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77,税務ギルドが容赦ない問題。

 

 アーク(ミィ)は、猫に転生してからの、半生を思い返していた。

 といっても、25か月程度だが。しかし猫の寿命が短いことを考えると、だいぶ人生を消費したような気もするが。


 もとは冒険者ギルドの下級パーティだった〈名前はまだない〉も、いまや独立。

 王都内で何でも屋ギルドとして、その影響力は絶大。

 つまりサラのギルドは向かうところ敵なしだった。

 が、思いがけないところで、蹴躓くことになる。

 勢いで設立した奴隷ギルドの悪行──の内容は問題ではなかったが、そこで荒稼ぎした資産を申告しなかったために。何が起きたかといえば、このまごうことなき脱税。


 アークは「にゃあ(納税義務を果たさなくていいのか?)」と尋ねてみたが、サラいわく、


「いまや〈名前はまだない〉ギルドを脅かせるのは、冒険者ギルドくらいなものだよ、ミィくん。しかも連中が本腰をいれたら、だからね。税務ギルド? そんなところはたいしたことないよ」


 すっかり調子にのっていたせいで、敵について知ることを怠った。

 そもそも税務ギルド自体がまずもって、軽んじてよい相手ではない。冒険者ギルドのように魔物と戦うわけではないが、市民から税を搾り取ることにかけては、血も涙もなく容赦がない連中。

 王都銀行の個人の金庫なども自由にのぞき見放題、あろうことか貯蓄を税徴収として取り出すことも可能という、王都の騎士団以上の権限も有している。

 

 むろん税の徴収として勝手に銀行金庫を荒されることは知っていたサラは──変なことだけよく知っているが、いまだにリザードマンの皮素材の剥ぎ方も知らない──複数箇所に隠し財産の保管場所を作ってはいた。

 ただし税務ギルドも、多額の脱税の匂いをかぎつければ武力行使も辞さない機関。ここのところ本業の〈名前はまだない〉代行ギルドのほうは、ちゃんと税理士を雇用し、法に反しない運営をしていた。が、前述したとおり、合法と違法の中間を行っていた奴隷ギルドは別。

 まったく奴隷売買の税を納めていなかったわけだ。

 とはいえサラの指摘も一部は正しく、税務ギルド内の武力部隊程度では、いまやサラ一人相手にしても太刀打ちはできない。さらにそこにマスコット兼最強猫枠のアークが加わるのであるから、負け戦は確定的。


 ただ税務ギルド、実のところ冒険者ギルドよりも歴史のあるこの暴力大好きギルドには、長らく下請けとして、刺客集団を飼っていた。

 一人一人が冒険者ギルドのSランク級。しかも血も涙もないことはこの上なく。結果的には、これが原因で、〈名前はまだない〉も壊滅するハメになるわけであり、のちにサラは名言風に言ったものだ。


「脱税するときは、もっと賢くやるべきだね」


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