりあえずMP回復薬である《赤蜜飴》を数個口に放り投げる。

 ガリガリと噛み砕き胃の中に落とす。そして感じていた脱力感がなくなった。


(よし、これでいい)


 しかしこちらが準備を整えている間に、レオウードもまた次の舞台を作り上げていた。


「我願う…………太古より紡がれし血のもとに――――――今こそ顕現せよっ!」


 するとレオウードの前方の空間がユラユラと歪んでいき……。


 ピキィッ……ッ!?


 突如歪んだ空間にヒビが入り、


「来ぉぉぉぉいっ! ――――――シシライガァァァァァァッ!」


 レオウードの叫びに呼応するかのように、亀裂の入った空間をさらに大きく割って、その中から炎に包まれた巨大な獅子が出現した。

 

「……!?」


 目の前に現れた巨大生物(?)を見て、その圧倒的な迫力に息を飲む。

 これはあの時、第一回戦で垣間見せたレオウードの力だった。マリオネのジ・アースという魔法により生み出された巨大竜にもう少しでやられるといった時、突然その竜を食い破るようにして破壊し、マリオネに突撃をして彼の意識を奪った獅子だった。


 見た目はライオンそっくりなのだが、全身が炎に包まれているというよりも、炎で構成されていると考える方が正しいだろう。

 それに大きな口の両端にはサーベルタイガーもビックリの鋭い牙が備わっている。あんな牙で噛みつかれれば簡単に風穴を空けられてしまう。


 そして極めつけはその恐ろしいまでの巨大な体躯であり、明らかにライオンの十倍はある。まるで怪獣か恐竜だ。近くで見て分かったが、確かにこんな生物に体当たりされれば一溜まりも無いだろう。


(何ともまあ、厄介な奴を呼び出しやがって……)


 咄嗟に日色は『覗』を使いシシライガを調べていた。

 そこで分かった。相手は恐ろしくて、日色にとっては死活問題に発展する能力を備えていたのである。


 ――《魔法無効化体質》――


 思わず目を見張って何度も確認してしまった。


(おいおい、つまりあの獣には《文字魔法》が通じないってことか?)


 これは本気でマズイと焦り始める。

 マリオネを倒した動きから察するに、シシライガも相当に素早い動きを持っている。

 そしてもし二人同時にかかってくるのであれば、まずはシシライガから魔法で倒そうと思ったのだが、その魔法が通じないとなればこれほど頭を抱える問題は無い。


「一つ教えてやろうヒイロ」


 レオウードがニヤリと口角を上げ語る。


「このシシライガは特殊な能力を持っておるぞ?」


 知っている。もう調べたから分かっているのだ。だがレオウードはそんなことを知らずに高みの上から見下ろすような格好で言い放ってくる。


「そんなことを教えるとはずいぶん余裕だな」


 嫌味をたっぷりと含める。

 しかしレオウードはフッと愉快気に笑うと、


「いやなに、どうせお前のことだからすぐに気づくだろう。なら先に教えて、どんな戦い方をするのか見たかっただけだ」


 余裕を感じさせてはいるそんな彼も《転化》状態ではないので、日色に負わせられた深手が復活して身体からは血を流している。


「ワシも長くは戦えん。これで終着としようぞヒイロ!」


 彼が整えたラストステージが始まるようだ。

 するとシシライガがその場から一瞬にして消える。


「なっ!?」


 気付いたら上空からこちらに向かって大きな口を開けていた。


「っのやろう!」


 咄嗟に刀を抜いて振り抜くが――ガチンッ!

 驚くことに歯で真剣白刃取りをされてしまった。

 そしてそのまま力のままに日色を振り回し大岩に叩きつける。


「ぐぅぁっ!?」


 かなりの衝撃が全身に走るが、ジッとしているわけにもいかない。何故ならもう目の前にはシシライガが迫って来ているからだ。

 反射的に『反射』の《設置文字》を使うが――バチィンッ!

 具現化された魔力の壁をあっさりと弾いてきた。

 仕方なく瞬時に《設置文字》の『転移』を使ってその場から脱出を図る。

 岩陰に転移して身を潜ませる。


(くそ……やり辛いな……)


 やはり《魔法無効化体質》は厄介極まりないものだった。

 どんな攻撃でも一度だけなら弾き返す『反射』すらものともしない。それにせっかく補充しておいた《設置文字》を二つも消費させられた。


(あの手の奴はオレの天敵だな)


 しかしそこで妙なことに気づく。

 レオウードが先程から《転化》をするどころか、動いてすらいないのだ。


 そこで一つの仮説を立てる。もしかするとシシライガを出している間は彼はその場を動けないのではないか。

 もしそうなら二人同時に相手をするわけではないので、少しだけ楽になる。だが楽観はできない。

 本当にそうか検証する必要があるのだ。


(そのためにもまずは獣王に近づいて……)


 こっそりと二つの存在の位置を把握しようとしたところ、背後にその存在の気配を感じる。


(もう見つかったのかよ!)


 ガァッっと一飲みしそうなほど開いた口に捕まらないように横に跳んで逃げる。


「くっ! はあはあはあ……『加速』あってのコレか……」


 今の日色の動きは文字で強化している。それでも避けるのに必死にならなければならない。それほどシシライガの動きが桁違いに速いのだ。


「これが『精霊』……か」


 ララシークから以前説明は受けていた。

 《化装術》の最終的な目的は自らに宿った精霊を呼び出し一体化することだと。

 しかし呼び出すには才能も必要だし、自らの内に眠る精霊に負けない精神力が必要になる。


 何故なら精霊は魔法そのものであり、世界を構成する欠片であり、その力は計り知れないものだからだ。

 つまり未熟なものが精霊を呼び出せば逆に己の精神を喰われてしまい生きたまま死人になる。

 だがもし完全に精霊を使役することができれば、どんな障害をも貫き通す槍になるだろうとララシークは言っていた。


(確かに、あんな力を自由に扱うことができれば無敵だろうな。魔法対抗策として《化装術》を編み出したって言ってたが、なるほどな、これはまさしく魔法の天敵だ)


 日色は刀を納めると、その場から全力で離れて行った。レオウードからもドンドン離れて行く。

 シシライガがその後を凄まじいスピードで追って来る。

 ただレオウードが動かないところを見ると、やはり使役するには自身は不動を保つ必要があるのかもしれない。

 尤も、全身に受けた傷が広がらないようにジッとしているという考えもできるが、レオウードの性格上、そんなことで動かないような人物ではなさそうなので、恐らく前者の考えが正しいと踏む。


(もっとだ! もっと来い!)


 そしてレオウードからかなり離れたところで、シシライガに捕まりそうになる。

 噛みつかれる瞬間に右足に力を込めてその場を離脱。

 そしてすかさず大岩の上に乗ると《設置文字》である『影分身』を発動させ、本体は岩の後ろへと隠れる。

 分身体がそこから動き出し、レオウードから距離を取るように逃げて行く。無論シシライガは追っていく。


(そこで遊んでろ)


 分身体を囮にして、レオウードを叩く選択を選んだ。

 『転移』の文字を書きながら分身とシシライガを見る。

 まだ分身は捉えられておらず回避中みたいだ。


 『転移』の文字を発動して、


「これでどうだっ!」


 瞬時にレオウードの背後に出現し、刀を抜いて斬り裂こうとする。

 しかしその瞬間、レオウードの傍の空間が歪みヒビが走った。

 直後、ゾクッと背中に走る寒気。

 その悪い予感は当たり、何も無かったその空間から炎の獅子が現れた。


 ――ドガァァァッ!


 骨が軋むほどの体当たりをまともに受けてしまった。


(ダメだっ! 意識が……飛ぶ……っ!)


 このままでは負けてしまうと思った日色は、咄嗟に《設置文字》の『治癒』を発動させる。だが発動したのはいいが、そのまま吹き飛んでいき地面を激しく転がっていく。


 地面に倒れたまま日色の身体が青白く輝いているのを不思議に思ったのか、シシライガに乗ってレオウードが近づいてくる。


 動けたのかよとも思ったが、今はそれどころではない。

 次第に痛みは引いていくが、こちらの思惑が全て外されてしまった事実は疑いようがないのだ。


(ふぅ、これはしんどい相手だなまったく……)


 依頼料は確かに魅力的なのだが、これほどレオウードが厄介な相手だとは……。

 だが出た以上は負けるわけにはいかない。依頼料もそうだが、そんなのプライドが許さない。それに負ければリリィンがうるさい。


 起き上がりながらチラリとリリィンがいる方向を見るが、もちろん顔を確認はできないし声も届かないのだが、それでも今彼女はむくれながら「何をしているのだ馬鹿者!」とか言ってそうだと思った。


(ったく……)


 口から流れていた血を無造作に手で拭き取ると、シシライガから下りたレオウードに視線を向ける。


「正直さすがは獣王だと思ったぞ」

「ガハハ! 当然だ! これでも歴代最強と言われておるからな!」


 だが満更でも無いのか嬉しそうに笑っている。


「……とんでもない奴を呼び出しやがって。魔法が効かないとか反則だろ」

「ほう、気づいたか。やはりお前は面白い!」

「……コレがアンタの全力か?」

「……どうだろうな? まだ先があるかもしれないぞ?」


 含みのある表情をしてくる。もしかしたらもう一つ先があるのかもしれない。これは本当に面倒だなと思いながらも獣王の強さに素直に感嘆する。


「そうか。なら獣王……」

「ん?」

「……オレも見せてやるよ」

「……?」

「次のステージがあるってところをな――」







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