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8,猫探しって。

 

 王都に戻り、墓地のクエスト達成をギルド本部で報告。

 アンデッドキングの残骸という名の素材をもっていくと、素材鑑定担当が驚いた。


「まさかアンデッドキングを討伐するなんて──Aランクパーティでも苦戦する相手ですよ!」


「え、そんなに強かったの??」とこっちも驚いてから、思いだしたように得意そうにサラはうなずいた。


「そうでしょう、そうでしょう。凄いでしょう。これで、わが〈名前はまだない〉のパーティランクも上がるんじゃないの? え、そういう昇級とかは、上層部が決めるから報告まち? はい」


 素材を渡したことで得た素材料金と、クエスト報酬ににまにましながら、サラは本部から出る。

 自宅に戻り、即席金庫にしまった。

 それをアークは、あくびしながら眺めていた。念のため、ボロの金庫に封印の魔法をかけておく。


「結果オーライだけど、これは一言、文句を言っておかないと」


 どうやらアンデッド案件をまわしてきた友達のことらしい。サラは文句を言うため出ていき、アークは留守番することになった。

 ちなみにいまは、サラの住まいで暮らしている。10代の少女と同居しているわけだ。目のやり場に困ることも時にはあるが、たいていは『おっさんだったのは前世だし』のメンタルで済む。


 しばらくして、ケイトがやってくる。


「あ、ミィさんだけ。サラはいない? そう。これは大事件なのに」


「にゃい(大事件とは、詳しく話してくれ)」


「そう。ミィさんも気になる? これはミィさんにとっても、他人事ではない」


 なんとも不思議なことに、いつも一緒にいるサラよりも、ケイトのほうが、アークが何を言いたいか伝わりやすい。


「実は、この王都で──飼い猫誘拐事件が多発して、いる」


 ケイト的には、墓地のアンデッドキングよりも、重大ごとらしい。

 すでにこの『連続飼い猫失踪事件』クエストを、ギルドより受注したそうだ。ちなみに他のパーティは見向きもしなかったらしい。確かに猫探しに毛が生えた事件では。


「にゃぁ(サラは当分帰ってこないだろうから、おれたちだけで解決しておこう)」


 ヒマしているよりも良い。それに──確かに猫のような生き物として、アークも放ってはおけない、気もしてきた。といっても、この転生体でも猫と意思疎通できたためしはないが。


 失踪した飼い猫の飼い主たちから、情報を収集する。何事も、まず聞き込みが捜査の基本。

 やがて、何人かの怪しい男たちが、付近をうろついていたことが分かる。


「にゃぁ(まさか王都を縄張りにしている盗賊の仕業か? だとしても、猫なんかをさらって何の意味があるんだ?)」


 ケイトがハッとする。


「もしかすると、盗まれた猫は、みんな高価なのかもしれない。これは、猫転売事件!!」


「にゃぁ(猫を盗むことしかできないとは…情けない盗賊もいたものだな)」


 そんな情けない盗賊の拠点は、追跡魔法を使うことであっさりと見つけることができた。つまり、『誘拐された猫』の痕跡を追跡したわけだが。

 その行先が、下水道の中だった。


「にゃぁぁぁ(こんな悪臭が蔓延しているところを拠点にするとは、はた迷惑な奴らだ!)」


 転生して、猫のような生き物になってから、嗅覚が鋭くなった。

 そのため、下水道の悪臭は気を失うレベル。

 こんなところまで追跡させやがって、という怒りの拳闘スキルlevel2《掌打の嵐》。


 誘拐した猫たちを売るため、箱に入れようとしていた盗賊たちが、突然の暴力スキルに吹っ飛ばされてく。


「ぐわぁぁ、なんだ、この猫はぁぁ!!」

「猫の復讐だぁぁ!」

「あぁぁ助けてくれぇぇぇ!!」


「にゃあ(命までとらなかったんだ、ありがたく思え)」


 見上げると、ケイトが感動の眼差しを向けてきていた。


「一瞬で盗賊たちを叩きのめすなんて。仲間の猫たちが誘拐されたことで、ミィさんも怒り心頭、だった?」


「にゃあ(サラといい、お前といい。いつになったら、おれが猫ではない、と気づくんだ?)」

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